- 英
- alectinib
- 商
- アレセンサ
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/07/10 15:42:00」(JST)
[Wiki ja表示]
アレクチニブ
|
IUPAC命名法による物質名 |
IUPAC名
9-ethyl-6,6-dimethyl-8-(4-morpholin-4-ylpiperidin-1-yl)-11-oxo-5H-benzo[b]carbazole-3-carbonitrile
|
臨床データ |
投与方法 |
Oral |
薬物動態データ |
血漿タンパク結合 |
99%以上 |
代謝 |
CYP3A4(47%以上) |
半減期 |
12.4 - 19.3 |
排泄 |
肝臓(95.7%), 腎臓(0.5%) |
識別 |
CAS番号
(MeSH) |
1256580-46-7 |
化学的データ |
化学式 |
C30H34N4O2 |
分子量 |
482.61656 g/mol |
SMILES
-
CCc1cc2c(cc1N3CCC(CC3)N4CCOCC4)C(c5c(c6ccc(cc6[nH]5)C#N)C2=O)(C)C
|
アレクチニブ(Alectinib、商品名:アレセンサ、開発コード:AF802、RG7853)は、中外製薬が創薬したALK(未分化リンパ腫リン酸化酵素(英語版))阻害薬であり、ALK 融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)の治療に用いられる。同種同効薬のクリゾチニブに耐性となった患者でも効果が期待できる。クリゾチニブやセリチニブと異なり、ベンゾ[b]カルバゾール骨格を有する。各種キナーゼの中でALKへの選択性が極めて高い[1]。
目次
- 1 承認
- 2 作用機序
- 3 臨床試験
- 4 副作用
- 5 参考資料
承認
アレクチニブは日本で2013年9月に希少疾病用医薬品に指定され[2]、2014年7月に「ALK 融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の治療について承認された[3]。
米国では2013年6月に画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に指定され[2]、2015年12月に迅速承認された[4]。
作用機序
非小細胞肺癌の3〜5%[5]の患者では腫瘍細胞中で遺伝子の組み換えが起こっており、棘皮動物微小管結合蛋白質様4(英語版)EML4 と未分化リンパ腫キナーゼ(英語版)ALK が融合(英語版)し、キナーゼ活性を有する異常蛋白質が生成して発癌性と悪性の表現型を示すと思われる[6]事が日本から報告された。この融合遺伝子から造られる蛋白質は、リガンドが結合しなくともキナーゼ活性を常時発現しており、細胞の癌化・異常増殖に密接に関与している[7]。アレクチニブはこのEML4–ALK 融合キナーゼを高選択的に阻害して腫瘍細胞の増殖を抑制し、アポトーシスに導く[8]。
臨床試験
承認申請は日本国内で実施された第I/II相臨床試験に基づいて為された。第II相臨床試験部分では46名の患者が登録され、内43名(93.5%)で腫瘍縮小効果が見られ[2][5]、腫瘍消失率は19.6%であった。無増悪生存期間は中央値27.7ヶ月で、2年生存率は79%であった。又、患者の96.6%に副作用が発現したがCTCAEに定めるグレード4の副作用は無く、グレード3の副作用は好中球減少と血中クレアチンホスホキナーゼ(CPK)増加、各2例(4.3%)であった。
ステージIIIB/IV或いは再発のALK 陽性非小細胞肺癌を対象とした臨床試験の結果、クリゾチニブ治療が無効となった患者に対するアレクチニブの奏効率は50%であった[9]。
副作用
添付文書に記載されている重大な副作用は、間質性肺疾患(1.7%)、肝機能障害、好中球減少(25.9%)、白血球減少(20.7%)、消化管穿孔、血栓塞栓症である[10]。
20%以上に現れる副作用は、味覚異常、便秘、発疹、光線過敏症、血中ビリルビン増加、AST(GOT)増加、ALT(GPT)増加、血中クレアチニン増加、血中CK(CPK)増加である。
参考資料
- ^ “CH5424802, a Selective ALK Inhibitor Capable of Blocking the Resistant Gatekeeper Mutant”. Cancer Cell 19 (5): 679–690. (2011-05-17). doi:10.1016/j.ccr.2011.04.004. PMID 21575866. http://www.cell.com/cancer-cell/abstract/S1535-6108%2811%2900148-6 2015年3月8日閲覧。.
- ^ a b c “ALK阻害剤「アレクチニブ塩酸塩」「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を対象とした製造販売承認申請について”. 中外製薬 (2013年10月8日). 2015年3月8日閲覧。
- ^ “抗悪性腫瘍剤/ALK 阻害剤「アレセンサ®」「ALK 融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する製造販売承認を取得”. 中外製薬 (2014年7月4日). 2015年3月8日閲覧。
- ^ “FDAがALK陽性肺がんの新規経口治療薬としてアレクチニブを承認”. 海外癌医療情報リファレンス (2015年12月19日). 2016年6月30日閲覧。
- ^ a b “アレセンサ:2番目のALK阻害肺癌治療薬”. 日経メディカル (2014年9月19日). 2015年3月8日閲覧。
- ^ “Identification of the transforming EML4–ALK fusion gene in non-small-cell lung cancer”. Nature 448: 561-566. (2007). doi:10.1038/nature05945. PMID 17625570. http://www.nature.com/nature/journal/v448/n7153/full/nature05945.html 2015年3月7日閲覧。.
