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この項目では、日本における健康保険法に基づく被用者医療保険について説明しています。
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日本における健康保険(けんこうほけん、英語: Employee Health Insurance)とは、雇用者の福利厚生を目的に社会保険方式で運営される医療保険(被用者保険、職域保険)のうち、健康保険法に基づくもの。医療保険事務上の略称は社保(しゃほ)と言われ、国保(こくほ)と呼ばれる地域保険と区別される。なお、公務員などの共済組合加入者の被用者保険については、健康保険法ではなく国家公務員共済組合法などに基づく共済組合でカバーされる。
公費負担医療給付 | 2兆8836億円(7.4%) | ||
後期高齢者医療給付 | 12兆6209億円(32.2%) | ||
医療保険等給付 18兆2811億円 |
被用者保険 8兆7480億円 |
協会けんぽ | 4兆3724億円(11.2%) |
健保組合 | 3兆3066億円(8.4%) | ||
船員保険 | 193億円(0.0%) | ||
共済組合 | 1兆497億円(2.7%) | ||
国民健康保険 | 9兆5331億円(24.3%) | ||
その他労災など | 3016億円(0.8%) | ||
患者等負担 | 4兆9296億円(12.6%) | ||
軽減特例措置 | 1949億円(0.5%) | ||
総額 | 39兆2117億円 |
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健康保険法の規定上は厚生労働大臣が幅広い権限を有しているが、実際の事務(次にあげる事務)は日本年金機構(1,2)、地方厚生局長又は地方厚生支局長(3)に委任・委託されている。
保険者(保険事業の経営主体として保険給付等の業務を行う者)は、全国健康保険協会及び健康保険組合とされる。ただし、日雇特例被保険者については全国健康保険協会のみが保険者となり、健康保険組合が保険者となることはない。
保険者 | 加入者数 | 組合数 | ||
---|---|---|---|---|
加入者計 | 本人(被保険者) | 家族(被扶養者) | ||
全国健康保険協会 | 34877千人 | 19631千人 | 15246千人 | N/A |
健康保険組合 | 29504千人 | 15533千人 | 13951千人 | 1443組合 |
日雇特例被保険者 | 18千人 | 12千人 | 6千人 | N/A |
健康保険法をはじめとする医療保険各法の規定により療養の給付等を行う病院・診療所・薬局として厚生労働大臣の指定を受けると、「保険医療機関」「保険薬局」と呼ばれる。指定を受けようとする医療機関等は、その開設者が厚生労働大臣に申請を行い、厚生労働大臣は地方社会保険医療協議会に諮問の上、当該指定を行う。指定の効力は、指定の日から6年間である。なお厚生労働大臣は、指定の取消の日から5年を経過しないときや、保険医療機関等として著しく不適当な場合等は、地方社会保険医療協議会の議を経たうえで、その指定をしない、あるいは申請に係る病床の全部または一部を除いてその指定を行うことができる。
保険医療機関として指定を受けた病院は、保険者を2,3に限定してその被保険者・被扶養者のみを診療することはできない。なお、健康保険組合直営病院等は、当該健康保険組合の被保険者のみを診療している場合は保険医療機関又は保険薬局の指定を受ける必要はないが、指定を受けると組合員以外の者にも開放しなければならない。
保険医療機関において診療に従事する医師・歯科医師、保険薬局において調剤に従事する薬剤師は、全員が厚生労働大臣の登録を受けた医師・歯科医師(保険医)・薬剤師(保険薬剤師)でなければならない(第64条)。保険医等の登録に有効期間の定めはないので、原則として終身有効である。なお、個人開業の保険医等で、かつ当該開設者たる医師等のみが診療又は調剤に従事している場合、当該保険医等に登録があった場合は、その診療所又は薬局についても保険医療機関等の指定があったものとみなされる。
個人開業の保険医療機関(病院及び病床を有する診療所を除く)は、その指定の効力を失う日前6ヶ月から同日前3ヶ月の間に、別段の申出をしないときは、保険医療機関等の指定の申請(更新申請)があったものとみなされる(指定申請手続きの簡素化)。
保険医療機関又は保険薬局が保険医療機関又は保険薬局であることを辞退する場合、保険医又は保険薬剤師がその登録の抹消を求めるときは、1月以上の予告期間を設けなければならない(第79条)。
保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間、患者の診療録にあってはその完結の日から5年間保存しなければならない。
加入は原則として事業所単位(本社、支社、工場など)で行われる[* 2]。健康保険が適用となる事業所は、加入が義務付けられている事業所(強制適用事業所)と、厚生労働大臣の認可を受けて加入する事業所(任意適用事業所)がある。適用事業所は健康保険と厚生年金とで共通である[* 3]。
「適用業種」とされるのは、以下の業種である。
労災保険や雇用保険とは異なり、適用事業所でない事業所が、被保険者となるべき者からの希望があっても適用事業所とする義務はない。
