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サルコイドーシス (英: sarcoidosis) とは、原因不明の類上皮非乾酪性肉芽腫を認める疾患である。多発・多臓器にわたることがある。
サルコイドーシスは、肺、リンパ節、皮膚、眼、心臓、筋肉など全身諸臓器に乾酪壊死を認めない類上皮細胞肉芽腫が形成される全身性の肉芽腫性疾患である。Th1関与の過敏性免疫反応が関与すると考えられているが、1869年本症の皮膚病変が英国の内科医ジョナサン・ユッチンソン(英語版)らによって報告されて以来原因はなお不明である。典型的には若年女性に好発し、肺門部リンパ節腫脹および肺野病変、皮膚、関節および眼症状にて初発することが多く、約90%が肺病変を形成するといわれている。
本症の病因としては疾患の感受性のある宿主が環境中の何らかの抗原物質(起因体)に暴露されて誘導されるTh1タイプの過敏性免疫反応に起因すると考えられている。グラム陽性の嫌気性細菌であるアクネ桿菌(英語版) が起因体という説があるが、どこにでもある種々の環境刺激に対して、免疫反応が起きたとする報告もある。ストレス等が遠因だが、詳細は不明である。常在菌による感染を起因体とする根拠のひとつにミノサイクリンの長期投与で皮膚サルコイドーシスが寛解したという報告がある。サルコイドーシスの免疫病態は、活性化したマクロファージとT細胞の集積であり、結果は肉芽腫の形成である。TNF-αは肉芽腫の形成において重要な役割を担っており、サルコイドーシスでの発現亢進が報告されている。またサルコイドーシスではマクロファージの活性化にCD4陽性T細胞で産出されるIFN-γが重要な役割を発揮する。
日本の有病率は人口10万人当たり7.5~9.3で、罹患率は平均0.7である。女性に好発する傾向がある。アメリカでの人口10万人あたりの有病率は男性5.9、女性で6.3である。 好発年齢は40歳以下の成人に好発し20 - 30代にピークがある。スカンジナビア諸国と日本では50 - 60代の女性に発生率の第2のピークがあり2峰性を示す。地域別に見ると、北部が南部と比較して発症者数が多い傾向がある。
サルコイドーシスの病理は多彩であるが、リンパ組織や肺に多い肉芽腫性病変、全身性の微小血管炎(ミクロアンギオパチー)が多いとされている。肉芽腫性病変は肺の場合はリンパ管に沿うように間質に分布することが多いが、その癒合性、局在部位、臓器特異性によって様々な形態像をとる。非乾酪性肉芽腫を形成する異物型巨細胞の細胞質に星状(英: asteroid)小体やシャウマン(英: Shaumann)小体がみられることがあるが、本症に特異的ではない(結核、ベリリウム症でも認められる)。肉芽腫性の病変の大部分は自然退縮するが、硝子化として残存したり、少数例では繊維化へ進展する。ミクロアンギオパチーは肉芽腫が血管壁を侵襲し、血管壁の構造破壊によっておこると考えられている。病理学的な検討によると血管壁の肉芽腫の分布は分節的であり外膜から中膜にかけての分布が多いとされている。
肉芽腫による血管壁の構成成分の破壊がみられるものをもって定義される。本症では肺、眼、脳、神経などで認められる。剖検肺では弾性型肺動脈から小葉間静脈まで様々なレベル(ほとんどすべてのレベル)で肉芽腫が認められる。ミクロアンギオパチーとの共存も認められる。病理学的には静脈侵襲が目立ち、肉芽腫の分布は分節的で血管外膜から中膜にかけて多く分布する。好中球浸潤やフィブリノイド壊死は認められない。巨細胞は星状(asteroid)小体やシャウマン(Shaumann)小体など細胞内封入体を有することがある。肉芽腫の中心部は主にCD4陽性のリンパ球で構成され、辺縁部はCD8陽性細胞で構成される。
もともとは眼底における細動脈の狭小化、白鞘化、静脈周囲炎、細動脈拡張などの変化に付けられた名称。その後、全身の微小血管変化に用いられるようになった。類上皮細胞やマクロファージから分泌される内皮細胞増殖因子の関与も疑われる。病理学的には電子顕微鏡像で骨格筋、網膜血管、気管支粘膜、心筋、あるいは皮膚等における毛細血管や細静脈に内皮細胞の核の濃縮、変性、基底膜の多層化を特徴とする。
