出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/23 11:04:07」(JST)
この項目では、石油製品について記述しています。原油から直接得られる分留成分については「ケロシン」をご覧ください。 |
この記事の正確性に疑問が呈されています。問題箇所に信頼できる情報源を示して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2011年7月) 疑問点:現行の定義文は現代の都市文化圏で使用されている灯油に重点が置かれすぎていて、時代的と国際的の視点に問題がある(他の記述が圧倒的に不足している)と思われる。一項目中に網羅するか、もしくは、分割する必要があるのではないか。 |
この項目はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点からの説明がされていない可能性があります。ノートでの議論と記事の発展への協力をお願いします。(2011年7月) |
灯油(とうゆ。古くは燈油とも書かれる)とは、石油の分留成分の一つであるケロシンから作られる石油製品。言い換えると、ケロシンを暖房やランプなどの日用品に利用するために調整した製品が灯油である[注 1]。広義には灯油の成分はほぼケロシンであるため、「ケロシン」の言い換えで「灯油」と呼ぶことがあるが、ここでは石油製品としての灯油について述べる。
灯油とは、元来はランプなど照明器具のための油のことであり、この意味では「灯油(ともしびあぶら)」と読む。
現代日本の日常生活では単に「石油」と呼び表す場合は「灯油」を意味する場合が多い。また、その品質は日本工業規格で規定されている(後述)。灯油の引火点は37–65℃の間であり、その自然発火温度は220℃である。燃焼熱量は軽油のそれに似ていて、低位発熱量は18500Cal/ポンド前後、43.1 MJ/kgで高位発熱量は46.2 MJ/kgである。
灯油は、原油の常圧蒸留およびその後の精製によって得られる製品である。無色透明で特有の臭気を放つ液体で、炭素数9から15の炭化水素を主成分とする。硫黄分80ppm以下、引火性はあるが引火点は40℃以上と常温より高いため、常温では引火しない。消防法では、危険物第四類(引火性液体)第2石油類に分類されている。ただし、引火点以下の状態にあっても霧状の粒子となって空気中に浮遊することがあり、このときはガソリンと同等の引火性を持つ。また、人体への影響としては皮膚炎や結膜炎を引き起こすことがある。
取り扱いが容易であるため、家庭用の暖房機器や給湯器、燃料電池等の燃料に使われる。また工業用、産業用途として洗浄あるいは溶剤にも用いられる。 生活必需品の一つであり、石油製品の中でもガソリンと並んで価格動向に注意が払われる製品の一つである[1]。 揮発油税法の揮発油の定義には入っているが、同法第16条には「灯油に該当するものは、これを免除する」と記載されている[2]。したがって揮発油税や軽油引取税は徴収されず、実際に消費者が購入する際には消費税のみが賦課される。
日本では古来、神事等に使用されてきた灯油(ともしびあぶら)としては、魚油、榛油、椿油、胡麻油等が使用されてきたが、9世紀後半に離宮八幡宮の宮司が荏胡麻(エゴマ)の搾油機を考案してからは荏胡麻油がその主流となった(cf. 大山崎油座)。17世紀以降は荏胡麻油に替わって菜種油や綿実油が灯油として主に用いられるようになった。
一方で、庶民が用いる灯油の主流は永らく魚油であった。日本の民間伝承には、油赤子、油すまし、油坊、化け猫、等々、灯油にまつわるものが数多くあるが、特に化け猫がそうであるように、油を舐めようとする逸話が多く見られる背景には、行灯用の灯油として安価な鰯油などの魚油が用いられていた事実がある(背景として、当時のイエネコの餌は飼い主の残飯であったため、恒常的に脂肪、とりわけ動物性脂肪の摂取に飢えており、行灯の油を舐める行動がしばしば実際に見られたということもある)。
灯油の品質は日本工業規格(JIS K2203)[3]で規定されている。
一般に利用されるものは精製度が高く不純物(特に硫黄分)が少ないという意味で、「1号灯油」通称「白灯油」の名称が与えられている。1号灯油に要求される品質は、発煙性成分が少なく燃焼性がよいこと、燃えカスがでないこと、刺激臭等がないこと、適当な揮発性を有していることとされている。
精製度が低く淡黄色をしており、主に石油発動機用の燃料であった。その色から「茶灯油」とも呼ばれる。2005年時点では日本国内で生産・流通していないとされている。
品質規格項目 | 1号灯油 | 2号灯油 |
---|---|---|
引火点 | 40℃以上 | |
法定比重 | 0.80 | |
硫黄分 | 0.008質量%以下(80ppm以下[注 2]) | 0.50質量%以下(5000ppm以下) |
色 | セーボルト色+25以上[注 3] | 規程なし |
95%留出温度 | 270℃以下 | 300℃以下 |
煙点 | 23mm以上(11月 - 4月は21mm以上) | 規程なし |
銅板腐食 | 1以下(50℃で3時間測定法による) | 規程なし |
灯油はガソリンスタンド(一部店舗と高速道路内のサービスエリア・パーキングエリアを除く)のほか、ホームセンター・ディスカウントストア・スーパーセンターなどの量販店、米穀店、生協、移動販売など広い販路で販売され、家庭への配達が行われる。近年(2004年の段階)では低価格のセルフ式ガソリンスタンドや、ホームセンターにおける持ち帰り購入が増えている。
