出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/11 23:28:09」(JST)
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国民年金(こくみんねんきん)とは、日本の国民年金法等によって規定されている、日本の公的年金のことである。
国民年金とは、日本国憲法第25条第2項(「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」)に規定する理念に基づき、すべての国民を対象に、老齢、障害又は死亡による所得の喪失・減少により国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯により防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする公的年金制度である(第1条)。この目的を達成するために、(業務上・業務外を問わず)国民の老齢・障害・死亡に関して必要な給付を行う(第2条)。
年金に加入し毎月掛ける、または納める場合は「国民年金」と呼ばれるが、実際に年金を貰う(受給する、給付される)場合は、年金の種類によって、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金などと呼ばれ、「国民」の文字は付かない。実際、現行法では国籍は要件とされず、また脱退一時金のように外国人のみを対象とする制度もある。
国民年金保険料納付率の全国平均は58.99%(平成24年(2012年)度。前年度比+0.35ポイント)である [1]。 ただし納付率とは当該年度分の保険料として納付すべき月数における当該年度中(翌年度4月末まで)に実際に納付された月数の割合から算出されている。保険料は過去2年分の納付が可能であり、過年度に納付されたものを加えた最終納付率は2010年度分については64.55%となっている。
また、納付を免除、猶予された人の分を除外せずに算出する実質納付率は平成18年(2006年)度に49%と初めて5割を切った(社会保険庁調べ)。さらに補足として第1号被保険者だけではなく、第2号被保険者、第3号被保険者も考慮にいれると平成18年(2006年)度末において未納者(約322万人)、未加入者(約18万人)の公的年金加入者(約7041万人)に占める割合は5%となる[2]。
1959年(昭和34年)、第31回国会に国民年金法案を提出、国民年金法が制定され、同年11月から施行された。
国民年金は、自営業者や農林水産業従事者等の被用者年金に加入していない人を対象とした、無拠出の「福祉年金」制度として発足した。その後、適用事務は1960年10月から、拠出制年金の開始に伴う保険料徴収は1961年4月から開始され、その後制定された「通算年金通則法」とともに国民皆年金の基盤となった。 また、1959年11月当時70歳を超えている人等を対象に全額税負担の老齢福祉年金を支給する制度が設けられた。1966年に夫婦で1万円、1969年に夫婦で2万円、1973年に夫婦で5万円の年金が実現し、1982年には被保険者の資格要件の国籍要件を撤廃した。
産業構造の変化等により、財政基盤が不安定になっていたことや、加入している制度により給付と負担の両面で不公平が生じていたことから、1985年、全国民共通で全国民で支える基礎年金制度を創設する年金制度の抜本的改革が行われた。1986年4月から、国民年金は、学生を除く(学生の強制加入は1991年4月から)20歳以上60歳未満の日本に住むすべての人を強制加入とし、共通の基礎年金(1階部分)を支給する制度になった。また、厚生年金等の被用者年金は、基礎年金の上乗せの2階部分として、報酬比例年金を支給する制度へと再編された。
1997年(平成9年)には、全制度共通の一人一番号制として基礎年金番号が導入され、各制度間を移動する被保険者に関する情報を的確に把握することにより届出の簡素化、未加入者の発生防止などが図られた。
2000年(平成12年)、長期に安定した信頼される年金制度を維持していくために、年金額改定方式や保険料免除制度の改正が行われた。
2004年(平成16年)、急速な少子高齢化の進展が予想され、将来にわたり年金制度を安心できるものとするために、給付と負担の見直しや収納対策を徹底する改正が行われた。
2004年(平成16年)4月7日、自由民主党衆議院議員の安倍晋三は衆院厚生労働委員会で自営業者らが加入する 国民年金について現状のままだと積立金は2017年(平成29年)度に枯渇するとの見通しを述べた。また厚生労働省年金局長の吉武民樹は、毎年280円の引き上げでも2023年(平成35年)に積立金が枯渇するとの見通しを示した[3]。
