腎細胞癌
疫学
- 発生率:人口10万人あたり9.7人(1998)
- 腎腫瘍の85%を占める (EPT.221)
- 転移のある人が3割
- 40-70歳代に多発 50-60歳(SURO.237)
- 男女比=2-3:1 (YN.E-84)
病因
- 遺伝子異常:VHL遺伝子の変異
- 癌原物質:タバコ、砒素、石綿、カドミウム、殺虫剤、真菌毒素
リスクファクターと相対危険度
- VHL病:100 ← VHL病の40%の症例で腎細胞癌を見る
- 透析患者:32 ← 長期透析患者では後天性嚢胞性腎疾患が見られ、これに合併しやすい
- 肥満:3.6
- 喫煙:2.3
- 高血圧:1.4
- ドライクリーニング:1.4
- 利尿薬常用者:1.3
- フェナセチン中毒:1.1
由来
分類
- 悪性-腎細胞癌 renal cell carcinoma
- 1. 淡明細胞癌 clear cell carcinoma ← RCCの3/4を占める(APT.260)
- 2. 顆粒細胞癌 granular cell carcinoma
- 3. 嫌色素細胞癌 chromophobe cell carcinoma
- 4. 紡錘細胞癌 spindle cell carcinoma ← 予後不良
- 5. 嚢胞随伴性腎細胞癌 cyst-associated renal cell carcinoma
- 6. 乳頭状腎細胞癌 papillary renal cell carcinoma ← 予後は比較的良好
病理
- 組織由来は近位尿細管上皮であり、一部に髄質集合管由来の物がある(YN.E-84)
- 異型性は軽度。
- 肉眼的所見は黄色、分葉、出血、偽膜、血管に富む、脂肪分に富む
- 血管性間質に被胞される→血行性転移しやすい
- 腫瘍細胞の細胞質は明るくぬける→脂肪と糖原が多いから
- 腎静脈内を発育し、下大静脈、右心房まで伸展する腫瘍塞栓を見ることがある。
症状
- 3主徴がそろうのは5%以下。実質に腫瘍ができるため、初期には症状がほとんど無い。
- 無症状で健康診断・人間ドックで見つかることが3割弱、他疾患治療中に見つかるのが5割弱。 → ほとんど気づかれない
- 血尿:40-50% (無症候性肉眼的血尿)
- 疼痛:10-40%
- 腹部腫瘤:20-40%
- 精索静脈瘤、発熱(10-20%)、全身倦怠感、体重減少、貧血(15-40%)、高血圧(15-40%)、転移症状
検査
- 腎細胞癌に特異的な腫瘍マーカーなし
- 血沈亢進、CRP上昇、α2-グロブリン上昇、多血症(エリスロポエチン産生腫瘍)、免疫抑制酸性蛋白(IAP, immunosuppressive acid protein)の上昇
- 予後不良因子:高Ca血症、貧血、LDH上昇
診断
画像診断
- 最初にエコー、次にCT
- 1. 超音波断層法
- 腎の変形、腫瘍輪郭の不整、中心部エコー像の変形、可動性の制限、静脈腫瘍血栓像
- 2. 静脈性腎盂造影
- 腎内占拠病変、輪郭の変化、腎盂腎杯の圧排偏位
- 3. CTスキャン
- 診断上最も重要
- 造影CTでは腫瘍は造影早期に造影され、内部が不均一に造影される。 ← 腎臓より弱く造影される
- 腫瘍の有無と病気診断(静脈内腫瘍塞栓の有無、後腹膜リンパ節、隣接臓器への浸潤、多臓器への転移の有無)
- 4. MRI
- 腫瘍血栓の進展の高さを診断するのに有用
- 腎細胞癌は下大静脈、腎静脈に腫瘍血栓を作る
- 5. 血管造影
臨床病気分類
- Robson分類 ←簡単
- TMN分類
- (腎癌取扱い規約 第3版 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会/編 1999年金原出版(株) 東京)
- T 原発腫瘍
- TX 原発腫瘍の評価が不可能
- T0 原発腫瘍を認めない
- T1 最大径が7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
- T1a 最大径が4.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
- T1b 最大径が4.0cmを越えるが7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
