出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/07/20 02:15:59」(JST)
この項目では、料理のサンドウィッチについて説明しています。その他のサンドウィッチについては「サンドウィッチ (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
サンドイッチ | |
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ウィーンのシーフードサンドイッチ群
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別名 | サンドウィッチ |
発祥地 | イギリス |
主な材料 | パン |
* ウィキメディア・コモンズ |
サンドイッチ、サンドウィッチ(英語: sandwich)とは、パンに肉や野菜等の具を挟んだり、乗せたりした料理のこと。アイスクリーム・サンドイッチのように、パン以外の素材に具を挟んだものを指す場合もある。
日本においては具材の名称を前に付して「○○サンド」の略称で呼ばれることがある。
簡単に調理でき、気軽に食べることができ、工夫次第で栄養バランスも良くなるので、世界中のいたるところでよく食されている。
食べる時に食卓やカトラリー(フォークやナイフ)(あるいは箸など)を必要とせず、手でつかんで簡単に食べられるので重宝されている。欧米では職場や外出先で食べる昼食(弁当)として自宅で作って紙袋に詰めて持参したり、ピクニックなどに持って行くことが多い。サンドイッチ店もあり、ファーストフードの一種としても食べられている。米国のデリカテッセンや日本のコンビニなどでも売られている。列車の車内食や、航空機の機内食として提供されることもある。
様々なタイプがあり様々な分類がされており、スライスされた2枚のパンで挟んだタイプと比較しつつ、具を挟まずにパンに乗せただけのタイプは「オープン・サンドイッチ(オープンサンド)」と呼ばれる。例えばライ麦パンの上に多彩な具材を乗せたデンマーク料理・スモーブローがある。細切りした耳なし食パンに薄切りにした具を乗せ、端から円筒状に巻いたものはロール・サンドイッチやロールサンドと呼ばれる。棒状(長楕円状)のパンを厚く二つにスライスして具材を挟んだものは潜水艦に見立てられて「サブマリン・サンドイッチ(サブ)」と呼ばれている。(サブウェイやクイズノス・サブがファーストフードとして世界的に普及させた。)
また、温かく(あるいは熱く)調理したものはホット・サンドイッチ(ホットサンド)に分類されることがあり(フランスのクロックムッシュや、専用器具で両面を焼いたものなどがある)、それに対して冷たいパンや具材だけで作るサンドイッチを「コールド・サンドウィッチ」と分類することがある。バリエーションとして、パンに具材を挟んだものに溶き卵を絡めて油で揚げたモンテクリスト・サンドイッチ等もある。
各国の特徴が出ている食べ物や独特の食べ物と認知されているもの中には、サンドイッチの一種に分類されるものもある。例えばイタリア料理のパニーノもサンドイッチの一種である。フランス料理における前菜には、食パンベースのカナッペが供されることがあるが、これもサンドイッチの一種である。また米国人が好み世界に広まったハンバーガーも実はサンドイッチの一種にあたる[1]。
日本では食パンに具を挟んだものが主流である。
アイスクリームをクッキーなどで挟んだものをアイスクリーム・サンドイッチ(アイス・サンド)、クッキー・サンドなどとも称される。
パンに類する食材に適宜の具を挟んで食べるという料理法は、古代ローマのオッフラ、インドのナン、中東のピタ、メキシコのタコスやブリート等、世界各地で古くから自然に発祥したものである。