サルコイドーシスの肉芽腫は多くの場合、自然消退するが、中には硝子化、線維化へ進展するものがある。消退の過程においては類上皮細胞が消失し、巨細胞が線維化の中に残ることが多い。
サルコイドーシスの臨床所見、自然経過、予後は極めて多彩である。サルコイドーシスの症例の多く(28~70%)は自然治癒するとされている。その場合は2年以内に病変が消失する。予後不良因子としてはlupus pernio、慢性ブドウ膜炎、40歳以降の発症、慢性高カルシウム血症、腎石灰化症、黒色人種、進行性肺サルコイドーシス、鼻粘膜病変、嚢胞性骨病変、神経サルコイドーシス、心筋病変、慢性呼吸不全とされている。1~5%が本症のサルコイドーシスの病変で死亡し、典型的には進行性の呼吸不全、中枢神経系や心臓病変によるものである。日本においてはサルコイドーシスによる死亡の77%が心筋病変によるものであるがアメリカでは13~50%であり肺病変による死亡が多い。
サルコイドーシスの診断で重要な点としては、以下の4つの目標の達成を目指すことである。それは、サルコイドーシスの組織学的確認をすること、臓器病変の広がりとその程度を評価すること。病態が安定しているか進行性かを評価すること、治療が患者に利益を与えるかを評価することである。
サルコイドーシスの臨床所見、自然経過、予後は極めて多様である。サルコイドーシス全体では60%以上に近い症例で自然寛解が得られるが30%程度の症例で慢性、ないし進行性の経過をとる。サルコイドーシスが死因となるのは患者の5%以下であり、死因は進行性の呼吸不全、中枢神経病変や心臓病変によるものである。「ATS/ERS/WASOGによるサルコイドーシスに関するステートメント」によると、心臓病変、中枢神経病変、治療抵抗性の眼病変、高カルシウム血症を認めた場合は積極的な治療適応があるとしている。治療はステロイドが一般的である。心臓や中枢神経に病変が及んだ例や、肺線維症を起こしてしまった場合は予後が悪い。
びまん性浸潤型皮膚サルコイドーシス(Lupus pernio)[1] や神経サルコイドーシスに抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)が有用であると報告されている。[2]またサリドマイドの有効性も注目されている。
サルコイドーシスは経過中に90~95%に肺実質病変を伴うことが知られている。日本の本症の特徴としては50~70%が胸郭内病変で発見されている。近年は眼症状主とする例が増加傾向である。無症候性の両側肺門リンパ節腫脹(BHL)などで健康診断で指摘される場合が多い。進行例では乾性咳嗽、労作時呼吸困難などが認められ肺の線維化が認められる場合もある。本症の約2/3の症例に自然寛解認められるが10~30%の症例では慢性または進行性に経過する。発症年齢が40歳以上、肺外病変の存在、lupus prernioを予後不良因子とする報告も存在するが、肺サルコイドーシスの活動性指標は予後因子とはならないことが知られている。病理学的にはサルコイドーシスの類上皮細胞肉芽腫は、通常、気管支・血管束、小葉間隔壁、胸膜下リンパ流路に沿って分布する。肉芽腫の分布は両側性で上葉に著しい。基本的には0.2mm程度の大きさの肉芽腫であり、これらが融合し塊状陰影や線維化を形成すると考えられている。画像上は広義寒湿病変のパターンをとり、進行例では上葉に肺線維症の初見を示すことがある。肺のみにならず多臓器に発達した肉芽腫は70%以上自然退縮するが、一部の進行例は線維化と蜂窩肺形成する。そのためKL-6は進行例の活動性マーカーとされている。胸部X線撮影のBHLと肺野病変の有無によって5つのstageが存在する。ACCESSでは各病気の頻度としてはⅠ期39.7%、Ⅱ期36.7%、Ⅲ期9.8%、Ⅳ期5.4%と報告されている。 ステロイドは短期的に病変の消失、縮小には寄与するものの、長期的な有効性は明らかになっていない。Ⅱ期、Ⅲ期において自覚症状、呼吸症状が認められる場合に使用は検討される。
胸部X線像病期 | 内容 |
---|---|
stage 0 | 正常な胸部X線像 |
stage Ⅰ | 両側肺門リンパ節腫大 |
stage Ⅱ | 両側肺門リンパ節腫大+肺陰影 |
