商品名
会社名
成分
薬効分類
− 抗悪性腫瘍剤−ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体
薬効
①がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫及び悪性黒色腫を効能効果とする新効能・新用量医薬品・剤形追加に係る医薬品
【希少疾病用医薬品】
②根治切除不能な悪性黒色腫、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌、がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌及び③根治切除不能又は転移性の腎細胞癌を効能効果とする新用量医薬品・剤形追加に係る医薬品
【③優先審査】
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ニボルマブ? モノクローナル抗体 種類
全長抗体 原料
ヒト 抗原
Programmed cell death 1 臨床データ 法的規制
識別 CAS番号
946414-94-4 ATCコード
L01XC17 (WHO ) KEGG
D10316 化学的データ 化学式
C 6362 H 9862 N 1712 O 1995 S 42 分子量
143.6kDa テンプレートを表示
ニボルマブ (Nivolumab)は、悪性黒色腫治療を目的とし、非小細胞肺癌などに適用拡大された分子標的治療薬の一つで、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体医薬品であり、当時の京都大学医学部における本庶佑の研究チームが開発に貢献した[1] [2] 。2014年7月製造販売が承認され[3] 、2014年9月小野薬品工業から発売が開始された[4] 。商品名オプジーボ [5] 。
概要
上皮性癌腫・非上皮性肉腫共に悪性腫瘍には、免疫系から逃れるための仕組みを持つ。悪性黒色腫と肺癌には、稀に自然治癒例が見られることがあり、免疫細胞により癌細胞が攻撃され、治癒することが示唆されていた。
癌細胞は細胞表面にPD-L1 を発現しており、リンパ球であるT細胞のPD-1 と結合して免疫細胞の攻撃を免れている[6] 。
ニボルマブは、癌細胞が免疫細胞から逃れるためのチェックポイント・シグナルPD-1を抑制する(だけでなく存在が示唆されている別な経路も利用する)ことにより癌細胞への攻撃を促進する[2] [3] 。
抗癌剤の多くは、核酸代謝や蛋白合成、細胞シグナルを阻害することにより作用する。しかし、ニボルマブは免疫そのものに作用する。欧米の標準治療薬であるイピリムマブ(抗CTLA4抗体)とニボルマブを併用することで、腫瘍への客観的反応は53%に見られた[7] 。同併用療法は2015年6月FDAで承認申請された[8] 。
適応症
日本国内承認済
悪性黒色腫(日本:2014年7月、米国:2014年12月[9] 、欧州:2015年6月[10] )
非小細胞肺癌(日本:2015年12月[11] 、米国:2015年10月、欧州:2015年7月[12] ・2016年4月[13] )
腎細胞癌(日本:2016年9月[14] 、米国:2015年11月、欧州:2016年4月[15] )
ホジキンリンパ腫(日本:2016年12月[16] )
頭頚部癌(日本:2017年3月[17] )
胃癌(日本:2017年9月[18] )
悪性胸膜中皮腫(日本:2018年8月[19] )
悪性黒色腫の術後補助療法(日本:2018年8月[19] )
日本国外承認済
移行上皮癌の尿路上皮癌(米国:2017年2月[20] )
小細胞肺癌(米国:2018年8月[21] )
食道癌
肝細胞癌
副作用
治験では80%の患者で有害作用を含めた副作用が見られている。主な副作用は疲労・倦怠感(31%)、発疹(22%)、悪心・嘔吐(18%)、瘙痒症(15%)、食欲減退(12%)、下痢(11%)、発熱(9%)、甲状腺機能低下症(7%)である(発現率はインタビューフォームに記載されている3治験の通算)。
重大な副作用として、
間質性肺疾患(細菌性肺炎、肺浸潤、肺障害)(5.0%)、重症筋無力症(0.12%[22] )、筋炎(0.2%)、心筋炎、横紋筋融解症、小腸炎、大腸炎(1.6%)、重度の下痢(1.0%)
深部静脈血栓症(0.2%)、特発性血小板減少性紫斑病
1型糖尿病(劇症1型糖尿病を含むために膵臓癌の重大な副作用も示唆されている)、肝障害(1.4%)、肝炎(0.2%)、甲状腺機能低下症(7.3%)、甲状腺機能亢進症(1.7%)、甲状腺炎(1.0%)