1世紀のユダヤ教の律法学者(ラビ)ヒレルは、過越の際に、犠牲の仔羊の肉と苦い香草とを、昔風の柔らかいマッツァー(種無し、つまり酵母を入れない平たいパン)に包んだと言われている[2][3]。ヒレルが作ったマッツァーのロールは「コレフ」と呼ばれ、肉の代わりに甘い木の実のペーストであるハロセットを、マーロールの代わりにホースラディッシュを詰めて食されている[4]。西アジアから北アフリカにいたる地域では昔から、食べものを大皿から口へ運ぶのに、このような大きくは膨張させないパンを使い、すくったり、包んだりして食べた。モロッコからエチオピアやインドにかけては、ヨーロッパの厚みのあるパンとは対照的に、円形に平たく焼かれた。
中世ヨーロッパでは、古く硬くなった粗末なパンを、食べ物の下に敷く皿代わり(トレンチャー)に使っていた。下敷きのパンは食べ物の汁を吸う。これを食事の最後に食べたり、腹が満たされている場合には、乞食や犬に与えた[5]。このトレンチャーは「中世のサンドイッチ」と言われることもあるが、パンと具を一緒に食べるサンドイッチと違い、トレンチャーと上に載せた食べ物を一緒に食べることは無い[6]。英国風サンドイッチのより直接な前身は、例えば17世紀ネーデルラントに見ることが出来る。博物学者ジョン・レイは、居酒屋の垂木に吊るされている牛肉を、「薄くスライスされ、バターの上にのせられ、バター付パンと一緒に食べられる」と記している[7]。このような詳細な記述は、その頃のイギリスにおいては、オランダの belegde broodje(オープン・サンドイッチ)のような食べ方が未だに一般的でなかったことを示している。
始めは、夜の賭博や酒を飲む際の食べ物であったが、その後、ゆっくりと上流階級にも広がり始め、貴族の間で遅い夜食としても食べられるようになった。19世紀には、スペインやイングランドにおいて、爆発的に人気が高まった。この時代は工業社会の擡頭があり、労働者階級の間で、早い・安い・携帯できる食べ物としてサンドイッチは欠くことのできないものとなった[8]。
同時期に、ヨーロッパの外でもサンドイッチは広まりはじめたが、アメリカでは、(大陸とは異なり)夕食に供される手の込んだ料理となった。20世紀初期までには、すでに広く地中海地方でもそうなっていたように、アメリカでもサンドイッチは人気のある手軽な食べ物となった[8]。
M. モートンの調査によれば、16世紀から17世紀英国では「サンドイッチ」はただ単に"bread and meat" とか "bread and cheese"などと呼ばれていたという[5][9]。食べ物としての「サンドイッチ」の語の初出は、エドワード・ギボンの日記(1762年11月24日)にある[10]。
ココア・ツリーで食事をした。この立派な場所は、毎晩、本当に英国的な光景を見せてくれる。二、三十人のこの国の一流の男たちが……テーブルで少しずつ食べる……わずかな冷たい肉、あるいはサンドイッチを[5]。
この名は、当時のイギリスの貴族、第4代サンドウィッチ伯爵ジョン・モンタギューにちなんで付けられたものであるが[注 1]、モンタギューはサンドイッチを発明したわけでも、推奨したわけでもない。しかし、1760年代から1770年代にかけて、「サンドイッチ」という名称は一般に普及し、定着していた[11]。サンドウィッチ伯爵の評伝を著したニコラス・ロジャーによれば、その理由について唯一の情報源は、ピエール=ジャン・グロスレ (Pierre-Jean Grosley) による、1765年のロンドン滞在の印象をまとめた著作『ロンドン Londres』(1770年。英訳はA Tour to London 1772年)の中の次のゴシップだという。
国務大臣は公衆の賭博台で24時間を過ごし、終始ゲームに夢中になっていたので、二枚の焼いたパンにはさんだ少しの牛肉を食べる他に生きてはおられず、ゲームを続けながらこれを食べる。この新しい食べものは、私のロンドン滞在中に大流行した。発明した大臣の名前で呼ばれた[5]。
しかし、ロジャーはグロスレの記述について、1765年当時のモンタギューは要職にあって多忙を極めていたために徹夜の賭博に割くような時間は無いと疑問を呈している[12]。
1892年(明治25年)、鎌倉市大船の大船軒が大船駅で販売したサンドイッチが、駅弁としては日本最初とされている。
