出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/10/06 13:06:28」(JST)
図書目録(としょもくろく)とは図書について、その書誌情報などを集めた目録であり、
等が存在する。
図書目録(英: library catalog)は、1つまたは複数の図書館(いくつかの場所にある図書館のネットワークなど)の全ての書誌項目を記録したもの。書目(しょもく)と略されることもある。書誌項目とは任意の情報実体(例えば、書籍、コンピュータファイル、絵画、実物教材、地図など)、図書資料(例えば、アンソロジーに収録された小説)、図書資料のグループ(例えば、三部作)であり、目録とその図書館に利用者にとって適切な場合は目録からのリンク(例えば、ウェブページ)も含む。
カード目録 (card catalog) はかつてはよく見られたが、現在では事実上OPAC (online public access catalog) に置き換えられている。オンライン目録を「カード目録」と呼び続けている人もいる。OPACを備えた図書館でもカード目録を保持しているところもあるが、二次的なものとされ、滅多に更新されない。物理的なカード目録を保持している図書館では、そのカード目録を更新した最新年を掲示していることが多い。OPACを導入してカード目録を廃止した図書館もあり、それによってスペースを有効利用している。
チャールズ・エイミー・カッター(英語版)は1876年、『辞書体目録規則』の中で初めて書誌体系の目的を明文化した。カッターによれば、その目的は以下の通りである。
これらの目的は最近の定義でも同様に認識されており、20世紀を通して一貫していた。1960/61年、カッターの示した目的はルベツキーとパリの目録原則国際会議 (ICCP) が改定した。1998年には、図書目録の目標と機能について書誌レコードの機能要件 (FRBR) を使って定義する試みが行われ、その中で利用者の4つの行動(発見、識別、選択、入手)を定義した。
図書目録には以下のような種類のものが存在する。
図書目録はその目的・機能により蔵書目録・著述目録・解題目録・善本目録・分類目録・分類目録・主題目録・叢書目録・出版目録・販売目録・舶載目録・現存目録・指導目録など、数多くの名称が付けられている[1][2]。
図書目録の起源は写本の一覧であり、版型順に並べたり、著者名の大まかなアルファベット順に並べたものだった。印刷された目録を「辞書体目録」(dictionary catalog) などと呼び、その図書館外の学者らは目録を見て内容を想像した。新たな書籍の情報を追加できるように空白ページを挟んだものや、書類ばさみ方式で紙を新たに挟めるようにしたものなどがあった。また、ブリキ缶に紙を綴じずに入れる場合もあった。カード目録が登場したのは19世紀であり、これによって柔軟性が増し、20世紀末にはOPACが開発された(後述)。
図書目録の初期の歴史については、Strout(1956年)[4]に詳しい。
中国では、漢の劉向・劉歆父子によって宮中の図書の整理が行われ、『別録』『七略』が最初とされる。『漢書』などの正史には「芸文志」と呼ばれる一種の図書目録が設けられている。晋の荀勗が作った『中経新簿』で四部分類法が初めて採用され、長く中国における図書目録の基本となった。以後、官民における図書目録が作成され、清の官撰解題目録である『欽定四庫全書総目提要』は200巻における大規模なものとなった[1]。
日本では、仏教書の目録が最初に作成されたと推定され、最澄・空海ら唐に留学した8名の僧侶が日本に持ち帰った経典などの目録は「入唐八家請来目録」と称せられた。続いて一般書の目録も作成され、漢籍では藤原佐世が作成したとされる『日本国見在書目録』が、国書(日本の書籍)では13世紀末に作成されたと伝えられる編者不明の『本朝書籍目録』が現存最古の目録とされている。江戸時代になると、書籍そのものの刊行が盛んになるとともに、刊行された書籍に関する目録に対する需要が増えて、多数の書籍目録が刊行された。ただ、国書の目録に関しては明治維新に至るまで標準的な図書分類法が完成しなかったため、各目録とも独自の主題に基づいた分類法を採用した[1][2]。統一した図書分類法作成の動きが登場するのは近代に入ってからとなる。
目録作成は一般に複数の人間がチームを結成したり、時間を置いて定期的に行うため、一貫性を保持するための規則が必要である。利用者が目録から特定の項目を探すことができ、項目内のデータを一意に解釈できなければならない。目録作成規則には以下のような要素がある。
蔵書が多ければ多いほど、規則の詳細化が必要になる。利用者は1つの書籍を探すのに、数百や数十の項目を見比べるといったことはできないし、しないものである。
現在、目録作成規則は国際標準書誌記述 (ISBD) に基づいているか、それに準ずる規則を採用していることが多い。ISBDは 国際図書館連盟 (IFLA) が図書館の所蔵する各種資料に対応できるよう策定したものである。この規則では項目に次のような内容を含める。タイトルと責任表示(著者または編集者)、版表示、資料の形態(例えば、地図ならその縮尺)、出版関連情報(出版者、出版年など)、物理的詳細(例えばページ数)、シリーズ、注記、識別子(ISBN)である。英米でよく採用されている目録作成規則は『英米目録規則 第2版』(AACR2) である。ドイツ語圏では Regeln für die alphabetische Katalogisierung (RAK)、日本語圏では『日本目録規則』(NCR) がある。AACR2は多くの言語に翻訳され、世界中で採用されている。AACR2は「記述目録法」に関する規則であり、「主題目録法」(分類目録)は扱わない。
外国語の書籍などは、目録上はその国の文字で翻字されていることがある。
書名目録の場合、次の2種類のソート順が存在する。
文法的ソート順の利点として、書名の最重要単語がキーワードとしても優れており、利用者が書名をおぼろげにしか覚えていない場合でも、その単語だけは覚えている可能性が高い。しかし、様々な規則を知っていないと書名のどの単語でソートされているかがわかりにくく、司書の世話にならないと書籍を探せないことがある。
目録によっては、個人名の標準化を行っている。すなわち、人名を実際に個々の書籍などに書かれている形式ではなく、標準化した形式でソートしている。この標準化の過程を名前典拠などと呼ぶ。名前典拠の利点は、特定著者についての所蔵作品一覧が容易に得られる点である。一方で実際に書かれている人名が標準化した人名と異なる場合、特定の書籍などを探すという目的では扱いにくい。目録作成者にとっては、Smith, J. が Smith, John なのか Smith, Jack なのかをいちいち確認する必要があるという意味で煩雑になる。
ものによっては書名も標準化される。これを専門用語では「統一表題」(uniform title) と呼ぶ。例えば、翻訳したものや改版したものは、オリジナルの書名でソートされることがある。多くの目録では、聖書の一部は統一表題でソートされる。シェークスピアの戯曲も「統一表題」を使うことが多い。
アルファベット順のソートには様々な複雑な問題がある。例えば、
分類目録では、使用する図書分類法体系を決定する必要がある。目録作成者は書誌項目に対して適切な分類を選択し、一意の分類番号を付与し、その番号を識別だけでなく書架のどの位置に置くかといった面でも利用し、図書館利用者が閲覧する際の助けとし、セレンディピティの利点を得られるようにする。
オンライン目録(OPAC)は、1960年代に生まれた機械可読目録 (MARC) によって可能になったもので、目録の可用性を劇的に改善した。MARCではAACR2などの形式的目録作成規則だけでなく、MARC固有の規則も採用しており、アメリカ議会図書館、国立国会図書館、OCLCなどが提示している。MARCは元々は物理的な目録カードの作成を自動化する目的で使われていた。現在では、MARC形式のコンピュータファイルを直接参照して検索できる。OPACは従来の目録カードに比べて、以下の点で優れている。
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