出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/10/09 16:35:54」(JST)
テトラヒドロカンナビノール | |
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IUPAC名 | (−)-(6aR,10aR)-6,6,9-trimethyl-3-pentyl- 6a,7,8,10a-tetrahydro-6H-benzo[c]chromen-1-ol |
別名 | THC, Δ9-THC |
分子式 | C21H30O2 |
分子量 | 314.46 |
CAS登録番号 | [1972-08-3] |
沸点 | 200 °C(0.001 mmHg) |
テトラヒドロカンナビノール(Tetrahydrocannabinol; THC, Δ9-THC) はカンナビノイドの一種。多幸感を覚えるなどの作用がある向精神薬。大麻樹脂に数パーセント含まれ、大麻(マリファナ)の主な有効成分である。
THCは生きている大麻ではTHCA(THCのカルボン酸体)として存在し、伐採後に熱や光によって徐々に脱炭酸されてTHCへと変化していく。乾燥大麻の中ではTHCとTHCAが共存しており、この総THC(THC+THCA)で大麻のTHC含有率を表す。
水には溶けにくい(溶解度 1〜2 mg/L [1] )が、エタノールやヘキサンなどの有機溶媒には溶けやすい。脳などに存在するカンナビノイド受容体に結合することで薬理学的作用を及ぼす。
1964年、イスラエルのワイズマン研究所の ラファエル・メコーラム(Raphael Mechoulam) と Yechiel Gaoni によって分離された。2006年、スタンフォード大学の2人の化学者が合成に成功した[2]。
製薬会社ファーモス社は、THCの鏡像異性体類縁体として、デキサナビノール(Dexanabinol)という、THCのような向精神作用がなく脳損傷の進行を抑える治療薬を開発している[3][4]。
JWH-018というTHCのような精神作用を持つ物質が、脱法ドラッグとして流通し[5]、日本では2009年11月20日より指定薬物として規制されている[6]。
THCは、脳や体中のカンナビノイド受容体に結合することで薬理作用が起こる。カンナビノイド受容体に結合する本来の体が持っている神経伝達物質はアナンダミドで、1992年のアナンダミドの発見も、THCを分離したラファエルによる[7]。
メスカリンやシロシビンやリゼルグ酸ジエチルアミド (LSD) との交叉耐性はない[8]。
中毒性は無いがカフェイン程度の依存性がある。幻覚を見ることは稀である[8]。 欧米諸国の複数の統計・研究によれば、アルコールと近似した酩酊感・倦忘感を有する程度であり、周囲の人々に対する近親感を有し、酒乱の様な騒ぎを起こすことなく、平和に酔いつぶれたようになる程度である。日本の政府機関が啓発している「幻覚・妄想」は生じない、とのことで、日本政府の見解と欧米研究機関との研究成果に乖離が生じている。個人差もあるが一般的には血圧には変化はない。食欲が増進する[8]との大勢の体験者からの意見が寄せられている一方、「欧米でのマリファナ常習者は何故か皆痩せている」状況も指摘されており、未だ解明には至っていない。
ドロナビノールはTHCの純異性体のための国際一般名、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノールであり、大麻より発見された主な異性体である。[9]マリノール(ソルベー製薬の登録商標)として販売されている。ドロナビノールも、SVC製薬LP、ローズテクノロジーズの系列会社との販売契約とライセンスの条件のもとで、PAR製薬会社によって市場に出され、販売、流通されている。合成THCは一般にドロナビノールと称されることがある。アメリカ合衆国とドイツを含むいくつかの国で、処方薬(マリノールのもと[10])として市販されている。アメリカでは、マリノールはスケジュールIII薬物で、処方薬として利用可能であり、非麻薬性で精神的また身体的依存の危険性が低いとみなされている。2002年の申請がDEAによって受理されたにもかかわらず、大麻をマリノールの類似体としてスケジュール変更するための努力は、これまでのところ成功していない。マリノールのスケジュールIIからスケジュールIIIへのスケジュール変更の結果として、この物質に対して再処方が今は許可されている。マリノールは、アメリカ食品医薬品局(FDA)によって、エイズ患者の食欲不振(英語版)の治療に、同様に、化学療法を受ける患者の手に負えない吐き気と嘔吐に認可されており、それはなぜ天然のTHCがまだスケジュールI薬物であるかの多くの論争を提起した。[11]
ドロナビノールの類自体のナビロンは、バリアント・ファーマスーティカルズ(英語版)によって製造され、商標名セサメットのもとカナダで市販されている。セサメットはまたFDAの認可を受け2006年にアメリカで販売を開始している; それはスケジュールII薬物である。[12]
2005年4月、カナダ政府当局はサティベックスの販売を承認し、多発性硬化症患者のための経口スプレーで神経因性疼痛と痙縮を緩和するために用いることができる。サティベックスはテトラヒドロカンナビノールと一緒にカンナビジオールを含有し、個別のカンナビノイドではなく大麻全体の調合である。それはカナダでGWファーマシューティカルズによって販売されている、(近代では)世界で初の大麻を基にした処方薬である。さらに、サティベックスは2010年に欧州規制当局に認可された。[13]
雌の大麻株は、多発性硬化症患者を助ける主な抗けいれん剤と考えられているカンナビジオール(英語: cannabidiol)(CBD)を含む、60種のカンナビノイドを含有する;[14] また大麻の鎮痛効果に寄与する可能性のある抗炎症のカンナビクロメン(英語: cannabichromene)(CBC)。[15]
マリノールが十分な全身的作用に達するのに1時間以上かかるのに比べ[16]、喫煙や気化では数秒または数分である。[17] 症状を管理するためにちょうど十分な大麻の煙の吸入に慣れた一部の患者は、マリノールの所定用量による強すぎる陶酔に苦情を述べている。多くの患者は、マリノールは激しいサイケデリック効果を大麻よりも生じさせ、この差異は大麻の多くのTHC以外のカンナビノイドがもたらす穏やかな効果によって説明できると推測されると言う。そのため、ナビキシモルスのような大麻植物の植物エキスを基にした代替のTHC含有医薬品が開発されている。 マーク・クレイマン(英語: Mark A.R. Kleiman)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策学部の薬物政策分析プログラムの長はマリノールについて述べる「それは少しも楽しくなくて使用者の気分を悪くしたので、娯楽市場に浸透する恐れもなく認可され、医薬品としての、すべてを含んだ大麻の支持者を撃退するこん棒として利用できた」[18] 米国連邦法はドロナビノールをスケジュールIII規制物質として登録しており、ナビロンのような合成物質を除いて、ほかのすべてのカンナビノイドはスケジュールIのままである。[19]
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
テトラヒドロカンナビノールは日本において、麻薬及び向精神薬取締法により麻薬に指定されている[要出典]ため、その含有成分であるTHCを用いた臨床試験は大麻取締法などにより禁止されている。[要出典]。
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リンク元 | 「テトラヒドロカンナビノール」 |
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