2004年に導入されたマクロ経済スライドは、長期化したデフレの影響により、2013(平成25年)年9月まで結局一度も実施されなかった。2004年度実績で233.8兆円だった積立金は2011年(平成23年)年度実績では196.5兆円となり、厚生労働省の想定を上回るスピードで取り崩しが進んでいる。首相となった安倍は年金制度の改革に着手し、2013年10月より3度にわたって、特例水準(物価・賃金の下落に伴い下げられるはずだった年金額を据え置いた分)の引き下げを始め(2013年10月に1%、2014年4月に1%、2015年4月に0.5%。計2.5%の引き下げ)、2015年4月に特例水準は解消する予定である。
「国民年金事業は、政府が管掌する。」と定められ(第3条)、厚生労働大臣がその責任者となるが、実際の運営事務の多くは日本年金機構に委任・委託されている。また、国民年金基金に係る権限、日本年金機構が滞納処分を行う場合の認可の権限等については、厚生労働大臣の委任を受けて地方厚生局長が行使している。
第1号被保険者期間のみを有する者に支給する老齢基礎年金を受ける権利の裁定・請求の受理・審査、申請免除等の申請の受理・審査等は、市町村長が行っている。
「公的年金#積立方式と賦課方式」および「世代間格差#社会保障」も参照
「国民年金事業の財政は、長期的にその均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の措置が講ぜられなければならない。」(第4条の2)とされ、さらに 「政府は、少なくとも5年ごとに、保険料及び国庫負担の額並びに国民年金法による給付に要する費用の額その他の国民年金事業の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間(「財政の現況及び見通し」が作成される年以降おおむね100年間)における収支の見通しを作成しなければならない。」(第4条の3)と定められている。
政府は、財政の現況及び見通しを作成するに当たり、国民年金事業の財政が、財政均衡期間の終了時に給付の支給に支障が生じないようにするために必要な積立金(年金特別会計の国民年金勘定の積立金)を保有しつつ当該財政均衡期間にわたってその均衡を保つことができないと見込まれる場合には、年金たる給付(付加年金を除く)の額(給付額)を調整するものとし、政令で、給付額を調整する期間(調整期間)の開始年度を定めるものとし、そして、政府は、調整期間において財政の現況及び見通しを作成するときは、調整期間の終了年度の見通しについても作成し、併せて、これを公表しなければならない(第16条の2)。
国民年金は、創設当初、完全積立方式を採用していた。しかし、1966年、1969年、1973年の法改正で給付額を大幅に引き上げ、保険料は段階的に引き上げを行うとされたことから、修正積立方式による財政運営に移行した。その後、年々の年金給付に必要な費用を、その時々の被保険者納付する保険料で賄われる部分が徐々に拡大し、1985年の基礎年金制度導入を含め年金制度全体が世代間扶養の性格を強めてきたため、現在では賦課方式に移行した。
国民年金は、被保険者が保険料を納め、納めた保険料に応じて給付を受ける社会保険方式を採用している。給付に必要な費用(給付費)は、保険料と国庫負担(税)により賄われている(第85条)。また、被用者年金保険者が拠出する基礎年金拠出金や、積立金の運用の収入もある。
国庫負担の割合は、
基礎年金拠出金とは、基礎年金の給付に要する費用に充てるため、被用者年金保険者が毎年度、第2号被保険者及び第3号被保険者に係る部分について納付する拠出金のことである。その額は(第2号被保険者数+第3号被保険者数)÷国民年金の被保険者数×基礎年金の給付費、という算式で算出される。
積立金の運用は、積立金が国民年金の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら国民年金の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたって、国民年金事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする。積立金の運用は、厚生労働大臣が、この目的に沿った運用に基づく納付金の納付を目的として、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に対し、積立金を寄託することにより行うものとする、とされている(第75条、76条)。GPIFは厚生労働省の所管する、世界最大規模の年金ファンドであるが、実際には運用の大半を運用会社や信託銀行に委託している。なお、厚生労働大臣は、GPIFに対して積立金を寄託をするまでの間、財政融資資金に積立金を預託することができる。積立金の運用職員は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならず、運用職員がこれに違反したと認めるときは、厚生労働大臣は、その職員に対し国家公務員法に基づく懲戒処分をしなければならない(第78条、79条)。
