出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/04/20 19:05:14」(JST)
コウイカ | |||||||||||||||
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東ティモールのコブシメ(英語版)
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分類 | |||||||||||||||
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亜目・科 | |||||||||||||||
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コウイカ(英: Cuttlefish、甲イカ)は(イカ、タコ、オウムガイが属する)頭足綱の、コウイカ目の海洋生物である。最近の研究によると、コウイカは無脊椎動物の中でももっとも知能が高い部類に属する[1]。さらに、全身に占める脳のサイズが無脊椎動物の中で最も大きいと指摘されている[1]。
"cuttlefish" という名前は、古英語の cudele に由来するかもしれない。その語はさらに、座布団や睾丸を意味する1400年代のノルウェー語 koddi、およびコウイカの形状を小袋と文字通り表現した中世ドイツ語 kudel から由来している。"fish"が付くため、英語圏では魚と誤解する者もいる。ギリシャ・ローマ世界(英語版)では、コウイカが驚いた時に呼吸管から排出する独特の茶色い顔料を得るため、コウイカは珍重された。それゆえ、ギリシャ語とラテン語で軟体動物の呼吸管 (siphon) を指す sepia(のちのイタリア語の seppia)は、英語で顔料の一種であるセピアを指すようになった。
コウイカの外套膜の後端は丸いドーム状になっており、外套膜の全側縁もしくは後ろ寄りに丸い耳形のヒレを持つ[2]。体内に殻(イカの骨)があり、大きなW型の瞳孔を持つ。また8本の触手と2本の触腕を持ち、それらには捕食を確実にするための小歯状突起がついた吸盤がある。コウイカの一般的な大きさは15-25cmであり、最も大型の種となるオーストラリアコウイカでは外套膜が50cm、体重10.5kgに達する[3]。
コウイカは徹底した肉食であり[4][5]、食べるのは小型の軟体動物、甲殻類、魚、タコ、環形動物のたぐい、および他のコウイカである。コウイカを捕食するのはイルカ、サメ、魚、アザラシ、および他のコウイカである。コウイカの寿命はおよそ1〜2年である。
コウイカは、背部の外套膜の内側に退化した内在性の殻[5] として、イカの骨と呼ばれる内部構造を持っている。形は一般に舟形だが、種によっては発達の悪い軟甲だったり(ダンゴイカ)、全く欠くもの(ヒメイカ)もある[2][6]。イカの骨はコウイカが浮力を得られるよう多孔質で通水性を持ち、外套膜内の内臓からの分泌物をもとに形成され[4]、炭酸カルシウムでできている。多室構造[5]に仕切られた内部の気体と液体の比率を、腹側の連室細管 (en:siphuncle) を通じて変えることによって、浮力は調整される[7]。イカの骨の形状、大きさ、表面の凹凸や模様は種によって異なる。イカの骨はコウイカに固有のものであり、近縁種のツツイカからコウイカを区別する特徴のひとつである。その加工性や耐熱性から宝石職人や銀細工師は伝統的にイカの骨を小さな品物の鋳型に使ってきた[8]。今日では、パラキートなどペット用の鳥のカルシウム源となる良質な餌として知られている。
コウイカは皮膚の色を素早く自在に変化させるため、海のカメレオンとしばしば評される[誰?]。コウイカは他のコウイカとコミュニケーションするため、また脅威となる捕食者に対しカモフラージュするため、皮膚の色と偏光を変化させる。
この体色変更能力は、皮膚の色素胞(色素細胞)の伸縮によってもたらされる[4]。コウイカの皮膚には1平方mm あたり200個にのぼる色素胞(これらは赤、黄、茶、黒の色素を持つ)があり、それらは光反射性を持つ虹色素胞 (en:iridophore) と白色素胞 (en:leucophore) の層の外側にある。色素胞は、色素の入った嚢と、収縮時に折りたたまれる大きな生体膜からなる。これに6-20個の小さな筋肉細胞が接しており、これが収縮することで弾力性のある色素胞を皮膚に対して垂直になるよう円盤状に押しつぶす[6]。黄色素胞 (en:xanthophore) は皮膚の表面に最も近く、赤と橙 (en:erythrophore) はその下、茶と黒 (en:melanophore) は虹色素胞の層のすぐ上にある。虹色素胞は青と緑の光を反射するが、そうやって周囲の光を反射できるよう、キチン質と蛋白質からできている。これにより、コウイカでしばしば見られる金属的な青、緑、金、銀色が実現する。以上の全ての色素胞は組み合わせて使われることもある。例えば橙は赤と黄の色素胞から、紫は赤色素胞と虹色素胞から、という具合である。コウイカはまた、虹色素胞と黄色素胞を使って明るい緑色を作り出すこともできる。皮膚を反射した光の色を変えられるのと同様、コウイカは偏光も変えることができる。これは他の海洋動物(その多くは偏光を感知できる)に対してシグナルを送ることを可能にする。
