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- vorinostat
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ボリノスタット
|
IUPAC命名法による物質名 |
N-hydroxy-N'-phenyl-octanediamide |
臨床データ |
商品名 |
Zolinza |
AHFS/Drugs.com |
monograph |
MedlinePlus |
a607050 |
ライセンス |
US FDA:リンク |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
|
投与方法 |
Oral |
薬物動態的データ |
血漿タンパク結合 |
71% |
代謝 |
Hepatic glucuronidation and oxidation
CYP system not involved |
半減期 |
2 hours |
排泄 |
Renal (negligible) |
識別 |
CAS番号 |
149647-78-9 |
ATCコード |
L01XX38 |
PubChem |
CID 5311 |
DrugBank |
DB02546 |
ChemSpider |
5120 |
UNII |
58IFB293JI |
KEGG |
D06320 |
ChEBI |
CHEBI:45716 |
ChEMBL |
CHEMBL98 |
化学的データ |
化学式 |
C14H20N2O3 |
分子量 |
264.32 g/mol |
SMILES
- O=C(Nc1ccccc1)CCCCCCC(=O)NO
|
InChI
-
InChI=1S/C14H20N2O3/c17-13(15-12-8-4-3-5-9-12)10-6-1-2-7-11-14(18)16-19/h3-5,8-9,19H,1-2,6-7,10-11H2,(H,15,17)(H,16,18)
Key:WAEXFXRVDQXREF-UHFFFAOYSA-N
|
ボリノスタット(Vorinostat、商品名:ゾリンザ)は、別名:スベロイルアニリドヒドロキサム酸(スベロイル+アニリド+ヒドロキサム酸、SAHA)として知られる化合物である。 ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬であり、広くエピジェネティクな活性を有する。
他剤治療抵抗性・再発性の皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)への効果が期待される[1]。日本における効能・効果は、「皮膚T細胞性リンパ腫」である[2]。
又、ボリノスタットはHIV-1に感染した静止期のCD4+T細胞からHIV遺伝子を「放り出し」、プロウイルス状態でのHIV-1の潜伏を阻止できる事が示された[3]。
目次
- 1 承認
- 2 作用機序
- 3 発見の経緯
- 4 臨床試験
- 5 前臨床研究
- 6 外部リンク
- 7 関連項目
- 8 参考資料
承認
ボリノスタットは最初のHDAC阻害薬[4] として米国で2006年10月6日[5]に、日本で2011年7月1日[6]に承認を取得した。
一方で、急性骨髄性白血病の第II相臨床試験では有効性を示すことが出来なかった[7]。
作用機序
ボリノスタットはHDACの活性中心に結合し、同部位に在る亜鉛イオンをキレート化する[8]。 HDACが阻害されることでアセチル化されたヒストン等の蛋白質が蓄積する。その中には、細胞の分化を決定づけるのに必要な因子も含まれている[8]。その因子の高発現の結果、脱分化(=癌化)が抑制される。
発見の経緯
1971年にジメチルスルホキシドが赤白血病の赤血球系異常幼若細胞を分化させることが発見され、分子探索の結果、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)が発見された。
臨床試験
ボリノスタットはCTCLの近縁であるセザリー症候群の治療にも用いられる[9]。 多形性膠芽腫に有効であるとの研究も有り[10]、手術・放射線・化学療法後に再発した多形性膠芽腫に対してボリノスタットを用いた場合の全生存中央期間は5.7ヶ月(同様の患者に対するそれ以前の試験では4~4.4ヶ月)であった。他の脳腫瘍に対する臨床試験(他剤併用)も予定されている。
進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対するボリノスタット併用化学療法では、奏効率、無増悪生存期間、全生存期間の何れも改善が見られたが、生存期間の延長は5%有意とはならなかった[11]。
イダルビシン及びシタラビンを併用した骨髄異形成症候群に対する第II相臨床試験の結果は良好であった[12]。
日本に於いては、再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫患者に対して第I相臨床試験[13]で忍容性が確認された後、海外前期第II相試験[14](奏効率:24.2%(8/33))、海外後期第II相試験[15](奏効率:29.7%(22/74))の結果を受けて承認申請された。
前臨床研究
ボリノスタットはHIV感染患者の身体からウイルスを絶滅させることが出来るかもしれない[16]。 ボリノスタットはin vitroとin vivoの両方で、潜在性に感染したT細胞のウイルスに有効性を示した[17][18]。
ボリノスタットは又、α1-アンチトリプシン欠損症[19]や 嚢胞性線維症[20]に於ける病態生理学的な変化に対してある程度の効果を示す。
外部リンク
関連項目
参考資料
