出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/10/22 16:26:36」(JST)
電荷密度(でんかみつど、charge density)は、単位体積当たりの電荷の分布量(体積密度)。電荷を担うものとしては電子や原子核、イオンのような粒子(素粒子や正孔などを含む)であったり、仮想的に一様に分布する電荷のような場合(→参照:ジェリウムモデル)もある。
実験的にはX線回折実験による構造解析から得られた結果を最大エントロピー法などを使って実空間での電子の電荷分布(→電子密度に相当)が求まる。また中性子回折実験の結果から同様な手法により原子核の密度が求まる。
バンド計算では通常、電荷密度とは電子の密度のことを示す。従って、この場合は電子密度(electron density)とも言う。電子以外の電荷(例えばイオンなど)に対しても "電荷密度" の表記を用いることがあるので注意が必要。
バンド計算では、実空間での電荷密度 ρ(r) は波動関数 ψi,k(r) のノルムを取ることにより求められる:
i, k はそれぞれバンドとk点の指標。fi,k は、各 k 点上の各バンドでの電子の占有数。なお、バンド計算では普通原子単位を用いるので素電荷は、e2 = 1(ハートリー原子単位の場合)としている。ここで占有数は、N を系の全電子数とすると
となる。バンド計算において波動関数は規格化されており、占有数 fi,k は非整数となる場合がある。
実空間の電荷密度をフーリエ変換したものは、
(i は虚数単位)であり、上式左辺の ρ(G) は構造因子と言われるが、このことを逆空間表示での電荷密度と言う場合もある。
実空間の波動関数をフーリエ変換して(指標 i, k は省略、V:系の体積)、
を得る。ψ(G) は逆格子空間(運動量空間)での波動関数であり、これのノルムをとると、
となり、上式左辺の P(G) は逆格子空間での電荷密度と言えるが、通常は運動量密度(momentum density)と呼ばれる。
運動量密度は、コンプトン散乱や電子‐陽電子消滅実験などの実験によって観測される量で、対象が金属(含む半金属)の場合、フェルミ面の情報を含んでいる。
自由電子の場合の運動量密度 ρ(P) は、自由電子の実空間(3次元)での波動関数 ψ が平面波
であるから、
となり(体積は省略)、
を得る(fk はフェルミ分布関数←電荷密度での占有数と表記が類似するが異なるものである)。実際は、2次元ないし 1次元表示したものが実験による観測結果と比較される。
以上から、3次元での自由電子の運動量密度の2次元表示は半球状、1次元表示は放物線となる。実際に観測されるものは、アルカリ金属のような価電子が自由電子的であるような場合を除いて自由電子のものとは大分異なった形状になることが多い。
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