出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2019/06/19 02:30:14」(JST)
「うなぎ」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「うなぎ (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。 出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(2011年10月) |
ウナギ | ||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ヨーロッパ産 Anguilla anguilla
| ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
|
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 770 kJ (180 kcal) |
炭水化物 |
0 g |
糖類 | 0 g |
食物繊維 | 0 g |
脂肪 |
11.66 g |
飽和脂肪酸 | 2.358 g |
一価不飽和 | 7.19 g |
多価不飽和 | 0.947 g |
タンパク質 |
18.44 g |
トリプトファン | 0.207 g |
トレオニン | 0.809 g |
イソロイシン | 0.85 g |
ロイシン | 1.499 g |
リシン | 1.694 g |
メチオニン | 0.546 g |
シスチン | 0.198 g |
フェニルアラニン | 0.72 g |
チロシン | 0.623 g |
バリン | 0.95 g |
アルギニン | 1.104 g |
ヒスチジン | 0.543 g |
アラニン | 1.115 g |
アスパラギン酸 | 1.889 g |
グルタミン酸 | 2.753 g |
グリシン | 0.885 g |
プロリン | 0.652 g |
セリン | 0.753 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 β-カロテン ルテインと ゼアキサンチン |
(130%) 1043 μg(0%) 0 μg0 μg |
チアミン (B1) |
(13%) 0.15 mg |
リボフラビン (B2) |
(3%) 0.04 mg |
ナイアシン (B3) |
(23%) 3.5 mg |
パントテン酸 (B5) |
(5%) 0.24 mg |
ビタミンB6 |
(5%) 0.067 mg |
葉酸 (B9) |
(4%) 15 μg |
ビタミンB12 |
(125%) 3 μg |
コリン |
(13%) 65 mg |
ビタミンC |
(2%) 1.8 mg |
ビタミンD |
(155%) 932 IU |
ビタミンE |
(27%) 4 mg |
ビタミンK |
(0%) 0 μg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(3%) 51 mg |
カリウム |
(6%) 272 mg |
カルシウム |
(2%) 20 mg |
マグネシウム |
(6%) 20 mg |
リン |
(31%) 216 mg |
鉄分 |
(4%) 0.5 mg |
亜鉛 |
(17%) 1.62 mg |
マンガン |
(2%) 0.035 mg |
セレン |
(9%) 6.5 μg |
他の成分 | |
水分 | 68.26 g |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース(英語) |
項目 | 分量(g) |
---|---|
脂肪 | 11.66 |
飽和脂肪酸 | 2.358 |
14:0(ミリスチン酸) | 0.58 |
