- 英
- monoacylglycerol
- 関
- モノグリセリド
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/02/06 11:14:00」(JST)
[Wiki ja表示]
グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンしぼうさんエステル)は、グリセリンの持つ3つのヒドロキシ基のうち1つないし2つに脂肪酸がエステル結合したもので、代表的な食品用乳化剤である。
日本の食品衛生法ではモノグリセリド誘導体とポリグリセリン脂肪酸エステルもグリセリン脂肪酸エステルに属するものとして認可されており、本項で併せて述べる。
目次
- 1 アシルグリセロール
- 2 グリセリン脂肪酸エステル
- 3 モノグリセリド誘導体
- 4 ポリグリセリン脂肪酸エステル
- 5 参考文献
アシルグリセロール[編集]
脂肪酸が1つ結合したものがモノアシルグリセロール、2つ結合したものはジアシルグリセロールであるが、あわせてモノアシルグリセロール(Monoacylglycerol)と通称される。3つ結合したものはトリアシルグリセロールであり、乳化剤としての性質は持たない。
グリセリン脂肪酸エステル[編集]
CH2OCOR
|
CHOH
|
CH2OH
モノグリセリドの構造式
天然の油脂にグリセリン脂肪酸エステルが含まれていることは古くから知られていたが、1854年にフランスのマルセラン・ベルテロが脂肪酸とグリセリンからグリセリン脂肪酸エステルを合成することに成功。1930年頃からマーガリンにグリセリン脂肪酸エステルが添加されるようになった。日本で製造・消費されるようになったのは1950年代に入ってからである。グリセリン脂肪酸エステルは疎水性乳化剤であるためW/O(油中水)型乳化に適しており、マーガリンの水滴分離防止などに使用されるが、他の親水性乳化剤と配合することによりO/W(水中油)型乳化も安定する。 グリセリン脂肪酸エステルは澱粉と複合体を作り、パンが硬くなるのを防ぐ効果がある。このため、油脂を含め製パン分野での使用が多くなっている。この他、低温での起泡性・高温での消泡性によりケーキ用起泡剤や豆腐用消泡剤、脂肪凝集作用によるホイップクリームやアイスクリームの保型性向上、防湿・被覆作用によるキャンディ・キャラメルのべたつき防止などに用いられる。工業的製造法としてはグリセリンと脂肪酸のエステル化、グリセリンと油脂のエステル交換の2通りがある。
モノグリセリド誘導体[編集]
CH2OCOR
|
CHOH
|
CH2OCOCH2
酢酸モノグリセリド(AMG)の構造式
モノグリセリド誘導体はモノグリセリド(モノグリセライド、Monoglyceride)のヒドロキシ基にさらに有機酸をエステル結合させたもので、有機酸モノグリセリドとも呼ばれる。日本では酢酸モノグリセリド(AMG)、クエン酸モノグリセリド(CMG)、コハク酸モノグリセリド(SMG)、ジアセチル酒石酸モノグリセリド(TMGまたはDATEM)、乳酸モノグリセリド(LMG)が認可されている。
- AMG - モノグリセリドを無水酢酸でアセチル化、またはトリアシルグリセロールとトリアセチンのエステル交換により作られ、マーガリンの伸展性向上、冷菓のチョコレートコーティングの割れ軽減、被覆性による精肉・ソーセージ・冷凍魚の水分蒸発防止や鮮度保持、ホイップクリームやケーキの起泡性向上などに効果がある。
- CMG - モノグリセリドとクエン酸を混合・加熱して作られ、酸化防止剤の助剤、クリーミングパウダーのO/W型乳化に用いられる。
- SMG - モノグリセリドとコハク酸無水物を反応、またはコハク酸と加熱反応して作られ、パンの品質改良に用いられる。
- TMG - 酒石酸のヒドロキシ基をアセチル化してジアセチル酒石酸無水物としたあとモノグリセリドと反応させて作られ、パンの品質改良やクリーミングパウダーのO/W型乳化に用いられる。
- LMG - 乳酸はモノグリセリドだけでなくジグリセリドとも反応しやすく、各種の製造法がある。ケーキの品質改良・気泡安定の作用がある。
ポリグリセリン脂肪酸エステル[編集]