- ^ “ZOLINZA, Merck's Investigational Medicine for Advanced Cutaneous T-Cell Lymphoma (CTCL), To Receive Priority Review from U.S. Food and Drug Administration” (プレスリリース), Merck & Co., (2006年6月7日), http://www.merck.com/newsroom/press_releases/research_and_development/2006_0607.html 2006年10月6日閲覧。
- ^ “ゾリンザカプセル100mg 添付文書”. 2014年10月29日閲覧。
- ^ “Administration of vorinostat disrupts HIV-1 latency in patients on antiretroviral therapy” (2012年7月26日). 2014年10月29日閲覧。
- ^ HDAC Inhibitors Base (vorinostat)
- ^ “Zolinza (vorinostat) dosing, indications, interactions, adverse effects, and more”. Medscape Reference. WebMD. 2014年2月16日閲覧。
- ^ “抗悪性腫瘍剤「ゾリンザ®カプセル100mg」9月14日(水) 新発売” (2011年9月12日). 2014年10月29日閲覧。
- ^ Schaefer, EW; Loaiza-Bonilla, A; Juckett, M; DiPersio, JF; Roy, V; Slack, J; Wu, W; Laumann, K; Espinoza-Delgado, I; Gore, SD; Mayo P2C Phase II, Consortium (October 2009). "A phase 2 study of vorinostat in acute myeloid leukemia." (PDF). Haematologica 94 (10): 1375–82. doi:10.3324/haematol.2009.009217. PMC 2754953. PMID 19794082.
- ^ a b Richon, Victoria. “Cancer biology: mechanism of antitumour action of vorinostat (suberoylanilide hydroxamic acid), a novel histone deacetylase inhibitor”. British Journal of Cancer. 2012年5月3日閲覧。
- ^ Cuneo A, Castoldi. “Mycosis fungoides/Sezary's syndrome”. 2008年2月15日閲覧。
- ^ “Vorinostat shows anti-cancer activity in recurrent gliomas” (プレスリリース), Mayo Clinic, (2007年6月3日), http://www.eurekalert.org/pub_releases/2007-06/mc-vsa053007.php 2007年6月3日閲覧。
- ^ http://www.rtmagazine.com/reuters_article.asp?id=20091209clin013.html Dec 2009. URL dead Jan 2012
- ^ “Zolinza, Idarubicin, Cytarabine Combination Yields High Response Rates In MDS Patients (ASH 2011)”. 2014年10月29日閲覧。
- ^ “臨床成績(1)国内第I相試験(089試験)”. 2014年10月29日閲覧。
- ^ “臨床成績(3)海外前期第II相試験(005試験)”. 2014年10月29日閲覧。
- ^ “臨床成績(2)海外後期第II相試験(001試験)”. 2014年10月29日閲覧。
- ^ “Study of the Effect of Vorinostat on HIV RNA Expression in the Resting CD4+ T Cells of HIV+ Pts on Stable ART”. ClinicalTrials.gov (2011年3月21日). 2014年10月29日閲覧。
- ^ Archin NM, Espeseth A, Parker D, Cheema M, Hazuda D, Margolis DM (2009). "Expression of latent HIV induced by the potent HDAC inhibitor suberoylanilide hydroxamic acid.". AIDS Res Hum Retroviruses 25 (2): 207–12. doi:10.1089/aid.2008.0191. PMC 2853863. PMID 19239360.
- ^ Contreras X, Schweneker M, Chen CS, McCune JM, Deeks SG, Martin J et al. (2009). "Suberoylanilide hydroxamic acid reactivates HIV from latently infected cells.". J Biol Chem 284 (11): 6782–9. doi:10.1074/jbc.M807898200. PMC 2652322. PMID 19136668.