16:0(パルミチン酸) | 1.585 |
18:0(ステアリン酸) | 0.191 |
一価不飽和脂肪酸 | 7.19 |
16:1(パルミトレイン酸) | 1.255 |
18:1(オレイン酸) | 2.772 |
20:1 | 3 |
多価不飽和脂肪酸 | 0.947 |
18:2(リノール酸) | 0.196 |
18:3(α-リノレン酸) | 0.432 |
20:4(未同定) | 0.095 |
20:5 n-3(エイコサペンタエン酸(EPA)) | 0.084 |
22:5 n-3(ドコサペンタエン酸(DPA)) | 0.074 |
22:6 n-3(ドコサヘキサエン酸(DHA)) | 0.063 |
ウナギ(鰻[2]、うなぎ)とは、ウナギ科(Anguillidae) ウナギ属(Anguilla) に属する魚類の総称である。世界中の熱帯から温帯にかけて分布する。ニホンウナギ、オオウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギ(英語版)など世界で19種類(うち食用となるのは4種類)が確認されている[3]。
フウセンウナギやデンキウナギ、タウナギなど、外見は細長い体型をしていてウナギに似ている魚類には、分類学上では別のグループでもウナギの名を持つ種がある。また、ヤツメウナギ、ヌタウナギは硬骨魚類ですらなく、原始的な無顎魚類(円口類)に分類される[4]。
種類や地域によっては食用にされる。日本では主にニホンウナギで蒲焼や鰻丼などの調理方法が考案されて、古くから食文化に深い関わりを持つ魚である。漁業・養殖共に日本では広く行われてきたが、近年は国外からの輸入が増えている。
本項目では主に、ウナギの文化的側面について解説する。生物学的側面についてはウナギ科を参照のこと。
泳ぎはさほど上手くなく、遊泳速度は遅い。他の魚と異なり、ヘビのように体を横にくねらせて波打たせることで推進力を得る。このような遊泳方法は蛇行型と呼ばれ、ウツボやハモ、アナゴなどウナギと似た体型の魚に見られる。
一般的に淡水魚として知られているが、海で産卵・孵化を行い、淡水にさかのぼってくる「降河回遊(こうかかいゆう)」という生活形態をとる。嗅覚は非常に優れておりイヌに匹敵する[5]。
属名 Anguilla はラテン語でウナギの意。
日本では奈良時代の『万葉集』に「武奈伎(むなぎ)」として見えるのが初出で、これがウナギの古称である。京都大学がデジタル公開している万葉集(尼崎本)では、万葉仮名の隣にかな書きがされており、「武奈伎」の箇所に「むなぎ」のかな書きが充てられている。
院政期頃になって「ウナギ」という語形が登場し、その後定着した。そもそものムナギの語源には
この他に、「ナギ」の部分に着目して
などとする説もある。
近畿地方の方言では「まむし」と呼ぶ。
「薬缶」と題する江戸小咄では、「鵜が飲み込むのに難儀したから鵜難儀、うなんぎ、うなぎ」といった地口が語られている。また落語のマクラには、ウナギを食べる習慣がなかった頃、小料理屋のおかみがウナギ料理を出したところ案外美味だったので「お内儀もうひとつくれ、おないぎ、おなぎ、うなぎ」というものがある。
日本では重要な食用魚の一つで、年間11万トンもの鰻が消費されている。成体となったウナギや加工ウナギの輸入に加え、20世紀後半頃には養殖技術が確立され、養殖に必要となる稚魚の輸入も行われるようになった。しかしながら野生のウナギ(天然もの)の人気は根強く、釣りや延縄などで漁獲されている。 さらにウナギに的を絞った伝統漁法も各地にある。