2以上の事業主が同一である場合は、厚生労働大臣の承認を受けて当該2以上の事業所を一の適用事業所とでき(一括適用事業所、第34条。一般的には法人一括の単位で適用されている)、承認にあたっては以下の要件をすべて満たすことが必要となる。
もっとも中小の事業所では人事・設備等の面で一括適用事業所の承認を受けるための要件を満たせない場合も多いことから[* 4]、人事や給与等の管理が本社で行われている被保険者については、その者が勤務する事業所にかかわらず、健康保険・厚生年金の手続きを本社において行う(本社における被保険者として取り扱う)ことが認められている(本社管理、平成18年3月15日庁保険発第0315002号)。これらの場合、被保険者が本社・支社間で転勤したとしても、その都度の被保険者資格の取得・喪失の手続きは不要となる。
事業主は、健康保険に関する書類を、その完結の日から2年間保存しなければならない(規則第34条)。初めて適用事業所となった事業主、事業の廃止等により適用事業所に該当しなくなった事業主は、当該事実のあった日から5日以内に所定の届出をしなければならない。
被保険者には、適用事業所に使用される者である「被保険者」(以下、「一般の被保険者」と表記[* 5])、及び「日雇特例被保険者」、適用事業所に使用されなくなった後に任意で加入する「任意継続被保険者」及び「特例退職被保険者」(後述の「退職後の健康保険」を参照)との4種類がある(第3条1項、2項、4項)。被保険者資格の取得・喪失は、原則として保険者等の確認によってその効力を生じ、事業主が資格取得の届出を行う前に生じた事故であっても、さかのぼって資格取得の確認が行われれば、保険事故となる。
一般の被保険者は、以下のいずれかに該当するに至った日から、被保険者の資格を取得する。事業主は、一般の被保険者資格を取得した者があるときは、5日以内に日本年金機構または健康保険組合に被保険者資格取得届(当該被保険者が被扶養者を有する場合は被扶養者届も併せて)を提出しなければならない。
同時に2以上の事業所に使用される被保険者(日雇特例被保険者を除く)は、2以上の事業所に使用されるに至った日から10日以内に、その被保険者が、その保険者(いずれも協会けんぽで業務が2以上の年金事務所に分掌されているときは、その年金事務所)を選択する。
事業所が健康保険の適用を受けた場合、労災保険や雇用保険とは異なり、法人から労働の対償として報酬を受け取っていれば、法人の代表者・役員も含むすべての被用者は原則として被保険者となる(昭和24年7月28日保発74号)。外国人であっても適法に就労していれば一般の被保険者となる。ただし個人事業主は「使用される者」とはみなされないので、被保険者とならない。また、被保険者・被扶養者が法人の役員(取締役、業務執行社員、執行役、ほか名称を問わずこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有すると認められるものを含む)である場合に、その業務上の負傷については、使用者側の責めに帰すべきものであるため、労使折半の健康保険から保険給付を行うことは適当でなく、原則として保険給付の対象外とされる(第53条の2)。
被保険者が5人未満である小規模な適用事業所に所属する法人の代表者であって一般の労働者と著しく異ならないような労務に従事している者については業務上の事由による疾病等であっても健康保険による保険給付の対象とする(第53条の2、規則第52条の2)。従来、当面の暫定措置とされていて(平成15年7月1日保発0701002号)、さらに傷病手当金は当措置の対象外とされてきたが、平成25年の改正により第53条の2が追加され前述の通知が廃止されたことで、傷病手当金も含めて措置が恒久化された。
休職者については、休職期間中に給与の支給がなされているか、一時的に給与の支払いが停止されているにすぎない場合は、被保険者資格を存続させる。しかし休職中に給与が全く支給されず、実質的に使用関係が消滅している場合は、被保険者資格を喪失させる。
被保険者が解雇された場合においてその解雇の効力を争う場合、解雇行為が明らかに労働法規や労働協約に違反している場合を除き、事業主から資格喪失届の提出があったときは、たとえ当該事件が係争中であったとしても一応資格を喪失したものとして受理する扱いになっている(昭和25年10月9日保発68号)。
労働組合専従者については、従前の事業主との関係では被保険者資格を喪失するが、労働組合に使用される者として一般の被保険者となる(昭和24年7月7日職発921号)。なお、共済組合の組合員については、一般の被保険者であっても原則として健康保険法による保険給付は行わず、保険料も徴収しない。
以下のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合(原則として1〜4。詳細は、日雇健康保険を参照)を除いて、被保険者となることができない(適用除外、第3条1項但書)。
短時間就労者(パートタイマー)として使用される者の加入については、身分関係ではなく、職務内容を総合的に勘案して常用的雇用関係が認められるかにより判断される。具体的な取扱い基準については、次のいずれにも該当する場合、一般の被保険者となる。
短時間正社員(フルタイムの正社員と比してその所定労働時間が短い正規型の労働者であって、期間の定めのない労働契約を締結しているもの)については、次のいずれにも該当する場合、一般の被保険者となる。
