主作用 | main action | 治療に有用な作用 |
副作用 | side action | 治療効果以外の作用(生体に有利・不利は不問) |
有害反応 | adverse reaction | 常用量で発現する全ての好ましくいない反応 |
→副作用と有害反応は区別されるべきものであるが、日本では混用されている(SPC.6)
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/09/17 06:17:42」(JST)
この項目では、医学における副作用について説明しています。コンピュータープログラミングで参照透過性を崩す動作については「副作用 (プログラム)」をご覧ください。 |
副作用 (ふくさよう、Side Effect) とは、医薬品の使用に伴って生じた治療目的に沿わない作用全般[1]を指す。狭義には、医薬品の使用に伴って発現した好ましくないできごとのうち当該医薬品との因果関係が否定できないものを指す。この好ましくない作用を厳密に指す場合には、薬物有害反応(Adverse Drug Reaction:ADR)の用語が用いられる。一般に副作用といった場合には、両者が混合して用いられている。その他の定義については、定義節にて触れる。
特に副作用が強く、安全な使用に注意が必要とされる医薬品はハイリスク薬と呼ばれる[2][3]。
基本的には、「副作用」とは医薬品との因果関係が想定されるものに対して用いるものである。因果関係の有無を問わず単に医薬品の使用によって生じたあらゆる好ましくないできごとのことは有害事象と呼び、これはより包括的な概念である。(→#定義節も参照)
最初は医療者の側の立場にもとづいた概念が先行し、医薬品の生体に対する作用のうち、治療の目的に利用される作用を「主作用」として、それと対比しつつ、治療上不必要なもの、あるいは障害となるような作用を「副作用」とする考え方が一般的であった[4]。
その後、患者の側に立った見解が採用されるようになり、医薬品の使用によって生体に生じた有害な反応すべてを含む用語として用いられることが多くなった[4]。
FDAでは「薬物療法に伴って生じた全ての好ましくない反応」という概念に対応する"有害な薬物経験"という用語を用いるようなった[4]。
新しい包括的な概念が登場したのは、医薬品の安全性を確保するため、つまり重大な副作用が発生することを未然に防ぐためである[4]。副作用を未然に防ぐには副作用情報を集める必要があるが、副作用情報を集めるにはまず、情報源である臨床の場にいる医師が副作用の可能性に気づき、それに関する情報が報告される必要がある[4]。医薬品と副作用の因果関係を統計的(疫学的)に証明するには大集団による対照群を用意する厳密な実験(対照実験)が必要になることが多く、長い月日がかかってしまう[4]。実際の臨床の場においてひとりの医師が、人体に現れた好ましくない症状の原因が医薬品にあるのか否かまでを判定することは困難である[4]。もしも臨床現場のひとりの医師にとって因果関係が証明ができる/できない、などという観点で概念を線引きをし「因果関係が証明できるものだけを副作用とする」などとしてしまっては、臨床現場の医師は副作用が疑われるものをそれとして認知・報告できないということになり、医師からの報告が各機関へ上がらなければ、各機関は情報が遮断されたまま副作用を引き起こしている可能性がある医薬品への対処も調査もできないことになり、結果として重大な副作用のある医薬品が長期間放置されたままになり多くの人々に用いられてしまい被害者が増えるという事態が生じる。それを防ぐために、因果関係の証明を必要としない新たな概念が用いられるようになってきているのである。[4]
関連用語の定義を以下に示す。
臨床医学では3.を有害事象と明確に呼び分けて「副作用」の語を避ける傾向にあるが、医療行政では薬事法等の条文に副作用の語が用いられているため、医薬品承認申請等両者の接点では用語の混乱が見られる。