遊漁としての釣りにおいてはミミズ等を餌にした釣り方が一般的。ウナギは嗅覚に優れるため、一般的な集魚剤等、不自然な匂いのするものは食べない。よく釣れる時間帯は一般に日没から2時間前後だが、場所によっては日没から日の出まで釣れる。餌釣りでの方法としては、ブッコミ釣り(鯉などのブッコミ仕掛けの変形、一本針が基本)、置き釣り(ウナギが通りそうな場所に針と糸が付いた竹杭を刺してしばらく置く)、穴釣り(昼間ウナギがいそうな穴に小魚等を付けるための先端にまっすぐな針を付けた竹の棒と、針と糸を持ち、直接入れて釣る)等があり、特に置き釣りと穴釣りはウナギ以外には見られない釣り方である。ただ、ウナギ自体は簡単に釣れるが、釣れる場所を見つけるのは簡単ではないのでウナギを狙う釣り人は釣れる場所をあまり公開したがらない。特に穴釣りは一度ウナギを釣った後でも、良い穴にはすぐにまた新しいうなぎが入るため、穴を覚える釣りである。 また、河川ではなく、汽水域や外海に生息するウナギは青うなぎと呼ばれ、川魚特有の臭みもなく非常に珍重される。特に岡山県児島湾の青うなぎは有名である。
2002年度
ウナギの養殖はまず、天然のシラスウナギを捕ることから始まる。黒潮に乗って日本沿岸にたどり着いたウナギの子供、シラスウナギを大量に漁獲してこれを育てるのである。養殖方法は、日本ではビニールハウスを利用した養殖が主流である。 台湾と中国南部の広東省では池を掘っただけの露地養殖。ハウス養殖は、ボイラーを焚いて水温を約30℃に保っており、成長を早めることができる。但し、養殖の過程で餌を由来としたサルモネラ菌の汚染が発生している[6]。現在商業化されている全ての「養殖ウナギ」は天然稚魚を育てたものであり、天然資源が枯渇すると養殖不可能となる。天然稚魚を必要としない受精卵からの養殖については、#完全養殖の項を参照のこと。
日本のウナギ養殖(養鰻)は、1879年(明治12年)に東京深川で、殖産家である服部倉治郎によって初めて試みられた。その後、1891年(明治24年)に現在の静岡県湖西市で、原田仙右衛門が7ヘクタールの池を造り、日本で初めて人工池での養鰻を試みたほか、服部倉治郎も1897年(明治30年)に現在の浜松市西区にて養鰻を始めている。これが後に日本の養鰻の中心地となる浜名湖の養殖ウナギのルーツとなる[7]。温暖な気候や地下水などウナギの生育に適した環境に加え、浜名湖や天竜川河口でシラスウナギが多く獲れたことが、この地で養鰻業が盛んになった理由とされている。その後、浜名湖周辺を中心とした静岡県遠州地方のほか、愛知県三河地方、岐阜県、三重県中勢地方、鹿児島県、宮崎県などが主な生産地となり、太平洋戦争によって一時衰退するも、戦後は概ね復興する。2000年以降2013年までの間、都道府県別の養殖ウナギ収穫量は順位を替えながらも、鹿児島県、愛知県、宮崎県の3県が常にトップ3に位置しており、その下も、静岡県、高知県、徳島県などが比較的安定した収穫量を維持している。しかし日本全体で見れば、2011年まではほぼ毎年約2万トン前後養殖されていたものが、2012年以降減少に転じ、2013年では約1万4000トンにまで減少している[8]。
輸入品は台湾が20年以上の歴史を持っているが、現在[いつ?]はヨーロッパウナギのシラスウナギを中国に輸入し養殖したウナギが主流である[要出典][要検証 – ノート]。 種類は、日本ではニホンウナギ Anguilla japonica のみで、 台湾ではAnguilla japonica、中国ではニホンウナギ Anguilla japonica とヨーロッパウナギ Anguilla anguilla が8 : 2くらいである[要出典]。門司税関博多税関支署によると土用の丑の日がある7月が、年間を通して輸入量はピークになる[要出典]。2005年は6月の輸入量に比べて、7月は2倍近くの139トンに増加していた。2006年は検査の強化や中国側が輸出を控えたため、台湾産が増えている[要出典]。
2013年のデータでは、養殖生産量が全体の生産量の95%を占めているとされている[9]。。
また、養殖ウナギと天然ウナギの見分け方として一般的に胴回りが太く腹の色が黄色がかっているのが天然ウナギだとされるが、実際の天然ウナギは生息環境や餌によって色、模様、体型が様々に変化するため、見た目で識別することは容易ではない。