- ^ “Histone Deacetylase Inhibitor (HDACi) Suberoylanilide Hydroxamic Acid (SAHA)-mediated Correction of α1-Antitrypsin Deficiency” (2012年9月20日). 2014年10月29日閲覧。
- ^ “Reduced Histone Deacetylase 7 Activity Restores Function to Misfolded CFTR in Cystic Fibrosis” (2009年12月6日). 2014年10月29日閲覧。
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ゾリンザカプセル100mg
組成
有効成分の名称
含量:ボリノスタットとして
添加物
- 結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム
カプセル本体:ゼラチン、酸化チタン
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 重度の肝障害患者〔副作用が強くあらわれるおそれがある。肝障害患者では、本剤の血清中濃度が上昇するおそれがある。(「薬物動態」の項参照)〕
効能または効果
- 「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
- 本剤以外の治療の実施についても慎重に検討した上で、適応患者の選択を行うこと。
- 本剤の皮膚以外の病変(内臓等)に対する有効性は確立していない。〔「臨床成績」の項参照〕
- 通常、成人にはボリノスタットとして1日1回400mgを食後経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- 全身投与による他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
- 本剤の投与については、以下の基準を目安に、休薬、減量又は投与中止の判断を行うこと。
- 海外第II相試験(001試験)の休薬、減量又は投与中止基準
休薬
- NCI CTCAE ver.3.0 Grade 3又は4の毒性が認められた場合、Grade 1以下に回復するまで、最大2週間休薬する。休薬に至った毒性がGrade 1以下に回復した後減量して再開する。ただし、Grade 3の貧血及び血小板減少症は、休薬は必須ではない。
用量変更
- 投与量の減量は、下記に示した方法に従って実施する。
1回目の用量変更:1日1回300mg
2回目の用量変更:1日1回300mg5日間投与後2日間休薬
投与中止
- 休薬に至った毒性が2週間以上Grade 1以下まで回復しない場合、又は2回目の用量変更を実施したにもかかわらず、再度、休薬を必要とする毒性が認められた場合、投与を中止する。
慎重投与
- 静脈血栓塞栓症を有する又は既往歴のある患者〔肺塞栓症、深部静脈血栓症が発現、悪化するおそれがある。(「重大な副作用」の項参照)〕
- 軽度及び中等度の肝障害患者〔使用経験が少ない。肝障害患者では、本剤の血清中濃度が上昇するおそれがある。(「薬物動態」の項参照)〕
- 糖尿病又はその疑いのある患者〔糖尿病が悪化するおそれがある。(「重要な基本的注意」「重大な副作用」の項参照)〕
重大な副作用
肺塞栓症(4.7%)、深部静脈血栓症(1.2%)
- 肺塞栓症、深部静脈血栓症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
血小板減少症
(25.6%)
- 血小板減少があらわれることがあるので、定期的に血液検査を実施するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
貧血
(12.8%)
- 貧血があらわれることがあるので、定期的に血液検査を実施するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
脱水症状
(1.2%)
- 脱水症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
高血糖
(4.7%)
- 高血糖があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
腎不全
(頻度不明※)
- 腎不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
薬効薬理
作用機序
- ボリノスタットは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)であるHDAC1、HDAC2及びHDAC3(クラスI)、並びにHDAC6(クラスIIb)の酵素活性を阻害する。HDACの阻害によりヒストン等のアセチル化が増加すると、クロマチン構造の弛緩等を介して、がん抑制遺伝子を含む遺伝子発現が増加し、分化やアポトーシスが誘導され、腫瘍増殖が抑制されると推測されている。しかし、詳細な作用機序は解明されていない。12)、13)
抗腫瘍効果
In vitro
- ボリノスタットは、ヒト皮膚T細胞性リンパ腫由来HH細胞株に対して、細胞増殖抑制作用を示した。14)
In vivo
- ヒト皮膚T細胞性リンパ腫由来HH細胞株を皮下移植したマウスにおいて、ボリノスタット投与により腫瘍の増殖を遅延させる傾向が認められた。15)
有効成分に関する理化学的知見