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この項目では、軍事用語について説明しています。その他のスクランブルについては「スクランブル (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
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スクランブル(英語: Scramble)とは、軍用機の緊急発進である。領空侵犯に対して行われる戦闘機の緊急発進のほか、哨戒機、救難機等の軍用機も緊急発進を実施する。
航空自衛隊では日本国の周辺空域を24時間体制で監視している。国籍不明機が領空侵犯する恐れがあれば戦闘機F-15J、F-2、F-4EJ改が、緊急発進して自衛隊法84条に基づき対領空侵犯措置を実施する。 日本国周辺では、ロシア軍の示威飛行が年間を通じて実施されており、近年は中国人民解放軍の電子偵察機等の行動も活発化している。スクランブルが実施された場合、防衛省統合幕僚幹部から報道発表される場合がある[1]。
レーダーサイト、早期警戒機、空中警戒管制機(AWACS)により、日本の周辺空域を24時間体制で監視している。これらにより発見、補足されたレーダーデータは、JADGEシステムにより防空指令所(DC:三沢基地、入間基地、春日基地、那覇基地の4か所)で一元管理される[2]。
探知された航空機は、防空指令所で国籍、飛行計画に基づいて、航空機の識別を行う。その上で、対象機の動向が不明(=彼我不明機)で、我が国の領空に接近すると判断された場合、各航空方面隊から戦闘機部隊に緊急発進(スクランブル)が下令される[2]。スクランブル対象機は「仮想敵国の航空機」とは限らず、飛行計画が未提出の民間機やアメリカ軍機、気球などの浮遊物等の場合もある。
年度 | 緊急発進 件数総計 |
国別内訳 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
ロシア | 中国 | 北朝鮮 | 台湾 | その他 | ||
平成28年度 | 1168回 | 301回 | 851回 | 0回 | 8回 | 8回 |
平成27年度 | 873回 | 288回 | 571回 | 0回 | 2回 | 12回 |
平成26年度 | 943回 | 473回 | 464回 | 0回 | 1回 | 5回 |
平成25年度 | 810回 | 359回 | 415回 | 9回 | 1回 | 26回 |
平成24年度 | 567回 | 248回 | 306回 | 0回 | 1回 | 12回 |
平成23年度 | 425回 | 247回 | 156回 | 0回 | 5回 | 17回 |
平成22年度 | 386回 | 264回 | 96回 | 0回 | 7回 | 19回 |
平成21年度 | 299回 | 197回 | 38回 | 8回 | 25回 | 31回 |
平成20年度 | 237回 | 193回 | 31回 | 0回 | 7回 | 6回 |
対象航空機の接近が事前に察知できる場合、戦闘機を事前に上空待機させることも可能である。これをCAP(キャップ:COMBAT AIR PATROL 戦闘空中哨戒)という。
航空自衛隊におけるスクランブル発進の母基地は、戦闘機部隊が配備されている、千歳基地(北海道)、三沢基地(青森県)、百里基地(茨城県)、小松基地(石川県)、築城基地(福岡県)、新田原基地(宮崎県)、那覇基地(沖縄県)の7基地である。
スクランブル機の武装とは主に短射程空対空ミサイル(射程35km)とバルカン砲(射程1km)である。情勢により中射程空対空ミサイル(射程100km)を追加装備する場合もある。
航空自衛隊では、戦闘機の緊急発進と併せペトリオットミサイル(射程160km)を発射準備し、基地防空用の11式短距離地対空誘導弾(射程15km)、81式短距離地対空誘導弾(射程10km)と91式携帯地対空誘導弾(射程5km)、基地防空用20mmバルカン砲(射程1.5km)で、多重構造の防空網を構築している。
詳細は領空侵犯も参照'
緊急発進した要撃機は、防空指令所の要撃管制官の指示により対象機に接近し、状況の確認を行う[2]。このときに写真撮影が行われた場合、後日、統合幕僚本部等からのプレス発表時に公開される場合もある。