stage Ⅲ | 肺陰影のみ(両側肺門リンパ節腫大なし) |
stage Ⅳ | 肺線維 |
胸部X線写真の所見はサルコイドーシスの予後指針となることが知られている。stageⅠの場合は胸部X線写真所見は通常、自然に改善ないし安定化する。肺門リンパ節腫大の持続は、活動性病変が続いていることを意味するわけではなく治療が必要とはならない。自然寛解は16~39%の症例で発症後6~12ヶ月の間で認められている。自然寛解の85%以上は発症後2年以内に起こっている。自然寛解したものないし、安定化したもので、後に再燃が認められたものはわずかに2~8%程度である。2年以内に自然消退しない場合は、慢性ないし持続性の経過を予告する。よって肺サルコイドーシスの長期観察は発症後2年間に最も集中的に行われるべきものである。stage Ⅰでは6ヶ月毎、stageⅡ~Ⅳでは3~6ヶ月とより頻回の評価が必要である。治療を行った場合は治療後最低3年間は追跡をする。また持続性のstage Ⅱ~Ⅳでは少なくとも数年ごとに無期限に追跡をするべきとされている。重症の肺外病変がある場合も長期追跡が必要である。
病理学的には発症1年以内の症例で画像所見の有無にかかわらず95%で肺に肉芽腫が認められ、その率はより経過が長い例では50%以下である。そのためサルコイドーシス確定診断のために肺病変の検出が試みられることがある。経気管支肺生検(TBLB)、気管支粘膜生検(EBB)、縦隔リンパ節の経気管支吸引肺生検(TBNA)、気管支肺胞洗浄(BAL)などが用いられる。気管支拡張症を伴い、アスペルギローマを合併する場合はイトラコナゾールが使用される場合がある。
TBLBで4ないし5個の肺生検を行えば診断率は40~90%である。
殆ど侵襲なしに終末細気管支、肺胞領域からの細胞、吸入粉塵、病原物質、液体成分を採取できる。サルコイドーシスのようなびまん性肺疾患の場合はBALは中葉から行われる。サルコイドーシスにおいては多くの場合、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の総細胞数、リンパ球比率、CD4/CD8比が増加する。総細胞数やリンパ球比率の上昇は種々のびまん性肺疾患で観察されるが、CD4/CD8比の上昇が加わった場合はサルコイドーシスを疑う大きな根拠となる。BALF中のCD4/CD8比が3.5以上に上昇すればサルコイドーシス診断の感度は52%、特異度は94%であり、CD4/CD8比が5.0では特異度97%となり生検しなくともサルコイドーシスと診断できるという報告がある。そのため生検されていない症例では診断の補助となると考えられている。ただし、感度は低いためBALFが正常であってもサルコイドーシスは否定できない。なお、BALFは喫煙の影響を受け、喫煙によって総細胞数は3~4倍に増加し、マクロファージの比率が増加し、リンパ球比率が低下する。CD4/CD8比も低下するとされている。
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サルコイドーシスの約50%に眼病変が生じるとされておりその多くはぶどう膜炎と呼ばれる眼内炎症疾患である。ぶどう膜炎の原因疾患はかつてはベーチェット病が最も多かったが近年はサルコイドーシスが最も多い疾患となっている。眼サルコイドーシスは非特異的な眼内炎症病変の他に特徴的な眼病変が混在している。サルコイドーシスの診断基準では、前部ぶどう膜炎、隅角結節、周辺部虹彩前癒着、硝子体混濁、網膜周囲血管炎、網脈絡膜滲出斑および結節、網脈絡膜広範囲萎縮病変などが特徴的な所見とされている。サルコイドーシスでは長期にわたる慢性の眼内炎症によって白内障、緑内障、嚢胞様黄斑浮腫、黄斑上膜などの視力の低下につながる重篤な眼合併症を生じることがある。白内障はサルコイドーシスの約半数に認められる。緑内障は約20~30%に認められる。眼圧の上昇機転は隅角結節による房水流出障害、テント上PASによる房水流出障害、ステロイドの副作用などがある。隅角結節による眼圧の上昇はステロイドが有効である。
前部ぶどう膜炎は虹彩あるいは毛様体などの前眼部に生じた炎症をいう。前房水中に炎症細胞浸潤が認められれば前部ぶどう膜炎と診断される。サルコイドーシス、ベーチェット病、vogt-小柳-原田病など殆どすべてのぶどう膜炎で見られる非特異的な眼病変である。