また、国庫は、毎年度、予算の範囲内で、国民年金事業の事務の執行に要する費用を負担するとされ、原則として事務費は国庫負担(一部は保険料)である。
厚生労働大臣は、国民年金原簿を備え、これに被保険者の氏名、資格の取得及び喪失、種別の変更、保険料の納付状況、基礎年金番号その他所定の事項を記録する(第14条)。
年金給付の受給権者の現況の確認は、原則として住民基本台帳ネットワークシステムからの本人確認情報の提供を受けることによって行う。本人確認情報の提供を受けることができる受給権者の「住所の変更」または「死亡」(7日以内に戸籍法上の届出をしたものに限る)については、国民年金法上の届出は省略できる。当該現況確認ができない等のために厚生労働大臣から現況届等の提出を求められた受給権者等は、年金給付の全額が支給停止されている場合や、障害基礎年金・遺族基礎年金の裁定が行われた日から1年以内である等の場合を除き、現況届等を毎年誕生日の属する月の末日までに日本年金機構に提出しなければならない。なお、20歳前傷病による障害基礎年金の受給者の場合は、誕生日や住民基本台帳ネットワークシステムでの確認にかかわらず毎年7月31日までに現況届を提出しなければならない。
受給権者は厚生労働大臣に対し、所定の事項を届け出、かつ所定の書類その他の物件を提出しなければならず、当該届出は受給権者のほか、受給権者の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者に対しても当該届出の義務がある(第105条)。
国民年金の被保険者は、職業・就労形態や保険料の納め方で対象が異なる。大きく分けると、下の2つに分かれる。
また、厚生年金保険(厚生年金)等の被用者保険に加入している者(第2号被保険者)は、同時に国民年金に加入していることになる。国民年金の給付は、すべての被保険者に共通する基礎年金(老齢・障害・遺族)と第1号被保険者の独自給付(付加年金、寡婦年金、死亡一時金等)がある。
国民年金に保険料を直接納めるのは、強制加入被保険者のうちでは第1号被保険者のみである。第2号被保険者は厚生年金等の保険料に国民年金(基礎年金)分が含まれており、第3号被保険者は年金法では本人の保険料負担はなく、配偶者の加入している年金の保険者が第2号被保険者の分とともに基礎年金拠出金として負担している。
2階部分 | 国民年金基金 (任意加入) |
厚生年金 (受給時の正式呼称は |
共済年金 (共済組合) |
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1階部分 | 国民年金(基礎年金、受給時の正式呼称は「老齢基礎年金」) | |||||
第1号被保険者 | 第3号被保険者 | 第2号被保険者 | ||||
加入者 | 日本国内に住所を有する 20歳以上60歳未満の者で |
20歳以上60歳未満である 第2号被保険者の被扶養配偶者 |
民間サラリーマン、フルタイムのフリーター、一定のパートタイマー等 (年齢規定なし。但し老齢年金の受給権を有する者は65歳未満)[6][4] |
公務員等及び私立学校教職員 (公務員:全年齢、私立学校教職員:70歳未満[8]) |
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加入者数[9] | 1904万人 | 978万人 | 3451万人 | 441万人 | ||
保険料 | (定額) 月額15,250円 |
本人負担なし (第2号被保険者の |
2013年9月現在、標準報酬月額の17.12%(一般)(労使折半)[10] 共済年金は職域(3階)部分を含め独自の保険料率を設定 |
第2号被保険者資格の取得は、被用者年金各法の被保険者、組合員または加入員の資格を取得した日に取得する(年齢にかかわらず)。第2号被保険者でない20歳未満の者は、20歳の誕生日の前日に被保険者資格(第1号・第3号)を取得する(第8条)。また第1号被保険者・第3号被保険者は60歳の誕生日の前日、第2号被保険者は65歳の誕生日の前日に被保険者資格を喪失する(第9条)。よって20歳未満や60歳以上の者は、第1号被保険者、第3号被保険者となることはない。