さらに、領空侵犯が生起した場合、警告を行う。航空自衛隊の対領空侵犯措置開始以来、平成27年度(2015年度)末までに領空侵犯は38回生起し、うち1回、信号射撃による警告を実施している(対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件)。
民間航空機が緊急事態に陥った場合や、大規模災害発生時も戦闘機が緊急発進して情報収集を行なう。昭和60年(1985年)8月の日本航空123便墜落事故では、2機のF-4EJ戦闘機が遭難機の捜索を実施し、平成元年(1989年)12月の中国民航機ハイジャック事件では、F-1支援戦闘機がハイジャック機を福岡空港まで誘導した。
UH-60J救難ヘリコプターとU-125A捜索機は、24時間体制で救難待機をしている。また、戦闘機部隊及び偵察航空隊は、大規模災害発生時等には緊急発進をして、被災地の情報収集を実施する。近年では、2016年(平成28年)4月の熊本地震において、築城基地のF-2A(第8航空団第6飛行隊所属)がスクランブル発進により情報収集を実施した例がある[3]。
また、輸送機部隊も、緊急輸送待機が24時間体制で維持されている。
海上自衛隊の護衛艦では艦載哨戒ヘリが、航空基地では哨戒機が24時間体制でアラート任務に就いている。
海上自衛隊では、哨戒機、護衛艦、潜水艦、音響測定艦、電子戦機を駆使して、日本周辺海域の哨戒(パトロール)を実施している。哨戒任務での対象目標は、潜水艦、艦艇、不審船、弾道ミサイル等である。日本国周辺海域で不審な目標を探知したならば、各種捜索機器及び目視により識別し、撮影画像を上級司令部に伝送する。また、増援の哨戒機を緊急発進させ、艦艇も緊急出港して継続的な監視体制に移行する。哨戒任務で収集した情報は統合幕僚監部のホームページで公表される。哨戒任務では通常、武装をしていないが、状況に応じて対艦ミサイル、対潜爆弾、機関銃、ミサイル防御装置等を搭載する。現在までに1件、能登半島沖不審船事件で威嚇射撃を実施した。潜水艦の探知情報を公表した例は、漢級原子力潜水艦領海侵犯事件がある。海上自衛隊の護衛艦の基地は、青森県大湊基地、神奈川県横須賀基地、京都府舞鶴基地、広島県呉基地、長崎県佐世保基地の5基地であり、哨戒機の基地は青森県八戸基地、神奈川県厚木基地、山口県岩国基地、鹿児島県鹿屋基地、沖縄県那覇基地の5基地である。
日本周辺海域で近隣諸国が軍事演習を実施する場合は、日本国政府から海上自衛隊に監視任務が命令される。この場合、航空会社に対しては国土交通省からNOTAMが、船舶に対しては海上保安庁から航行警報が発出される。
また海上保安庁の要請により、遭難船舶や不審船の捜索も行う。不審船の対処は、海上保安庁の管轄であるが、対処不能な場合には、海上自衛隊が海上警備行動を実施する。
災害派遣の要請を受けた場合は、救難飛行艇US-1、US-2、救難ヘリUH-60J等の救難飛行隊が緊急発進して、主に洋上と離島地域の救助に発進する。
2018年1月12日尖閣諸島接続海域にて潜航中の中国潜水艦を護衛艦おおなみ、護衛艦おおよどが追尾。外務省が駐日大使に厳重抗議。
2016年2月15日対馬海峡の接続水域にて潜航中の潜水艦を哨戒機P-3C(鹿屋航空基地所属)と護衛艦あさぎりが追尾。相手の国籍は公表せず。
2014年12月27日北海道宗谷海峡にて、浮上中のロシア海軍オスカーII級原子力潜水艦を哨戒機P-3C(八戸航空基地所属)が視認。
2013年5月19日沖縄県南大東島の接続水域にて、潜航中の国籍不明潜水艦を哨戒機P-3C(那覇航空基地所属)が探知。
2013年5月12日沖縄県久米島近海の接続水域にて、潜航中の国籍不明潜水艦を哨戒機P-3C(那覇航空基地所属)が探知。
2013年5月2日鹿児島県奄美大島近海の接続水域にて、潜航中の国籍不明潜水艦を哨戒機P-3C(鹿屋航空基地所属)が探知。
2010年4月13日沖縄県沖縄本島と宮古島の中間付近を浮上航行中の中国潜水艦キロ級2隻を、哨戒機P-3C(那覇航空基地所属)が視認。
2004年11月10日沖縄県宮古島と石垣島の中間付近にて漢級原子力潜水艦領海侵犯事件が発生。哨戒機P-3C(那覇航空基地所属)と護衛艦くらま、ゆうだちが追尾。
2003年11月12日鹿児島県大隅海峡を浮上航行中の中国潜水艦明級を、哨戒機P-3C(鹿屋航空基地所属)が視認。
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