出所の不透明さが指摘される香港産のニホンウナギの稚魚「シラスウナギ」を日本が2018年12月と19年1月に計約6トン輸入し、同じ期間に日本の養殖池に入れられた稚魚の約8割を占めていることが明らかになった。香港にはシラスウナギ漁の実態がほとんどなく、輸出を禁じる台湾などから不法に持ち出された可能性が高いと指摘されている[10]。
ウナギの人工孵化は1973年に北海道大学において初めて成功し、2002年には三重県の水産総合研究センター養殖研究所(現「増養殖研究所」)が仔魚をシラスウナギに変態させることに世界で初めて成功した[11]。しかし人工孵化と孵化直後養殖技術はいまだ莫大な費用が掛かり、成功率も低いため研究中で、養殖種苗となるシラスウナギを海岸で捕獲し、成魚になるまで養殖する方法しか商業的には実現していない。自然界における個体数の減少、稚魚の減少にも直接繋がっており、養殖産業自身も打撃を受けつつある。そうした中での2010年、水産総合研究センターが人工孵化したウナギを親ウナギに成長させ、さらに次の世代の稚魚を誕生させるという完全養殖に世界で初めて成功したと発表[12]。25万個余りの卵が生まれ、このうち75%が孵化したと報じており、先に述べた稚魚の漁獲高減少もあって、期待を集めている。だが、孵化直後の稚魚の餌の原料にサメの卵が必要で、毎日水を入れ替えなければならず、人工環境ではほとんどオスしか生まれないため産卵のためにホルモンによるメス化が必要など、コスト面で課題が多く残されている[13]。2013年には、プランクトンの糞や死骸が餌となることが突き止められた。また、鶏卵やヤマメの精巣も餌になることが判明し、幼生は約9割が育つまでになった。しかし、2013年の現状ではシラスウナギ1匹にかかるコストは飼料代、設備投資、人件費、光熱費など1000円以下では無理だといわれている[14]。水産庁は、完全養殖の商業化の目標年を2020年としている[15]。
ウナギ資源は、1970年代から減少を続けており[16]、消費の99%以上を占める、養殖ウナギに用いられるシラスウナギの日本国内での漁獲量は、ピーク時には200トンを超えていたが、2013年には5.2トンにまで落ち込んだ[17][18][19]。
2013年2月には、ニホンウナギが環境省レッドリストに[20]、2014年6月には、IUCNレッドリストに絶滅危惧種として選定された[21]。
また、ヨーロッパウナギについては、1990年代に稚魚を中華人民共和国で養殖し、日本へ輸出する販路が定着し、輸出が本格化すると、資源は激減した[22]。2008年にIUCNレッドリストで絶滅危惧種に指定されており[23][24][21]、後述するように2007年6月のワシントン条約第14回締約国会議において、規制対象となることが決定。2009年3月から、その効力が発生することとなった[25]。
ウナギの生態に未解明の部分があるため定かではないものの、減少の理由は
などが挙げられ[16][17][18]、とりわけ乱獲については、かつて世界のウナギの7割を消費していた、日本の業界や消費者の責任が指摘されていた[17][26][27]。
なお2007年以降は、中華人民共和国が最大の消費国となっており、2013年には、世界における日本のウナギ消費量は1割強にまで落ち込み、中華人民共和国の消費量が約7割となっている[9]。
2010年以降、シラスウナギの不漁が深刻化し、ウナギの価格が上昇した。こうした状況を受けて、水産庁は2012年6月、ウナギ緊急対策の実施を発表し[28]、同年9月より日本・中国・台湾の三者間でニホンウナギの国際資源管理をめぐって非公式協議を進めている[29]。
一方2012年7月に、ウナギがワシントン条約の規制対象として検討された際には、郡司彰農林水産大臣(当時)は「規制されるほど枯渇していない」と述べた[30]。
資源管理の動きとは対照的に、日本のシラスウナギは、1960年代から違法漁獲が続いているとされており、全体の5割以上が「違法漁獲もしくは闇市場を通じた取引である」と指摘されている[31]。