過去に一度も被保険者でなかった者が第1号被保険者となった場合に、資格取得月から60歳に達する日の属する月の前月までの期間が25年に満たない者(老齢基礎年金の受給資格期間を満たす見込みのない場合)は、いつでも厚生労働大臣の承認を受けて被保険者資格を喪失できる(任意脱退)。また資格取得日から3ヶ月以内に任意脱退の承認の申請を行い、承認されたときはその者はさかのぼって被保険者とならなかった者とみなされる。
任意加入被保険者となるためには、次のいずれかを満たしたうえで(第2号・第3号被保険者および繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権者を除く)厚生労働大臣に申し出なければならない[11]。
65歳以上であっても、次の要件を満たす者(第2号被保険者を除く)は、特例任意加入被保険者として、厚生労働大臣に申し出ることで老齢基礎年金の受給権を取得するか、70歳に達するまで加入できる。任意加入被保険者が65歳に達した場合において老齢基礎年金の受給権を有しないときは、特例任意加入被保険者の申出があったものとみなされる。
日本国内に住所を有する任意加入被保険者・特例任意加入被保険者の加入に当たっては、原則として口座振替の申出を同時にしなければならない。日本国内に住所を有する任意加入被保険者が保険料を滞納し、期限までに納付しないときは、その期限の翌日に被保険者資格を喪失する。日本国内に住所を有しない任意加入被保険者が保険料を滞納し、その後保険料を納付することなく2年を経過したときも被保険者資格を喪失する。
任意加入被保険者が満額の受給資格期間(480月)を満たしたとき、また特例任意加入被保険者が老齢基礎年金の受給権を取得したときは、その資格を喪失する。
2004年法改正により、2005年度以降の保険料額が法律に規定され(保険料水準固定方式の導入)、最終的な保険料の水準として平成29年(2017年)度以降は月額16,900円に固定される予定とされていた。しかし、平成17年(2005年)度より年金たる給付(付加年金を除く)を調整する期間(調整期間)が開始され、マクロ経済スライドによる改定率が設けられ平成19年(2007年)4月の改定率が「0.997」とされた。その後も毎年度改定率は改定され、その年度の4月以降の年金たる給付について適用される。
現在の調整期間における改定率については、新規裁定者の改定率であれば原則として「名目手取り賃金変動率」に「調整率」(当面は0.997)を乗じたもの、既裁定者の改定率であれば子の加算額に係るものを除き原則として「物価変動率」に「調整率」を乗したもの、を基準にしてそれぞれ改定される[12]。
毎月の保険料は、第1号被保険者、任意加入被保険者が、毎月末日までに納付しなければならない。また、世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負い、配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う。なお、第2号被保険者、第3号被保険者については本人の納付義務はない。また半年(6ヶ月)や1年間の保険料(税)をまとめて前納することも出来る。
納付方法は以下の方法がある。口座振替の申し込みや引き落としに関わる手数料は不要である。
厚生労働省の調査では、大都市ほど、また若年齢層ほどコンビニでの納付率が高い傾向にあるとされ、逆に小都市・町村や高年齢層ほど口座振替の割合が高いとされる[13]。厚生労働省では口座振替を推進しているが、口座振替を利用したことがない理由をみると、若年齢層で「手続きが面倒だと思うから」の割合が、高年齢層に比べて高い傾向がある。
保険料を通常の納付期限よりも前に納付することにより、納付額が少なくなる割引制度である。2013年(平成25年度)現在の保険料は月額15,040円(年額180,480円)となるが、前納制度によって納付すべき金額が以下の表のように減額される。これらの前納制度を利用するには、前年度の2月末までに年金事務所に申し込んで手続きをしなければならない。
内容 | 納付方法 | 減額される納付金額 |
---|---|---|
口座振替早割 | 口座振替により当月分を当月末に納付する。 | 毎月50円減額でき、年間で600円の減額となり、年額179,880円で済む(600÷179,800×100=約0.33%の減額)。 |
現金払い前納・6ヶ月分 | 現金にて6ヶ月分(半年分)を一括に納付する。 | 年額1,460円の減額、年額179,020円で済む(1,460÷179,020×100=約0.8%の減額)。 |
口座振替前納・6ヶ月分 | 口座振替によって6ヶ月分(半年分)を一括に納付する。 | 年額2,060円の減額、年額178,420円で済む(2,060÷178,420×100=約3.67%の減額)。 |
