出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2021/05/30 18:46:23」(JST)
野菜(セリ科)の「ニンジン」とは異なります。 |
オタネニンジン | ||||||||||||||||||||||||||||||
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オタネニンジン
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Panax ginseng C.A.Mey. (1842) [3][4] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
オタネニンジン[1][2] チョウセンニンジン[3] | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Chinese ginseng[5][6][7] Korean ginseng[6][7] |
オタネニンジン(御種人蔘) は、ウコギ科の多年草[8]。原産地は中国・遼東半島から朝鮮半島にかけての地域といわれ、 中国東北部やロシア 沿海州にかけて自生する。
薬用または食用に用いられ、チョウセンニンジン(朝鮮人蔘)、コウライニンジン(高麗人蔘)、また単に人蔘とも呼ばれる[9]。なお、野菜のニンジンはセリ科であり、本種の近類種ではなく全く別の種である。
草丈は50~60cm[8]。茎は1本だけ直立し、茎頂に5出掌状複葉を輪生する[8]。葉は楕円形又は卵形で鋸歯があり先端は尖る[8]。
花は白色を帯びた淡緑色で散形花序[8]。
本種は元来「人蔘」と呼ばれ、中国、朝鮮半島、および日本では古くからよく知られた薬草だった。枝分かれした根の形が人の姿を思わせることが、その名称の由来といわれている。
10世紀前半成立の『和名類聚抄』巻20「草類」の人参の記述では、和名を「加乃仁介 久佐」(カノニケ草)と表記している[10]。
「御種人蔘」の名は、八代将軍徳川吉宗が対馬藩に命じて朝鮮半島で種と苗を入手させ、試植と栽培・結実の後で各地の大名に種子を分け与えて栽培を奨励し、これを敬って「御種人参」とよぶようになったといわれる[11]。これ以前の「人蔘」は朝鮮半島からの輸入に依存していた。
中国東北部では「棒槌」(bàngchuí、「木槌」「洗濯棒」の意)とも呼ばれる[12]。
このように「人蔘」の語は元来本種を指すものだったが、日本においては、江戸時代以降、セリ科の根菜“胡蘿蔔”[13](こらふ、現在のニンジンのこと)が舶来の野菜として知られるようになると、本種と同様に肥大化した根の部分を用いることから、これを類似視して、「せりにんじん」などと呼んだ[14]。
時代が下るにつれて“せりにんじん”は基本野菜として広く使われるようになり、名称も単に「にんじん」と呼ばれることが多くなったが、一方本種はといえば医学の西洋化につれて次第に使われなくなっていったことから、いつしか「人蔘」と言えば“せりにんじん”のことを指すのが普通となった。
その後、区別の必要から、本種に対しては、明示的に拡張した「朝鮮人蔘」の名が使われるようになった(レトロニム)。
戦後になると、日本の人蔘取扱業者は輸入元の韓国で嫌がられる「朝鮮」の語を避けて「薬用人蔘」と称してきたが、後に「薬用」の名称が薬事法に抵触するとする行政指導を受け呼称を「高麗人蔘」へ切り替えた。
以上2種類の植物について、各国語の呼び名を対照すると以下のとおりである。
日本語 | 中国語 (繁体字/簡体字) | 朝鮮語 | 英語 | |
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本種 | 高麗人蔘、朝鮮人蔘 | 人蔘/人参 [rénshēn、レンシェン] | 인삼 (人蔘) [insam、インサム] | ginseng [ジンセン] |
ニンジン | にんじん (人参) | 胡蘿蔔/胡萝卜 [húluóbo][13] 紅蘿蔔/红萝卜 [hóngluóbo] など |
당근 (唐根) [danggeun、タンクン] | carrot |
韓国産の土産物用・輸出用の人蔘製品については、最大の顧客が日本(人)であることから、単に「人蔘」とはせずに「高麗人蔘」(고려인삼 [Goryeo insam、コリョインサム])を名乗る場合が非常に多い。また、「高麗はかつて朝鮮に存在した統一王朝の名称であり、その頃から栽培が始まったためにこの名がある」といった旨の説明がしばしば添えられているが、実際は日本から逆輸入された名称である。なお、北朝鮮産の人蔘製品でも「高麗人蔘」を名乗る例は存在する。
