ジカ熱
- ジカウイルスによって発症する急性熱性疾患
- ジカウイルスは1947年、ウガンダのジカ森のアカゲザルから分離された。
- 1952年にウガンダとタンザニア連合共和国で分離された。
- 2015年からブラジル、コロンビアなどで流行した。
- 症状は不顕性感染で終わることもあれば、軽症で発疹、熱熱、結膜炎を主とした比較的予後良好な疾患。
- 媒介動物はヤブカ属ネッタイシマカ(Aedes aerypti)、Aedes africanus。また日本に分布しているヒトスジシマカ(Aedes albopictus)も媒介しうる。
- アウトブレイクはヤップ島(2007年)、仏領ポリネシア(2013年)。2015年にはブラジル、コロンビア、アフリカのカーボベルデ共和国で報告されている。
- 2016年、ジカウイルス感染症の流行による小頭症リスクを鑑みて、WHOが国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言した(PHEIC宣言)。
- 潜伏期間は2-12日(多くは2-7日)である。
- 不顕性感染が約8割で、顕性となるのは約2割である。
- 顕性となった場合には、症状は軽度の発熱、発疹、筋肉痛/関節痛、結膜炎、倦怠感、頭痛などが出現する。
- 2-7日の経過で改善することが多く、重症化や死亡は稀である。
- 合併症はギラン・バレー症候群、胎内感染による小頭症がありうる。
- 妊娠初期の感染により小児の小頭症のリスクが高まることが判明した。
- ジカウイルスによる子宮内感染の可能性:先天奇形による死亡例76例中5例の胎児組織からジカウイルスが検出され、小頭症の児の羊水からジカウイルスが検出されたとの報告があることから、母体の感染が胎児に影響を与える可能性が示唆されている。またジカウイルス感染から2週後と10週後に精液からジカウイルスが検出されたとの報告がある。
- 統計的には、2016年ジカウイルス感染症の多かったブラジル15週における小頭症児の発生率は10000出産あたり2.8であり、ジカウイルス感染症が蔓延していない4州における発生率10000出産あたり0.6を上回っていたと報告されている。
- なお、小頭症の発症頻度は米国では10000出産あたり2-12であり、日本(平原ら、2013-2018年)では10000出産あたり1.1-1.5とされている。
- 母体感染は妊娠第一期が多いとされており、妊娠17週がもっとも関連があるという報告がなされている。
- 診断は血清・尿を検体として、RT-PCRあるいはウイルス分離する。
- 血清であれば発症後7日以内、尿検体では14日程度は検出できる。
- 血清抗体による診断はペア血清で行う必要があり、かつデングウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱ウイルスなどとの抗体の交差反応があるので注意する必要がある。
- 特異的な治療はなく、対症療法のみである。
- 解熱鎮痛薬としてのNSADIsはデング熱との鑑別が困難なため使用しない方がよい。
- 感染経路としては媒介動物(蚊)の吸血に直接血液の中に注入されること経路がある。
- ウイルス血症が見られることから、血液の直接暴露、臓器移植、輸血には注意が必要である。
- 予防としては刺されないことであり、蚊を媒介する感染症と同じ対策が必要である。
- 具体的には長袖、長ズボンを装着し、蚊の忌避剤を用いること。また蚊帳も有効である。性感染症の可能性も指摘されており、感染が疑われる場合には性交渉の際にはコンドームの装着が推奨される。
参考
- 日本内科学会雑誌 2016年 11月号 一般社団法人 日本内科学会 p.2123