現金払い前納・1年分 | 現金にて1年分(12ヶ月分)を一括に納付する。 | 年額3,200円の減額、年額177,280円で済む(3,200÷177,280×100=約1.80%の減額。 |
口座振替前納・1年分 | 口座振替によって1年分(12ヶ月分)を一括に納付する。 | 年額3,780円の減額、年額176,700円で済む(3,780÷176,700×100=約2.13%の減額。 |
口座振替前納・2年分 | 口座振替によって2年分(24ヶ月分)を一括に納付する。 | 2年間で14,000円程度の割引が出来る。但し、2014年(平成26年)4月からの開始予定である。[14] |
上記の方法の他に、年金事務所に別に納付書を発行してもらうことで、任意の月から年度末(3月)分までを一括して納めることが出来る市町村団体も存在する。さらに、13ヶ月前納払いの方法を採用してる市町村団体も存在する。例として大阪府岸和田市など。
割引額は年率4%で複利計算した額に相当し、それぞれ1か月、11か月、12か月間の複利で前納金が資産運用されて年額172,920円に成るとされるものである。
前納期間の中途で第1号被保険者の資格を喪失した場合は、請求に基づき未経過期間に係る前納保険料は還付される。
保険料その他国民年金法の規定による徴収金を滞納する者があるときは、厚生労働大臣は期限を指定してこれを督促することができる(第96条)。
納入告知後の保険料や延滞金などの徴収金については、国税滞納処分の例によって徴収することと規定され、徴収金を滞納した者に対しては、日本年金機構の徴収職員は地方厚生局の許可を受けて督促を行い、指定した日(指定期限)までに保険料が納入されないときは滞納処分(差押・換価・充当(配当))を行うことができる。また、この場合には、滞納につき、やむをえない事情がある場合や、徴収金額が500円未満の場合、計算した延滞金の額が50円未満である場合を除き、延滞金(年利14.6%)が課せられる。
保険料は納付期限(翌月末まで)より2年を経過したときは、徴収する権利が時効により消滅する。この為、余裕資金が出来たからといって保険料を納めようとしても出来なくなり、受給資格を得られなかったり、将来受給される年金の金額が減少されることが予想される。
この問題点を解決する為に、平成24年(2012年)10月1日から平成27年(2015年)までの3年間に限り、被保険者又は被保険者であった者(既に老齢基礎年金の受給権者となっている者は除く)は厚生労働大臣の承認を受け、滞納した期間の内過去10年間分(徴収する権利が時効によって消滅しているものに限る)の保険料を納付することができる[15]。
後納制度を利用して納付する場合、未納期間の内、最も古い時期から納付しなければならない。なお厚生労働大臣は、後納保険料の納付の承認を行うに際して、当該承認を受けようとする者が納期限までに納付しなかった保険料であってこれを徴収する権利が時効によって消滅していないものの全部または一部を納付していないときは、当該滞納保険料の納付を求めるものとする。
国民年金の第1号被保険者は、保険料の負担能力に関係なく20歳から60歳になるまでの長期間にわたり定額の保険料を納めることとなる。しかし、40年もの間には様々な事情で納めることが困難になる可能性もあるため、一定の要件に該当した時、所得が一定基準より少ない時、失業・災害に遭った時などは本人の届出や申請により免除される。免除制度には法定免除と申請免除の2種類がある。なお、任意加入被保険者については保険料の免除は行われない。
第1号被保険者本人が法律に定められている次のいずれかに該当するときは、すでに納付されたものを除き、本人の届出により、法律上当然に保険料が全額免除される。免除された期間は納付した期間として扱われる。
第1号被保険者本人及び保険料連帯納付義務者である世帯主・配偶者(所得審査対象者)が、経済的理由や災害に遭ったなどの理由で保険料を納めることが困難なときは、すでに納付されたものを除き、本人が申請し承認を受ければ、指定された期間につき保険料の全額あるいは一部が免除される。
「所得」は1月から6月までは2年前の所得金額、7月から12月までは前年の所得金額で判断する。これは個人住民税のサイクルとリンクしている。免除サイクルは学生納付特例が4月より翌年3月、その他は7月より翌年6月である。
免除により全額・一部を免除されていた期間、納付が猶予されていた期間については、全額納付した場合と比べて以下のように老齢基礎年金額が減額される。なお、遺族基礎年金、障害基礎年金については減額はなされない。
2009年3月までと4月以後で計算が異なるのは、2009年4月に国庫負担が2分の1に引き上げられたことに伴うものである。
