- 英
- prasugrel
- 商
- エフィエント
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プラスグレル
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IUPAC命名法による物質名 |
(RS)-5-[2-cyclopropyl-1-(2-fluorophenyl)-2-oxoethyl]-4,5,6,7-
tetrahydrothieno[3,2-c]pyridin-2-yl acetate |
臨床データ |
商品名 |
Effient, Efient |
AHFS/Drugs.com |
monograph |
MedlinePlus |
a609027 |
ライセンス |
EMA:リンク、US FDA:リンク |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
|
投与方法 |
Oral |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
≥79% |
血漿タンパク結合 |
Active metabolite: ~98% |
代謝 |
Rapid intestinal and serum metabolism via esterase-mediated hydrolysis to a thiolactone (inactive), which is then converted, via CYP450-mediated (primarily CYP3A4 and CYP2B6) oxidation, to an active metabolite (R-138727) |
半減期 |
~7 hours (range 2-15 hours) |
排泄 |
Urine (~68% inactive metabolites); feces (27% inactive metabolites) |
識別 |
CAS番号 |
150322-43-3 |
ATCコード |
B01AC22 |
PubChem |
CID 6918456 |
DrugBank |
DB06209 |
ChemSpider |
5293653 |
UNII |
34K66TBT99 |
KEGG |
D05597 |
ChEMBL |
CHEMBL1201772 |
化学的データ |
化学式 |
C20H20FNO3S |
分子量 |
373.442 g/mol |
SMILES
- CC(=O)Oc1cc2c(s1)CCN(C2)C(c3ccccc3F)C(=O)C4CC4
|
InChI
-
InChI=1S/C20H20FNO3S/c1-12(23)25-18-10-14-11-22(9-8-17(14)26-18)19(20(24)13-6-7-13)15-4-2-3-5-16(15)21/h2-5,10,13,19H,6-9,11H2,1H3
Key:DTGLZDAWLRGWQN-UHFFFAOYSA-N
|
プラスグレル(Prasugrel、開発コード:CS-747、商品名:エフィエント)は第一三共が開発した抗血小板薬である。経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患に用いられる。2009年2月に欧州で承認され、現在英国で入手可能である。2009年7月には米国で承認された。2014年3月24日に日本でも承認され、5月27日に発売された[1]。
目次
- 1 適応
- 2 禁忌
- 3 副作用
- 4 相互作用
- 5 作用機序
- 6 薬物動態学
- 7 特許
- 8 参考資料
- 9 外部リンク
適応
日本での適応は、PCI適応の急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞である[2]。米国での適応は、PCI適応の急性冠症候群患者の血栓性心血管イベント(血栓症を含む)の減少である[3]。
プラスグレル等のP2Y12阻害薬は、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に於いて死亡リスクを変化させないが、出血リスクを増加し、更なる心循環系疾患を引き起こすので、ルーチンに投与することについては疑問が有る[4]。
禁忌
米国では、消化性潰瘍等で出血の有る患者、又は一過性虚血性疾患の既往の有る患者には、発作(脳血栓症及び頭蓋内出血)のリスクが高くなる為禁忌である[5]。日本に於いても出血している患者への投与は禁忌とされている[2]。
副作用
日本の添付文書で重大な副作用とされているものは、出血、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、過敏症である。又、類薬で起こった副作用として、肝機能障害及び血液障害(無顆粒球症、再生不良性貧血等)の注意喚起がなされている。
相互作用
クロピドグレルの場合とは違い、プロトンポンプ阻害薬はプラスグレルの抗血小板作用を減弱しないので、併用は比較的安全とされる[6]。
作用機序
プラスグレル(左上)からの活性代謝物(右上)の生成経路。クロピドグレルの場合と異なり、CYP2C19に因るチオフェン環の酸化を要しない。活性化の最初と最後の段階は加水分解である。左下と右下の2つの構造は互変異性体である。
プラスグレルはチクロピジンやクロピドグレルと同じチエノピリジン系に属するADP受容体阻害薬である。これらはP2Y12に不可逆的に結合する事で血小板凝集を減弱させる。クロピドグレルと比べるとプラスグレルのADP誘導性の血小板凝集抑制はより速やかで確実であり、健常者及び冠動脈疾患患者(PCI施行中の患者を含む)に於いてより高用量のクロピドグレルと同等の効果を示した[7]。
クロピドグレルは2010年3月12日にFDAより黒枠警告を表示するよう指示された[8][9]様に、米国に2〜14%、日本で約20%[10]存在するCYP2C19活性欠損患者では作用を発現し難いと思われるが、プラスグレルは殆どの患者に有効である。しかし、プラスグレルの作用が減弱する場合が有るとの報告も有る[11]。