持ち帰り容器としては1970年代までは金属製の一斗缶が広く用いられていたが、その後は軽量で気密性の高いポリエチレン製のポリタンクが広く使われている。
特に冬の寒さが厳しい北海道・東北地方では、一世帯あたり平均で年間約1,500から2,000リットル程度の灯油を消費することから、一軒家では200から1000リットルクラスのホームタンクに灯油を備蓄し、家屋内の石油ストーブやボイラー等へ自動的に給油するシステムを持つことが一般的である。その他の地方においても、灯油を燃料にする給湯設備が普及しており、これらも、数百リットル単位のタンクを有している。灯油が少なくなると軽トラックに計量器付きの小型タンクを設置したタンクローリー、もしくは規模によっては大型のタンクローリーを呼んで、ホームタンクに給油するか、ガソリンスタンドやホームセンターで購入する。
灯油の価格表示は1リットル当たりの表示と18リットル当たりの表示が混在する[注 4][注 5]。これは灯油を一斗缶で販売していた頃の名残であり、約1斗に相当する18リットル単位での販売が一般化したためである。現在でも一般的なポリタンクの容量は18リットルである。
ガソリンスタンドにおいて(セルフ式スタンドで)本来軽油を給油すべきディーゼル自動車に価格の安い灯油を給油する行為があるが、これはディーゼルエンジンはもちろん環境にも悪影響を及ぼしかねないばかりか、軽油引取税上の脱税行為となる。
灯油は長期間の保管や不純物の混入などによって品質に問題が生じることがある。こうした不良あるいは不純な灯油を利用すると、さまざまな問題が生じる。
長時間放置あるいは寒暖差の激しい環境に置かれ、品質が劣化した灯油。一般的には使い残した灯油を1シーズン放置したものなどが該当する。良質の灯油は無色透明なのに対し、不良灯油は黄色く変色する。灯油自体の臭気にも変化があり、劣化すると「目にしみる」ような臭気を放つ。
こうした不良灯油を使用すると、黒煙・白煙や異臭が大量に出るほか、火力が安定せず、芯式石油ストーブの場合は芯が黒化し、ダイヤル、レバーなどが操作出来なくなる恐れがある。
不純物の入リ混じった灯油。特に水の混入が多く、ポリタンクのふたが閉まりきっていなかったり、ポリタンク内で霜が降りてしまうと、水分が混ざった不純灯油となってしまう。水は灯油より重くタンク下部に溜まってしまうため、水が入っていることに気付かずに使用したことで、機器を故障させてしまうことが多い。
こうした不純灯油を使用すると、火力が弱まり、着火されにくくなる。機器によっては給油警告も常に出るようになる。そのほか軽油やガソリンが混じった不純灯油も考えられ、これらをそのまま使用することで目やのどの痛みを訴えたりと人体に影響が出るほか、火災の原因になる。
石油ファンヒーターおよび石油ストーブは灯油を気化して燃焼させるものであり、機械的な故障は少ない。しかし、ブンゼン式石油ファンヒーターでは不良灯油による故障が多く、1シーズン経過しただけの不良灯油で容易に動作不良となることもある。故障が疑われる場合、まず使用した灯油を疑うこととされており、石油ストーブメーカー各社とも不良・不純灯油の使用による故障は無償修理保証の適用外とされ、有償による修理の対応となる。
不良・不純灯油使用による石油ストーブ故障は、各メーカーが頭を抱えている問題であるが、一般利用者には広くは認知されていない。販売店から初期不良としてメーカーへ返品されてくる製品のほとんどが、こうした不良・不純灯油が原因とされるものである。対応した販売店の店員すらも不良・不純灯油に関する知識が不足し、利用者からのクレームを避けるため、そのまま新品と交換してしまうケースがある。
灯油(特に品質の悪い灯油)を燃焼させると独特の臭いが発生することがある。
屋内で石油ファンヒータを使う場合、換気を怠たると、一酸化炭素などで中毒事故を起こす可能性がある。一酸化炭素は無色無臭のため気づきにくいため、一定量に達すると中毒で死亡する者もいる。30分–1時間に1回程度の換気を心がけると良い。不完全燃焼を引き起こした場合は、即座に使用を停止して、換気を行い、できるだけ新鮮な空気に触れたほうがいい。
屋外に石油給湯器を設置する場合、煙突を延長させるなどの排気対策を十分に対策していないと、近隣住宅に流れ込みトラブルになりかねない。独特な臭いがする排気が室内に侵入するため、近隣住民宅のトイレや風呂場等の換気が不自由になり、多大な負担をかけるからである。特に音が響きやすい冬場の深夜に稼働させる場合、近隣住宅との間隔(1–3m程度)が狭い住宅街に設置する場合、床暖房に併用させる場合などでは、特に設置者は要注意しなければならない。メーカーでは、設置方法や設置場所について隣家に配慮することを推奨している。
参考:石油ストーブ・石油ファンヒーターによる事故事例集
灯油の価格が高くなると、住宅の屋外に設置してある灯油タンクから灯油を抜き出す盗難事件が発生している。寒冷地にある企業などが、盗難対策グッズを開発し販売している。
北海道警察せたな警察署等の警察機関でも、灯油盗難防止用品を紹介している[1]。
また、不必要な状況下で灯油を持ち歩いたり、迂闊にポリタンクを屋外で保管していると放火犯罪の対象になる場合もある。
[ヘルプ] |
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
リンク元 | 「ケロシン」 |
拡張検索 | 「灯油皮膚炎」 |
.