派遣労働者は、派遣元の事業所における被保険者となる。
同一の事業所において雇用契約上いったん退職した者が1日の空白もなく引き続き再雇用された場合には、事実上の使用関係は継続しているので、被保険者資格も継続する。有期の雇用契約又は任用が1日ないし数日の間を空けて再度行われる場合においても、雇用契約又は任用の終了時にあらかじめ、事業主と被保険者との間で次の雇用契約又は任用の予定が明らかであるような事実が認められるなど、事実上の使用関係が中断することなく存続していると、就労の実態に照らして判断される場合には、被保険者資格を喪失させることなく取り扱う必要がある(就労の実態に照らして個別具体的に判断する。平成26年1月17日保保発0117第2号)。ただし、60歳以上の者の再雇用については、使用関係をいったん中断したものとみなして取扱っても差し支えない(平成25年5月31日保発0531第1号)。そうすることで、再雇用に伴う給与の低下に即応して在職老齢年金の支給停止額を減額改定できる(特別支給の老齢厚生年金の受給額を多くできる)ため等である。
登録型派遣労働者の就業と就業の間の待機期間が、1月を超えないと確実に見込まれる場合は、待機期間中も引き続き被保険者資格を存続させて差し支えない。1月以内に次回の雇用契約(1月以上のものに限る)が締結されなかった場合には、その雇用契約が締結されないことが確実になった日又は当該1月が経過した日のいづれか早い日をもって使用関係が終了したものとして資格喪失する。
2009年にOECDは日本に対し、非正規労働者に対しても現在の国民健康保険ではなく被用者保険に加入させるべきと勧告した[3]。2012年に被用者保険の適用拡大法案が成立し、2016年12月に施行される見込みとなった[4]。該当者は「1週間の所定労働時間が20時間以上、月額賃金8.8万円以上、勤務期間1年以上、従業員501人以上の事業主に使用される者、学生以外」これらすべて該当する者であり、約45万人が対象となる見込み[5]。
被保険者によって生計を維持されている者で所定の要件を満たす者は、保険者の認定を受けることにより被扶養者としてその保険の適用を受けることができる。保険料免除の一類型(特約)であり、被扶養者に保険料の負担はなく、被扶養者の有無、増減で被保険者の保険料に変動はない。元来は収入を得られない子供や障害者、長期入院者、専業主婦、年老いた親などが想定されていたが、家族や社会環境の変化などにより、その態様は変化している(専業主夫、リストラされた夫、資格試験受験生、いわゆるフリーターなど)。20歳以上60歳未満の配偶者は、被扶養者認定とほぼ同時に国民年金第3号被保険者になる。なお、国民健康保険の場合は被扶養者の考え方はなく加入者全員が被保険者になるため、保険料減免制度によって対応している。事業主は、その使用する一般の被保険者が被扶養者を有するに至ったときは、5日以内に被扶養者異動届を機構又は健康保険組合に提出しなければならない。なお任意被保険者が被扶養者を有するに至った場合は、被保険者自らが提出する。
被扶養者として認定される要件としては、以下のように定められている(第3条7項)。ただし後期高齢者医療の被保険者等でないことが必要である。
協会けんぽの場合、被扶養者の申請の際に通常必要な物は被保険者及び事業主の印鑑のみである場合が多い(被扶養配偶者が国民年金の第3号被保険者になる場合は被扶養配偶者分の印鑑も必要となる)。というのも、被扶養者の収入については、所得税法上の被扶養配偶者・被扶養親族であることを事業主が確認した場合には、その旨の記載または確認欄に丸印を付ければ添付書類を省略できるからである。なお、被扶養者等に非課税の収入等がある場合には、当該事業主による確認ができないため添付書類が必要となる。また、被保険者と同一世帯に属することが認定の要件となる被扶養者等の場合のみ住民票が、被扶養者等が仕送りを受けている場合には仕送りが確認できる書類が必要となる。その他、事例により添付書類が異なるため、事前に年金事務所等に確認をすることが必要である。
健康保険組合や共済組合等の場合は要件及び添付書類等が異なっているため、事前に保険者への確認が必要である。手続についても、協会けんぽに比べ細かいことが多く、戸籍謄本や高校生の在学証明書が求められることもある。住民票については、世帯全体の証明を求められることが多い。
扶養状況を確認するために、保険者は被扶養者に係る確認(扶養現況調査)を行うことができるとされる(規則第50条)。調査票に回答と収入や居住状態の立証書類を添付して保険者に提出する。収入が多いなど上記法定の認定条件を満たさない場合、調査票の提出がない場合、勤務先の社会保険に加入していた場合は被扶養者資格がなくなる(国民健康保険などに加入する)。扶養現況調査は健康保険の適正な適用に関し重要な役割を果たしている(不当な社会保険料免除を防ぐ)が、膨大な数の被扶養者について確認を行うため、対応に苦慮している保険者も多い。厚生労働省は1年に1回以上(毎年一定の期日を定めて)実施するように保険者に指導している
以下のすべての要件を満たす者は、保険者(協会、健保組合)に申し出ることによって、被保険者資格喪失後も継続して当該保険者の被保険者となる(「任意継続被保険者」、「任意継続加入員」、「任意継続組合員」などと呼ばれるが、以下、本項では「任意継続被保険者」で統一する)。任意継続被保険者は一般の被保険者資格を喪失した日に、その資格を取得する。
