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この項目では、音響効果機器について説明しています。タンパク質に結合する小分子については「エフェクター (生化学)」をご覧ください。 |
エフェクターは、日本では何らかの効果(エフェクト)(英: Effect)を与えるもの、ここでは特に音響効果を与える目的で使用される機器のことを指す。EFXとも略される。和製英語であり、英語では(effects unit (pedal))エフェクツユニット、エフェクツペダル、俗称ではストンプボックス(stomp box)などと呼ばれている。
電気楽器や電子楽器など電気信号に変換された音、あるいはマイクロフォン(マイク)で集音された音声に対して、スピーカーまたは録音媒体に至るまでの途中に挿入して一定の効果を与え、さまざまな音に変化させる。
「効果音」もエフェクトの一種であるが、効果音を作り出す機器はエフェクターとは区別されている。
目次
- 1 概要
- 1.1 単機能エフェクターとマルチエフェクター
- 1.2 別称について
- 2 音響機器として歴史的な発展について
- 3 分類
- 3.1 レベルの制御
- 3.2 特定周波数帯のレベル制御
- 3.3 増幅・歪みの付加
- 3.4 残響・反響音の付加
- 3.5 低周波による変調
- 3.6 音程の変化
- 3.7 音質の劣化
- 3.8 ノイズ除去
- 3.9 その他
- 4 参考文献
- 5 関連項目
- 6 外部リンク
- 7 脚注
概要
エフェクト処理の実装には、磁気テープやばね、金属板などの機械的機構、アナログ電子回路、デジタル電子回路(デジタルシグナルプロセッサ)、コンピュータ上で実行するソフトウェアプログラムなどが用いられる。機械的機構やアナログ回路によるエフェクタをデジタル信号処理によって模擬的に再現する例もある(デジタル・スプリング・リバーブ、真空管アンプシミュレータなど)。
単機能エフェクターとマルチエフェクター
ギター用エフェクト・ボードの例
プレイヤーが自分で気に入ったエフェクターを並べて組んだボード。
接続順:チューナ→コンプ→ピッチシフタ→ワウペダル→オーバードライブ→ ディストーション→ファズ→EQ→トレモロ
ギター用マルチエフェクター
- エフェクター44種内蔵 (同時13種)
- 直接いじれるツマミ は アンプ系×7,エフェクト系×7,それ以外の操作はボタンやダイヤルで行う。
- 外部エフェクト・ボードを併用可能。
形態についても、演奏家が使用する手のひら大の「コンパクトエフェクター」から電気録音・PAで汎用的に使用され、規格化された幅のラックに収納する「ラックマウント型」、ミキシング・コンソールやシンセサイザーあるいはカラオケに「内蔵」されたものまで多様である。
歴史的には、もともと単機能のエフェクターを必要により複数つなぎ合わせて使用していたが、デジタル回路技術の進歩により複数のエフェクト機能を1つに実装した「マルチエフェクター」も一般的になってきた。単機能エフェクターをつなぎ合わせた場合と比べると、(1)より少ないスペースで済む、(2)複数の機能を組み合わせるのが容易、(3)各種の設定や接続順などが複数通り記憶できそれらが一瞬にして切り替えられる、などのメリットがあるが、単機能エフェクターに比べて操作性に劣る、あるいは要求する音質と違うなどの理由で、単機能エフェクターを複数つなぎ合わせるケースも見られる[1]。また、こうした単機能エフェクターをアンプも含めて自在にパッチングしセッティングを記憶できるラインセレクタやスイッチングシステムと呼ばれるものもある。
現在もギタリストがステージ上でプレイする上で、ノイズが発生するリスクを知りながら、複数のデジタル・エフェクターが一体化したものを避け、古い操作形態の様々なエフェクターを複数台(ボードなどといった形式で)接続している例があるが、これは観客のいないリハーサルやサウンドチェック時と多くの観客の入った本番では会場の反響など聞こえる音の状態が変わる時があり、その時々の他の楽器とのバランス、ギタリスト本人のコンディション、時にはエフェクターへの供給電圧の変化などといったアクシデントに応じて、操作を変える必要が出た際に、プリセット式や順に操作機能やパラメーターを呼び出す従来のデジタル式のエフェクターでは即座に対応しきれないケースがあるからである[1]。またこうした問題に対応するため、デジタル式のエフェクターの中にはステージ上での操作性を重要視した機種もある。
別称について
いくつかの別称があり、録音では「アウトボード」と呼ぶこともある。ギターなどの楽器専用のものについては、「アタッチメント」ともいう場合も多い。
音響機器として歴史的な発展について
とても深い歴史がある。
分類