豚脂様角膜後面沈着物や虹彩結節が認められる前部ぶどう膜炎を肉芽腫性前部ぶどう膜といい、サルコイドーシスに特異的と考えられている。ベーチェット病など非肉芽腫性血管炎では角膜後面沈着物は炎症細胞びまん性に沈着するがサルコイドーシスの場合は炎症細胞が集簇し、大型の角膜後面沈着物を形成する。これを豚脂様角膜後面沈着物という。虹彩結節は虹彩に生じる肉芽腫であり、瞳孔縁のKoeppe結節や虹彩実質のBusacca結節が知られ、特異度の高い所見とされている。
虹彩と角膜が合わさる部分である前房隅角を隅角鏡で観察する。線維柱帯に隅角結節(肉芽腫)やテント上虹彩前癒着(肉芽腫の瘢痕)が認められることがある。
ぶどう膜炎では炎症細胞が硝子体に浸潤し硝子体混濁を起こす。非肉芽腫性ぶどう膜炎ではびまん性の硝子体混濁となるが、サルコイドーシスでは硝子体中に類上皮性肉芽腫を形成することで数珠状の硝子体混濁が起こる。
ぶどう膜炎では炎症細胞が網膜や脈絡膜に滲出する結果、眼底の白斑あるいは滲出斑と呼ばれる病変が出現する。白斑、滲出斑、出血が黄斑部に及ぶと高度の視力低下の原因となる。これはベーチェット病、結核、交感性眼炎、サイトメガロ網膜症などでも認められる非特異的病変である。
ぶどう膜炎の網膜血管炎はいくつかのパターンが知られている。ヘルペスウイルスによる急性網膜壊死では動脈炎が主体、サルコイドーシスや結核では静脈炎が主体、ベーチェット病では動脈、静脈が同様に広範囲に障害され、vogt-小柳-原田病では網膜血管炎は認められない。サルコイドーシスの静脈周囲炎は網膜静脈に沿って結節状の白色浸潤が所々に生じる。この竹の節状の網膜静脈周囲炎はサルコイドーシスに特異的と考えられている。
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神経症状は全サルコイドーシスの5%程の認められる比較的な稀な合併症である。神経サルコイドーシスのおよそ50%は神経症状を初発とするため、診断が難渋することが多い。長期観察では90%は神経系以外の臨床症状を示すことが報告されている。剖検例では10 - 25%程の無症候性サルコイドーシスが認められ、近年は全身症状に欠く、英語: isolated sarcoidosisも認められ、頻度は上昇している。血管壁と軟膜が神経サルコイドーシスの初発と考えられている。病変の進展メカニズムとしては軟膜や血管壁の肉芽腫によって、BBBの破壊が起ることで血管周囲腔(Virchow-Robin腔(英語版))に肉芽腫が侵入し、血管周囲腔に沿って脳実質に進展していくと考えられている。血管周囲腔が脳底部で特に大きいため、視床下部、第三脳室、視神経、脳幹から出る脳神経(特に顔面神経)が障害されやすいと考えられている。その過程や肉芽腫性血管炎によって虚血性変化、梗塞も起ると考えられている。
PSL60mg/dayで開始し6か月で20mg/dayまで減量し、その後20mg/dayで2年間維持するという方法はよくとられるが、これは多くの施設で20mg前後で再発を起こしているという経験に基づくものである。2年間安定していれば5mgごと慎重に減量し、全投与を4年程度とするのが一般的である。ステロイドによる反応が十分でない場合、ステロイドの副作用により治療継続困難な場合はシクロフォスファミド、メソトレキセート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルなどが用いられる。しかし神経サルコイドーシスにおいては免疫抑制剤の使用に関しても比較論文は存在しない。治療効果が予測できないため免疫抑制剤は複数使用してから免疫抑制剤耐性と考えるべきとの意見もある。しかし神経病変の場合は他の臓器よりも不可逆的な変化が短い期間で生じやすく、治療抵抗性、遷延性と判断するタイミングが早い傾向がある(神経学会では3か月から1年以上で遷延性とすることが多いが日本サルコイドーシス学会では1年から5年以上で遷延性とすることが多い)。治療抵抗性の場合はエンドキサンパルス療法、インフリキシマブ療法、サリドマイド療法が用いられることもある。
