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麻酔科医 | |
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麻酔科医は、患者の周術期の生命維持全般を担う(写真は麻酔患者シミュレータ)。
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基本情報 | |
職種 | 医師 |
詳細情報 | |
適性能力 | 知識、技術、責任感 |
必須試験 | 医療機関における役割を参照 |
就業分野 | 医療、大学 |
関連職業 | 外科医、内科医、臨床工学技士、看護師 |
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麻酔科医 | |
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英名 | Anesthesiologist |
実施国 | 日本 |
資格種類 | 国家資格 |
分野 | 医療 |
試験形式 | 医師国家試験、麻酔科標榜医認定 |
認定団体 | 厚生労働省 |
等級・称号 | 麻酔科医 |
根拠法令 | 医師法、医療法、医療法施行規則 |
ウィキプロジェクト 資格 ウィキポータル 資格 |
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麻酔科医(ますいかい、英: Anesthesiologist)または麻酔科医師、麻酔医、麻酔医師とは、術前、術中、術後に麻酔の管理を行う麻酔科の医師であり、今日では手術の進行と共に不安定になる患者の容態を医療行為によって生命維持する役割(全身管理)を担う。術中だけでなく術前・術後の麻酔科医の任務を重視して、他科と協同して行う周術期管理と呼ぶ。手術室でのチーム医療(手術チーム)の一員である他、複数の麻酔科医を麻酔チームと呼ぶこともある。重労働であるため、他国でNurse Anesthetistを制度化している例があるが、日本では看護師などコメディカルの周術期業務を整理・統合し、患者の入院から手術を経て退院までの業務の流れを効率化するのと合わせて、麻酔科医を名実共にリーダーとして周術期のチーム医療を実現するという「周術期管理チーム」の名称の下に調整が進行中である[1][2]。全身麻酔手術中は、麻酔と筋弛緩剤によって、呼吸を含む患者の生命維持機能の多くが停止するため、必然的に麻酔のみでなく生命維持全般を受け持つ。術後の意識状態の確認も含み、救急医療での蘇生(心肺蘇生法)との学術的繋がりが深いため講座名として麻酔蘇生学を名乗る教室が増えている。救急外来(ER)では通常救急専従医か麻酔科医のどちらかが主治医となり急患の全身管理を担う。麻酔科とペインクリニックの両方を標榜する診療科もある。麻酔薬の薬理学などを外科学に応用する立場で、学術的な関連領域は広い。
麻酔科医が手術室で行う全身管理は、大きく分けると呼吸管理、循環管理、疼痛管理の3つである[3]。麻酔科医は「意識のない患者の代弁者」と表現される[4][5]。麻酔・筋弛緩剤によって無防備になった患者の生命維持を代行し、執刀医よりも患者の側に立って容態を監視し、患者に代わって執刀医に警告を行う。手術室の外での役割は、術前に外来や病室訪問で患者に麻酔について説明し、インフォームドコンセントを得ること、患者に応じた麻酔計画の作成、手術チームとの打ち合わせ、術後の意識の確認などである。
麻酔科医の仕事は、飛行機のパイロットに例えられる[6][7][8]。
麻酔科医は患者の術前評価と、麻酔装置の点検・準備を行う。全身管理として必要な検査は入院後に行うが、患者である我々がやるべきこととしては、術中併発症のリスクを正確に見積もれるよう、過去に全身麻酔を受けたことがあるかどうか(麻酔歴)に加えて、不整脈や喘息といった既往症、その他患者の状態の評価に挙げられている項目を、なるべく正確に麻酔科医に伝えることである。血縁者に筋疾患がある場合は致死性の高い併発症である悪性高熱症のリスクが高いので、入院の前に家族や血縁がある親戚に確認した方がいい。手術の時間が長くなったり効率の悪い薬剤を選んでも安全性を優先する。それでもリスクが十分に低くならないと麻酔科医が判断すれば、検査を行ってリスクを正確に評価するまで、手術そのものを延期せざるをえない場合がある。重大とは思われない既往症でも複数合わせると、病院では常備できない薬剤が必要になったり、全身麻酔によるリスクの方が手術の成功で見込まれる利益よりも大きくなりうる。困難なのは患者の術前評価を行う余裕がない緊急手術の場合で、患者の既往症を多く知る家族に連絡がとれるまで延期するか、延期すると手遅れになるので手術に踏み切るか、重大な判断の分かれ目となる。
