出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/22 10:29:39」(JST)
リソソーム(lysosome; ライソソーム)は、真核生物が持つ細胞小器官の一つである。リソゾーム、ライソソーム、ライソゾームまたは水解小体(すいかいしょうたい)とも呼ばれる。語源は、“lysys(分解)”+“some(〜体)”に由来する。生体膜につつまれた構造体で細胞内消化の場である。内部に加水分解酵素を持ち、エンドサイトーシスやオートファジーによって膜内に取り込まれた生体高分子はここで加水分解される。分解された物体のうち有用なものは、細胞質に吸収される。不用物はエキソサイトーシスによって細胞外に廃棄されるか、残余小体(residual body)として細胞内に留まる。単細胞生物においては、リソソームが消化器として働いている。また植物細胞では液胞がリソソームに相当する細胞内器官である。
リソソームの形成段階は前後二段階に分けることが出来る。まず、一次リソソーム(primary lysosome、一次水解小体)と呼称され、分解するべき対象を含有しないリソソームがある。リソソームはゴルジ体のトランスゴルジネットワークからクラスリンにコートされた被覆小胞として出芽した小胞からなり、これが分解するべき物体を含んだ小胞に融合した後のものは二次リソソーム(secondary lysosome、二次水解小体)と総称される。
さらに、二次リソソームはいくつか異なった経路で形成される。一つは、エンドサイトーシスに由来する。細菌等巨大な異物を取り込んだファゴソームや、ピノソームと呼ばれる細胞膜近辺のより微視的な分子を含んだ一重の生体膜からなる構造と、一次リソソームとが融合しファゴリソソーム(phagolysosome、食込融解小体)となり、取り込んだ物を分解する。もう一つはオートファゴソームに由来する。オートファゴソームは、ミトコンドリア等の細胞小器官が古くなった場合、あるいは細胞が飢餓状態に置かれたときに、小胞体に由来するとされる二重の生体膜がこれを包むことで形成される。オートファゴソームに一次リソソームが融合し、一重膜の構造体であるオートリソソーム(autolysosome、自家食融解小体)となったあと同様に分解が行われる。二次リソソームは一次リソソームと同様にエンドソーム等に融合し分解酵素の供給源となると考えられている。このように細胞内には様々なリソソームがあり、その大きさ・形状は様々に異なっている。
リソソームが含有する加水分解酵素群は酸性条件下で効率良く働く性質を持っており、リソソーム内部の水素イオン指数はプロトンポンプの働きによって pH5 程度と酸性に保たれている。このことによって、中性状態の他の細胞内区画ではリソソームが含む加水分解酵素は不活性となり、不必要な反応を防いでいる。
これらの酵素群はグリコシダーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ、ヌクレアーゼなど様々な加水分解酵素からなる。これらは粗面小胞体で合成された後、マンノースが付加され、ゴルジ体のシスゴルジネットワークに輸送された後に、マンノースにリン酸基が付加される。その結果生じたマンノース6リン酸はリソソームに運ばれるシグナルとして膜受容体であるマンノース6リン酸レセプターに認識される。
マンノース6リン酸レセプターは膜蛋白質であり、マンノース6リン酸を持つ分子を結合させこれを輸送小胞へ取り込むことによってリソソームへの蛋白質輸送を行っている。被覆小胞は一次リソソームと融合しその酸性環境下でレセプター結合蛋白質を乖離する。その後、レセプターは更なる分子輸送のためにトランスゴルジネットワークへと戻る。
魚類以外の脊椎動物の精子が持つアクロソームは特異なリソソームと考えられている。精子が卵子に到達した際にアクロソーム内の酵素が放出され、透明帯を分解する。この作用によって精子が卵子の細胞膜へ到達する通路が形成される。
リソソームの機能異常によって引き起こされる30以上もの遺伝病(ライソゾーム病)が存在することが分かっている。多くの遺伝病は、リソソームによって分解されなければならない物質が蓄積することによって疾患に至る。
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