末梢性ニューロパチー(1.6%)、多発ニューロパチー(0.2%)、自己免疫性ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、脱髄、脳炎
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、多形紅斑(0.3%)
腎不全(0.7%)、尿細管間質性腎炎(0.3%)、副腎機能不全(1.4%)、サイトカイン放出症候群(4.5%)
結核
が報告されている[23] 。
研究
再発または治療抵抗性ホジキンリンパ腫に対して、ニボルマブは87%の患者で効果が見られた[24] 。
業績
副交感神経系により悪性腫瘍を攻撃する新しいタイプの抗癌剤であり、イノベーションとして、サイエンスの2013年における「ブレイクスルー・オブ・ザ・イヤー」のトップを飾った[2] 。
特許使用料
特許使用料については、2006年に小野薬品工業と本庶佑が契約している。本庶佑は使用料の引き上げを要求し、小野薬品工業は引き上げを拒否。代わりに寄付を提案している[注釈 1] [25] 。
価格
2014年、オプジーボの薬価は100mgで72万9849円に達し[26] 、1年間使用すると3500万円になった[27] 。この価格は、従来の抗癌剤と比べても高く、財政の大きな負担になると國頭英夫は主張した[27] 。これを受ける形で厚生労働省は、定例の薬価改定を待たずに、オプジーボの薬価を下げるよう中央社会保険医療協議会(中医協)に提案した[28] [29] [30] 。なお、100mg当たりイギリスでは約14万円、ドイツでは約20万円、アメリカでは約30万円となっている[31] 。
2016年、経済財政諮問会議で、世界における薬価と日本における薬価の乖離が菅義偉に指摘され、日本における薬価を50%以上下げることが適切であるとの意見が出されると一気に50%の薬価引き下げが了承された[32] 。
2017年、オプジーボの薬価は下げられたものの、販売量は急激に増えたため、年間の売上高は1003億円に達した[33] 。
2018年、皮膚癌だけでなく肺癌の治療にも使えることや、海外との価格差などを考慮し、4月から再度薬価引き下げが行われた。これにより100mg当たり27万8029円となった[34] 。
脚注
注釈
^ 薬価引き下げも検討されている。
出典
^ 脚光を浴びる新たな「がん免疫療法」:小野薬品のオプジーボ 京都大学・本庶研究室が開発をけん引
^ a b c “15年間諦めなかった小野薬品 がん消滅、新免疫薬”. 日本経済新聞. (2014年10月24日). http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78790300T21C14A0X11000/ 2015年2月10日 閲覧。
^ a b “オプジーボ:新機序の悪性黒色腫治療薬”. 日経メディカル. (2014年7月18日). http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201407/537506.html 2015年2月10日 閲覧。
^ “小野薬品、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、協和発酵キリン オプジーボ(一般名:ニボルマブ)とモガムリズマブとの進行期固形がんにおける腫瘍免疫療法に関する開発提携契約の締結について”. ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2014年12月10日). 2016年6月28日 閲覧。
^ “がん免疫療法の新薬オプジーボ新規作用メカニズムを発見”. 京都大学 (2016年10月26日). 2018年1月8日 閲覧。
^ “免疫を抑制するがん細胞との闘い”. がん治療新世代WEB. 2015年6月12日 閲覧。
^ Wolchok JD, Kluger H, Callahan MK, Postow MA, Rizvi NA, Lesokhin AM et al. (2013). “Nivolumab plus ipilimumab in advanced melanoma.”. N Engl J Med 369 (2): 122-33. doi:10.1056/NEJMoa1302369. PMID 23724867. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1302369 .