2012年10月1日に年金確保支援法が施行された。同法によって、(とりあえず)2015年9月末までではあるが、第1号被保険者(老齢基礎年金の受給権者を除く)は、納付を免除された保険料を追納できる期間が2年から10年に延長された。なお、付加保険料の追納はできないし、一部免除の場合は残余の額について納付されていなければ追納できない。ただし、支払う場合は3年以上前の未納分の保険料には、経過した期間によって1.2〜12.3%の加算額が上乗せされる。
追納分は、学生納付特例又は若年者納付猶予により納付を免除された保険料について行い、次いでそれ以外の免除により納付を免除された保険料につき、先に経過した月の分から順次行う。追納が行われたときは、追納が行われた日に、追納に係る月の保険料が納付されたものとみなされる。
国民年金制度では「原則25年保険料を納付しないと年金の受給資格は得られない」としているのだが、これまで「保険料の納付期限は翌月末」と規定されていたため、結果として納付年数が25年に足らず、多年に渡り多額の納付をしたにもかかわらず年金が受け取れない悲惨な人々が多数うまれ、にもかかわらず政府は救済制度を作っておらず、社会問題化していた。厚生労働省は、「(同法施行によって)追納期間を延長することによって、最大で1700万人が救済対象になる」と試算した(2012年9月時点)。
平成25年(2013年)8月末現在、保険料の全額を免除されている者(全額免除者)の割合は、第1号被保険者全体の24.6%となっている。内訳は法定免除が7.5%、申請免除による全額免除が8.6%、学生納付特例制度が7.1%、若年者納付猶予制度が1.5%となっている。地域別にみると、全額免除者の割合が最も高いのは沖縄県の39.5%である。沖縄県では申請による全額免除が24.7%を占め他の都道府県よりも突出して高い。全額免除者の割合が最も低いのは東京都の17.9%である。東京都では申請による全額免除が4.7%でありこちらも最も低い。総じて首都圏・中京圏は申請による全額免除の割合が低く全額免除者の割合も低くなっているのに対し、北日本、西日本はその逆となっている。なお、法定免除者の割合が最も高いのは北海道の12.2%で、最も低いのは茨城県の5.4%であった[16]。
改正年月 | 毎月の保険料 | 改正年月 | 毎月の保険料 | 改正年月 | 保険料水準×改定率=保険料 |
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昭和36 (1961) 年 4月〜 | 100円/150円 | 昭和59 (1984) 年 4月〜 | 6,220円 | 平成17年 (2005) 年 4月〜 | 13,580円×1=13,580円 |
1967年1月〜 | 200円/250円 | 1985年4月〜 | 6,740円 | 2006年4月〜 | 13,860円×1=13,860円 |
1969年1月〜 | 250円/300円 | 1986年4月〜 | 7,100円 | 2007年4月〜 | 14,140円×0.997≒14,100円 |
1970年7月〜 | 450円 | 1987年4月〜 | 7,400円 | 2008年4月〜 | 14,420円×0.999≒14,410円 |
1972年7月〜 | 550円 | 1988年4月〜 | 7,700円 | 2009年4月〜 | 14,700円×0.997≒14,660円 |
1974年1月〜 | 900円 | 1989年4月〜 | 8,000円 | 2010年4月〜 | 14,980円×1.008≒15,100円 |
1975年1月〜 | 1,100円 | 1990年4月〜 | 8,400円 | 2011年4月〜 | 15,260円×0.984≒15,020円 |
1976年4月〜 | 1,400円 | 1991年4月〜 | 9,000円 | 2012年4月〜 | 15,540円×0.964≒14,980円 |
1977年4月〜 | 2,200円 | 1992年4月〜 | 9,700円 | 2013年4月〜 | 15,820円×0.951≒15,040円 |
1978年4月〜 | 2,730円 | 1993年4月〜 | 10,500円 | 2014年4月〜 | 16,100円×0.947≒15,250円 |
1979年4月〜 | 3,300円 | 1994年4月〜 | 11,100円 | 2015年4月〜 | 16,380円×改定率 |
1980年4月〜 | 3,770円 | 1995年4月〜 | 11,700円 | 2016年4月〜 | 16,660円×改定率 |
1981年4月〜 | 4,500円 | 1996年4月〜 | 12,300円 | 2017年4月〜 | 16,900円×改定率 |
1982年4月〜 | 5,220円 | 1997年4月〜 | 12,800円 | ||
1983年4月〜 | 5,830円 | 1998年4月〜 | 13,300円 |