また2012年7月には、浜松市の業者によって、アフリカ産ウナギ(Anguilla mossambica)が初輸入されることが報じられた[32]。太平洋海岸周辺やインド洋海岸周辺に生息するビカーラ種(Anguilla bicolor)もニホンウナギの代替として、日本経済新聞に紹介されたが[33]、その翌年の2014年に、IUCNレッドリストにおいて準絶滅危惧種に指定された[21]。
ビカーラ種の水産資源としての元々の量が少なく、生態の把握もなされておらず、現地の資源管理体制も整っていない状態で、日本が商業利用を検討したことが主な理由である。アメリカウナギも、ニホンウナギの代替として、養鰻業者が商業利用を開始したことで、絶滅危惧種に指定された[34]。
三重大学の勝川俊雄は、こうした流れに対して「食べるだけ食べて、資源が枯渇したら、別の地域から輸入すればよいというのは無責任だ」と批判している[22][35][36]。グリーンピースは「ウナギ加工品の調達は、サプライチェーンが不透明極まりなく、トレーサビリティに重大な欠陥がある」と警鐘を鳴らしている[37]。
2017年3月31日には、生物種や資源としてのニホンウナギの保全に取り組むため、日本と台湾、韓国、中国の研究者ら約100人が参加する「東アジア鰻学会」の設立総会が開かれた[38]。
2007年、EUがヨーロッパウナギの絶滅を危惧してシラスウナギの輸出を規制する方針を発表し、ワシントン条約締約国会議でEU案が可決、規制が確定し、ヨーロッパからの輸出規制が始まった。また、台湾も日本への過大な輸出に対して現地の養殖業者などが輸出規制を要望している。日本側も国産シラスウナギで成り立っている業者と輸入物に頼る業者の対立があり、一致した意見表明ができない状況になっている。そのため、全般的にウナギ価格の高騰は避けられないとされる。 また輸出規制が始まったにもかかわらずヨーロッパウナギの稚魚の調達は続いており、違法輸出入の可能性が指摘されている[31]。各所から公表されている生産量と輸出量の数値を照らし合わせると、データに相違があることが確認されており、全容の把握が困難となっている[31]。
グリーンピース・ジャパンの調査では、2017年(平成29年)6月4日に、日本の大手小売事業者18社が、廃棄した二ホンウナギは約2.7トンと推計され、二ホンウナギが売れ残りなどを理由に大量廃棄され、無駄な消費となっていると発表した[37]。
ウナギの保護や価格上昇への対応として、日本ではウナギの蒲焼に食感や味、香りが似た代用品の開発・利用が試みられている。一正蒲鉾はウナギ以外の魚すり身練り物製品を発売[39]。パンガシウス科のナマズ肉も蒲焼として販売されている[40]。
ウナギは高タンパク、高ビタミンA・ビタミンB1・ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンEやDHA・EPA、 ミネラル(鉄、亜鉛、カルシウム、銅)が豊富で消化も良く、日本では縄文時代の遺跡からも食用としたウナギの骨が出土している[41]。日本料理の食材としても重要で、鰻屋と呼ばれるウナギ料理の専門店も多い。皮に生息地の水の臭いやエサの臭いが残っているため、天然、養殖を問わずきれいな水に1-2日入れて泥抜き・臭み抜きをしたものを料理する。夏バテを防ぐためにウナギを食べる習慣は、日本では大変古く、『万葉集』にまでその痕跡をさかのぼる。以下の歌は大伴家持による(括弧内は国歌大観番号)。「むなぎ」はウナギの古形。
痩人(やせひと)をあざける歌二首
石麻呂に吾(あれ)もの申す夏やせによしといふ物そむなぎ取り食(め)せ(3853)
痩す痩すも生けらば在らむをはたやはたむなぎを捕ると川に流るな(3854)
徳川家康の時代に江戸を開発した際、干拓によって出来た湿地に鰻が住み着くようになったため、鰻は労働者の食べ物となった。当時は蒲焼の文字通り、蒲の穂のようにぶつ切りにしたウナギを串に刺して焼いただけという食べ方で、値段もそばと変わらなかった[42]。