薬物動態学
プラスグレルによる血小板凝集抑制能は、光透過型血小板凝集能測定法(Light Transmittance Aggregometry:ADP 5〜20µM)で測定できる[12]。ローディングドーズとして60mgを投与した後、90%の患者で1時間後に50%の血小板凝集抑制を示した。最大抑制は約80%であった。10mg/日での定常状態(3〜5日)に於ける血小板凝集抑制は平均70%であった。プラスグレルの投与中止後、凝集能は5〜9日で元の値に戻った。これはプラスグレルの動態というよりは血小板の新生に因る。 クロピドグレル75mgを中止してプラスグレル10mgの投与を開始すると、凝集抑制の亢進を示したが、プラスグレル単剤10mg投与の定常状態よりも強くはなかった。凝集抑制の亢進は出血リスクを増大させる。凝集抑制と臨床効果(血栓性イベント低下)の相関は未だ明らかではない[13]。
プラスグレルはプロドラッグであり、体内で速やかに代謝されて活性代謝物になり、更に不活性体になる。活性代謝物の推定半減期は7時間(範囲:2〜15時間)である。健常者、安定粥状性動脈硬化症患者、PCI施行中の患者の何れでも同じ血中動態を示した。
特許
- US 5288726 claims prasugrel compound; will expire on 14 Apr 2017
- US 6693115 claims hydrochloride salt of prasugrel; will expire on 3 Jul 2021
参考資料
- ^ “抗血小板剤「エフィエントⓇ錠3.75mg/5mg」新発売のお知らせ” (2014年5月27日). 2014年11月14日閲覧。
- ^ a b “エフィエント錠3.75mg/エフィエント錠5mg 添付文書”. 2014年11月14日閲覧。
- ^ Baker WL, White CM. Role of Prasugrel, a Novel P2Y12 Receptor Antagonist, in the Management of Acute Coronary Syndromes. American Journal of Cardiovascular Drugs Aug 1, 2009; 9 (4): 213-229. Link text
- ^ Bellemain-Appaix, A.; Kerneis, M.; O'Connor, S. A.; Silvain, J.; Cucherat, M.; Beygui, F.; Barthelemy, O.; Collet, J.-P.; Jacq, L.; Bernasconi, F.; Montalescot, G. (24 October 2014). "Reappraisal of thienopyridine pretreatment in patients with non-ST elevation acute coronary syndrome: a systematic review and meta-analysis". BMJ 347 (aug06 2): g6269–g6269. doi:10.1136/bmj.g6269.
- ^ Effient (prasugrel hydrochloride) Prescribing Information September 2011 http://www.fda.gov/Safety/MedWatch/SafetyInformation/ucm275490.htm
- ^ John, Jinu; Koshy S (2012). "Current Oral Antiplatelets: Focus Update on Prasugrel". Journal of american board of family medicine 25: 343–349. doi:10.3122/jabfm.2012.03.100270.
- ^ Wiviott SD, Braunwald E, McCabe CH et al. (2007). "Prasugrel versus clopidogrel in patients with acute coronary syndromes". N Engl J Med 357 (20): 2001–15. doi:10.1056/NEJMoa0706482.
- ^ “FDA Announces New Boxed Warning on Plavix: Alerts patients, health care professionals to potential for reduced effectiveness” (プレスリリース), Food and Drug Administration (United States), (2010年3月12日), http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm204253.htm 2010年3月13日閲覧。
- ^ “FDA Drug Safety Communication: Reduced effectiveness of Plavix (clopidogrel) in patients who are poor metabolizers of the drug”. Drug Safety and Availability. Food and Drug Administration (United States) (2010年3月12日). 2010年3月13日閲覧。
- ^ “CYP2C19 遺伝子多型受託解析”. 2014年11月14日閲覧。
- ^ Silvano M, et al. (2011). "A case of resistance to clopidogrel and prasugrel after percutaneous coronary angioplasty.". J Thromb Thrombolysis. 31(2) (2): 233–4. doi:10.1007/s11239-010-0533-x. PMID 21088983.
