出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/02/17 15:05:50」(JST)
この項目では、イネ科植物について説明しています。
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芝(しば)とは、1種類あるいは数種類の芝草を人工的に群生させ、適宜刈り込みなどの管理を行い、地表面を緻密に被覆するような生育を維持させ、ある程度の広がりをもち、運動や休養や鑑賞や保安の目的に利用されるイネ科の多年草の総称である。芝草とも呼ぶ。複数の種類がある。シバ属のシバ (Zoysia japonica Steud.) という和名の植物もあり、これも芝として利用されるが、シバ属以外の植物にも芝として使われるものは多い。
また、芝草が密集して生えていて、絨毯のように一面に生えている状態を指して芝生(しばふ)と呼ぶ場合がある。
日本においては、大きく分けて日本芝と西洋芝に分けられ、そこからさらに夏型芝や冬型芝に分けられる。日本芝は夏型芝のみであるが、西洋芝は夏型と冬型の両方の種類がある。
目次
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万葉集や日本書紀の和歌に「芝」の記述が見られるものが、日本の歴史上確認されているなかでもっとも古い。ここでの芝は、おそらく自生する日本芝の一種の野芝である。一方で、平安時代に書かれた日本最古の造園書「作庭記」には、「芝をふせる」という記述が見られるために、芝が造園植物材料としてこの時代には認識されていたものと思われる。また、明治時代に入り諸外国との交流が活発化すると、各地で西洋芝が導入された。
日本芝は、日本に自生している植物である。高温多湿に適応した芝で、生育適温が23℃ - 35℃と高い。そのため、通常の管理をしていれば、日本の夏でも耐えることができる。しかし、気温が23℃以下になる11月から3月の冬季には、生育が停止し、葉に黄変が見られるようになる。日本芝は、栄養体繁殖(張芝)により繁殖させることも特徴で、その成育形態はランナーが伸びることによる節間伸張である。
西洋芝は、日本芝より多くの刈り込みを必要とすることが特徴で、3月 - 11月(成長が止まる7月と8月の夏場をのぞく)に刈り込みを必要とする。西洋芝は、病害に対する抵抗力も弱いために、農薬の散布を必要とする。このことが、西洋芝を使用したゴルフ場による環境破壊へつながっている側面もある。冬型芝は、夏の暑さを乗り切ることも難しく、病害虫の発生にも充分に気を遣わなければならない。
夏型芝は、日本芝の性質とほぼ同じである。
西洋芝(冬型芝)は、生育適温が16℃ - 24℃で1℃ - 7℃の低温まで耐えることができる。冷涼な気候を好み、日本での生育適地は北海道である。日本には明治以降に芝生の植栽材料として輸入された。もともとは牧草から転葉したイネ科植物である。繁殖は播種(種まき)により行う。生育は分げつ(株分け)で増殖する。
マット状である切芝の大きさは、生産地で異なる。鳥取県では、37.1センチメートル×30センチメートルの切芝を9枚で1束としている。静岡県では、36センチメートル×28センチメートルの切芝を10枚で1束としている。 また、屋上緑化用に、育成基盤と芝が一体となったターフマットでは、50センチメートル×50センチメートルの切芝を4枚で1束としているものや、50センチメートル×2メートルの細長い芝を巻き取りロール状としているものもある。
2009年12月の1級造園施工管理技士の実地試験で、『芝の規格を二つ挙げよ』という問題が出た。[要出典]
マット状に裁断された芝には、いくつかの張り方がある。単純に隙間なく詰める張り方はもっとも一般的であるが日本の伝統的な張り方もある。
芝生の管理には、いくつかの作業があるが、いずれも短期・長期にわたって芝生の品質に影響を与える。
公園や運動場で、見栄えのために植えたり、運動をしやすくするためのクッションとして植えられることが多い。しかし、芝へ立ち入ると芝が荒れる可能性があるので、立ち入りを禁止するかについて、しばしば議論を呼ぶ。
野球場のフィールドには、選手の膝や足にかかる負担を軽減できるため、芝が敷き詰められる。とくにメジャーリーグベースボールで使用される球場は、天然芝であることが多く、人工芝の球場は2010年現在で全30本拠地中2球場のみである。
一方、日本では、球場が屋根付きであるために天然芝を育てられないこと、さらには野球以外のコンサートなどに貸し出しされたあとの芝の保守・管理コストが安いという理由により、プロ野球で使用される球場では、圧倒的に人工芝が利用されていることが多い。天然芝を利用する本拠地球場はわずか2球場であり、さらに内外野とも天然芝を維持している球場に至っては、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島が唯一の存在である。
またメジャーリーグの球場が、ケンタッキーブルーグラスに代表される冬芝により1年を通じて常緑の状態を維持しているのに対し、日本では冬芝を夏季に維持することは気候上困難であるため、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島と阪神甲子園球場では、夏芝ティフトン419と冬芝ペレニアル・ライグラスのオーバーシード(二毛作方式)を採用している。
サッカーのJリーグへ参加するクラブには、常緑の天然芝の競技場を試合会場として用意することを義務づけられており、そのために多くの競技場でウインターオーバーシーディングが盛んに行われている。
1994年に設けられたスポーツターフ研究会は、芝生管理技術の向上に後援したり、財団法人都市緑化技術開発機構主催の「スポーツターフ管理者のための研修会」に後援したり、校庭の芝生化支援に取り組むなど、何かと芝生に対する関わりの深い組織である。
競馬のコース種別は、ダート(砂地)と芝のコースに分けられる。芝のコースはダートのコースに比べ傷みやすく、馬場の状態は天候に左右されやすい。また、今までは和芝のみで冬は黄色くなってしまうことから近年ではオーバーシードを用いて夏は和芝、冬は洋芝を生やすことによって一年中芝コースは緑色を保つようになった。日本の中央競馬ではおもにダートのコースより芝のコースの方がよく用いられるが、地方競馬ではダートのコースを多用する。
ゴルフ場のコースには、グリーンやフェアウェイやティーグラウンドやラフと呼ばれる場所がある。これらには、それぞれ違った種類の芝が植えられる。日本では1980年代後半、芝の維持のために使われる農薬が含まれたゴルフ場排水が社会問題化した。それに伴い、千葉県では、1990年以降建設されるゴルフ場では農薬の散布が禁止[3]され、既存のゴルフ場では農薬散布を少なくするなど指導要項を制定し、国としては環境省が1990年に「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」を定めるなどした。
芝生は、こまめに草刈りをしてその背丈を抑制することで維持される。これは、植物から見ると、上に伸び上がるたびに切り取られることで、大きな攪乱である。芝生を構成するものはこれに耐えられる性質を持つわけであるが、同様にそれに耐えられる雑草が侵入することもある。それらは芝生と同様に、背丈数cmで花や果実をつける姿で見られる。
普通に見かける芝生は、上記のように人工的な物であるが、自然のままで芝生が成立している例もある。日本では琉球列島の海岸線で、石灰岩の上で天然の芝生が成立している。植物社会学ではこれをイソフサギクラスの下にソナレムグラ - コウライシバ群落として認めている。より岩の多い場所ではナハエボシグサやハリツルマサキが混じる。このような物の代表的な物が万座毛で見られる。また、牧畜によって生じる二次植生としても類似の群落が見られる場合がある。
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