サルコイドーシス患者における心臓病変の頻度は5~10%程度とされている。サルコイドーシス剖検例の20~27%に心サルコイドーシスが認められ生前の診断率は40~50%程度である。心サルコイドーシスと診断されていない患者をサルコイドーシスの患者も精査をすると40~50%程度心サルコイドーシスの診断をうけるなど、高齢の日本人女性の場合は80%程度合併するなど頻度に関してはばらつきが多い。 心サルコイドーシスはサルコイドーシスによる死因としては上位となる合併症である。重症心不全や致死的不整脈の原因となる。不整脈では脚ブロックや房室ブロックから洞不全症候群などの致死性不整脈まで進行することもある。
心筋生検では乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫をはじめ、ラングハンス型巨細胞(星芒小体やSchaumann小体をもつ)、異物型巨細胞やリンパ球浸潤が認められる。心筋内に散在性に病変が認められるためサンプリングエラーが生じやすい。電子顕微鏡では心筋内毛細血管の基底膜の多層化が認められ、ミクロアンギオパチーの機序による病態も提唱されているが、この所見は糖尿病でも認められサルコイドーシスに特異的ではない。診断には心電図、ホルター心電図、シンチグラフィ、MRI、心臓カテーテル、心筋生検、PETなどを用いるが、示す病像が病期や重症度に応じて多岐に及ぶため診断は容易ではない。サルコイドーシス関連心不全を呈する患者の心臓は拡張型心筋症(DCM)を呈するのが一般的であり、日本では特発性DCMの5年生存率が64%である一方で心サルコイドーシスの5年生存率は37%である。 2006年に改訂されたサルコイドーシスの診断基準と診断手引では心臓サルコイドーシスに比較的特徴的である完全房室ブロック、心室中隔基部の菲薄化、心臓へのガリウムの異常集積、左室収縮不全が主徴候とされ、新たに造影MRIの遅延増強所見が加えられた。遅延増強効果は活動性炎症部位の評価やステロイド治療の効果判定にも有効である。 心サルコイドーシスのステロイド全身投与の適応は、高度房室ブロック、心室頻拍などの重症心室不整脈、局所壁異常運動、あるいはポンプ失調とされている。その治療効果は房室ブロックでは伝導障害が改善し正常化する例があり、低心機能例では収縮能は改善しないまでもそれ以上に悪化しない例が多い。また低収縮に至る前に治療を行った場合は改善する例も知られている。ステロイドの投与量は30mg/dayまたは60mg/2dayが推奨されている。4週間投与したのち、2~4週間毎に漸減していくことが多い。ステロイドの中止に関しては明確な規定は存在しないが最終的に10mg/day程度での維持療法を行う場合が多い。重症不整脈に関してはペースメーカー、カテーテルアブレーション、植え込み型除細動器などが知られている。
サルコイドーシスの皮膚病変は10~30%程度であり、胸郭内病変、リンパ節病変、眼病変に次ぐ。発見契機となる自覚症状としては眼病変ついで二番目に多い。生検が行い易いという点で重要である。日本では福代の分類に従って記載される。組織学的特徴を加味した分類であり、結節性紅斑、瘢痕浸潤、皮膚サルコイドに大別される。皮膚サルコイドはさらに結節型、局面型、びまん浸潤型、皮下型、その他のまれな病型に分類される。皮膚サルコイドの中では結節型が最も多く、局面型、皮下型がそれにつぐ。結節型、局面型ともに顔面に好発し、皮下型は四肢に多発する。組織像は類上皮細胞が種々の大きさの肉芽腫を形成する。肉芽腫の大きさ分布は病型によって異なる。皮膚病変の治療の原則はステロイド外用である。strong以下の外用薬は著効しない。ミノサイクリンの長期投与で皮膚サルコイドーシスが寛解したという報告がある。
結節性紅斑は肉芽腫を認めない非特異的病変である。発赤を伴う有痛性の皮下硬結が両側下腿伸側に多発する病変である。初期には好中球浸潤、後期には多核巨細胞が認められることがあるが肉芽腫は認められない。
肉芽腫と共に異物が証明されるものである。陳旧性の瘢痕に肉芽腫反応が認められる。紅褐色の丘疹、結節、あるいはそれらが癒合した病変であることが多い。外傷を受けやすい、膝蓋、肘、顔面に好発する。組織学的には類上皮細胞性肉芽腫に加えて偏光顕微鏡で病変部に重屈折性を示す異物が認められる。