- ^ O'Riordan, Michael. “Switching from clopidogrel to prasugrel further reduces platelet function”. http://www.theheart.org.+2011年4月1日閲覧。
- ^ Efient: Highlights of prescribing information
外部リンク
- Prasugrel information at プロウスサイエンス(英語版)
- http://www.clevelandclinicmeded.com/online/webcasts/acute-coronary-syndrome/non-st-elevation/webcast.asp ; Use of prasugrel vs clopidogrel and other anti-aggregant drugs in ACS
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- プラスグレルが有効であったステント内血栓症の2 症例
- 抗血小板薬のリスクとベネフィット (特集 「抗血栓療法の今」を語る)
- 2 繰り返すステント血栓症に対するプラスグレルのCYP2C19^*2/^*2遺伝子多型への影響について(Ⅰ.一般演題, 第282回新潟循環器談話会)
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
エフィエント錠3.75mg
組成
有効成分
- プラスグレル塩酸塩 4.12mg
(プラスグレルとして3.75mg)
添加物
- 乳糖水和物、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク、三二酸化鉄
禁忌
- 出血している患者(血友病、頭蓋内出血、消化管出血、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[出血を助長するおそれがある。]
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
- 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
- 急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
- PCIが適用予定の虚血性心疾患患者への投与は可能である。冠動脈造影により、保存的治療あるいは冠動脈バイパス術が選択され、PCIを適用しない場合には、以後の投与を控えること。
- 通常、成人には、投与開始日にプラスグレルとして20mgを1日1回経口投与し、その後、維持用量として1日1回3.75mgを経口投与する。
- アスピリン(81〜100mg/日、なお初回負荷投与では324mgまで)と併用すること。
- ステント留置患者への本剤投与時には該当医療機器の添付文書を必ず参照すること。
- PCI施行前に本剤3.75mgを5日間程度投与されている場合、初回負荷投与(投与開始日に20mgを投与すること)は必須ではない。(本剤による血小板凝集抑制作用は5日間で定常状態に達することが想定される。)
- 空腹時の投与は避けることが望ましい(初回負荷投与を除く)。(「薬物動態」、「臨床成績」の項参照)
慎重投与
- 出血傾向及びその素因のある患者(頭蓋内出血の既往のある患者) [出血を生じるおそれがある。]
- 高度の肝機能障害のある患者 [凝固因子の産生が低下していることがあるので、出血の危険性が増大するおそれがある。]
- 高度の腎機能障害のある患者 [出血の危険性が増大するおそれがある。]
- 高血圧が持続している患者(「重要な基本的注意」の項参照)
- 高齢者 [出血の危険性が増大するおそれがある(「高齢者への投与」の項参照)。]
- 低体重の患者 [出血の危険性が増大するおそれがある。なお、体重50kg以下の患者では、年齢、腎機能等の他の出血リスク因子及び血栓性イベントの発現リスクを評価した上で、必要に応じて維持用量1日1回2.5mgへの減量も考慮すること(「臨床成績」の項参照)。]
- 脳梗塞又は一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴のある患者 [海外臨床試験で、初回負荷用量60mg、維持用量10mg/日投与でアスピリンと併用した場合に、出血の危険性が増大したとの報告がある。]
注) 本剤の承認用量は初回負荷用量20mg、維持用量3.75mg/日である。
- 他のチエノピリジン系薬剤(クロピドグレル等)に対し過敏症の既往歴のある患者 [本剤投与後に血管浮腫を含む過敏症の発現が報告されている。]
重大な副作用
出血
頭蓋内出血(初期症状:頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、片麻痺等)、消化管出血、心嚢内出血等の出血(1.2%)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
頻度不明注)
- TTP(初期症状:倦怠感、食欲不振、紫斑等の出血症状、意識障害等の精神・神経症状、血小板減少、破砕赤血球の出現を認める溶血性貧血、発熱、腎機能障害等)が認められた場合には、直ちに投与を中止し、血液検査(網赤血球、破砕赤血球の同定を含む)を実施し、必要に応じ血漿交換等の適切な処置を行うこと。
過敏症
頻度不明注)
- 血管浮腫を含む過敏症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
作用機序10〜13)
- プラスグレル塩酸塩はプロドラッグであり、生体内で活性代謝物に変換された後、血小板膜上のADP受容体P2Y12を選択的かつ非可逆的に阻害することで血小板凝集を抑制する。
抗血小板作用2,10,13,14)
- 各種実験動物(ラット、イヌ、サル)に経口投与したプラスグレルは、ADPにより惹起される血小板凝集を抑制した。
健康成人23例に初回負荷用量としてプラスグレル20mgを初日に投与し、翌日から維持用量3.75mg/日を6日間投与したとき、血小板凝集抑制作用は、初回負荷投与1時間後から速やかに発現した。20mgの初回負荷用量により、血小板凝集抑制率は、初回負荷投与1時間後に34%、8時間後に最高値52%を示し、維持用量投与期間中はほぼ同様な値で推移した。
抗血栓作用10,14)
- ラット動静脈シャント血栓モデル及び電気刺激による動脈血栓モデルにおいて、プラスグレルは経口投与により、用量に依存して血栓形成を抑制した。ラット動静脈シャント血栓モデルにおけるプラスグレルの抗血栓作用は、アスピリンとの併用により増強された。
病態モデルにおける作用13,15)
- ラット心筋梗塞モデルにおいて、プラスグレル塩酸塩を経口投与すると、心筋梗塞サイズが減少した。プラスグレルは経口投与により、ラット血栓性及び塞栓性脳梗塞モデルにおいて脳梗塞サイズを減少させ、ラット末梢動脈閉塞症モデルにおいて下肢の病変進行を抑制した。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- プラスグレル塩酸塩(Prasugrel Hydrochloride)
化学名
- 5-[(1RS )-2-Cyclopropyl-1-(2-fluorophenyl)-2-oxoethyl]-4,5,6,7-tetrahydrothieno[3,2-c ]pyridin-2-yl acetate monohydrochloride
分子式
分子量
性状
水にやや溶けやすく、N , N -ジメチルホルムアミド及びエタノール(99.5)にやや溶けにくい。
わずかに吸湿性である。
融点
分配係数
★リンクテーブル★
[★]
会社名
第一三共
成分
薬効分類
他の血液,体液用薬
薬効
経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患