任意継続被保険者は、以下のいずれかに該当するに至った日の翌日(太字文の場合は当日)にその資格を喪失する。
家族等も被扶養者として加入する事ができ、要件は基本的に在職中の被扶養者認定の場合と同様であるが、必要な添付書類が異なる。協会けんぽの場合は、印鑑(被保険者本人が申請書を自筆する場合のみ不要)、身分証明書(前保険証の記号番号がわかる場合にはその物)、課税証明または非課税証明(各自治体によって名称に差異あり。被扶養者(配偶者も含む)がいれば原則として各人につき必要だが、16歳未満・高校生・大学生・各種学校生については不要)、住民票(同一世帯が要件の被扶養者のみ)、仕送りが確認できる書類(仕送りを受けている場合)である。健康保険組合や共済組合等の場合は要件及び添付書類等が異なっているため、事前に保険者への確認が必要となる。協会けんぽに比べ細かいことが多く、戸籍謄本や高校生の在学証明書が求められることもある。住民票については、世帯全体の証明を求められることが多い。
任意継続の保険料については、事業主負担がなくなるため、被保険者の全額負担となり、自己の負担する保険料を納付する義務を負う。任意継続被保険者に関する事務は全国健康保険協会が扱うこととされるので、健康保険組合を有する事業所に勤務する場合であっても保険料は直接協会へ納付する。基本的に天引きの金額の約2倍から2.5倍になる(徴収する保険料の上限を設定している保険者もある)。各種の届出も事業主経由ではなく自ら行わなければならない。
被扶養者として他の保険に加入したり、国民健康保険の保険料が安いからといって任意に切り替えることはできないが、実際のところは保険料の納付を故意に行わないことによって被保険者資格を喪失して国民健康保険に切り替える人も多い(特に4月)。なお、健康保険組合や共済組合によっては任意に資格喪失をすることが可能なところも存在する。将来の一定期間(6月又は1年)分の保険料を前納することもでき、この場合年4分の利率による利息相当額が割引される。
納付後、同月内に健康保険(協会けんぽ、共済組合、健康保険組合、国民健康保険組合(厚生年金適用事業場に限る))の被保険者となった場合には後日還付される(ただし資格取得月を除く)。
前年の所得等で保険料の決まる国民健康保険と比べて、任意継続の場合は保険料が割安になる場合がある(その逆に、国民健康保険は市区町村ごとに計算方法が異なるため、割安にならない場合もある。住所地の市区町村の窓口で保険料(保険税額)を必ず確認した方がよい)。また、解雇や倒産等、離職の理由によっては国民健康保険の特例対象被保険者に該当し、国民健康保険の方が保険料(税額)が安くなることがあるため、心当たりのある場合は、念のため住所地の市区町村において相談を行った方がよい。
「特例退職被保険者」制度を設けている健康保険組合(特定健康保険組合)がある。厚生年金受給権がある者で、被保険者期間が20年以上または40歳以降10年以上ある者が満75歳まで継続加入できる(任意継続被保険者と異なり、「2年間」といった期間制限はない)。なろうとする者は、年金証書等が到達した日の翌日から起算して3月以内に申し出なければならない(健保組合が新たに特定健保組合の認可を受けた場合はこの限りではない。規則第168条4項)。任意継続被保険者である者は特例退職被保険者となることはできない。任意性の保険であるため、保険料納付や資格喪失等に関しては任意継続被保険者と共通している。但し、この制度を持つ健康保険組合は全国約1,500組合のうち70弱の比較的大規模な組合だけである。現役世代を圧迫するとして廃止や廃止の検討をしている組合が出てきている。
健康保険の保険料は、厚生年金保険料と同様、事業主と被保険者とで保険料を折半して負担する(第161条)。被保険者に支払うべき報酬がなくても、事業主は被保険者分も含めた全額の支払い義務を負う(第161条)。支払期日は翌月末日である。ただし、任意継続被保険者の場合は、本人が全額負担しなければならず、支払期日はその月の10日(初めて納付すべき保険料については、保険者が指定する日)である。事業主は原則として被保険者の負担すべき前月分(月の末日に退職し、報酬もその月に支払われる場合については前月分及び当月分)の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる。なお、任意継続被保険者は将来の一定期間の保険料を前納することができるが、一般の被保険者を使用する事業主は前納不可である。
ここでの「報酬」とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない」(第3条5項)。また「賞与」とは、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう」(第3条6項)。「賞与」に該当するかどうかは、毎年7月1日現在における支給実態によって定め、年度途中で給与規定の改定があっても、7~9月に随時改定を行わない限り、次の定時決定まで扱いを変更しない。