患者は酸素マスクをつけて、成人の場合点滴から静脈麻酔薬が入り昏睡状態となる。小児の場合、多くは吸入麻酔薬である。筋弛緩剤の投与と気管挿管を含み、術前評価が十分できなかった場合に、問題が生じるのは多くの場合この時点なので、作業をこなしながらも患者および呼吸管理と循環管理の計器の監視を続ける。
呼吸や血圧が安定すると、麻酔科医は計器の値を監視しながら裏方に回り、外科医による執刀が開始される。導入時と違って複数の臓器が同時に不調をきたすリスクは小さいが、手術や麻酔に耐えられない場合、患者の臓器が1つ1つ異常を示すので、その兆候を早めに検出して、輸液や昇圧剤を初めとした薬剤の投与で、悪化しないうちに調整する。
導入と同様に覚せい時にも問題が表れやすい。慎重に人工呼吸から自発呼吸へと移行し、麻酔がきれる際の疼痛管理を行う。意識状態の確認を行った後も、術後の併発症が起こる場合があるので、患者の様子によっては集中治療室で監視を続ける必要がある。「患者さんが歩くまでは麻酔管理の責任は終わらない」[9]
麻酔科医でなくても医師または歯科医であれば麻酔を行うことが法的に認められている。しかし、手術技法が高度になるにつれて、患者の容態を監視・管理・警告する重要性から、麻酔科医が求められるようになった。特に1951年の筋弛緩剤スキサメトニウムの臨床応用(von DardelおよびMayerhofer)および1952年の日本での臨床応用[10]は重要な転機となり、これ以降、全身麻酔手術では、筋の緊張を減少させて執刀の自由度が広がった反面、患者の呼吸筋も機能しなくなるため、手術室で患者の呼吸機能を代行・維持する者が必要となり、呼吸に続いて、脈拍、血圧、心電図、体温、意識の管理もその者が担うことが合理的とみなされたことから、高度な手術技法のトレードオフとして生じる術中・術後の患者の生命維持機能の低下・リスクを、専門職である麻酔科医に託す形となった。言い換えれば、外科医が執刀可能な程度と時間は麻酔科医の技量に依存している。特に血圧と脈拍の管理は、執刀医の術野からは見えない部位からの出血を検出する点から極めて重要で、補助の専門職がない日本の麻酔科医制度では、昇圧剤などの投薬だけでなく輸血パックの交換についても、看護師ではなく麻酔科医が担っている場合が多い。この需要が近年では「麻酔科医不足」という社会現象を生み出した。
最も正式な名称は、麻酔科医であり、次によく使われるのは麻酔科医師である。「麻酔医」は麻酔科学が「麻酔学」と呼称されていた、日本の麻酔科学が発展する以前のニュアンスを含むので麻酔科医に好まれていない。最も新しい記述では、日本麻酔学会 NEWSLETTER(vol.4 no.4 1996 )の特集「麻酔学講座の名称を考える」総論で、麻酔学講座から麻酔科学講座への名称変更がなされたとするウェブページがある[11]。同ウェブページに米国の講座名についても記述があり、ASA会長のDr. Ellisonが"Perioperative Medicine and Pain Management"または"Pain & Perioperative Medicine"がふさわしいと言及したようだ。これらは「周術期医学および疼痛管理」、「疼痛および周術期医学」と訳すことができる。麻酔学から麻酔科学への議論は文献[12]の中でもなされている。
日本の麻酔科医に関する制度は、6年制の医学教育課程、医師制度、研修医制度に基づく他に、厚生労働省による麻酔科標榜医の認定と、日本麻酔科学会による認定医・専門医・指導医[13]の認定から成り立っている。特に麻酔科を標榜するには厚生労働省の認定を得なければならない点は、他科に対する麻酔科の特殊性を表している[14][15][16]。医師だけでなく病院についても日本麻酔科学会が認定する「麻酔認定病院」制度がある[15]。
麻酔科医となった後の資格として、日本麻酔科学会による認定医・専門医・指導医とは別に、日本心臓血管麻酔学会が「日本周術期経食道心エコー認定試験」(JB-POT)を実施している[17]。
平成20年の医療施設に従事する医師の政府統計[18]によると、麻酔科医の人口は7,067人で医師全体の2.6%を占め(表4)、男性およそ4,700人、女性およそ2,300人(表3、表4)から求まる女性の割合はおよそ33%である。医師全体の女性の割合は18%である。平均年齢41.9歳は、医師全体の平均年齢48.3歳よりも6.4歳若く、臨床研修医以外で最も若い救急科の39.7歳に近い。比較的女性が多くて、年齢層が若い診療科と考えられる。