肉芽腫を認めサルコイドーシスに特異的な病変である。結節型、局面型、びまん浸潤型、皮下型、その他のまれな病型に分類される。
隆起型の病変であり皮膚サルコイドの中で最も頻度が高い。紅色の丘疹、結節で、鱗屑や血管拡張を伴うことが多い。顔面、四肢に好発するが顔面では鼻周囲に生じることが多い。組織像では真皮全層に大型の結節が認められる。
水平方向に伸展する病型であり環状の形態を示す場合と斑状の病変とがある。環状病変が多い。環状病変は辺縁がやや堤防上に隆起し、中央部は正常皮膚色でやや萎縮性である。種々の大きさを示し手掌大になることもある。前額部に好発し多発する傾向がある。心サルコイドーシスの合併率が他の皮膚病変に比べて大きい。組織像は真皮上層に比較的小さな肉芽腫が認められる。
lupus pernioに相当する病変である。組織像は肉芽腫は小型で真皮全層に散在し血管拡張を伴う。遷延し自然寛解は稀である。
皮下の弾性硬の結節、硬結であり表面の皮膚は通常皮膚色である。多発傾向で四肢に好発する。組織像は皮下脂肪組織中に局在する。まれに顕著な壊死が認められることがある。
筋サルコイドーシスは無症候性病変が多い。無作為に筋生検を行うと50~80%に類上皮肉芽腫が認められるとされている。症候性は1.4~2.3%と少ない。症候性は腫瘤型(急性、亜急性)とミオパチー型(慢性)に分かれる。末梢性ニューロパチーを合併することもあり、その多くは軸索障害であるが、脱髄の報告もある。慢性ミオパチー型では筋ジストロフィーや皮膚筋炎に類似しびまん性の筋力低下や筋萎縮が認められる。腫瘤の画像所見としてはT2強調画像、T1強調画像どちらでも周辺が高信号、中心が低信号を示す。Gd増強効果が周辺部に認められる。ミオパチーではこのような特徴はなく、炎症性ミオパチーと同様の所見となる。病理では肉芽腫が血管周囲に形成され肉芽腫性血管炎やミクロアンギオパチーが認められる。慢性ミオパチーの20%は腫瘤型で発生しており、腫瘤型は経過観察してよいのかという意見もある。腫瘤型筋サルコイドーシスはPSL30~40mg開始し徐々に漸減で軽快するがPSL減量や中止にともなって再燃する例も知られている。どの時点で治療を開始し、中止するのか明確になっていない。
腹腔鏡・肝生検では約80%の高頻度で潜在性の肉芽腫性病変が認められる。腹部CTでは転移性肝悪性腫瘍を疑わせる多発性結節性低吸収域として認められる。生化学所見や臨床所見で肝病変の証拠があっても生検の適応になることは稀である。
潜在性の脾病変は38~77%で認められる。CTでは多発性低吸収域や形態異常を示す。
サルコイドーシスに高カルシウム血症が高頻度に合併することは副くから知られている。サルコイドーシスや結核では肺胞マクロファージや肉芽腫の類上皮細胞がビタミンD-1α水酸化酵素を産出し、1.25(OH)2Dが過剰に変換、産出される結果、高カルシウム血症が起こる。この場合はPTH支配は受けずにIFNγによって産出は亢進され、ステロイドによって抑制される。すなわち、ステロイド治療によって改善する。サルコイド肉芽腫自体が内分泌器として働いているといえる。PTHrpとの関連は不明な点が多い。
間脳-脳下垂体系は神経系との接点であ、中枢神経病変としてもサルコイド肉芽腫がよく見られる部位である。血管壁や血管周囲に肉芽腫が形成される。
サルコイドーシスでは高カルシウム血症による腎障害、尿細管間質性腎炎、肉芽腫性間質性腎炎、糸球体腎炎、腎血管炎がまれに起こる。
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特徴 | 癌腫 carcinoma |
肉腫 sarcoma |
由来 | 上皮 | 間葉系組織 |
良悪性 | 悪性 | 悪性 |
発生頻度 | 比較的多い | 稀 |
転移形式 | 多くがリンパ行性 | 多くが血行性 |
in situ時期 上皮内癌 粘膜内癌 |
有り | 無し |
年齢 | 老人・中年(50歳以上) | 若年・壮年(50歳以下) |
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