ザナミビル
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ザナミビル
|
IUPAC命名法による物質名 |
5-acetamido-4-guanidino-6-(1,2,3-trihydroxypropyl)-
5,6-dihydro-4H-pyran-2-carboxylic acid |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
B1 (Au) |
法的規制 |
S4 (Au), POM (UK), ℞-only (U.S.) |
投与方法 |
吸入 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
2%(経口) |
血漿タンパク結合 |
10% 以上 |
代謝 |
ほとんどなし |
半減期 |
2.5–5.1 時間 |
排泄 |
尿中 |
識別 |
CAS登録番号 |
139110-80-8 |
ATCコード |
J05AH01 |
PubChem |
CID 60855 |
DrugBank |
APRD00378 |
KEGG |
D00902 |
化学的データ |
化学式 |
C12H20N4O7 |
分子量 |
332.31 g/mol |
ザナミビル (Zanamivir) は、世界で最初に開発されたインフルエンザ治療薬。ザナミビル水和物としてグラクソ・スミスクライン社により商品名「リレンザ」が販売されている。A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルスに効果を示すが、C型インフルエンザウイルスには無効である。
概要
ノイラミニダーゼ (NA) と呼ばれる酵素によりウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制する。そのため、ノイラミニダーゼを持たないC型インフルエンザウイルスには無効。インフルエンザウイルスの増殖を抑制する作用を持つ薬剤であるため、感染初期(発症後48時間以内)における治療開始が有効である。インフルエンザ症状が発症後48時間以降に治療を開始した際の有用性は確立されていない。同様の作用機序を持つ薬剤としてオセルタミビル(リン酸オセルタミビル、タミフル)がある。
経口での絶対的生物学的利用能が2%程度と低いため、経口投与はできず、非経口経路投与に限られる。そのため、リレンザはザナミビル水和物ドライパウダーを吸入投与して用いられる。インフルエンザウイルスは、主に上気道より感染し、ウイルスは増殖し、発症する。リレンザは、薬物を吸入法により使用するため、薬物が迅速に上気道に到達する。そのため、経口投与する薬剤よりも即効性がある。
同剤は「ディスクへラー」という専用の吸入器によって吸入投与するが、吸入投与法が一般的に、小児、高齢者には難しい。そのため、簡単に経口投与できるタミフル(オセルタミビル)の発売後、ノイラミニダーゼ阻害薬におけるリレンザのシェアが激減した。ところが2006年 - 2007年のインフルエンザシーズンに、日本国内においてタミフル投与例での異常行動が世間の注目を浴びたこと(薬剤との因果関係は不明)により、本剤が見直された。また、タミフルに比べて耐性が起きにくいことが分かった[1]。
2008年 - 2009年の季節性インフルエンザシーズンにおいてオセルタミビルの耐性ウイルスの出現により、リレンザの使用量は、前シーズンより大幅に増大した。
歴史
- 1989年 - オーストラリアのビオタ (Biota) 社が、初めてのノイラミニダーゼ阻害薬としてザナミビルを開発。
- 1990年 - ビオタ社がグラクソ(現在のグラクソ・スミスクライン)に独占的にライセンス提供し、リレンザとして販売。
- 2000年12月 - 日本でリレンザが発売される[2]。健康保険給付対象外。
- 2001年2月 - 日本で健康保険の給付が適応。
- 2006年2月 - 日本で5歳以上の小児へ適応が承認。
- 2007年1月 - 日本でタミフルと同様にインフルエンザに対する予防投与が認可。
- 2013年2月 - 日本の厚生労働省は、2009年から2012年にリレンザを投与された患者3人にアレルギー性ショックが発生し、そのうちの1人(30代女性、予防投与)が死亡したことを発表[2]。
脚注
出典
- ^ 2011年2月15日の朝日新聞朝刊23面
- ^ a b “リレンザ ショック症状3人”. 読売新聞 朝刊 (読売新聞社): pp. 38面. (2013年2月28日)
外部リンク
- GlaxoSmithKline - くすりの情報 リレンザ
インフルエンザ |
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主要項目 |
研究 - ワクチン - 治療 - ゲノム解読 - 遺伝子再集合 - 重複感染 - シーズン
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ウイルス |
オルトミクソウイルス科 - A型 - B型 - C型
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A型の亜型 |
H1N1 - H1N2 - H2N2 - H2N3 - H3N2 - H5N1 - H7N7 - H7N9 - H10N8
