出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/04 15:59:48」(JST)
「リズム」のその他の用法については「リズム (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
リズムは古代ギリシャに生まれた概念で、ῥυθμός - rhythmos(リュトモス)を語源とする。リュトモスは古代ギリシャ語では物の姿、形を示すのに一般的に用いられた語で、たとえば「αという文字とβという文字ではリュトモス(形)が違う」というように用いられた。やがて、音楽におけるひとつのまとまりの形をリュトモスと言うようになった。[1]
時間軸の中に人間に知覚されるような2つの点を近接して置くと、2点間の時間に長さを感じるようになるが、その「長さ」をいくつか順次並べたものをリズムという。律動(りつどう)と訳される。
音楽に関する時間に対する構造または組織化を示す時にリズムと言う語が用いられる傾向がある[1]。
20世紀の典型的なリズム論であるクーパーとマイヤーの「音楽のリズム構造」におけるリズムについての説明を示す。
まったく同じ刺激が時間的に等間隔で再起するものをパルスと呼んでいる。
次はパルスの例である。左から右に時間が流れていて、刺激のあるタイミングを○で示す。
○ ○ ○ ○ ○
次はパルスでない刺激の例である。
○ ○ ○ ○ ○
パルスはその定義から、パルスとパルスとの間に区別があってはならない。[1]
拍とはパルスとパルスとの間に区別があるものをいう。具体的には、拍とは、相互に全く区別のなかったパルスの連続から代わって、心理的に強いパルス(アクセント)と心理的に強くないパルス(非アクセント)という区別がついたもの。
次は拍の例である。
● ○ ● ○ ○ ● ○ ● ○ ○ ○ ● ○ ●はアクセント ○は非アクセント
アクセントとは必ずしも音が強いことを表すのではなく、人の心理にとって強く感じる、目立たされていると意識されるという意味である。紛らわしいことに、アクセントのある音を強拍、アクセントのない音を弱拍と言うことがあるが、必ずしも音が強い、音が弱いということを表すのではない。[1]
アクセントのある拍が周期的に繰り返されると拍子が生まれる。拍子とは、1 つのアクセントが 1 つ以上の非アクセントを従えた構造を持ち、合計いくつの拍で動いているかで何拍子か決まる。
たとえば 2 拍子は 1 つのアクセントが 1 つの非アクセントを従えた合計 2 つの拍からなる拍子であり、3 拍子は 1 つのアクセントが 2 つの非アクセントを従えた合計 3 つの拍からなる拍子である。
次は 2 拍子および 3 拍子の例である。
2 拍子 ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ 3 拍子 ● ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ○
次は拍子がない例である。[1]
● ○ ● ● ○ ○ ○ ● ○ ○
クーパーとマイヤーの考えでは、拍子の中に、グループができることがリズムである。拍子の中にグループ化を感じた時、我々はリズムを感じたということになる。
以下はグループ化の例である。 └─┘は一つのグループを表す。
2 拍子 ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─
3 拍子 ● ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ○ └───┘ └───┘ └───┘ └───┘ ● ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ○ └───┘ └───┘ └───┘ └── ● ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ○ └───┘ └───┘ └───┘ └
音楽事典でもそうだが、非常に多くの場合、拍子とリズムとが混同して理解されている。[1]
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音楽においては、音の開始点が知覚されやすいので、時間軸における点を主として音の開始点で示す。音の開始点から次の音の開始点までの長さを、順次いくつか並べたものが、音楽におけるリズムである。
人の耳は音の開始には敏感だが、音の終了にはあまり注意を払わない傾向がある。これは、音が残響することによって音の終了がはっきりと作り得ないことや、人間の聴覚に残像効果がある(音が鳴りやんでもまだしばらく音が続いているように感じる)ことにもよるであろう。またこの傾向は、物を叩いたときの音のような、音が次第に弱くなっていくような音について顕著である。したがって、音の開始は時間軸の点を示すが、音の終了によって点を示すことは困難である。