江戸で濃口醤油が開発されると、ウナギをタレで味付けして食べるようになった。現在のように開いてタレにつけて焼くようになったのは、上方、江戸とも享保の頃(1716-1736年)と思われる[42]。蕎麦ほど徹底した美学はないものの、「鰻屋でせかすのは野暮」(注文があってから一つひとつ裂いて焼くために時間が掛かる)、「蒲焼が出てくるまでは新香で酒を飲む」(白焼きなどを取って間を繋ぐのは邪道。したがって鰻屋は新香に気を遣うものとされた)など、江戸っ子にとっては一家言ある食べ物でもある。出前も行われており、その後は冷めにくいようにと丼に蓋をするようになり、またその後に鰻屋「重箱」から重箱を使用する事も始まった。
土用の丑の日や夏バテ予防に食べられるが、ウナギの旬は冬眠に備えて身に養分を貯える晩秋から初冬にかけての時期で、秋から春に比べても夏のものは味が落ちる[43]。また日本における疲労研究の第一人者である[43][44][45]大阪市立大学大学院特任教授の梶本修身によれば、食肉など栄養価の高いものを食することが当たり前になった現代においてはエネルギーやビタミン等の栄養不足が原因で夏バテになることは考えにくく、夏バテ防止のためにうなぎを食べるという行為は医学的根拠に乏しいとされ、効果があまりないとしている[43][46]。
ウナギの血液はヒト[47]およびその他の哺乳類に対して有毒である[48][49][50]。ただし、この毒は100 kDaのタンパク質であり、60℃で5分以上加熱すれば変性して毒性を失うため、加熱調理した分には危険はない[51]。
ウナギの血清に由来する毒素は、アナフィラキシーの発見によりノーベル賞を受賞したシャルル・ロベール・リシェに使用された(ウナギ血清を犬に注射し効果を観察した)。
古くから「鰻と梅干は食い合わせが悪い」とされる。これは食禁の代表的な例として挙げられることが多いが、貝原益軒の『養生訓』にも記載がなく、江戸時代中期以降に広まった日本固有の俗信と考えられる。鰻も梅干も決して安いものではなく、両方を同時に食べるような贅沢を戒めるため、このような迷信が広まったという説もある。医科学的な根拠は(少なくとも現時点では)見出せない。
実際には鰻を食べた後に梅干を食べる事により、梅干の酸味が鰻の脂を緩和する効果があるため、食い合わせは良いという。
中華人民共和国はウナギを日本のほかマレーシア、フィリピン、タイなど合計50カ国以上に輸出している。中国の国内消費量も伸び、年間1万トンに達している。訪日旅行でウナギ料理に触れた中国人が増えたことなどが背景とみられる。蒲焼のほかウナギピザなどが飲食店で提供されており、専門店もある[52]。
アジアの他、ヨーロッパでもイギリス、オランダやイタリアなどにウナギ食文化があり、内陸部でも淡水ウナギを使った料理が存在する。古代ローマ人の好物でもあった。古代ローマではうなぎを背開きにし、魚醤とはちみつを混ぜたタレを塗りながらパピルスや羽うちわで扇ぎつつ炭で焼き、胡椒を掛けて食べていた。医師ヒポクラテスは「ウナギの食べ過ぎなどによる肥満は人間の体の最大の敵」と著述している。古代ローマでもうなぎは高価な料理であったらしい。一方、ユダヤやイスラームでは「鱗の無い魚は食べてはいけない」という戒律から、近年まで鱗が目立たない鰻を食べることはタブーとされていた(現在でも一般的にはタブーとされる事がほとんど)。
ウナギを素材とする料理は多く、その地方独自の食文化によって様々な料理が発達している。好き嫌いなどの個人差はあるが、一般的には非日常的なご馳走であり、高級料理として扱われる。
フランスのワインを使用して煮込むマトロット、ドイツのアールズッペ、中華料理、韓国料理
茹でる・焼く・揚げるかのいずれかの方法で調理したウナギを、別途用意した漬け汁と合わせて食べる。 ラテン系の地域ではエスカベッシュという名前で、よく出てくる料理。