報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合(現物給与)においては、その価額は、その地方(被保険者の勤務地(本社管理の場合も本社ではなく勤務地)。派遣労働者については派遣元の所在地)の時価によって、厚生労働大臣が定める。ただし健康保険組合の場合は、規約で別段の定めをすることができる(第46条)。 なお、解雇予告手当(労働基準法第20条)や傷病手当金・出産手当金は「報酬」には含まれないので、これらから保険料を控除することはできない。退職金は原則として報酬や賞与には該当しないが、被保険者の在職時にその全部又は一部が給与や賞与に上乗せされて前払いされる場合には該当する。
組合健保は、規約で定めるところにより、一般保険料、介護保険料とも事業主の負担割合を増加させることができ(第162条)、協会けんぽに比べ保険料率が低い組合が多いが、中には協会けんぽの保険料率を超える財政基盤の脆弱な組合が存在する。なお事業主が負担割合を増加させた場合、その増加割合相当額は「報酬」には含まれない。
保険料は被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額に保険料率を乗ずることにより計算される(第156条)。
一般保険料額 = 標準報酬月額 × 一般保険料率
(介護保険第2号被保険者については、これに介護保険料額(標準報酬月額 × 介護保険料率)が加算され、あわせて徴収される)
保険料は原則として被保険者資格取得月から資格喪失月の前月まで徴収されるが、資格取得月にその資格を喪失した場合は、その月の保険料は徴収される。同一月に2回以上の資格の得喪があった場合は、1月につき2月分以上の保険料の徴収がありうる。
保険料は、以下の場合は納期前であってもすべて徴収することができる(繰上徴収、第172条)。
2007年4月現在、第1級58,000円(報酬月額が63,000円以下)〜第47級1,210,000円(報酬月額が1,175,000円以上)の47等級。2016年4月より改定され第50級(報酬月額が1,355,000円以上)まで追加される予定となっている。被保険者の報酬の月額を等級区分に当てはめることによって決定する(第40条)。同時に2以上の事業所で報酬を受ける被保険者については、各事業所から受ける報酬について報酬月額を算定し、その各報酬月額の合算額をその者の報酬月額として、標準報酬月額を決定する(第44条3項)。
毎年3月31日における標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の被保険者総数に占める割合が1.5%を超えその状態が継続すると認められるときは、厚生労働大臣は社会保障審議会の意見を聞いて、その年の9月1日から政令により最高等級該当者の割合が1%未満(2016年4月より0.5%未満)にならない限度で、当該最高等級の上にさらに等級を加える等級区分の改定を行うことができる(第44条1項)。
被保険者の賞与に基づき、1,000円未満の端数を切り捨てて決定する。全てを報酬と扱う反面、上限を設定し、賞与額が年度累計額540万円(2016年4月より573万円)を超えた場合は、超過分について保険料賦課の対象にせず、当該年度の翌月分以降に受ける賞与の標準賞与額はゼロとなる(第45条)。全給与が賞与として支払われる場合は、年度累計額が540万円を超過した部分については保険料賦課の対象とならない。なお累計は保険者単位で行われるので、年度途中で管掌する保険者が変わった場合、それまでの賞与額は新保険者の下では累計されない。
被保険者資格喪失月において、資格喪失前に支払われた賞与については、保険料賦課の対象とならない。ただし、年度の累計額には算入される。
事業主は、賞与を支払った日から5日以内に、賞与支払届を機構又は組合に提出しなければならない。
政管健保が2008年10月より全国健康保険協会に移管され、それに伴い全国一律だった一般保険料率も医療費に応じて各都道府県を単位に3.0%~12.0%(当初は3.0%~10.0%、平成28年4月からは3.0%~13.0%)の範囲内で協会が決定することとなった[7]。ただ、地域の医療格差のみが反映されるようになっていて、年齢構成や所得水準の違いに起因する都道府県ごとの財政力の差については都道府県間で調整されるので保険料率には反映されない。協会が保険料率を変更するには厚生労働大臣の認可が必要で、大臣は保険料率が不適当であり事業の健全な運営に支障があると認めるときは協会に変更の認可を申請するよう命ずることができる(第160条)。
実際には2009年9月より各都道府県別の保険料率となり、8.26%(北海道)〜8.15%(長野県)と定められた。更にその半年後の2010年3月には全国平均で1.14%の大幅な保険料率引き上げが行われ、9.42%(北海道)〜9.26%(長野県)となり、その後も保険料率の引き上げが続いている。2015年4月以降については、10.21%(佐賀県)〜9.86%(新潟県)となっている[8]。
組合健保の場合も、一般保険料率は3.0〜12.0%(平成28年4月からは3.0%~13.0%)の範囲内で組合ごとに決定し、変更に際しては原則として厚生労働大臣の認可を受けなければならない[* 8]。合併によって設立された組合健保においては、合併の翌5年度に限り、厚生労働大臣の認可を受けて不均一の一般保険料率を設定することができる。
前月から引き続き一般の被保険者である者が少年院、刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に収容・拘禁された場合、その月以降該当しなくなる月の前月までの保険料は徴収されない(第158条)。ただし同月中に収容等されなくなった場合は保険料は徴収される。事業主は、被保険者がこれらに該当する(しなくなった)場合は、「第118条1項該当届(非該当届)」[* 9]を5日以内に機構又は組合に提出しなければならない。