^ “【米BMS】オプジーボとイェルボイ、免疫療法薬併用では初申請‐未治療進行メラノーマ適応で”. 薬事日報 (2015年6月11日). 2015年6月12日 閲覧。
^ “米FDA メラノーマ治療薬ニボルマブを承認” (2014年12月25日). 2014年12月25日 閲覧。
^ “【米BMS】抗PD-1抗体「オプジーボ」、欧州承認を取得”. 薬事日報 (2015年6月25日). 2015年6月26日 閲覧。
^ “オプジーボ「一般名:ニボルマブ」切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに関する効能・効果に係る製造販売承認事項一部変更承認取得”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2015年12月17日). 2016年11月5日 閲覧。
^ “欧州委員会がニボルマブ(Nivolumab BMS)を承認”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ. 2016年11月5日 閲覧。
^ “欧州委員会、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)の治療歴を有する進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺がんへの適応拡大を承認”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ. 2016年11月5日 閲覧。
^ “オプジーボ点滴静注(一般名:ニボルマブ)根治切除不能または転移性の腎細胞癌に対する国内製造販売承認事項一部変更承認取得”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2016年9月7日). 2016年11月5日 閲覧。
^ “欧州委員会、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)について 治療歴を有する進行期腎細胞がんの適応を承認”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2016年4月8日). 2016年11月5日 閲覧。
^ “オプジーボ®点滴静注(一般名:ニボルマブ)国内において再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫に対する効能・効果の追加承認取得”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2016年12月9日). 2018年10月21日 閲覧。
^ “オプジーボ®点滴静注(一般名:ニボルマブ)再発又は遠隔転移を有する頭頸部がんに対する国内製造販売承認事項一部変更承認取得”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2017年3月24日). 2018年10月21日 閲覧。
^ “オプジーボ®点滴静注(一般名:ニボルマブ)がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する国内製造販売承認事項一部変更承認取得”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2017年9月22日). 2018年11月27日 閲覧。
^ a b “オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)点滴静注の「悪性胸膜中皮腫」と「悪性黒色腫の術後補助療法」への適応拡大、「固定用量への用法・用量」の変更、およびオプジーボとヤーボイ®(一般名:イピリムマブ)点滴静注との併用療法における「腎細胞がん」への適応拡大に対する国内製造販売承認事項一部変更承認取得”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2018年8月21日). 2018年11月27日 閲覧。
^ “ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)について、膀胱癌における移行上皮癌の組織型である、治療歴を有する局所進行または転移性の尿路上皮癌の治療薬としてFDAの承認を取得”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2017年2月3日). 2018年10月23日 閲覧。
^ “オプジーボが、治療歴を有する小細胞肺癌の特定の患者に対するほぼ20年ぶりの新薬として米国食品医薬品局の承認を取得”. 小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ (2018年8月20日). 2018年10月23日 閲覧。
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^ “昨年の国内の医薬品市場は10兆5千億円 前年比1%減”. 朝日新聞デジタル (2018年3月1日). 2018年3月2日 閲覧。
^ “高額な抗がん剤オプジーボ 価格引き下げへ”. NHK WEB 特集 (日本放送協会). (2018年3月5日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180305/k10011352131000.html 2018年3月5日 閲覧。
関連項目
チロシンキナーゼ阻害剤(tinib)
抗体医薬品(mab)
免疫チェックポイント阻害剤
安保徹
外部リンク
製品基本情報(小野薬品工業)
ニュースリリース(ブリストル・マイヤーズ)
がん治療「革命」の旗手! 夢の薬「オプジーボ」はこんなに効く皮膚がんに続き、肺がんにも保険適用
集中連載”がん免疫療法不都合な真実”第1回 「ノーベル賞で注目度アップ! タブーに挑戦!! オプジーボはホントに万能か?」
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1. 進行黒色腫に対する免疫チェックポイント分子阻害による免疫療法 immunotherapy of advanced melanoma with immune checkpoint inhibition [show details] …following: Combination nivolumab (1 mg/kg every three weeks for four doses) plus ipilimumab (3 mg/kg every three weeks for four doses), followed by nivolumab 3 mg/kg every two weeks; Nivolumab 3 mg/kg every two …
2. ドライバー変異のない進行非小細胞肺癌のマネージメント:免疫療法 management of advanced non small cell lung cancer lacking a driver mutation immunotherapy [show details] …other immunotherapy agents. Nivolumab does have approval for use in those with progression after chemotherapy. Nivolumab monotherapy – Available data do not support nivolumab monotherapy for treatment-naive …
3. 免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法を行う際の注意点と同療法の毒性 special considerations and toxicities associated with checkpoint inhibitor immunotherapy [show details] …combination of nivolumab plus ipilimumab . In pharmacovigilance studies, the incidence of myocarditis was higher in patients treated with the combination of nivolumab plus ipilimumab compared with nivolumab alone …
4. 皮膚黒色腫への術後補助療法 adjuvant therapy for cutaneous melanoma [show details] …replaced by the more effective and less toxic nivolumab or pembrolizumab. An exception might be for patients with BRAF wild-type melanoma who recur on adjuvant nivolumab or pembrolizumab and undergo a second resection …
5. 転移性および再発性頭頚部癌の治療 treatment of metastatic and recurrent head and neck cancer [show details] …treated with nivolumab (median 7.7 versus 5.1 months, one-year survival rate 34.0 versus 19.7 percent, HR 0.71, 95% CI 0.55-0.90). The objective response rate was also increased with nivolumab (13.3 versus …
Japanese Journal
各地の便り 職業性胆管がんの今 : 全国 オプジーボ治験開始と被害・認定状況
開発力で勝るライバル薬キイトルーダ がん免疫薬オプジーボ後退 (特集 選ばれるクスリ・医者・病院 : がん 糖尿病 高血圧 脂質異常) -- (胃 大腸 肝 肺 乳 前立腺 「がんの薬」ランキング)
共同発明に係る特許紛争 : 最近のオプジーボ特許の発明者を巡って
Related Links
免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」を正しく理解、使用していただくためのサイトです。オプジーボの製品情報や作用機序、副作用について記載した安全性・適正使用情報、E-Learningなどを掲載しています。
オプジーボという抗がん剤にどのようなイメージをお持ちですか? 新しいタイプの抗がん剤として販売され、その作用効果から“夢の薬”“奇跡の薬”とも呼ばれており、研究・開発の第一人者である京都大学特別教授の本庶佑氏が2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、近年では ...
