出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/06/17 17:55:27」(JST)
有尾目 | ||||||||||||||||||
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ファイアサラマンダー
Salamandra salamandra |
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Caudata Scopoli, 1777 |
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シノニム | ||||||||||||||||||
Urodela |
有尾目(ゆうびもく、Caudata)は、両生綱に属する目の一つ。
一般に冷涼な気候を好み、分布はほぼ旧北区(シベリアでは北極圏にまで広がっている)と新北区に限られる。プレソドン科に属するミットサラマンダー属のみが、熱帯を越えて南アメリカ大陸まで分布する。
基本的に、外見は絶滅した迷歯類や空椎類の基本形と似て、細長い胴と長い尾、粘液に包まれた皮膚、前後とも同じ長さの短い四肢(サイレン科は前足のみ)を持つ。目名はいずれも「尾を持つもの」の意。英名の Salamander はギリシャ語の「火のトカゲ」に由来する。
頭蓋は骨によって完全に覆われてはいない。比較的小さいが十分機能する目を持つ。多くの種は変態の時に可動性のまぶたを獲得するが、アホロートルなどの幼形成熟的な水生種やオオサンショウウオではまぶたを持たないものもいる。鼓膜と中耳を持たない。空気中の音を聞き取るのは苦手だが、地面の振動は敏感に感知できる。
椎骨は一般的に見られるようにまず軟骨として形成され、それが置換されていくのではなく、脊索の周りに直接に形成される。これは空椎亜綱と共通する特徴である。
ほとんどの種で肺は左肺の方が右肺よりも小さい。サイレン科のみ左右の肺が同じ大きさである。陸生種では肺胞も発達する傾向がある。肺を持たず皮膚呼吸のみに頼る種も複数の系統に存在する。有尾類は四肢動物進化史上、肺の消失が頻繁に起こった唯一の目である。流れの速い川で、体が浮かび上がって流されてしまわないための適応だろうといわれる。
林床の落ち葉の下や木や石の陰等に生息する半地中生の種、ほとんど地上に現れない地中生の種、水辺で暮らす半水生の種、完全に水生の種、一部には樹上で生活し繁殖も樹上で行う種、洞窟内や地下水流で生活する種などがいる。
陸生の種では視覚によって獲物を探し、粘性の舌を伸ばして昆虫やミミズなどを捕える。肺が無い種では、本来は空気を肺に送り込むための舌骨器官が舌を伸ばす為に特殊化し、体長の半分近い長さまで舌を伸ばすことができる種もいる。水生の種では舌は発達せず、側線器官と嗅覚で獲物を見つけ、大きく口を開けることで水と一緒に水生昆虫や小魚を呑み込む。
外敵に襲われた場合、多くの種で警告姿勢(スズガエル反射)をとるのが見られる。腹側の派手な模様を見せることで、自分がまずいことや毒があることをアピールする。アカハライモリなどはフグと同じテトロドトキシンという毒を持つ。
より積極的な防御行動として、皮膚から分泌物を出すものも多い。ファイアサラマンダーでは背中の正中部にある分泌腺から相手を狙って高速(秒速300cm以上で、ミイデラゴミムシなどのガス噴射速度を上回り生物中最速)で毒液を撃ち出すことができる。他にも鋭い肋骨を体側から突き出すイベリアトゲイモリや、噛みつき、尻尾で打つ、尻尾で締める、頭突きなどの防御が知られる。
約90%の種が体内受精を行う。体外受精を行うのは原始的なサンショウウオ上科に属する種と、おそらくはサイレン上科の種である。体内受精を行う種のメスは、オスから受け取った精子を保持するため総排泄孔に精子嚢といわれる器官を持つ。
大半の種は水中で産卵し幼生も水生だが、陸上で産卵する種もいる。彼らの幼生は、雨に流されたり自力で跳ねて水に戻るか、孵化前に変態を済ませて親と同じ形で生まれ(直接発生)そのまま陸上で生活する。
また、イモリ科の一部は親の卵管の中で孵化するものもある。卵黄の栄養だけで成長する(卵胎生)の種も、卵管の中で最初に孵った兄弟が卵管内の発生中の兄弟の胚を食べてかなり成長してから外部に出る胎生の種もいる。
一部の種は卵や幼体を親が保護する。陸上で産卵するプレソドン科では、外敵のみならず乾燥やカビからも卵を守る。
幼生はカエルと違い全て動物食で、外鰓と成体と同じ歯を持つ。四肢は孵化時からある種もいるが、後から生えるときはカエルのそれとは逆に前肢から生える。流水性の幼生は、流されないように石などにつかまるため四肢に爪を持ち、止水性の幼生は体側にバランサーといわれる突起物を持つ。
動物食なので共食いもよくするが、一部の種では、幼生の生息密度が高いと「共食いモルフ」といわれる、共食いに適した頭部が巨大化した形態になることもある。しかし周りに自分の兄弟姉妹が多いときは、その変化は抑制される。
変態を行って成体になるが、一部の種では幼形成熟を行う。 アホロートルのようにホルモン(サイロキシン)を与えれば変態する種も、ホライモリのようにどうやっても変態しない種もいる。またサイレン科のように、一生外鰓が残ったりする不完全な変態をする種もある。
10科におよそ670種が属する。種数はamphibiawebによる[1]。
次のような系統樹が得られている[2]。
有尾目 |
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他の両生類と同じく、近年の環境汚染や開発による生息地の分断化、さらにペットトレードのための捕獲によって、その生存は脅かされている。気温上昇に弱い種が多いため、地球温暖化の影響も危惧される。
人目に触れにくい生態の種が多いため、それほど人との関わりがあるわけではないが、次のようなものが知られる。
漢方では、オオサンショウウオや小型サンショウウオを強壮・肺病・疳に効ありとする。蛋白質補給による栄養状態改善が有効だったのだろうといわれる。また小型種は湿疹や痒み止めの薬にもなるという。南会津の桧枝岐村では、ハコネサンショウウオ料理が名物として知られる。
かつての日本ではオオサンショウウオは普通に食用に供されてきた。食通の北大路魯山人によると「すっぽんと河豚の合いの子」のようで非常に美味であるという。
中華料理ではチュウゴクオオサンショウウオは高級食材とされ、養殖もしている。また、小型サンショウウオも乾物にして市場で売られているという。
アホロートルは、かつて現地のインディオたちの蛋白源の1つだった。味はウナギに似ているという。また、肺病や強壮にも薬効があると考えられていた。
サラマンダー、特にファイアサラマンダーは、かつてのヨーロッパでは火の中で生きる生物だと考えられていた。
アホロートルは、古代メキシコの変幻自在の神ショロトルの化身と言われていた。
かつての日本では、アカハライモリは繁殖期の盛んな求愛行動が見られるためか、惚れ薬としての効用があるといわれていた。同様に、アイヌもエゾサンショウウオのことを多淫な生き物と看做していた。
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