交接前のおそらく興奮状態にある雄のコウイカを水槽内で観察すると、体色が非常に鮮やかかつ複雑な紋様を律動的に変化させる様子が見られる[4]。
コウイカの眼は数ある動物の中でも最も発達した部類に属する。頭足類の眼の器官形成は、人間のような脊椎動物のそれとは根本的に異なっている[9]。 頭足類と脊椎動物の眼の表面的な類似は収斂進化の例と考えられている。コウイカの瞳孔はゆるやかにカーブしたW字型をしている[2]。コウイカは色を感知できないが[10]、偏光を感知でき、それがコントラストの感知力を高めている。コウイカは網膜上に集中感知細胞(いわゆる中心窩)を二箇所持ち、一つは前方向、もう一つは後ろ方向を見ている。人間の場合はレンズの形状を変えて焦点を合わせるが、コウイカの場合は眼球全体の形状を変え、レンズを引っ張り回すことで焦点を合わせる[6]。
科学者たちが推測するところでは、コウイカの眼は誕生前に完全に発達し、まだ卵の中にいるうちから周囲を観察し始める。フランスのある研究チームによると、コウイカは孵化前に見た獲物を好んで捕食する傾向がある可能性がある[11]。
コウイカの血液は青緑がかった珍しいものである。これは銅を含んだ蛋白質であるヘモシアニンを酸素の運搬に用いているからである。(哺乳類は鉄を含んだ蛋白質であるヘモグロビンを用いる。)コウイカは通常の心臓(体心臓)1つのほか、エラ(鰓)の基部に1対の鰓心臓 (branchial heart) を持ち[5]、これら3つの心臓によって血液は送られる。2つの鰓心臓はそれぞれ対応するエラへ、1つの体心臓は残る全身へ血液を送る。ヘモシアニンはヘモグロビンに比べると、もともと酸素運搬力に劣るため、他の殆どの動物に比べると、コウイカの血流速度は速くならざるをえない。
ツツイカ(英語版)やタコと同様、コウイカは捕食者から逃げやすくするために使うスミを持っている。墨汁腺 (ink sac) は直腸付近に開口している[5]。
コウイカはカニや魚を好んで食べる[12]。
コウイカはその獲物に忍び寄り捕食するために保護色を用いる。獲物に充分近づくと、その8本の触手を広げ、第3腕と第4腕の間のポケット収めていた2本の長い触腕を素早く突き出す。2本の触腕の端は平たく舟型に広がっており、獲物を掴み嘴状の顎板へ引き寄せるための吸盤で覆われている[12]。触腕掌部吸盤の分化は見られない[2]。
全てのコウイカを含むコウイカ科のイカは、熱帯/温帯の海水に住む。外洋を泳ぎ回るのではなく、もっぱら海底にすむ底生性のイカだが、泳いで海表面へ上がってくることもある[6]。コウイカはたいがい浅い海におり、潮間帯から水深100m の海底近くに生息するが[2]、約600m の深さまで降りてゆくこともある[13]。産卵時には沿岸へやってきて、産卵後の死体が海岸に打ち上げられることもある[6]。コウイカの生息地域には変わったところがある。すなわち、東アジアから南アジア、西ヨーロッパ、地中海、アフリカ、オーストラリアの海岸沿いに見られるが、アメリカには全く見られない。コウイカは旧世界において進化したことになっているが、その過程で北大西洋は冷たくかつ深くなりすぎ、それらの暖かい海水に住む種は横断できなくなったのかもしれない[14]。
ミナミハナイカの筋肉には猛毒が含まれており、その混合成分はまだ解明されていない[1]。Mark Norman (en) とオーストラリアのビクトリア博物館 (en) は、その毒が同様のヒョウモンダコと同程度に有毒であることを明らかにした[15]。
ウィキスピーシーズにコウイカ目に関する情報があります。 |
現在、120種以上のコウイカが見つかっている。それらは5つの属に分けられる。ミミイカダマシ科は7つの種と2つの属からなる。残りはコウイカ科となる。以下に分類例を示すが、目・亜目レベルの分類体系や系統関係にまだ定説は無い[5]。
コウイカは地中海、東アジア、英仏海峡のほか、多くの場所で捕らえられ食されている。ツツイカは世界中のレストランで饗される点でより一般的だが、東アジアではコウイカのスルメの細裂き (en:Dried shredded squid) はスナック料理として親しまれている。
コウイカは特にイタリアでは一般的な食材であり、Risotto al Nero di Seppia(イカスミのリゾット、直訳すると黒いコウイカ飯)で使われる。クロアチアの Crni Rižot も事実上同じレシピであり、おそらくはヴェネツィアを発祥としてアドリア海の両海岸沿いに伝わったものであろう。"Nero" と "Crni" は黒を意味し、それはコウイカのスミによって変色したライスの色である。スペイン料理の場合、海岸地方では特に、磯の香りと滑らかさを出すためにコウイカとツツイカのスミをライス、パスタ、魚シチューといった料理で用いる。
ポルトガルでは、細切れにして揚げたり、金時豆と共にフェジョアーダの類に加えたものが、セトゥーバルとその周辺地域の郷土料理になっている。
エウジェーニオ・モンターレの先鋭的な処女詩集『イカの骨』 (Ossi di seppia) は1925年にトリノで発刊された。地中海沿いのリグーリアで育ったモンターレは、その長く多作な経歴により1975年にノーベル文学賞を受賞した。
コウイカのスミは、かつてはセピアと呼ばれる重要な染料だった。今日では人工染料が自然のセピアに殆ど置き換わった。
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