出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/01/20 14:40:46」(JST)
ヌタウナギ | |||||||||||||||||||||||||||
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ヌタウナギの仲間 Eptatretus stoutii
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Eptatretus burgeri Girard , 1845 |
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ヌタウナギ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
hagfish |
ヌタウナギ(饅鰻、沼田鰻、英: Hagfish)は、ヌタウナギ綱に属する生物の総称、またはその中の1種 Eptatretus burgeri の標準和名である。ヌタウナギは脊椎動物として最も原始的な一群であり、厳密な意味での魚類ではない。便宜上、広義には魚類として扱われる[1][2]。
和名は最近までメクラウナギ(盲鰻)だったが、名称の「メクラ」が視覚障害者に対する差別的な意味を持つ差別用語であるとして、2007年に日本魚類学会により綱以下の名称がヌタウナギへ、種としてのメクラウナギはホソヌタウナギ(細饅鰻)へ変更された[3]。英語名はHagfish(ハグフィッシュ、鬼ババア魚)、Slime eel(スライムイール、粘液ウナギ)。韓国語名は먹장어(먹長魚、モクチャンオ)。中国語名は盲鰻。
目次
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ヌタウナギの仲間は世界中の温帯域に広く分布し、ほとんどの種類は大陸棚辺縁にかけての深海に生息する。名前にウナギと付いているがウナギ目との類縁関係は遠く、同じ無顎類に属するヤツメウナギと近縁な生物である。厳密な意味での魚類ではないが、広義の魚類(無顎魚類)として魚の分類に含められることが多い[4]。生きた化石と呼ばれるグループの一つであり、脊椎動物の起源と進化を考える上で重要な動物である。
無顎類に共通する重要な特徴として、顎を持っていない。体は細長くウナギ型で(この点だけは別網のヤツメウナギに似ている)、皮膚は粘液(ヌタと呼ばれる)に覆われている。体の両側に1~16対の鰓孔がある。ヤツメウナギの仲間では鰓孔は7対で、「7個の目」と呼ばれる箇所である。3~4対の口ひげを持つ。骨格を持たず、体は極めて柔軟である。口の周りに歯を持たないが、舌の上に歯状突起があり、大型の魚に吸着し内部を侵食する。鰭は尾鰭のみで、腹鰭・胸鰭などの対鰭を持たない。小脳を欠く。卵巣と精巣を両方持つが、機能しているのはどちらか一つである。
目は退化的で皮膚に埋没し、外見からは確認できない。眼球には水晶体がなく、特に深い海に生息するホソヌタウナギ属では網膜の発達も悪い場合が多い。目を覆う皮膚は色素に乏しく白みがかって見える。化石種の解析から、ヌタウナギ類の祖先は比較的発達した目を持っており、進化の過程で機能を退化させたものと考えられている。
一般に腐肉食性で、クジラや他の大型魚類などの死骸に集まる姿がしばしば観察される。鯨骨生物群集としては遷移の初期に見られる。生きた獲物ではゴカイのような多毛類にくわえ、頭足類や甲殻類も捕食していることがわかっている。体側には粘液の放出孔(70-200個)が一列に並び、ヌタウナギ固有の粘液腺(ヌタ腺と呼ばれる)から白色糸状の粘液を放出する。この粘液は捕食あるいは防御に用いられ、獲物の鰓に詰まらせて窒息させる効果もある。
ヌタウナギ科には7属70種が記載されている。そのうちの1種であるEptatretus burgeri (標準和名ヌタウナギ)は日本の本州中部より南、朝鮮半島では南部に分布する。ほとんどが深海魚であるヌタウナギ類としては例外的に浅い海に分布する種類であり、水深10-270m[5]の海底の砂泥中に生息している。
ヌタウナギには未だ英語名が付けられていない種が多く存在する。和名は日本近海に産する5種(ヌタウナギ、クロヌタウナギ、ムラサキヌタウナギ、ホソヌタウナギ、オキナホソヌタウナギ)以外には付けられていない。また、日本国内に産するものでも、まだ標準和名がついていないものが存在する。ヌタウナギの仲間は外観や食味に大差がないため、食用用途では種ごとのヌタウナギを区別する習慣はない。そのため、アメリカで漁獲されるヌタウナギは、韓国水域に生息するヌタウナギとは別の学名の種であっても、韓国で食用になる際は区別されず同じヌタウナギとして消費される。
ヌタウナギの一大消費地は韓国であり、古くから庶民の滋養食として用いられてきた高級食材である。調理方法は藁を燃やして丸焼きにしたり、匂い付けに松葉を敷いて網焼きにする。ぶつ切りにして葱やコチュジャンで炒めたり、焼肉風に焼いて食べることもある。釜山などではヌタウナギ専門の料理店も存在する。韓国周辺の水域では漁獲量が減少しているため、石川県や島根県など日本各地や、米国メイン州などから韓国への輸出が盛んに行われている。日本では長崎県や新潟県など一部地域で塩焼きや干物などで食用にされるが、全国的にはほとんど食用として流通していない。秋田県の男鹿地方や新潟県においては「浜焼き穴子」という名前でヌタウナギの食用加工品が作られ、燻製や干物も生産されている。
米国ではヌタウナギを食用とする習慣はなく、漁獲する関係者でも食べる習慣はない。米国のヌタウナギ漁業は、その革を目的とする物以外は、すべて韓国への出荷用途である。
ヌタウナギの革は牛革より強度が有り、かつしなやかである。韓国や米国ではヌタウナギの革で作った財布などが高級な革製品として流通している。繁殖力はそれほど強くないようで、食用や皮革用に集中的に漁獲すると資源が急速に枯渇してしまった事例が報告されている。
底曳き網漁業で大量に網に入ってくることがあり、網の中の魚を食害して商品価値を落とすうえに、海水を吸って著しく膨潤しゼラチン状に固まる粘液を、大量に分泌して漁具や甲板を損なうため、日本の漁業関係者からは嫌われている。
ヌタウナギ綱 Myxini は1目1科の下に、2亜科7属70種を含む[1]。
ウィキメディア・コモンズには、ヌタウナギに関連するメディアがあります。 |
ウィキスピーシーズにヌタウナギに関する情報があります。 |
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