現在、全体の70%以上が韓国と中国で栽培されているが、日本でも江戸時代から栽培されている。
古くから薬効が知られ珍重されていたが、栽培は困難で、18世紀はじめの李氏朝鮮で初めて成功した。韓国では忠清南道錦山郡と仁川広域市江華郡、北朝鮮では開城市が産地として有名。中国では長白山(白頭山)の麓で「長白山人蔘」として栽培される。日本では福島県会津地方、長野県東信地方、島根県松江市大根島(旧八束町)の由志園などが古くからの産地として知られる[11]。
栽培にはおよそ2 - 6年ほどの月日を掛けた上で根が収穫されるが、5年以上のものが良品とされ栽培が難しい[9]。日本には野性はなく、栽培地では小屋掛けで直射日光と雨除けをして、通常は6年がかりで栽培する。皮を剥ぎ、根を天日で乾燥させたものを白参(はくじん、ペクサム、백삼)、皮を剥がずに湯通ししてから乾燥させたものを紅参(こうじん、ホンサム、홍삼)ということもある。なお、日本薬局方においては、根を蒸したものを紅参としている[11]。他に、濃い砂糖水に漬け込んでから乾燥させる糖参もあり、白参に分類される。
生薬である人参(ニンジン)や紅参(コウジン)の基原植物である[8]。人参(ニンジン)は根をそのまま又は軽く湯通しして乾燥させた生薬である[8]。紅参(コウジン)は根を蒸してから乾燥させた生薬である[8]。
主要な薬用部位は根で有用成分に、ジンセノサイドとよばれる38種のサポニン群、その他精油、脂肪油、コリンが含まれている[11]。ストレスによる胃腸虚弱や食欲不振、嘔吐、下痢、病後の回復期、疲労回復、滋養強壮に効能があるとされ[15][16][11][9]、伝統医学として古くから服用されてきた。
伝統医学的観点では、低い血圧を高める作用があるため高血圧の人は控えるべきだと言われてきたが、ジンセノサイドの一部分には高い血圧を降下させる作用があるとされ、高血圧症、低血圧症それぞれ体に合わせて調整作用するといわれている[11]。また、種々のストレスに対しても抵抗力を増す効果があるとされ、自律神経の乱れを整え、生体の防御作用を助けるものと考えられている[11]。プロトパナキサジオール(PPD)系サポニンとプロトパナキサトリオール(PPT)系サポニンの両方を含み、鎮静と活性の両方の作用がある。PPD系ジンセノサイドであるRb1やRb2などは腸内細菌で代謝されてコンパウンドKとして体内に吸収される。しかしながら腸内細菌叢は日々の状態や個人差、加齢による変化があるため、コンパウンドKへの代謝がスムーズに行われず体感効果が得られない例もある[17]。
漢方では紅参(コウジン)よりも人参(ニンジン)を配合するものが多く、人参湯類(人参湯、六君子湯、四君子湯、大建中湯など)のほか、黄耆とともに参耆剤(補中益気湯、十全大補湯など)に配合されている。
民間では、1日量1 - 3グラムの人参を400 ccの水に入れて30分ほど煎じ、3回に分けて服用する[9]。また人参酒としては、紅参か白参20 - 100グラム、または生のオタネニンジン80 - 90グラムを、35度の焼酎1リットルに漬けて、冷暗所に約1 - 3か月保存したものが1日量で約20 ccを目安に飲用される[11]。1回目に浸した人参を使って、再度6か月漬け込み2回目の人参酒を作ることも出来る[11]。そのあとの人参は、料理にも使える[11]。
ただし、オタネニンジンのヒトを対象とした質の高い試験は少なく、健康的有益性を裏付けるエビデンスは少ない[18][19]。ただし、血圧およびに血糖値に影響を与えるとされ、副作用としては頭痛、睡眠障害および消化器障害などが報告されている[18]。
ウコギ科の薬用植物には他にアメリカニンジン(花旗蔘)、トチバニンジン(竹節人蔘)、サンシチニンジン(田七人蔘)、エゾウコギなどがある。
一部ではこれらから抽出し精製したものを『ジンセン』などと呼称しているが、『ジンセン』とは本来、朝鮮人蔘から抽出されたエキスを指す。
なお、日本には同属の種としてはトチバニンジン、エゾウコギなどが自生している。
韓国では煎じたものを人参茶(インサムチャ、人蔘茶)として飲用したり、サムゲタン(参鶏湯、蔘鷄湯)などの料理にも利用するほか、乾燥させる前の「水参」(スサム、水蔘、수삼)をスライスして蜂蜜につけて食べたりもする。人蔘入りの栄養ドリンクやガム、石鹸なども市販されている。日本においては、韓国料理の材料として用いられる他、生のものは短冊切りにして酢味噌和えにしたり、天ぷらの材料とすることがある[11]。
北朝鮮では開城の人蔘酒が主要な輸出品となっており、韓国でも京畿道坡州市の烏頭山統一展望台などで購入できる。
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