※昭和45年 (1970) 年6月までは「35歳未満/35歳以上」で保険料月額が異なる。
※各年度の改定率=前年度の改定率×前年度の名目賃金変動率(前々年の物価変動率×4年前の年度の実質賃金変動率)
改定年月 | 満額の年金額 | 改定年月 | 満額の年金額 | 改定年月 | 満額の年金額 |
---|---|---|---|---|---|
昭和36 (1961) 年 | 24,000円 | 昭和63 (1988) 年4月〜 | 627,200円 | 平成15 (2003) 年4月〜 | 797,000円 |
1966年 | 60,000円 | 1989年4月〜 | 666,000円 | 2004年4月〜 | 794,500円 |
1969年 | 96,000円 | 1990年4月〜 | 681,300円 | 2006年4月〜 | 792,100円 |
1973年 | 240,000円 | 1991年4月〜 | 702,000円 | 2011年4月〜 | 788,900円 |
: | : | 1992年4月〜 | 725,300円 | 2012年4月〜 | 786,500円 |
1976年 | 390,000円 | 1993年4月〜 | 737,300円 | 2013年10月〜 | 778,500円 |
: | : | 1994年4月〜 | 747,300円 | 2014年4月〜 | 772,800円 |
1980年 | 504,000円 | 1994年10月〜 | 780,000円 | ||
: | : | 1995年4月〜 | 785,500円 | ||
1986年4月〜 | 622,800円 | 1998年4月〜 | 799,500円 | ||
1987年4月〜 | 626,500円 | 1999年4月〜 | 804,200円 |
※満額とは、昭和16年 (1941) 4月2日以後に生まれた人が、40年間(20歳から60歳まで)納付した場合の支給額である。ただし、1941年4月1日以前に生まれた人は、生年月日により25〜39年納付すれば満額の支給額になる。
生まれ年 | 保険料(万円) | 給付(万円) | 倍率 |
---|---|---|---|
昭和10 (1935) 年 | 230 | 1,300 | 5.8 |
昭和20 (1945) 年 | 390 | 1,300 | 3.4 |
昭和30 (1955) 年 | 600 | 1,400 | 2.3 |
昭和40 (1965) 年 | 830 | 1,600 | 1.9 |
昭和50 (1975) 年 | 1,000 | 1,800 | 1.8 |
昭和60 (1985) 年 | 1,200 | 2,100 | 1.7 |
平成7 (1995) 年 | 1,400 | 2,300 | 1.7 |
平成17年 (2005) 年 | 1,600 | 2,600 | 1.7 |
すべての被保険者に共通する基礎年金と第1号被保険者のみの独自給付がある。老齢基礎年金の年金額は、1984年度における65歳以上の者の雑費を除いた基礎的支出が、単身の場合が、47,600円/月、夫婦世帯の場合が、83,700円/月であったこと、1984年度で25年間保険料を納付した場合の年金額が、48,000円/月であったことなどを勘案して、1985年の年金制度改正で50,000円/月(年額60万円 1984年度価格)となった。その後の財政再計算や物価スライドなどにより年金額の改定が行われ、現在の年金額の水準となっている。
年金給付は、その受給権者の希望により、給付額の全部の支給停止を申し出ることができる(一部のみの申出は不可)。
一般的に「基礎年金」と呼ばれるものには、正式にまたは峻別すれば「老齢基礎年金」であることが多い。将来および既に受給する年金額の内訳は「老齢基礎年金」を参照のこと。
詳細は障害年金#障害基礎年金を参照のこと
詳細は遺族年金#遺族基礎年金を参照のこと
(共通の注意事項)この場合の納付月数「36(300)ヶ月」とは、半額免除での納付「72(600)ヶ月」でも可能(半額のみで600ヶ月は現実的には不可能であるが例として提示)。逆に半額免除での納付「36(300)ヶ月」では不可能である。全額免除の場合はそもそも月数にカウントされない。また、「年金を受けないで」とは「基礎年金部分を受給しないで」である(例:「特別支給の老齢厚生年金」)。なお 「生計同一関係」とは、被保険者と住居及び家計を共同にすることを言い、「生計維持関係」とは、生計同一関係に加え同居家族一人あたりの年収が850万円未満の場合を指す(健康保険法における同居家族一人あたりの年収130万円未満と比べて条件が緩やかである)。