知恵蔵mini - オプジーボの用語解説 - がん免疫治療薬。人が本来もつ免疫力を利用してがん細胞を攻撃するもので、免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる。一般名称は「ニボルマブ」。がん細胞は病原体を攻撃するキラーT細胞という免疫細胞に対して攻撃を抑制させる信号を発するが、オ...
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
−抗悪性腫瘍剤−
ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体
販売名
オプジーボ点滴静注20mg
組成
有効成分
含量/容量注2) (1バイアル中)
添加物
D-マンニトール:60mg クエン酸ナトリウム水和物:11.76mg 塩化ナトリウム:5.84mg ジエチレントリアミン五酢酸:0.01576mg ポリソルベート80:0.4mg pH調節剤 2成分:適量
注1):本剤は遺伝子組換え技術により、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて製造される。
注2):本品は注射液吸引時の損失を考慮して、過量充填されているので、実充填量は各々22mg/2.2mL、105mg/10.5mL、246mg/24.6mLである。
禁忌
効能または効果
悪性黒色腫
切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌
がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌
がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫
切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌の場合、化学療法未治療患者における本剤の有効性及び安全性は確立していない。
化学療法未治療の根治切除不能又は転移性の腎細胞癌の場合、IMDC注) リスク分類がintermediate又はpoorリスクの患者を対象とすること。
再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌の場合、プラチナ製剤を含む化学療法による治療歴のない患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。
がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌の場合、本剤の一次治療及び二次治療における有効性及び安全性は確立していない。
がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫の場合、本剤の一次治療における有効性及び安全性は確立していない。
非小細胞肺癌、腎細胞癌、頭頸部癌及び胃癌の場合、本剤の術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない。
悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、古典的ホジキンリンパ腫及び頭頸部癌の場合、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
注):International Metastatic RCC Database Consortium
悪性黒色腫
通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔で点滴静注する。ただし、悪性黒色腫における術後補助療法の場合は、投与期間は12ヵ月間までとする。 根治切除不能な悪性黒色腫に対してイピリムマブ(遺伝子組換え)と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回80mgを3週間間隔で4回点滴静注する。その後、ニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔で点滴静注する。
根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔で点滴静注する。 化学療法未治療の根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対してイピリムマブ(遺伝子組換え)と併用する場合は、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを3週間間隔で4回点滴静注する。その後、ニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔で点滴静注する。
切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌、がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌、がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫
通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔で点滴静注する。
本剤は、30分以上かけて点滴静注すること。
本剤の投与にあたっては、インラインフィルター(0.2又は0.22μm)を使用すること。
根治切除不能又は転移性の腎細胞癌の場合、化学療法未治療患者及びサイトカイン製剤のみの治療歴を有する患者に対する本剤単独投与の有効性及び安全性は確立していない。
非小細胞肺癌、古典的ホジキンリンパ腫、頭頸部癌、胃癌及び悪性胸膜中皮腫の場合、他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
根治切除不能な悪性黒色腫に対して、イピリムマブ(遺伝子組換え)と併用する場合は、臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、併用の必要性について慎重に判断すること。また、イピリムマブ(遺伝子組換え)の上乗せによる延命効果は、PD-L1を発現した腫瘍細胞が占める割合(PD-L1発現率)により異なる傾向が示唆されている。イピリムマブ(遺伝子組換え)との併用投与に際してPD-L1発現率の測定結果が得られ、PD-L1発現率が高いことが確認された患者においては、本剤単独投与の実施についても十分検討した上で、慎重に判断すること。
慎重投与
自己免疫疾患の合併又は慢性的若しくは再発性の自己免疫疾患の既往歴のある患者〔自己免疫疾患が増悪するおそれがある。〕