- ^ Hiroyuki Mano (2008-12). “Non-solid oncogenes in solid tumors: EML4–ALK fusion genes in lung cancer”. Cancer Science 99 (12): 2349–2355. doi:10.1111/j.1349-7006.2008.00972.x. PMID 19032370. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1349-7006.2008.00972.x/abstract 2015年3月8日閲覧。.
- ^ Takaaki Sasaki, Pasi A. Jänne (2011-12-01). “New Strategies for Treatment of ALK-Rearranged Non–Small Cell Lung Cancers”. Clinical Cancer Research 17 (23): 7213-7218. doi:10.1158/1078-0432.CCR-11-1404. PMID 22010214. http://clincancerres.aacrjournals.org/content/17/23/7213.full 2015年3月8日閲覧。.
- ^ “アレクチニブはクリゾチニブ治療歴のあるALK陽性NSCLC患者で高い効果、脳転移に対する効果も期待【ESMO2014】”. 日経メディカル (2014年9月30日). 2015年3月8日閲覧。
- ^ “アレセンサカプセル20mg/アレセンサカプセル40mg 添付文書” (2015年9月). 2016年6月30日閲覧。
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
- 抗悪性腫瘍剤/ALK注1)阻害剤
注1)ALK: <chr color="black">Anaplastic <chr color="black">Lymphoma <chr color="black">Kinase(未分化リンパ腫キナーゼ)
販売名
アレセンサカプセル20mg
組成
成分(1カプセル中)
有効成分・含有量
- アレクチニブ塩酸塩21.51mg
(アレクチニブとして20mg)
成分(1カプセル中)
添加物(内容物)
- 乳糖水和物、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム
成分(1カプセル中)
添加物(カプセル)
- ヒプロメロース、カラギーナン、塩化カリウム、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、カルナウバロウ
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
効能または効果
- 〇<chr color="black">ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
- 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、<chr color="black">ALK融合遺伝子陽性が確認された患者に投与すること。検査にあたっては、免疫組織化学染色法及び蛍光<chr color="black">in situハイブリダイゼーション法を測定原理とする承認された体外診断薬を用いて測定すること(【臨床成績】の項参照)。
- 化学療法未治療患者における本剤の有効性及び安全性は確立していない。
- 本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
- 【臨床成績】の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤以外の治療の実施についても慎重に検討し、適応患者の選択を行うこと。
- 通常、成人にはアレクチニブとして1回300mgを1日2回経口投与する。
- 食事の影響を避けるため、本剤の投与時期は、臨床試験における設定内容に準じて空腹時に投与することが望ましい(【薬物動態】、【臨床成績】の項参照)。
慎重投与
- 間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者[間質性肺疾患が発現又は増悪するおそれがある(「重要な基本的注意」、「重大な副作用」の項参照)。]
- 肝機能障害のある患者[安全性は確立していない。肝機能障害が増悪するおそれがある(「重要な基本的注意」、「重大な副作用」の項参照)。]
重大な副作用
<chr color="black">間質性肺疾患
(1.7%)
- 間質性肺疾患があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<chr color="black">肝機能障害
(頻度不明注3))
- AST(GOT)、ALT(GPT)の増加を伴う肝機能障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には休薬又は投与中止するなど適切な処置を行うこと。
<chr color="black">好中球減少(25.9%)、<chr color="black">白血球減少(20.7%)
- 好中球数減少、白血球数減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には休薬するなど適切な処置を行うこと。
<chr color="black">消化管穿孔
(頻度不明注3))
- 消化管穿孔があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、内視鏡、腹部X線、CT等の必要な検査を行い、本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<chr color="black">血栓塞栓症
(頻度不明注3))
- 肺塞栓症等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
薬効薬理
- <chr color="black">ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌では、ALKチロシンキナーゼ活性が異常に亢進しており、癌化及び腫瘍増殖に関与している。12)
<chr color="black">抗腫瘍効果
- アレクチニブは、<chr color="black">ALK融合遺伝子陽性のヒト非小細胞肺癌由来NCI-H2228細胞株の細胞増殖を抑制した。また、NCI-H2228細胞株を皮下移植した重症複合型免疫不全マウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した。
<chr color="black">作用機序
- アレクチニブは、ALKチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、<chr color="black">ALK融合遺伝子陽性の腫瘍細胞の増殖を抑制する。
有効成分に関する理化学的知見
<chr color="black">分子式
<chr color="black">分子量
<chr color="black">性 状
- 白色〜黄赤みの白色の粉末又は塊のある粉末である。2,2,2-トリフルオロエタノールにやや溶けやすく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくく、水、アセトニトリル及びアセトンにはほとんど溶けない。
<chr color="black">融 点
★リンクテーブル★
[★]
商品名
会社名
成分
薬効分類
薬効
- ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌を効能・効果とする新有効成分含有医薬品
【希少疾病用医薬品】