2003年7月に中国産ウナギから合成抗菌剤エンロフロキサシンが、10月に台湾産ウナギから合成抗菌剤スルファジミジンがそれぞれ検出され残留農薬に関する調査が厳重化され始める[54][55]。2005年にはらでぃっしゅぼーやが台湾産を国産と偽って販売し、しかもその蒲焼から合成抗菌剤エンロフロキサシンが検出された[56]。
2007年6月29日、アメリカのFDAは中国産のウナギ、エビ、ナマズの1/4に発ガン物質が検出されたとして輸入方法を変更した。今までは検査なく輸入可能であったが、第三者機関の証明書の添付を義務付けた[57]。中国政府は自国の検査証明書で通関可能とするよう交渉中である。検出された物質のうちニトロフラン[要出典]とマラカイトグリーンは動物実験で発ガン性が確認され、中国でも魚介類への使用が禁止されている物質であった[57]。マラカイトグリーンは以前に中国産のウナギから日本でも検出されたことがある[要出典]。ウナギの日本国内消費量およそ10万トンのうちおよそ6万トンは中国産であり[57]、これをきっかけに日本国内でのウナギの売れ行きは激減した[要出典]。この検出事件に関して日本鰻輸入組合森山喬司理事長は、アメリカに輸入されたウナギから上記の物質が検出されたものの、「日本に輸入されている中国産ウナギは中国政府による検査・各工場の自主検査、日本での命令検査をパスしており安全だ」「ウナギが危ないと連日報道されて消費者の不安が煽られ、ウナギの売れ行きは激減している。いかに努力して安全なものにしているか実態を理解してほしい」とコメントしている[58](中国産食品の安全性も参照のこと)。
中国側の検査の実情として、中国の国家品質監督検査検疫総局は2007年7月11日、中国の食品会社41社の安全管理に問題があったとして、輸出差し止めとした[59]。このうち11社は、日本向けに水産食品を輸出、そのうち5社[要出典]はウナギのかば焼きであった[59]。これらの工場は日本の通関時に違反事例を起こしており、既に日本への輸入は止められている[要出典]。また15社は中国側の検疫手続きを免れていたことが判明している[59]。また森山喬司理事長の所属する佳成食品株式会社は、2007年7月に細菌多数につき食品衛生法違反でウナギ廃棄を命じられている[60]。そんなこともあり、2007年の土用の丑の日の各コンビニやスーパーマーケットは前年に比べ値段は高くなったものの、国産ウナギ使用のうな重等をアピールしていた[要出典]。
コープさっぽろは2007年の土用の丑の日の翌日になって、2007年7月31日に日本水産の子会社に委託していた中国産鰻から発ガン性のある抗菌剤を検出したと発表、回収を開始した[61]。このウナギはweb上では「抗生物質などの薬品をほとんど使用していません」と宣伝され、店頭では「コープ札幌で取り扱っているウナギは報道等で取り上げられているウナギとは別の商品なので安全です」と広告されていた。
日本国内において国内産ウナギと称して販売されているウナギの中にも、実際には外国産と表示すべきものがあり(産地偽装)、台湾から輸入したウナギに「愛知三河 一色産ウナギ」ブランドを付して流通させていたという事例があった[62][63]。これを受け2008年6月18日、農水省はそのようなウナギがJAS法に違反しているとして業界団体等に適正な表示を依頼する文書を発出した[64]。
また、グリーンピース・ジャパンが2017年秋に実施したDNA検査によると二ホンウナギとして販売されていたウナギが別種のアメリカウナギだった例もあったという(ただし問題とされた小売事業者の一部が独自に外部調査機関に依頼した結果では二ホンウナギだったとしている)[37]。
ウィキスピーシーズにウナギに関する情報があります。 |
ウィキメディア・コモンズには、ウナギに関連するカテゴリがあります。 |
典拠管理 |
|
---|
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
リンク元 | 「eel」 |
拡張検索 | 「デンキウナギ」「電気ウナギ」「ウナギ属」「ヤツメウナギ」「メクラウナギ」 |
.