育児休業等をしている一般の被保険者が使用される事業所の事業主が保険者等に申し出たときは、育児休業等開始日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までの期間、当該被保険者に関する保険料は徴収されない(第159条)。被保険者が育児休業等期間を変更したとき、または育児休業等終了予定日の前日までに育児休業等を終了したときは、速やかに機構又は組合に届出なければならない。なお労使協定により子が3歳に達する日以降の育児休業を定めている場合であっても、免除は3歳未満の子を養育するための育児休業に限られる。
平成26年4月30日以降に産前産後休業が終了となる一般の被保険者が使用される事業所の事業主が保険者等に申し出たときは、産前産後休業開始日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までの期間、当該被保険者に関する保険料は徴収されない(第159条の3)。被保険者が産前産後休業期間を変更したとき、または産前産後休業終了予定日の前日までに産前産後休業を終了したときは、速やかに「産前産後休業取得者変更(終了)届」を機構又は組合へ提出する。
免除は事業主負担分、被保険者負担分双方について行われる。なお、任意継続被保険者、特例退職被保険者については免除は行われない(これらに該当しても保険料は徴収される)。
保険料その他健康保険法の規定による徴収金を滞納する者があるときは、保険者等は期限を指定して督促しなければならない。督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して10日以上経過した日でなければならない(第180条1項~3項)。なお督促は規則に定められた様式の督促状(様式第20号)で行われ、口頭、電話または普通の書面で行われることはない(規則第153条)。繰上徴収に該当する場合であっても、既に納期の過ぎた分の保険料については督促しなければならない(この場合延滞金は徴収されない)。
保険者等は督促を受けた者がその指定の期限までに保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、国税滞納処分の例によってこれを処分し、又は滞納者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村に対して、その処分を請求することができる(第180条5項)。市町村は市町村税の例によりこれを処分したときは徴収金の4%相当額が厚生労働大臣から当該市町村に交付される(第180条6項)。機構・協会・組合が滞納処分を行う場合は、あらかじめ厚生労働大臣の認可を受けなければならない。また滞納者が悪質な場合には当該権限を財務大臣を通して国税庁長官に委任することができる。「悪質な場合」とは、以下のいずれの要件も満たす場合とされる。
督促したときは、やむを得ない事情がある場合、公示送達による督促の場合等を除き、保険者等は、徴収金額(1,000円未満の端数は切り捨て)に、納期限の翌日から徴収金完納または財産差し押さえの日の前日までの期間の日数に応じて、年14.6%(督促が保険料に係るものである場合は、納期限の翌日から3月を経過する日までの期間については年7.3%)の割合を乗じて計算した額の延滞金(100円未満の端数は切り捨て)を徴収する(第181条)。なお現在の低金利の状況では年14.6%の延滞金は高すぎるとの問題意識から、事業主の負担軽減等を図るべく、当分の間特例が設けられ、各年の特例基準割合(租税特別措置法第93項2項の規定に基づき、「前々年10月から前年9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合」として財務大臣が告示した割合に年1%の割合を加算)が年7.3%に満たない場合は、
とされる。平成27年、28年の場合、特例基準割合は年1.8%(告示割合年0.8%に年1%を加算)とされたので[9]、実際には以下のようになる。
保険料等の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする(第182条)。
国庫は、毎年度、予算の範囲内において、健康保険事業の事務の執行に要する費用を負担する(第151条)。したがって事務費は全額国庫負担である。また、健康保険組合に対して交付する国庫負担金は、各健康保険組合における被保険者数を基準として、厚生労働大臣が算定することとされ、この国庫負担金については、概算払をすることができる(第152条)。
協会けんぽに対しては、主な保険給付の支給に要する額に給付費割合を乗じて得た額の合算額の13~20%を国庫が補助することとされ(第153条1項)、当面の間国庫補助率は16.4%とされる(附則第5条)[* 10]。また協会が拠出すべき後期高齢者支援金及び介護納付金の納付に要する費用の額の16.4%についても国庫が補助する。
これらのほか、国庫は、予算の範囲内において、健康保険事業の執行に要する費用のうち、特定健康診査及び特定保健指導の実施に要する費用の一部を補助することができる(第154条の2)。