- T2 最大径が7.0cmを越え、腎に限局する腫瘍
- T3 腫瘍は主静脈内に進展、または副腎に浸潤、または腎周囲脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜を越えない
- T3a 腫瘍は副腎または腎周囲脂肪組織または腎洞脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜を越えない
- T3b 腫瘍は腎静脈または横隔膜下までの下大静脈内に進展する
- T3c 腫瘍は横隔膜を越える下大静脈内に進展する
- T4 腫瘍はGerota筋膜を越えて浸潤する
- N 所属リンパ節
- NX 所属リンパ節の評価が不可能
- N0 所属リンパ節転移なし
- N1 1個の所属リンパ節転移
- N2 2個以上の所属リンパ節転移
- M 遠隔転移
- MX 遠隔転移があるかどうか評価不能
- M0 遠隔転移なし
- M1 遠隔転移あり
転移臓器
- 腎癌の剖検時の転移臓器と頻度
- 肺:50-60%
- 骨:30-40%
- リンパ節:30-55%
- 肝臓:20-40%
- 脳:5-8%
- 副腎:20-25%
- 対側腎:10-20%
治療
- 診断は画像診断のみ
- 組織診をしない→禁忌:転移したら有効な治療方法がないから(薬物療法はほとんど効かない)
- 既存の悪性腫瘍薬や放射線に抵抗性!!
- 1.手術療法、2.動脈塞栓術、3.免疫療法、4.分子標的薬
1.手術療法、
- 開放手術、体腔鏡(腹腔鏡、後腹膜鏡)、体腔鏡補助
- 到達法:経腹的が今のところ一般的:「経腰的」-腰部斜切開で後腹膜に入る、「経腹的」-腹腔を開く、「経胸腹的」-胸腔、腹腔共に開く
術式
- 根治的腎摘出術
- 腎動脈を処置、Georta筋膜ごと腎、周囲脂肪識、副腎をまとめて摘出 ← 経腰的だと腎門までの距離が長く適さない
- 単純腎摘出術
- 遠隔転移のある例。
- 腎部分切除術
- 核出術
- 追加の術式:リンパ節郭清(リンパ節転移が疑われる例に関しては推奨される(参考1))、腫瘍血栓摘除術(下大静脈腫瘍血栓を有する患者で、所属リンパ転移、遠隔転移を認めない例に対して推奨される(参考1))
進行期、病期別
- 参考1
- I期:T1a(腫瘍径4cm以下)であれば腎部分切除術が推奨される。
- I,II期:腹腔鏡下での腎摘除術が推奨される。
- M1:転移巣があっても、PSが良好でインターフェロンが可能な例では腎摘除術が推奨される。また、転移巣を有する患者で、PSが良好かつ転移巣が切除可能であれば、転移巣に対する外科治療が推奨される。
2.動脈塞栓術
- 保存療法
3.免疫療法
- マクロファージの貪食作用増強、MHC class I分子発現増強
- 奏効率は10-15%程度
- 副作用:食欲不振、全身倦怠感、発熱、うつ症状
- T細胞の増殖、サイトカイン(IL-1, IL-6, INF-γ)の分泌誘導
- 奏効率は10-15%程度
4.化学療法(分子標的薬)
- いずれも完全寛解には至らない
予後
- Robson分類による5年生存率
- Stage1:70-90%
- Stage2:60-70%
- Stage3:30-60%
- Stage4:10-30%
腎への転移 (1983-1985年日本病理解剖統計)
- 総数上位
- 原発部位:肺、骨髄、リンパ系
- 転移率上位
- 原発部位:リンパ系(30.0%)、精巣(28.6%)、骨髄(27.4%)、副腎(25.7%)、後腹膜(22.5%)、皮膚(20.5%)、対側腎(19.3%)、肝臓(19.0%)
参考
- 1. 腎癌ガイドライン
- <click2in>http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0057/1/0057_G0000158_GL.html</click2in>
- 2. 腎細胞がん - がん情報サービス
- 3. wiki ja
- <click2in>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%8E%E7%B4%B0%E8%83%9E%E7%99%8C</click2in>
- 4. 財団法人国際医学情報センター:がん Info / 腎細胞がん