中間的なもの、複合的なものなど様々なエフェクターが存在するため分類は困難である。従って本頁の分類は便宜的なものである。また実際の機器ではこの解説の範囲に収まらず様々な工夫が凝らされている場合がある。
入力された音を加工することがエフェクターの主旨なので、「入力された音」を「原音」と表記する。
レベルの制御
原音の音量の最大と最小の差(ダイナミクス)を圧縮するもの。過大な入力による機材へのダメージを防いだり、ほぼ一定の音量へ調整する。
- リミッター
- 音量が予め設定した一定の値(スレッショルド、閾値)を超えた場合、音量を絞ることで過大な信号レベルにならないようにするもの。機器の物理的破壊を避けたり、音の歪みを避けながらなるべく高い平均レベルを出したりするのに用いる。
- コンプレッサー
- 音量の変化幅を圧縮(コンプレッション)し、音量のバラつきを抑えるもの。例えば発音時のレベルの高い部分を潰して全体のレベルを揃えたり、減衰音のレベルを持ち上げることによって伸びのある音にしたりできる。パラメーターの設定によってはリミッター同様の使い方も可能である。
- ボリュームペダル
- 一般的にオーディオ機器の音量を決めるボリュームと同じ。
特定周波数帯のレベル制御
原音に含まれる任意の周波数帯域の増幅や減衰をおこなうもの。
会場音響のグラフィックEQ
(画面中央右, 30素子×2)
- イコライザー
- 特定の周波数帯域を強調あるいは減衰させる処理。ごく大雑把には、オーディオ・アンプのトーン・コントロールを、より精緻な調整ができるように拡張したものと考えてもよいだろう。イコライザーにはパラメトリック型とグラフィック型があり、用途に応じて使い分けられる。
- パラメトリック型は、周波数帯域のゲインの他、中心周波数及び帯域幅を個別に設定でき、それらを複数並べて複数の周波数帯域に対応する製品が多い。用途としては、余分な帯域のピンポイント・カットから、幅広い帯域のバランス調整まで、豊富なパラメータを生かした柔軟な音作りに活用される。またディジタル処理全盛の今日でも、アナログ機材固有の色づけを好んでマスタリングや録音に積極活用する例もある。
- グラフィック型は、中心周波数と帯域幅は固定で、ゲイン調整を周波数帯域の数だけ並べた仕様である。現在主流の製品はゲイン調整にスライダーを採用し、設定を視覚的に把握できるので「グラフィック・イコライザー」と命名されている。周波数帯域の数は素子数と呼ばれる。パラメトリック型と比べ自由度が低いので、ざっくりとした調整に使用される。コンパクトな楽器用機材では、倍音調整を目的に約1オクターブ間隔で分割した10素子以下の製品が多い。また会場音響 (PAやSR)では、周波数特性改善(およびハウリング・ポイントやデッド・ポイントの解消)を目的として、1/3オクターブ分割30素子程度の機材が使われる。
- エンハンサー
- イコライザーが、原音に含まれる音を直接ブーストしたりカットしたりするのに対し、エンハンサーは音を歪ませ倍音を作り出して、実音にミックスするもの。
- ワウペダル
- 車のアクセルペダルのような筐体に付けられた可変ポットを足で操作する事により、増幅される周波数帯を変えるもの。文字通り「ワウ・ワウ」と聞こえる。
- オートワウ
- 原音の音量に準じ増幅される周波数帯を変えるもの。ペダル動作では不可能な細かくリズミカルな「ワウ」音を得られる。
- ディエッサー
- 高音領域に特化したコンプレッサー。ボーカルのサシスセソやツなど高音のきつい発音を和らげるのに用いる場合が多い。
- トーキング・モジュレーター
- 周波数分布に母音と似た癖を付けることで楽器の音に人がしゃべっているようなイントネーションを加えるもの。
- アイソレーター
- 特定帯域をカットするイコライザーの一種。主にDJミキサーに内蔵されている。人間の音声帯域をカットするボーカルキャンセラーというものもある。
- アンプ・シミュレーター
- 特定ブランドのギター・ベースアンプの動作特性や周波数特性をモデリング化したエフェクター。キャビネット・ユニットを任意のモデルに組み合わせることもできる。類似のものとしてレスリー・スピーカーをシミュレートしたロータリースピーカーというエフェクトもある。
増幅・歪みの付加
楽器を繋ぐアンプの種類・音量設定などにかかわらず、電気的に増幅したり、その結果任意で歪んだ(ひずんだ)音色を得るもの。回路方式・使用素子の種類は多種多様で、真空管、各種トランジスタ、IC(集積回路)などが用いられる。 歪みを得る目的のエフェクターである「ファズ」「オーバードライブ」「ディストーション」の分類で明確な範囲決め・定義はあいまいである。
- ブースター
- 楽器からの信号を楽器用アンプに入力する前に電気的に増幅(ブースト、boost)し、より大きな音量を得るもの。
- ファズ