同一の支給事由に基づく基礎年金(1階部分)と被用者年金(2階部分)のみの併給を認め、それ以外の併給は認められない。例として、老齢基礎年金(1階部分)と老齢厚生年金(2階部分)は併給されるが、老齢基礎年金と障害基礎年金とは併給されない。ただし老齢基礎年金と付加年金とは併給される。
併給されない年金は、いったん両方が支給停止となり、あらためて自ら希望する年金について、受給する年金給付を選択する(支給停止の解除を申請する)。ただしすでに支給されている年金があるときは、特段の申請がない限り、当該年金給付について解除申請があったものとみなされ、引き続き当該年金が支給される。また解除申請はいつでも将来に向かって撤回することができる(別の年金給付への選択替えをすることができる)。
受給権者が65歳以上の場合に限り、以下の組み合わせは併給される。
給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえをすることができない(第24条)。
「譲渡」については、法律上いかなる例外も認められていない。「担保」については、独立行政法人福祉医療機構が行う小口貸付の担保に供する場合は例外である。「差し押さえ」については、老齢基礎年金・付加年金・脱退一時金の受給権を国税滞納処分(その例による処分を含む)により差し押さえる場合は例外である。
租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない(第25条)。ただし老齢基礎年金・付加年金についてはこの限りではない。
被保険者の資格に関する処分、給付に関する処分又は保険料その他国民年金法の規定による徴収金に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる(二審制)。また審査請求をした日から60日以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなして、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる(第101条)。審査請求は、原処分があった日の翌日から起算して2年を経過したときは、することができない(社会保険審査官及び社会保険審査会法第4条2項)。
以上の処分の取消しの訴えは、当該処分についての再審査請求に対する社会保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない(審査請求前置主義。第101条の2、行政事件訴訟法第8条1項但書)。審査請求及び再審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。被保険者の資格に関する処分が確定したときは、その処分についての不服を当該処分に基づく給付に関する処分の不服の理由とすることができない。
年金給付を受ける権利は、その支給事由が生じた日から5年を経過したときは、時効によって消滅する(第102条)。ただし当該年金給付がその全額につき支給を停止されている間は、時効は進行しない。また、年金時効特例法により、厚生労働大臣は、国民年金法による給付の受給権者または受給権者であった者(未支給年金の請求権者を含む)について記録の訂正がなされた上で裁定が行われた場合においては、その裁定による当該記録の訂正に係る受給権に基づき支払期日ごとに又は一時金として支払われる給付の支給を受ける権利について消滅時効が完成した場合においても、給付を支払うものとされる(年金時効特例法第2条)。つまり訂正がなされた場合、過去5年よりも以前の分の年金であっても給付される(時効特例給付)。
保険料その他国民年金法の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び死亡一時金を受ける権利は、2年を経過したときは時効によって消滅する。
保険料その他国民年金法の規定による徴収金についての督促は、時効中断の効力を有する。
社会保障制度は居住している国で加入するのが原則であるが、年金については受給資格や二重加入、いわゆる「払い損」等の問題を防止する目的で、2013年6月30日現在で以下の14カ国と社会保障協定を締結している。
締結国との間では、相手国での年金加入期間と日本での加入期間を通算することができ(韓国とイギリスを除く)、相手国の年金を受給できる可能性がある。なお締結国の場合は、相手国の年金支給申請も日本の年金事務所で行える。
国民年金保険料は、「社会保険料控除」の対象になる。対象金額は支払った額の全額だが、証明書の添付が条件。
年金問題(ねんきんもんだい)は、年金に関する諸問題のこと。各項目を参照のこと。
その他、年金#年金制度の課題も参照のこと。
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