下記に掲げるもののほか、健康保険組合の場合は規約に定めることで付加給付を行うことができる(第53条)。被保険者の資格取得が適正である限り、その資格取得前の疾病、負傷等に対しても、保険給付は行われる。
被扶養者に関する保険給付(家族給付)は、あくまで保険料を負担している被保険者に対してなされるものである。したがって、被保険者が死亡した場合、その翌日から家族給付は打ち切られる。
保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない(第61条)。租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課することができない(第62条)。
なお、健康保険法には未支給の給付についての規定がないので、被保険者が未支給給付を残して死亡した場合は、民法の原則に従い、受給権者の相続人が未支給給付の請求権者となる。
被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は行われない(絶対的給付制限、第116条)。ただしこの場合であっても、埋葬料(埋葬費)については支給する扱いとなっている。
被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付はその全部又は一部を行わないことができる(相対的給付制限、第117条)。保険給付を受ける者が正当な理由なく文書その他の物件の提出若しくは提出命令に従わず、又は職員の質問若しくは診断に対し答弁もしくは受診を拒んだときも同様である。
被保険者又は被保険者であった者が、正当な理由なく療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる(一部制限、第119条)。
保険者は、偽りその他不正行為により、保険給付を受け、または受けようとした者に対し、6月以内の期間を定め、その者に支給すべき傷病手当金又は出産手当金の全部または一部を支給しない旨の決定をすることができる。ただし、偽りその他不正行為があった日から1年を経過したときは、当該給付制限を行うことはできない(第120条)。
偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときは、保険者は、その者からその給付の価額の全部又は一部を徴収することができる(第58条1項)。この場合において、事業主が虚偽の報告若しくは証明をし、又は保険医若しくは主治医が、保険者に提出されるべき診断書に虚偽の記載をしたため、その保険給付が行われたものであるときは、保険者は、当該事業主、保険医又は主治医に対し、保険給付を受けた者に連帯して前項の徴収金を納付すべきことを命ずることができる(第58条2項)。
保険者は、保険医療機関・保険薬局・指定訪問看護事業者が偽りその他不正の行為によって療養の給付等に関する費用の支払を受けたときは、当該保険医療機関・保険薬局・指定訪問看護事業者に対し、その支払った額につき返還させるほか、その返還させる額の40%を支払わせることができる(第58条3項)。
健康保険における被保険者の資格、保険料については厚生年金とセットになっていることから、不服申立てについても厚生年金と手続が一元化されている。
被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、各地方厚生局に置かれる社会保険審査官に対して審査請求をすることができる(第189条)。この審査請求は処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならない。また、被保険者の資格または標準報酬に関する処分に対する審査請求は、原処分のあった日の翌日から起算して2年を経過したときは、することができない。
社会保険審査官の決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる(二審制)。この再審査請求は、社会保険審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して60日以内にしなければならない。また、審査請求をした日から60日以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなして、社会保険審査会に再審査請求をすることができる。いずれの場合であっても、当該再審査請求は口頭で行うことができる。
保険料の賦課もしくは徴収の処分又は滞納処分に不服がある者は、社会保険審査会に対して審査請求をすることができる(一審制、第190条)。
以上の処分については、当該審査請求・再審査請求に対する社会保険審査会の裁決を経た後でなければ、取消の訴えを提起することはできない(審査請求前置主義、第192条、行政事件訴訟法第8条1項但書)。
審査請求・再審査請求は、時効の中断に関しては裁判上の請求とみなされる。
保険料を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、2年を経過したときは時効により消滅する(第193条)。これは金銭の徴収・給付にかかる規定であるので、療養の給付のような現物給付については消滅時効の適用はない。保険料の納入の告知又は督促は、時効中断の効力を有する。
事業主から被保険者に還付すべき保険料過納分の被保険者の返還請求権については、健康保険法の適用はなく、民法の一般原則に従って10年の消滅時効にかかる(民法第167条)。