三角形に切られたサンドイッチについては、昭和36年(1961年)、東京の茗荷谷駅近くにあった「フレンパン(婦連パン小石川販売所)[注 3]」が「フレンサンドイッチ」という名称で販売し始めたものを発祥とする。後楽園球場にサンドイッチを売りに行っていた同店の主人が、「中身が見えるサンドイッチがあれば便利だな」という客の一言から考案したものである。同店がすぐに特許を取得したが、5年後には放棄したため、全国に広まった。以降、日本の店舗販売でよく見られるようになった。
昭和時代の日本では、「サンドイッチ」と言えば食パンの耳を切り落とした白い部分で作るタイプであり、他のパンを用いるタイプはほとんど売られていなかった。飲食店では、洋風の皿の上に紙ナプキンを敷き、その上にサンドイッチを配置しパセリを添えて提供することが多かった。
デパート最上階の食堂街にある喫茶店などでは、サンドイッチも定番のひとつとしてメニューに掲載されるのが一般的で、主に「野菜サンド」や「ハムサンド」、「卵サンド」などで、概して具の量は少なめであった。
1935年(昭和10年)ごろには、東京の豚カツ屋の井泉が花柳界の芸者たちのためにとんかつのサンドイッチ(かつサンド、カツサンド)を作り始めた。中京圏の喫茶店で提供されるサンドイッチには、具に焼きそばやスパゲッティなどの麺類まで用いられることもあった。
1992年には日本に米国のサブウェイが進出した。サブウェイのサンドイッチのパンは棒状の(長楕円状の)パンを厚く二つにスライスしたもので、米国ではありふれていても、日本では一般的ではなかったタイプであった。客が具材を指定し、自分好みのサンドウィッチを目の前で店員に作ってもらえるのも日本人にとって新しい体験であった。その後同チェーン店が増えるにつれ、日本でもそうしたタイプのサンドイッチが次第に定着した。ビジネス街に進出したサブウェイは、忙しいビジネスマンに手軽な昼食の選択肢を増やしたとされる。
日本ではコンビニエンスストアではおにぎりと共に定番商品のひとつとして扱っており、耳を切り落とした食パンで作られたサンドイッチがプラスチック(ビニール)の袋に詰められた状態で棚に並べられる。「卵サンドイッチ」「野菜サンドイッチ」「ツナサンドイッチ」などが定番で、それ以外にも様々な種類のサンドイッチが販売されている。近年では、ハード系のパンを用いたものが販売されることも増えたが、ソフト系のパンのものに比べて高価であることが多い。
製パン業界や流通業などの業務用語では、「調理パン」というカテゴリに分類される。
近年、日本人の味覚に合わせて様々なサンドイッチが作られている。前述のスパゲティなどの麺類、コロッケ、メンチカツなどだけでなく、和風食材の海苔やじゃこを具として用いるものもある。つぶあん、こしあん、うぐいすあん、白あんなどの餡類を用いたものもある。
ヨーロッパの街角では、サンドイッチ店であることを明示した店舗も多い。短時間で、比較的安価に食事ができるため重宝がられている。コーヒー店なども兼ねていることが多い。
アメリカ合衆国ではデリカテッセンの主力商品のひとつである。
人気の店の中にはチェーン店化に成功しているところもあり、そのうちのいくつかは日本にも進出している。日本で生まれたサンドイッチチェーン店もある。
サンドイッチの調理法に因んで、両側から挟まれた状態を「サンドイッチ(された)」ということがある。このことより、広告を書いた板に挟まれた格好で街中で宣伝を行う者をサンドイッチマンと呼ぶ。また、プロレスのタッグマッチで前後から相手選手を挟む連係攻撃を「サンドイッチ(式)○○」と呼ぶ(サンドイッチラリアットなど)。経済分野でも、日本、中国の両経済大国の間に位置し、低賃金の中国、高い技術力の日本の間に挟まれた状態で身動きが取れない韓国経済の状況を「サンドイッチ論」と称することがある。
なお、英語では「sandwich」を「sand.」と略すことはあるが、日本のように「サンドする」「○○サンド」の意味で「sand」を使うことはなく、いずれの意味でも「sandwich」を用いる。
ウィキメディア・コモンズには、サンドイッチに関連するメディアがあります。 |
ウィクショナリーにサンドイッチの項目があります。 |
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