- 倍音が著しく強調され、調整によって耳に刺激的、あるいは濁った音色を得るもの。
- オーバードライブ
- 入力側から過大な入力電圧を加えるか過大増幅になったとき、アンプの限界で飽和し、出力音が歪んでしまう(オーバードライブ overdrive 元は‘酷使’の意)。意図的にこの状態を作り出し、歪んだ(ひずんだ)音色を得るもの。
- ディストーション
- 一般的にオーバードライブに比べて、より荒々しく硬質で深い歪みを得るもの。
- 真空管シミュレーター
- 特定モデルの増幅真空管の周波数特性およびサチュレーションと呼ばれる真空管独特のコンプレッサー&歪み効果をデジタル回路でシミュレートしたもの。主に単体では使われずアンプ・シミュレーターに組み込まれていることが多い。
残響・反響音の付加
- ディレイ、エコー
- 原音を遅延させる効果を与えるもの。原音に遅延させた音を混ぜることで山彦のような効果を得る。もともと、ディレイは当該機能の原理に基づいた呼称であり、一方のエコーは得られた効果に基づいた呼称である。従って原理上は差異は無い。ただし、エコーが原則として山びこの様な反響音として聞こえる効果のみを指すのに対し、ディレイはフランジャーやコーラスの様に同じ原理・構造を有するエフェクターも含まれる場合がある。
- リバーブレーター
- 原音に対して残響を加えるもの。原音を様々な時間で遅延させた複数の音を自然に近い対時間減衰特性を持たせて混ぜることにより、ホールや風呂場のような残響を生み出す。一般的には出力を入力に帰還させるIIRフィルターによって実装されるが、帰還のないFIRフィルターを用いることによりモデルとするホールなどの残響の高い再現性が得られる。ただし後者の方が遥かに長時間分の残響特性メモリと高い演算能力を要する。
低周波による変調
低周波によって原音の振幅や位相を変調し、聴感上の揺らぎを作り出すもの。
- トレモロ
- 周期的に音量を上げ下げしトレモロ効果をかけるもの。
- フェイザー
- またはフェイズシフター。原音と位相(フェイズ)を変化(シフト)させた音を任意の割合で混合させ、「波の干渉」の原理を利用して音色を連続的に変化させる機能を有する。通常は「シュワー」という音を人工的に作り出すものとされる。
- フランジャー
- 原理上はディレイの一種。フェイザーと同じく波の干渉を利用して音色の連続的な変化を得るものだが、原音の加工は遅延時間を変調した遅延(ディレイ)音を逆位相で混ぜることで行う。フェイザーより強力で現代的な音がするとされている。
- コーラス
- 原理上はディレイの一種でありフランジャーとほぼ同等である。原音のユニゾンにあたる音を人工的に作り出し、コーラス効果(複数の音源が同時に発振している様な効果)を得る事を目的としている。前二者が刺激的な聴感を得る場合が多いのに対し、コーラスは音の厚みを増し穏やかもしくは爽やかな効果を求めて用いられる事が多い。
音程の変化
- オクターバー
- 原音のオクターブ上やオクターブ下の周波数の音を発生させて加えるもの。信号処理で周波数空間で引き伸ばし処理を行なうものと、周波数全波整流やDフリップフロップ回路等を用いるものがある。
- ピッチシフター
- 原音を設定された任意の音程分ずらして出力するもの。ある音階に沿って音程の可変幅を自動的に可変させるものもあり、例えば3度のハモリを行う場合に長3度と短3度が自動的に選択され、容易にハモリを可能とする。原音の周波数を半音など一定の割合で増減させるので、ピッチの割合を大きくとると、例えば男性の原音が女性のように聞こえたりするが、主な用途はギターのエフェクトである。
周波数シフター
- 原音のすべての周波数成分において同じ周波数だけシフトするものでピッチシフターとは異なる。原音を鋸波で100%位相変調させると周波数が鋸波の分だけシフトする。周波数シフターの出力には二つの特徴がある。一つは、原理上、原音のすべての周波数において位相が同量だけ回転する。これを利用してハウリング経路の遮断に利用することも可能である。二つ目は、出力は原音とは異質である、つまり原音のフォルマントの構成が乱れることである。そのため、一般的なエフェクターとしては使用できない。しかし、数ヘルツのシフトでは聴感上大きな問題とはならないというデータも存在する。http://basil.is.konan-u.ac.jp/pub/asj201309_slide.pdf
- リングモジュレーター
- 原音と別信号との掛け算を行う。つまり原音の音量をその別信号により変化させる(ただしマイナス側にも振られる=位相が反転する)と解釈でき、振幅変調(AM)と良く似た関係にある。