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H1N1 |
パンデミック |
1918年の世界的流行 - 2009年の世界的流行
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科学 |
2009 H1N1
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H5N1 |
流行 |
クロアチア(2005年) - インド(2006年) - イギリス(2007年) - 西ベンガル州(2008年)
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科学 |
構造 - 感染経路 - 世界的感染 - 治験 - ヒトの致死率 - 社会的影響
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治療 |
抗ウイルス薬 |
塩酸アルビドール - アダマンタン化合物(アマンタジン、リマンタジン) - ノイラミニダーゼ阻害薬(ザナミビル(リレンザ)、オセルタミビル(タミフル)、ペラミビル(ラピアクタ)、ラニナミビル(イナビル))
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ワクチン |
フルミスト - フルゾーン
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流行・
パンデミック |
流行 |
ソ連かぜ(1977-1978年) - 福建かぜ(H3N2) - H7N9鳥インフルエンザの流行
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パンデミック |
ロシアかぜ(1889-1890年) - スペインかぜ - アジアかぜ - 香港かぜ - 2009年新型インフルエンザの世界的流行
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ヒト以外 |
哺乳類 |
イヌ - ネコ - ウマ(2007年オーストラリアでの流行) - ブタ
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哺乳類以外 |
トリ - 福建かぜ(鳥類間で流行したH5N1)
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関連項目 |
インフルエンザ様疾患 - 新型インフルエンザ - パンデミック
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 抗インフルエンザ薬 : (29)タミフル (30)リレンザ (特集 周産期で必要なくすり : まず押さえるべき35)
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- 下水中の抗インフルエンザ薬成分を用いた疫学調査手法の検討
Related Links
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
リレンザ
組成
成分・含量
- 1ブリスター中にザナミビル水和物をザナミビルとして5mg含有する。
添加物
禁忌
効能または効果
- A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防
- 本剤を治療に用いる場合には、抗ウイルス薬の投与が全てのA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療には必須ではないことを踏まえ、本剤の使用の必要性を慎重に検討すること。
- 本剤を治療に用いる場合、インフルエンザ様症状の発現から2日以内に投与を開始すること。
- 本剤を予防に用いる場合には、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。
- 高齢者(65歳以上)
- 慢性心疾患患者
- 代謝性疾患患者(糖尿病等)
- 腎機能障害患者
- 本剤はC型インフルエンザウイルス感染症には効果がない。
- 本剤は細菌感染症には効果がない(「重要な基本的注意」参照)。
治療に用いる場合
- 通常、成人及び小児には、ザナミビルとして1回10mg(5mgブリスターを2ブリスター)を、1日2回、5日間、専用の吸入器を用いて吸入する。
予防に用いる場合
- 通常、成人及び小児には、ザナミビルとして1回10mg(5mgブリスターを2ブリスター)を、1日1回、10日間、専用の吸入器を用いて吸入する。
- 本剤を治療に用いる場合、発症後、可能な限り速やかに投与を開始することが望ましい(症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない)。
- 本剤を予防に用いる場合には、次の点に注意して使用すること。
- インフルエンザウイルス感染症患者に接触後1.5日以内に投与を開始すること(接触後 36時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない)。
- インフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は、本剤を連続して使用している期間のみ持続する。