間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者〔間質性肺疾患が増悪するおそれがある。(「警告」、「重要な基本的注意」、「重大な副作用」の項参照)〕
臓器移植歴(造血幹細胞移植歴を含む)のある患者〔本剤の投与により移植臓器に対する拒絶反応又は移植片対宿主病が発現するおそれがある。〕
重大な副作用
間質性肺疾患
肺臓炎、肺浸潤、肺障害等の間質性肺疾患(3.0%、6.9%)があらわれることがあるので、咳嗽、呼吸困難、発熱、肺音の異常(捻髪音)等の臨床症状を十分に観察し、異常が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施すること。間質性肺疾患が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。(「警告」、「慎重投与」、「重要な基本的注意」の項参照)
重症筋無力症、心筋炎、筋炎、横紋筋融解症
重症筋無力症(頻度不明※ 、0.1%)、心筋炎(頻度不明※ 、0.1%)、筋炎(0.1%、0.6%)、横紋筋融解症(頻度不明※ 、0.1%)があらわれることがあり、これらを合併したと考えられる症例も報告されている。筋力低下、眼瞼下垂、呼吸困難、嚥下障害、CK(CPK)上昇、心電図異常、血中及び尿中ミオグロビン上昇等の観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。また、重症筋無力症によるクリーゼのため急速に呼吸不全が進行することがあるので、呼吸状態の悪化に十分注意すること。
大腸炎、重度の下痢
大腸炎(1.3%、7.0%)、重度の下痢(1.0%、6.0%)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、持続する下痢、腹痛、血便等の症状があらわれた場合には、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
1型糖尿病
1型糖尿病(劇症1型糖尿病を含む)(0.4%、0.6%)があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシスに至ることがあるので、口渇、悪心、嘔吐等の症状の発現や血糖値の上昇に十分注意すること。1型糖尿病が疑われた場合には投与を中止し、インスリン製剤の投与等の適切な処置を行うこと。
**重篤な血液障害
免疫性血小板減少性紫斑病(頻度不明※ 、頻度不明※ )、溶血性貧血(頻度不明※ 、0.1%)、無顆粒球症(頻度不明※ 、頻度不明※ )等の重篤な血液障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎
AST(GOT)増加、ALT(GPT)増加、γ-GTP増加、Al-P増加、ビリルビン増加等を伴う肝機能障害(0.7%、4.7%)、肝炎(0.3%、2.4%)、硬化性胆管炎(頻度不明※ 、頻度不明※ )があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
甲状腺機能障害
甲状腺機能低下症(7.1%、16.2%)、甲状腺機能亢進症(3.1%、10.7%)、甲状腺炎(1.2%、3.7%)等の甲状腺機能障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
神経障害
末梢性ニューロパチー(1.2%、3.1%)、多発ニューロパチー(0.1%、0.3%)、自己免疫性ニューロパチー(頻度不明※ 、頻度不明※ )、ギラン・バレー症候群(頻度不明※ 、0.1%)、脱髄(頻度不明※ 、頻度不明※ )等の神経障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
腎障害
腎不全(0.5%、1.8%)、尿細管間質性腎炎(0.1%、0.2%)等の腎障害があらわれることがあるので、本剤の投与中は定期的に腎機能検査を行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
副腎障害
副腎機能不全(1.0%、4.9%)等の副腎障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
脳炎
脳炎(頻度不明※ 、0.1%)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
重度の皮膚障害
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明※ 、頻度不明※ )、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明※ 、0.1%)、類天疱瘡(頻度不明※ 、0.1%)、多形紅斑(0.2%、0.2%)等の重度の皮膚障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
静脈血栓塞栓症
深部静脈血栓症(0.1%、0.3%)、肺塞栓症(0.1%、0.1%)等の静脈血栓塞栓症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
Infusion reaction
アナフィラキシー、発熱、悪寒、そう痒症、発疹、高血圧、低血圧、呼吸困難、過敏症等を含むInfusion reaction(2.5%、3.9%)があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。また、重度のInfusion reactionがあらわれた場合には直ちに投与を中止して適切な処置を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。
**血球貪食症候群
血球貪食症候群(頻度不明※ 、頻度不明※ )があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
作用機序
ニボルマブは、ヒトPD-1に対する抗体であり、PD-1とそのリガンドであるPD-L1及びPD-L2との結合を阻害し、がん抗原特異的なT細胞の増殖、活性化及び細胞傷害活性の増強等により、腫瘍増殖を抑制すると考えられる。24)
有効成分に関する理化学的知見
一般名
ニボルマブ(遺伝子組換え) Nivolumab(Genetical Recombination)
分子量
本質
ヒトPD-1に対する遺伝子組換えヒトIgG4モノクローナル抗体であり、重鎖221番目のアミノ酸残基がProに置換されている。チャイニーズハムスター卵巣細胞により産生される440個のアミノ酸残基からなる重鎖2本及び214個のアミノ酸残基からなる軽鎖2本で構成される糖タンパク質である。