疾病や負傷が業務や通勤を原因とするために労働者災害補償保険(労災保険)または公務災害の補償が適用される場合、および介護保険の適用により支給がなされる場合には、同一の疾病・負傷については健康保険が適用されずその支給が全額カットされる場合がある。例えば傷病手当金はその全額が支給されない(第55条)。
少年院、刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に収容・拘禁された被保険者又は被保険者であった者については、疾病、負傷、出産につき、原則として保険給付は行われない(公費治療との調整、第118条)。ただしこの場合でも、死亡に関する給付及び被扶養者に係る保険給付は行われる。なお、未決勾留者については傷病手当金・出産手当金は支給される。また、結核、精神病、原爆症等、公費負担治療の対象となる疾病、負傷については、公費負担の範囲内で健康保険の保険給付は行わないこととされている。ただ、健康保険と公費負担が競合する場合、一般的には健康保険を優先して給付し、自己負担分について公費負担が行われている。
健康保険と、その他の保険・医療制度(労災、公務災害、介護保険、公費治療、公費負担治療)との関係については、いずれかの制度を選択したり、支給調整が行われると言った性格のものではなく、その他の保険の一からの給付を受けなければならない。例えば労災であるにも関わらず健康保険での給付を受けると、その給付相当額を一旦保険者に返納した上で労災の申請をしなければならなくなる(労災は申請してもすぐには支給されない)ので、二度手間でありかつ一時的にでも療養費等の自己負担をすることになる。なお、「労災隠し」の問題については労働災害の項目を参照のこと。
疾病や負傷が交通事故などの第三者行為を原因とする場合、ただちに健康保険が適用できないと言うわけではない。第三者行為であった場合には、その給付した金額を限度として、第三者行為の相手方に対する損害賠償請求権を保険者が代位取得することになる(第95条)。この場合、被保険者は第三者行為災害届を遅滞なく提出しなければならない。
第三者行為の場合には、疾病等の完治や症状固定などにより保険給付が終結するまでは、相手方との示談等を行うべきではなく、その旨、保険者からも指導がある。それは、被害者と相手方との示談等(口約束を含む)を先に行なうことにより、被害者の持つ損害賠償請求権が確定(限定)されてしまい、健康保険が代位取得できる賠償請求権も限定されてしまうからである。訴訟外の先行賠償により(自動車保険の人身傷害など)賠償額を受領し、または訴訟等により賠償額が確定しその受領を受けた場合には、その受領額を限度として健康保険からの給付に対して支給調整が行われる(第57条)。なお、第三者行為と各種保険との関係については、労災保険、公務災害による保険、介護保険においても同様である。
医療機関によっては交通事故など(第三者行為)による負傷等の場合に健康保険での受診の拒否を主張する場合があるが、その拒否には法的根拠はない。健康保険を適用せずに自由診療とすれば、医療機関にとっては同じ診療等であっても診療報酬が比較的自由に決められるため(自賠責または自動車保険に請求する場合、健康保険適用の場合の200%程度になる)、そのような主張は、単に医療機関の収入と経営上の問題である。ただし、労災保険、公務災害に関する保険、介護保険が適用可能な場合には健康保険適用の拒否には法律上の根拠があることになる。
被用者保険は、小規模な健康保険組合が多数存在する状況で財政が悪化しており[7]、さらに後期高齢者医療制度拠出金が負担を重くしている。保険者の効率性を高めるため、保険者を統合し総数を減らすようOECDは勧告している[7]。
− 健保組合(健康保険の運営者)等により医療費節約という趣旨で被保険者に対し「医療機関を頻繁に変えない」「時間外や夜間・日祝日の受診を避ける」といった、緊急の場合を含む医療機関への受診機会の喪失や医療選択の自由に関わる記述が行われている。[10]
また保険者では「医療機関を頻繁に変えない」「時間外や夜間・日祝日の受診を避ける」などのコンビニ受診について言及し、医療費を減らす方法を提案している[11]。
健康保険証不正使用による診療費詐欺問題がある。例えば、病院・医院の関係者(従業員・医療従事者)や現在来院していない患者の健康保険証を使用しての患者数水増しである。1つの病院で診療報酬20億円を不正受給といった事件となる。[12]。
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第二章 保険者
第一節 通則
(保険者)
(全国健康保険協会管掌健康保険)
(組合管掌健康保険)
(二以上の事業所に使用される者の保険者)
第二節 全国健康保険協会
(設立及び業務)
第三節 健康保険組合
(組織)
(法人格)
(名称)
(設立)
第四章 保険給付
第一節 通則
(保険給付の種類)
第二節 療養の給付及び入院時食事療養費等の支給
第一款 療養の給付並びに入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費及び療養費の支給
(療養の給付)
(保険医又は保険薬剤師)
(保険医又は保険薬剤師の登録)
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