それゆえ一般にはリズムを「音の長さを順次並べたもの」と定義することができる。ただし、この場合における「音の長さ」とは、実際の音の長さではなく、概念上の音の長さ、すなわち、次の音が出るまでの長さのことである。
このとき、音の開始点の時間間隔だけでなく、音の強さや音が実際に終了するまでの時間によって、リズム感が異なることがある。
等しい間隔で打たれる基本的なリズムを、拍節と言い、そのひとつひとつの時間単位を拍という。拍は、一般に、人間の歩行の一歩一歩に擬せられる。拍は実際に常に音によって示されなければならないわけでなく、しばしば概念化して、音によって示されなくても拍を感じることができることがある。
拍の周期の長短によって、音楽の速度を感じる。これをテンポという。
拍に重軽が生じ、原則としてそれが一定のパターンで周期的に繰り返されるとき、拍子という。
様々な民族の音楽の中でも、リズムを持たないものはおそらくほとんど存在しないと思われるが、リズムの現れ方は民族や音楽のタイプによって様々である。拍や拍子のない音楽は、世界各地に見られる。
西洋音楽や多くの民族音楽にあっては、リズムは拍子の上に作られる。この場合、拍を結合したり、拍を等分したり、等分した拍をさらに結合したりして、リズムを作成する。また、拍子のないリズムも存在する。これを自由リズムと呼ぶことがある。
モンゴル音楽におけるオルティンドーとボギン・ドーの区別は、拍子の有無を表すわかりやすい用語である。オルティンドー(長い歌の意)は拍子のない歌、ボギン・ドー(短い歌)は拍子に乗った歌である。
舞踊音楽等においては、同じリズムの繰り返しがその舞踊や音楽を特徴づけることが多い。すなわち、メヌエットにはメヌエットの、ワルツにはワルツの、ボサノヴァにはボサノヴァのリズムがある。また、ジャズやジャズを起源とする音楽は、スウィング、エイトビート、シックスティーンビートといったリズムを持っている。
人間が定量記譜上において知覚することができるリズムは「一拍の等分(ヘンリー・カウエル)」、「一拍の等倍(オリヴィエ・メシアン)」、「一拍単位の基準値の変更(エリオット・カーター)」の三つを組み合わせることしか出来ないことが20世紀半ばに発見された。
しかし、人間はこれらの記譜のしがらみを越えたリズムを口承で伝えてきたと、多くの音楽学者によって見られている。
現在の作曲家は、今でも新しいリズム言語を時代に応じて開発しているが、前述の三つの原則は変わらない。
音声言語にはリズムがあり、言語ごとに異なるリズムをもっている。リズムのひとまとまりのことをフットといい、国際音声記号では[|]で表される。リズムにはその特徴によって強勢リズムや音節リズムなどがある。詩などの韻文を作る韻律の基礎として、特に重要な性質である。
強勢リズムは英語やロシア語などに見られ、強勢のある音節が時間的にほぼ等間隔に繰り返されることによって生じる。例えば英語では第1ストレスから次の第1ストレスまでの時間的長さが等しい。ストレスのある1つの音節とストレスのないいくつかの音節がまとまってフットを構成している。各フットの長さは音節数が増加しても変わることなく同じで、フット内部で音節の長さが調節される。
音節リズムはスペイン語やフランス語などに見られ、各音節が時間的にほぼ等間隔で現れることによって生じる。
日本語のリズムは音節ではなくモーラ(拍)が基本的な単位となっており、さらに2モーラを基本的なまとまりとする1フットが日本語のリズムや語形成と密接に関連している。
日本語ではリズムを1フットに整えるため、1モーラの音が2モーラ分に引き延ばされる場合もある。たとえば風呂の中で数字を読み上げるとき、「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10」を「イチ・ニー・サン・シー・ゴー・ロク・シチ・ハチ・キュー・ジュー」と発音する。このとき、本来の2(ニ)、4(シ)、5(ゴ)は1モーラ、他の数字はすべて2モーラ=1フットとなる。そこで、2・4・5についても引き延ばして1フットに揃える。また、曜日「月火水木金土」を読み上げるときも「火」「土」は「か」「ど」であるが、他の2モーラ1フットに合わせて「かー」「どー」と引き延ばして発音される。
「ポケットモンスター」を「ポケモン」、「木村拓哉」を「キムタク」と略する事例ではいずれも2フットに揃えられている。
リズムとは本来音楽用語であるが、転じて様々な時間の動きを表すものを表す。周期は数秒、数分から数日、数年に至るものまで存在し、株価の変動など経済の動き、太陽活動など天体の動き、占いなど運勢の動きなどに用いられる。
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