- 気管支喘息及び慢性閉塞性肺疾患等の慢性呼吸器疾患のある患者に対し、慢性呼吸器疾患の治療に用いる吸入薬(短時間作用発現型気管支拡張剤等)を併用する場合には、本剤を投与する前に使用するよう指導すること(「重要な基本的注意」参照)。
慎重投与
- 乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者(「重要な基本的注意」参照)
重大な副作用
ショック、アナフィラキシー
- ショック、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、咽頭・喉頭浮腫等)(頻度不明注1),2))が起こることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
気管支攣縮、呼吸困難
- 気管支攣縮、呼吸困難(いずれも頻度不明注1),2))が起こることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと(「重要な基本的注意」参照)。
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑
- 中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑(いずれも頻度不明注1),2))等の重篤な皮膚障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
in vitroでの有効性
- A型あるいはB型インフルエンザウイルスを感染させたMadin Darbyイヌ腎臓細胞に対して、ザナミビルは用量依存的な抗ウイルス作用を示し、そのIC50値はA型に対して0.004μM〜16μM、B型に対して0.005μM〜1.3μM、IC90値はA型に対して0.065μM〜>100μM、B型に対して0.065μM〜8.6μMであった。
動物モデルでの有効性
- A型あるいはB型インフルエンザウイルスを鼻腔内に接種し感染させたマウスに対し、ザナミビルの鼻腔内投与はマウス肺中のウイルス力価を用量依存的に低下させた4)。また、A型あるいはB型インフルエンザウイルスを鼻腔内に接種し感染させたフェレットに対して、ザナミビルの鼻腔内投与は鼻腔内洗浄液中のウイルス力価を用量依存的に低下させ、発熱を抑制した5)。
作用機序
- ザナミビルは、インフルエンザウイルス表面に存在する酵素ノイラミニダーゼの選択的な阻害薬であり6)、A型インフルエンザウイルスで知られている全てのサブタイプのノイラミニダーゼ及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを阻害した7),8)。ウイルスノイラミニダーゼは新しく産生されたウイルスが感染細胞から遊離するのに必要であり、さらに、ウイルスが粘膜を通って気道の上皮細胞に接近するのにも必要である可能性がある。ザナミビルは細胞外から作用し、この酵素を阻害することで気道の上皮細胞から感染性のインフルエンザウイルスが遊離するのを阻害し、A型及びB型インフルエンザウイルスの感染の拡大を阻止すると考えられる。
耐性
- 急性インフルエンザウイルス感染に対するザナミビルの効果を検討した海外第II相9)及び第III相臨床試験10)並びに予防効果を検討した海外臨床試験11)で、300例以上の患者から分離したインフルエンザウイルス株においてザナミビルに対する感受性の低下した株は認められなかった。これまでのところ、B型インフルエンザウイルス感染症の免疫力の低下した小児にザナミビルを2週間投与した1症例において、ザナミビル耐性株発現の報告がある12)。
国内において成人及び小児患者を対象にザナミビルに耐性を示すインフルエンザウイルス出現に関する調査を行った(2001年〜2005年シーズン:成人、2006年〜2009年シーズン:小児)。その結果、本剤投与前又は投与後に分離・同定した580例の患者のインフルエンザウイルス株のIC50値より、ザナミビル耐性が示唆される株は認められなかった。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- ザナミビル水和物(Zanamivir Hydrate)
化学名
- (+)-(4S,5R,6R)-5-acetylamino-4-guanidino-6-[(1R,2R)-1,2,3-trihydroxypropyl]-5,6-dihydro-4H-pyran-2-carboxylic acid hydrate
分子式
性状
- 白色の粉末である。
水にやや溶けにくく、エタノール(99.5)、アセトニトリル又はジエチルエーテルにほとんど溶けない。
0.0075mol/L硫酸溶液にやや溶けにくい。
放・吸湿性である。
分配係数(logP)
- ザナミビルは両性イオンを形成するため、分配係数の測定は不可能だった。
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- zanamivir
- 化
- ザナミビル水和物 zanamivir hydrate
- 商
- リレンザ Relenza
- 関
- 抗ウイルス薬、ウイルス、インフルエンザウイルス、オセルタミビル
作用機序
薬理作用
適応
処方
- インフルエンザ感染症の症状が出現したのち24-36時間以内に投与で、インフルエンザ感染症の症状を軽減できる。
注意
禁忌
副作用
[★]
リレンザ
- 関
- zanamivir