麻酔科医からの術前説明(麻酔説明)が多くの患者にとって麻酔科医と接する最初の機会で、患者の麻酔科医に対する第一印象を決めることになるが、麻酔説明のパンフレットに日本で統一された形式は存在せず、病院によっておよそ20頁の文章のもの[19]から、ほぼ同じ頁数で写真イラスト入り部分的にフリガナ付きのもの[20]、それらの4分の1程度の頁数のものと、多岐にわたる。ある麻酔説明パンフレットに対して、22%の患者が「一部わからなかった」と回答し、別の22%の患者が「配布されなかった」と回答した[21]。対応のばらつきが麻酔科医への印象に影響を与えている可能性があり、また同文献にあるように麻酔科医か研修医かによっても患者の回答に差が出ている。パンフレットと診察に加えて、ビデオを導入している場合も増えており[22]、一部ビデオが公開されているものもある[23]。患者が麻酔科医の術前診察で、麻酔の併発症による死亡率を伝えられるかどうかについても、ドイツでは数値として挙げていないとする文献[24]があるが、日本の麻酔説明パンフレットの間でも、患者が記憶しやすい1桁の数値を表として自然に注意がいくように書いてあるものは少ない。しかし少なくとも同文献にある滋賀医科大学の麻酔説明パンフレット、"麻酔に関する説明書"[25][出典無効]は、死亡率の記載は最も患者に分かりやすいものの1つである。 なお、小児麻酔の場合には、必要に応じて学会のホームページの麻酔説明を参照するように促しているものがあった[26]。詳細を確認できないものの、日本麻酔科学会は「麻酔のしおり」という小冊子を2008年くらいから年間50,000部程度[27]発行しており、同学会の事務局から1冊50円、送料500円で購入できる。内容はインターネットで閲覧することはできないものの、報告[28]から表紙などを窺うことができ、評判はいいようだ。特にこれを使う様にと規定されている訳ではないが、患者が入院前に麻酔科医に伝える既往症、麻酔科医に尋ねたい質問などを準備するのに、前もって入手できれば助けになると考えられる。
患者が自分自身と麻酔科医のためにできることは、何より自分の既往症と血縁者の筋疾患の有無を、手術の前に麻酔科医に正確に伝えることである。また、投薬を受けると麻酔科医の名前を覚えられなくなる場合があるので、術前に覚える方がいいとされている(訳注、英語版より)。
日本臨床麻酔学会は、日本語で書かれた学会誌のバックナンバーをインターネットを通じてPDF形式で公開しており、患者や家族が麻酔について分からないことがあれば検索・参照・印刷することができる[29][30]。同様に、世界的によく知られた英文の論文雑誌であるAnesthesiology[31]についても、ほとんどの記事が無料で閲覧できる。その意味で麻酔科はPublic Access[32]やPatient Accessに優れた診療科であり、診断そのものを行うことが少ないという麻酔科医の特殊性からも、既往症のある患者は自分で調べて、ペインクリニックなどで麻酔科医に全身麻酔手術時のリスクを相談しておくことが可能である。内科などの診断を頻繁に行う診療科ではインターネットの普及に伴い患者が無理な意見をいう、または過去においては言わなさすぎた、医師と患者の間のコミュニケーションの問題が指摘されるようになった[33]。
麻酔科医のジレンマとして、手術室で重要な役割を果たすが、手術室の外での業務が目立ちにくいため、患者や家族に評価・感謝されにくいことが挙げられ、その問題を重視しようという意見がある[34]。
麻酔科は医師不足が深刻な診療科であり、最も不足した時期には、麻酔科医4人が一斉退職したある市立病院で、麻酔科医の求人に年収3500万円と記載されたことが話題となった。医療崩壊が叫ばれた時期には内科と並んで集団退職が目立つ診療科として取り上げられた。これを踏まえて日本麻酔科学会から行政へ繰り返し提言が行われた[35][36]。その内容は各国との比較、女性医師の復帰支援、看護麻酔師制度の問題点など多岐にわたっている。時には手術室を掛け持ちする麻酔科医の日常を、脚色を加えて描いた漫画作品として麻酔科医ハナがある。人口当たりで最も不足しているのは、三重県、新潟県、茨城県、埼玉県であるとする統計がある[37]。全身麻酔件数当たりで最も不足しているのは福島県と岩手県であるとする概算がある[38]。根拠となる出典が確認できないものの、同ウェブページを含めて、麻酔科医が健康に働ける全身麻酔症例数として年間300例、月間25例を基準にしたウェブページが複数ある[39][40]。全身麻酔件数は複数の麻酔科医で担当した場合も含んで平均29.4例/月で、手術室の責任者として関与した全身麻酔件数の合計は平均37.7例/月であったとする集計がある[41]。しかし前者はヒストグラム上で30~40件にピークを持つ[42]。麻酔科医不足のニュースは、2008年をピークとして現時点の2010年2月には、新たな記事としては、ほとんど見られなくなった。
