出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/09/13 15:52:03」(JST)
電池(でんち)は、何らかのエネルギーによって直流の電力を生み出す電力機器である。化学反応によって電気を作る「化学電池」と、熱や光といった物理エネルギーから電気を作る「物理電池」の2種類に大別される。
「化学電池」は、物質自身が持つ化学的なエネルギーを化学反応によって直流の電力に変換する電池である。 以下に化学電池の分類を示す。
一次電池は、放電と呼ばれる化学エネルギーを電気エネルギーに一方向に変換することのみが一度だけ可能な電池である。一次電池の内、電解質を不織布(セパレーター)に染み込ませるなどの処理をして固体化したものは、一般に乾電池と呼ばれる。電池残量計測器ではかれる物もある。
二次電池は、放電過程では内部の化学エネルギーが電気エネルギーに変換されるが、放電時とは逆方向に電流を流すことで、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して「充電」という蓄積が可能な電池であり、一般には「蓄電池」や「充電式電池」と呼ばれる。
燃料電池は、メタノールや天然ガス、水素などの燃料から触媒を用いて発電を行う発電装置である。反応に高温を必要とするものが多い。使用する電解質や燃料の種類により以下の5種類に分類される。
生物活動の結果得られる化学エネルギーを利用した電池。バイオ電池。
化学電池の中でも一次電池と二次電池では共通する基本構成を持っている。また、燃料電池についても概略においては化学電池と共通する部分が多い。生物電池はこれらとはまったく異なる。
上記の要素全般は、安価で軽量、加工性・生産性が良く、環境汚染を起こさないリサイクルに向いた材料が求められる。
化学電池は2つの電極の活物質の電位差によって起電力が生じる[3]。各々の活物質はその物質の濃度や温度などで電極電位が変わるが、標準的な状態での電極電位はそれぞれ一定の値であることが知られている。標準的な状態での電極電位を下表で示す。標準的な状態とは25℃での活量1での値となる。活量が1とは、物質の濃度を示しており、固体と液体はそのまま全量、気体は1気圧であり、溶質はモル濃度が活量にあたる。濃度や温度による電極電位の変動量はネルンストの式によって算出できる[4]。
負極 | 電極電位(V) | 正極 | 電極電位(V) | |
---|---|---|---|---|
Li+/Li | -3.040 | Cu2+/Cu | 0.347 | |
Zn2+/Zn | -0.763 | Fe3+/Fe2+ | 0.771 | |
Cd2+/Cd | -0.403 | Br3-/Br- | 1.087 | |
Pb2+/Pb | -0.126 | O2/H2O | 1.229 | |
CdSO4/Pb | -0.355 | Ce4+/Se3+ | 1.61 | |
H+/H2 | -0.000 | PbO2/PbSO4 | 1.685 | |
H2SO3/CH3OH | 0.044 | MnO2/MnOOH | 0.15 | |
ZnSO22-/Zn | -1.22 | Ag2O/Ag | 0.342 | |
H2/OH- | -0.828 | O2/OH- | 0.342 | |
Cd(OH)2/Cd | -0.825 | NiOOH/Ni(OH)2 | 0.49 |
電池に何も接続されていない状態での端子電圧が「起電力」であり、電池が外部の回路に接続されて電流が流れると起電力より端子電圧が低くなる。この現象が「分極」であり、低くなった分の電圧は「過電圧」と呼ばれる。過電圧は内部抵抗とも呼ばれ、流れる電流に応じて増大することで端子電圧は低下する。過電圧は以下の3つから構成される[5]。
電池の端子電圧は使用温度や接続先の抵抗値とそれによる電流値が不明であるため、仮に製造誤差などに起因する製品ごとのバラツキが無くても、厳密には起電力や過電圧は定まらないが、電池の使用環境を想定した上で目安として「公称電圧」を定めている。端子電圧は使用温度や流れる電流の他に、電池の残量によっても変化する。
電池が供給可能な電力の総量をその電池の「容量」と呼ぶ。基本的に電池の容量は活物質の種類と量に従い、「1グラム当量の物質が析出するのに要する電気量は、物質の種類によらず一定(=ファラデー定数=約96,500 C/mol)である」というファラデーの電気分解の法則によって決まる。 グラム当量とは、1mol分の質量、つまり原子量の数に等しい数値を、1つの原子あたり反応に関与する電子の量、つまり原子価で割った値を指す。マンガンの例では、原子量が約54.9であり、電池で用いられる場合には原子価は一般に2価であるので、54.9/2=27.45程度になる。同様に亜鉛では32.7ほどになる。これらのことから、マンガン27.45gや亜鉛32.7gを完全に電気分解すると約96,500クーロンの電荷が生じると計算される。
1クーロンの電荷量とは、1秒間に1Aの電流が流れる電荷を指すため、96,500クーロン分であれば1時間当たりでは3600で割ると 26.8Aになる。電池内での化学反応は電気分解の逆であるが、電荷量は正負が反転する他は同様の計算が用いられ、このように活物質の種類と量に応じて容量の限界値が定まる。また、化学反応は常に理想的な状態下で全ての反応が行われるとは限らず、実際は反応せずに残る物質もあるなど計算上の能力と差異が生じる。電池の容量は、1時間で放電し使い切ってしまう場合を想定した電流量で表示されることが一般的であり、「Ah」や「mAh」という単位が用いられる。720mAhと表記されている電池なら、720mAなら1時間、360mAなら2時間程度持続することが期待できる。
主な活物質の重量当りと体積当りの容量を以下に示す。一般に電池は軽量で小さな体積が求められるため、重量当りや体積当りの容量
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電池のエネルギー密度には「重量エネルギー密度」と「体積エネルギー密度」の2つがある。 ここでのエネルギーは〔Wh〕や〔J〕で表現されることが多く、電池のエネルギー密度は一般に〔Wh/kg〕や〔Wh/L〕で表される。実際の電池のエネルギー密度は活物質以外の構成要素も含まれることもあり、活物質だけの計算値の20-40%程度の値になる。
負極 | 電極電位(V) | 正極 | 電極電位(V) | |
---|---|---|---|---|
Li+/Li | -3.040 | Cu2+/Cu | 0.347 | |
Zn2+/Zn | -0.763 | Fe3+/Fe2+ | 0.771 |
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大電流放電特性
重量・容積
使用温度範囲、耐漏液性、保存性、サイクル寿命
「物理電池」とは、光や熱などの物理的なエネルギーを電気エネルギーに変換する電池である。 以下に物理電池の分類を示す。
「太陽電池」は、光エネルギーを直接、電気エネルギーに変換する電池であり「光電池」とも呼ばれる。
「熱電池」は、熱エネルギーを直接、電気エネルギーに変換する電池である。
「原子力電池」とは、放射性元素が原子核崩壊を起こす際に発生する原子力エネルギーを電気エネルギーに変換する電池である。
規格名についてはIEC 60086を参照のこと。
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