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンをアルカリ触媒を用いて200~260度で加熱脱水し重合して得られたポリグリセリンのヒドロキシ基の1つ以上に脂肪酸がエステル化したもので、重合度や脂肪酸の数・種類により親水性のものや疎水性のものなど多様な種類が得られる。耐酸性・耐塩性に優れ、O/WおよびW/O型乳化、粉末の液体への分散、油脂の結晶調整、自動販売機で加温販売される缶コーヒーや缶スープなどの抗菌などに用いられる。
参考文献[編集]
- 『食品用乳化剤 -基礎と応用-』戸田義郎・門田則昭・加藤友治編 1997年 光琳
Japanese Journal
- キラル高速液体クロマトグラフィー/大気圧化学イオン化質量分析法によるグリシドール脂肪酸エステルの光学異性体分析
- 吉岡 智史,西村 一彦,高村 岳樹 [他],酒々井 眞澄,津田 洋幸,板橋 豊
- 分析化学 = Japan analyst 61(9), 783-790, 2012-09-05
- キラル高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(HPLC/MS)を用いて,食用油に微量存在し,安全性が危惧されているグリシドール脂肪酸エステル(GE)の光学異性体を分離,定量する方法を検討した.HPLC分析には,アミロース誘導体を固定相とするカラムとアセトニトリルに少量のメタノールを添加した移動相を使用した.MSには四重極型質量分析計を用いて,大気圧化学イオン化法で正イオンスペクトルを測定した.その …
- NAID 10030877346
- GC/MSにおけるマトリックス効果原因物質の探索およびその検証
- 杉立 久仁代,中村 貞夫,折方 紀道,水越 一史,中村 宗知,鳥羽 陽,早川 和一
- Journal of pesticide science 37(2), 156-163, 2012-05
- GC/MSを用いた残留農薬分析の問題点としてマトリックス効果と呼ばれる現象がある。厚生労働省の通知法「GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農作物)」に準じて抽出・精製した作物(馬鈴薯,ほうれん草,オレンジ,玄米,大豆)を用いてマトリックス効果を調べたところ,すべての作物でマトリックス効果が見られた。そこで,測定検液中にどんなマトリックス成分が含まれているかを調べた。マトリックス成分の探索には,メタ …
- NAID 120005451265
- モノアシルグリセロール中で加熱処理した小麦澱粉のESRによる分析
- 亀谷 宏美,伊藤 友美,鵜飼 光子
- 応用糖質科学 : 日本応用糖質科学会誌 1(4), 336-338, 2011-11-20
- 小麦澱粉にモノアシルグリセロールを加えて加熱処理し,ESR分析によって,含有する脂肪酸の種類や加熱条件の影響を検討した。モノアシルグリセロールはモノリノレート(ML),モノオレエート(MO)とモノステアレート(MS)であり,加熱処理はオープンエア条件の下,150℃で0.5時間,200℃で0.5時間,200℃で1時間である。試料のESRスペクトルはg=2.005の1本線信号で構成され,非常に強い異方 …
- NAID 110009691201
Related Links
- 栄養・生化学辞典 - モノアシルグリセロールの用語解説 - モノグリセリドともいう.グリセロールのモノ脂肪酸エステル.脂肪酸の消化過程では,主に2位のヒドロキシル基が脂肪酸エステルになっているものが生成する.
- では、ジアシルグリセロールではどうでしょうか。動物を用いた研究から、1,3-ジアシルグリセロールのほとんどが2-モノアシルグリセロールではなく、1-モノアシルグリセロールに消化されることがわかっています 2)。この1 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
モノアシルグリセロール
- 関
- monoglyceride
[★]
- 英
- monoacylglycerol lipase