生命維持と言う点から訴訟になる率が高いという通説があるが、実際には全診療科を併せた件数の0.7% (2010年)と低い[43]。政府統計によると、麻酔科医は医師全体の2.6%を占めるので、麻酔科医1人当たりの訴訟数は、医師平均のおよそ1/3である。先の訴訟件数のウェブページの注意書きとして、複数の診療科目に該当する場合、主要な一科目に計上とある点は、今後より詳細な参考資料が必要になるが、最も多い内科の228件の中には、麻酔科が含まれている可能性は低いので、いずれにしても麻酔科への訴訟は少ないと思われる。麻酔科の訴訟が多いとする誤解の理由として、周術期の全身管理という麻酔科医の仕事が、他科の医師の活動よりも患者の目に留まりにくく、手術室の実情をテレビドラマ以上にイメージすることも困難であるため、「麻酔事故」というキーワードの方が麻酔 (小説)や報道によって浸透してしまったことが挙げられる[44][45][46]。また、麻酔科学が確立され麻酔科医が制度化される以前には、欧米での麻酔手術は死亡率が高く、戦前の日本ではバイタルサインは脈のみで気管挿管もなかったため、呼吸管理に失敗して死亡する例があった[47]。そもそも手順を定形化してリスクを低減する目的で制度化されたのが米国のNurse Anesthetistであり、医学が進みさらに高リターンだが同時に高リスクな麻酔を扱うための制度が全世界の麻酔科医なので、麻酔科医は本質的に手術のリスクを低減し、訴訟を起こりにくくする存在である。麻酔事故の特殊性について述べた文献[48]では、次の4点に簡潔にまとめられている。第1に麻酔科医と患者の人間関係・信頼関係が形成されずに麻酔実施。第2に患者の麻酔の危険性についての認識の甘さ。第3に患者が認識できない状態で全身麻酔が行われ過程が分からない。第4に局所麻酔は簡易に思われている割に重大な結果をもたらす。日本麻酔科学会は、麻酔関連偶発症例調査を実施しており[49]、その詳細の一部が、厚生労働省の審議のサイトおよび日本麻酔科学会のサイトからPDF形式で閲覧できる[50][51]。
麻酔科医に伝わる格言として、手術には小手術、大手術があるが、麻酔には小麻酔、大麻酔はない、つまり小さい手術だからといって麻酔の手順に手を抜いてはいけないと言われている[52]。麻酔いろは歌に「く:首よりも 上での手術 事故多し」と詠まれている[53]。
「女性医師麻酔科復帰支援プロジェクト」[54]は、長崎大学病院麻酔科が中心になって推進している、出産・育児などで職場を離れた女性麻酔科医や、他科から麻酔科へ転科希望の女性医師を、非常勤の機構専修医という扱いでオンザジョブトレーニングを施し、麻酔科の現場に適応させようとするプロジェクトである。募集人員は2010年2月現時点で2名[55]ながら、機構協力病院は70施設[56]に上る、文部科学省医療人GP[57]として採択されたプロジェクトである。この他、日本麻酔科学会によると多くの病院で女性医師復帰を募っている[58]。同ウェブページには、女性だけでなく男性医師でも構わない、また、若手の約4割が女性との記載がある。こうした病院の中で、「ママ麻酔科医制度」として大阪大学[59]、山口大学[60]、奈良県立医科大学[61]で女性医師募集を行っているうち、大阪大学の関連病院が最も多く2010年2月現在で23施設[62]に上る。
従来の研修医制度から、ローテーターと呼ばれる他科に属することを決めた研修医が麻酔科で研修を受ける機会があった。厚生労働省の新しい医師臨床研修制度(通称スーパーローテート方式)では、併せて12ヶ月必修の3つの診療科(内科、外科、救急部門)のうち、救急部門の1つとして麻酔科が含まれた[63]。新方式の研修医は、特に麻酔科でスーパーローテーターと呼ばれる。
あるコンサルタントによると病院経営側で予定手術と緊急手術のバランスを考慮することがアドバイスされている[39]。
麻酔科医を主人公としたドラマとして風のガーデン、漫画として麻酔科医ハナ、小説として破裂、「麻酔科医」[64]があり、麻酔科医が重要な役割を演じるドラマとして外科医有森冴子、振り返れば奴がいる、漫画として最上の命医、小説・ドラマとして麻酔 (小説) 、チーム・バチスタの栄光、漫画・ドラマとしてゴッドハンド輝、医龍、K2 (漫画)がある。麻酔科医ハナの主人公である華岡ハナコの姓は、世界で最初に全身麻酔を行った華岡青洲に由来し、同作品の監修者松本克平 (医師)は麻酔科医である。研修医に麻酔科の任務の重要性をイメージさせるために、同作品を紹介した例がある[65]。ゴッドハンド輝に登場する麻酔科医のモデルは実在の麻酔科指導医である。麻酔科医が登場する作品が考察を含めて学会誌で紹介されたことがある[44]。