- 単純な例として正弦波sin(Mt)で原音sin(St)を変調することを考える。ここでMとSはそれぞれの周波数、tは時間である。両者を掛けるとsin(Mt)sin(St)となり、これは三角関数の加法定理により0.5{cos(S-M)t - cos(S+M)t}と書ける。変調の周波数Mが数Hzと低い場合、両成分の干渉により2MHzのうなりを発生し、トレモロのような効果が得られる。1kHz前後で変調すると両者が実際の楽器の音では複雑な非整数倍の成分となり金属的な歪んだ響きとなる。例えばピアノの音を変調すると鐘の様な音に変化する。通常の使用例としては、2つの音を入力とし、その2つの周波数の加算周波数と減算周波数の2つの音を出力することによって金属的な音を出すことが多い。名称に「リング」とあるのは、その回路がリング状になっていることから。
音質の劣化
通常音響機器は原音の劣化を極力避けて、出力時の再現効率をあげることに注力しているが、それに対して、意図的に音質を劣化させるもの。ノイズを加えるもの、電子録音のサンプルレートを下げるもの、機械的に特定の周波数をカットするもの等が存在する。
- ローファイ
- 高音成分を除去し、さらに音に歪みを加えたり、ノイズを加えることでAMラジオのような音を作り出したりアナログレコードのような音を作り出したりする。
- デシメーター
- 入力信号のサンプルレートや量子化ビットを意図的に劣化させるエフェクター。
ノイズ除去
イコライザー等で雑音の多い周波数をカットするもの、演奏音のない時の雑音をカットし(電流は流れている)、設定レベルを超えた音(演奏された必要な音)を出した際に音を出すものがある。
- ノイズゲート
- 演奏音がない時にはレベルを絞りノイズをカットし(電流は流れている)、設定レベルを超えた音(演奏に必要な音)を出した際に音を出すもの。
- ノイズリダクション
- 入力音からノイズ成分を取り除くもの。
その他
以下、商品名は様々だが前述の個別に挙げた装置や機材ほど一般化してはいない。
- フィードバックを得る機材
- ステレオ効果を出すための機材
- エキスパンダー - 音を歪ませたり、比較的音質を変えることなく音を持続させる、または、ダイナミクス等、コンプレッサーの逆の効果を得るもの。他の機材とセットになっていることが多く、単独で使われることは少ない。
- ルーパー - サンプラーとディレイの中間的エフェクター。主にDJミキサーに内蔵されている。小節単位の任意のフレーズをサンプル&ホールドしてそのまま繰り返し再生させる。
- ラインセレクター -ギターからアンプまでの配線方法、順番を切り替えるエフェクター。単体で音の変化を作ることは出来ないが、多数のエフェクターを繋ぐことから起因する音質劣化を防いだり、配線を変更することなく使用するアンプを変更したりすることによって音の幅を広げることが出来る。
参考文献
- 無線と実験編『プロフェッショナル・オーディオ エフェクターテクニック』誠文堂新光社(昭和56年12月発行)-エフェクター各種の動作原理についての解説。
- デイヴ・ハンター『ギター・エフェクター実用バイブル 自分らしいサウンドを出すために 歴史と基本原理、接続&トーン攻略まで[改訂拡大版]』(DU BOOKS、2014年)ISBN 978-4-925064-74-3
関連項目
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ウィキメディア・コモンズには、ギター用エフェクターに関連するカテゴリがあります。 |
- コンパクトエフェクター
- effects pedal
- 音響学
外部リンク
- APHEX Systems (英語)
- DigiTech (英語)
- Demeter Amplification (英語)
- Drawmer (英語)
- Eventide (英語)
- GML (英語)
- Groove Tubes (英語)
- Lexicon (英語)
- Line 6 (英語)
- Manley Labs (英語)
- Orban (英語)
- PUBLISON (英語)
- QUANTEC (英語)
- Rupert Neve Designs (英語)
- Summit Audio (英語)
- Symetrix (英語)
- TC Electronic (英語)
- Tech 21 (英語)
- Universal Audio (英語)
- YAMAHA (英語)
脚注
- ^ a b BOSS GT-8 Guitar Effect Processor
直接操作可能なエフェクトつまみは7個のみで、後はボタンを押しパラメータ選択しダイヤル調整と操作の手数が多くなる。
また、外部エフェクト・ループと共存するために「独立エクスターナル・ループ」機能を搭載している。
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