なお、これらの用語の内、“副作用”は医薬品そのものに着目した用語であるのに対し、“有害事象”は医薬品を投与された人間に着目した用語である。すなわち、医薬品との関連性が考えにくい事象(例えば、運転を誤った車が歩道に乗り上げ、たまたま歩道を歩いていた患者(医薬品の服用者)が受傷したような場合)であっても、『医薬品を服用中の人物に発生した好ましくない事象』である限り「有害事象」とされる。これは、一見偶発的と思われるような未知の副作用を漏れなく拾い上げるために重要な考え方であり、症例数が蓄積されることにより、偶発的と思われた事象の中から未知の副作用を発見することが可能となる。
世界保健機関(WHO)では、各国での副作用症例に関する情報を収集するために1986年から「WHO国際医薬品モニタリング制度」というものを実施しているが、ここでの副作用(adverse reaction))の定義は次のようなものである[4]。
ここでは誤って過量に摂取したり、自殺目的で使用して現れた反応は除外されている[4]。
FDAは「薬物療法に伴って生じた全ての好ましくない反応」という概念に対応する"有害な薬物経験"という用語を新たにつくり、ある反応が薬物によって起きたことが明確であろうが明確でなかろうが、患者にとって好ましくないものであれば"有害な薬物経験"に分類するようになった[4]。
妊婦および授乳婦 : 胎児や乳児にまで続発的に影響が及ぶ。妊婦や授乳婦は一般に治験に参加せず、また市販後の有害事象も報告数は限られているため、安全性データはしばしば不十分。
高齢者 : 一般に代謝・排泄が低く、体液量が少なく、キャリア蛋白量が少ないことから医薬品の効果・副作用共に大きくなりやすい。
小児 : 代謝や排泄が未熟で、体重は少なく、医薬品に対する感受性が高く、キャリア蛋白量が少ないことから、体重に応じて投与量を調節しても副作用も大きくなることがある。
日本で社会的に注目された副作用の事例には次のようなものがある。ペニシリンによるショック、サリドマイドが引き起こした先天異常、クロロキンによる視覚障害、キノホルムによるスモン、アンプルに入った風邪薬によるショック などである[4]。
薬剤というものは多かれ少なかれ、広義の意味で副作用があり、副作用のない薬剤はないと言われている[要出典]。しかし、特に注意が必要な医薬品は、通称ハイリスク薬と呼ばれている[2][3]。 また、生体と物質との相互作用は複雑且つ多岐に渡り、短期間である臨床試験を通過した後に、死亡などの副作用が発覚し、市場から撤退するということもある。その全てが解明されているわけでもなく、投与した外来物質の作用を全て予測することが出来ているわけでもない。
副作用に関する責任問題を回避するため、日本のテレビやラジオでの医薬品(内服薬)のコマーシャルでは、「この薬は使用上の注意を守り、正しくお使い下さい。特にアレルギー体質の方は医師や薬剤師にご相談下さい」と表示、あるいは読み上げられ、テレビでは「アレルギー体質」の部分が赤色で強調されている。パッケージ内部の説明書には、同様にアレルギー体質者以外に、妊婦などを対象に医師や薬剤師に相談する旨の表示がされていることが多い。
本来「副作用」とされていたものを「効能」と謳って商品化した薬剤としては、エスエス製薬から発売された睡眠改善薬「ドリエル」が挙げられる。鎮痒剤やアレルギー性鼻炎の治療薬(興和新薬の「レスタミン」、塩酸ジフェンヒドラミン)や乗り物酔いの予防薬(エーザイの「トラベルミン」、サリチル酸ジフェンヒドラミン)として用いられるジフェンヒドラミンの副作用として眠気が知られており、これらの薬剤には「服用後は車の運転など危険を伴う作業を行わないこと」との注意書きがされている。この本来は副作用だった眠気を、寝つきが悪いなどの症状を改善するために用いたのがドリエルである。
勃起不全薬のクエン酸シルデナフィル (商標名「バイアグラ」) も、元々は狭心症の治療薬として開発が進められていたものが、開発の過程で副作用としての勃起不全への効果が発見され、最終的には勃起不全薬として発売された経緯がある。
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