歯科医師の麻酔技能を医科麻酔科で研修を受けることで向上させる「歯科医師の医科麻酔科研修」が実施されている[66][67]。これら歯科麻酔科医は、全身管理を含む歯科治療(インプラントなど)、全身麻酔による歯科治療(障害者など)のための麻酔を行うが、医科の麻酔科医として働くことは法で禁止されている。この他歯科との関係としては歯科医師過剰問題にまつわり、歯科医師によって麻酔科医の不足を補おうと真剣に議論された時期があった[68]。歴史的にも歯科手術の際の麻酔は、虫歯以外に疾患のない健常者が麻酔を受ける機会として大きなテーマであり、麻酔科学の成立に大きな影響を与えた[69]。
日本の麻酔関連の学会として、日本麻酔科学会[70]、日本臨床麻酔学会[71]、日本小児麻酔学会[72]、日本心臓血管麻酔学会[73]などがある[74]。また、国際的な学会としてIARS[75]とそれが主催するEBMに特化したサイトOpenAnesthesia.org[76]がある。米国の学会としてASA[77]がある。
先進国での麻酔科医制度は類似しているが、日本は人口当たりの麻酔科医の数が極端に少ない。日本は総合的にみて、類似した制度の上で、異なった診療報酬を課している。各国の診療報酬制度の仕組みは複雑で比較が困難であるが、日本は手術現場での負担を診療報酬に反映しにくい仕組みになっている。その結果、多くの場合、麻酔科医に負担が掛かる傾向にある。
先に述べた米国のNurse Anesthetistは、米国では麻酔科医よりも先んじて制度化された歴史がある。
米国での麻酔科医は、麻酔学を専門とすることを選んだ内科医[78]である。彼らはまず4年制大学で、医学部進学課程を含む学部課程を修了しなければならない。次いで他の内科医同様、4年制の医学部課程を修了しなければならない。さらに米国での内科医研修には例外なく4年間の専門医学実習生訓練(通常は内科もしくは外科に関する1年間の全般的な訓練、次いで3年間の臨床的な麻酔訓練)が必須であり、最終的に麻酔の専門性を証明する専門医認定の資格を得る必要がある。合計すると、麻酔を専門とする内科医は高校卒業後、専門医認定を受けるまでに12年間の教育と訓練を全うしなければならない。
麻酔科医の専門医学実習は、手術にまつわるあらゆる面にわたっている。例えば手術前の薬品評価、患者の既往症への対処、手術中の生命維持、手術中の疼痛管理、手術後の回復、集中治療、慢性的な激しい疼痛の軽減、が挙げられる。研修の後、多くの麻酔科医はさらに1年間、疼痛管理、心臓麻酔、小児麻酔、神経麻酔、分娩麻酔、救命救急医療といった分野でさらに専門的な訓練を受けるため、研究員 (fellowship) としての期間を持つ。
米国の麻酔科医の大多数は、何らかの専門医認定機関で専門医認定を受けている。具体的には、American Board of Anesthesiology (ABA) と American Osteopathic Board of Anesthesiology (AOBA) である。ABA は米国専門医認定機構(英語版)に加盟しているが、AOBA は米国整骨医協会(英語版)の後援によるものである。両者とも、主だった保険業者および軍から認定されている。ABA の専門医認定では筆記試験と口頭試験が行われる。AOBA も同様だが、手術室での実際の麻酔処置を内科医の試験官が採点する実地試験も加わる。
医療行為を実施する資格を得たのち、麻酔科医になろうとする内科医は5年間の研修を受け、専門医認定試験を受けなければならない。この間、その内科医は選択した分野のあらゆる面について教育を受けることになる。それには通常、順番に手術室で勤務し、あらゆる外科的処置(例えば腹腔外科、脳神経外科、泌尿器科、産婦人科に関する処置)について様々な患者へ麻酔を施すことが含まれる。次いで、様々な集中治療施設と中間看護施設を順番に経験していく。この研修期間中、多くの内科医は救急医療の課程を選んで修了する。これを修了すると救急隊の内科医 (de:Notarzt) として、自身で、あるいはコ・メディカルの助けを得て、患者を自宅や事故現場で治療することができる。
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