100Cases 18

2020年8月21日 (金) 15:17時点におけるimported>Medicineによる版
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☆case18 疲労、息切れ、頭痛
63歳 女性
主訴:ひどい疲労
現病歴:過去1年の間に、だんだんと疲労を感じるようになった。ここ何週間か(in recent weeks)、運動時息切れ、ふらつき、頭痛を訴えている。足は麻痺するようになり、足がふらつくようになっている。タバコは吸わない。アルコール15 unit/week(缶ビール(350ml)9本弱本/週)。服用薬無し。
既往歴:特記無し。
家族歴:母と2人の姉妹のうちの一人が甲状腺の問題がある。
社会歴:前職は教師。退職後、現在一人暮らし。2年前までは活動的で1日3-4マイル(4.8-6.4km)歩いていた。
・身体所見
 結膜:薄い(pale)。強膜:黄色。体温37.8℃。脈拍:96/分、整。血圧:142/72 mmHg。心血管・呼吸・腹部:正常。対称性の四肢遠位部の筋力低下(weakness)。膝蓋腱反射(knee jerk)・アキレス腱反射(anke jerk):無し。屈曲性足底反射(flexor plantar reflex):有り。感覚の喪失(特に関節位置覚):glove and stocking distribution
・検査
低下:Hb、plt
上昇:MCV、bilirubin
Q1. Hb、MCVから何が言えるか?
Q2. bilirubinとQ1の結果、そして神経所見を結びつけると、この女性の病態は説明されるか?
(第一パラグラフ)
 ・血液所見:大球性貧血。血液所見 + 神経所見 = ビタミンB12(代謝性多発ニューロパチー)
 ・甲状腺疾患の家族歴があり、大球性貧血の原因となるけど、こんな程度じゃない?し、他の病態が説明できない。
 ・貧血の症候は貧血が進展する早さに依存する
  ・慢性貧血:
   全身症候:疲労、粘膜の蒼白、微熱
   心肺症候:息切れ、共通、跛行、頻拍、浮腫、フィン不全
   消化器症候:食欲不振、体重減少、悪心、便秘
   生殖器:月経不順、性欲低下
   神経症候:頭痛、眩暈、疝痛
  ・悪性貧血
   血液所見:MCV:100-140fL。網状赤血球:貧血の症状に見合うほど増加しない。白血球:中程度減少。
   血液塗沫:oval macrocyte(楕円巨大血球?)、
   血清ビリルビン:中程度上昇。'lemon-yellow'顔貌
   神経症状:亜急性連合性脊髄変性症 subacute combined degeneration of spinal cord
        末梢神経ニューロパチー、錐体路徴候、極端な場合は対麻痺、視神経萎縮、認知症
(第二パラグラフ)
 ・食事の前食事歴を聴取
 ・血液検査:ビタミンB12、葉酸、内因子抗体、壁細胞抗体
  悪性貧血 -(約50%  )→ 内因子抗体
  悪性貧血 ←(ほぼ100%)- 内因子抗体
  悪性貧血 -(85-90%  )→ 壁細胞抗体
  萎縮性胃炎-------→ 壁細胞抗体
 ・検査:Schilling test(ビタミンB12の吸収能を検査)
 ・治療:hydroxycobalaminの筋肉内注射
■大球性貧血の鑑別診断
・葉酸欠乏
・アルコール過剰摂取
・甲状腺機能低下症
・薬物(アザチオプリン、メトトレキセート)
・先天性鉄芽球症、骨髄異形成症
■KEYPOINT
 ・ビタミンB12不足は厳格なベジタリアンで起こるかもしれない
 ・典型的な神経徴候は足の位置覚・振動覚の喪失、反射の消失、および伸展性足底反射である。
 ・心不全を避けるために、ビタミンB12欠乏患者に輸血のしすぎは避けるべき。
■甲状腺機能低下症
病態
 甲状腺ホルモンの合成、分泌が低下
症候
 顔面・手足の浮腫、寒がり、便秘、嗄声、物忘れ
 滲出液(心膜液貯留(約30%の症例で見られる)、胸水貯留)←血管透過性の亢進による、その他(低ナトリウム血症、骨格筋ミオパチー、血清クレアチニン上昇、筋逸脱酵素の上昇(CK、アルドラーゼ、LDH))、粘液水腫性昏睡(低体温、浮腫性皮膚、意識レベル低下)(ICU.762)
病因
 先天性甲状腺機能低下症
  先天性甲状腺欠損症
  異所性甲状腺
  クレチン病 (SP.925)
  甲状腺ホルモン不適応症(レフェトフ症候群)
 原発性甲状腺機能低下症
  慢性甲状腺炎(橋本病)
  特発性粘液水腫(特発性甲状腺萎縮) ← 
 二次性甲状腺機能低下症
  下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌↓
  シーハン症候群, TSH単独欠損症 (SP.925)、下垂体腫瘍
 三次性甲状腺機能低下症
  視床下部からの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)分泌↓
  視床下部性甲状腺機能低下症=三次性甲状腺機能低下症
■glossary
mile n. マイル(1 mile = 1603.344 m)
plantar reflex 足底反射
 flexor plantar reflex 屈曲性足底反射 = Babinski's reflex バビンスキー反射
 extensor plantar reflex 伸展性足底反射
enthusiastic adj. 熱心な、熱狂的な(about, over)
complexion n. 肌色、顔色、顔の色つや。(事態の)外観、状況、局面、様相。気質、性格
足底反射陽性 reflex plantar upgoing, upgoing plantars = バビンスキー反射陽性
optic atrophy 視神経萎縮(視神経線維の軸索の変性と機能消失をきたした状態)
大球性貧血 megacytic anemia:MCV≧101である貧血
巨赤芽球性貧血 megaloblastic anemia:造血細胞のDNA合成障害により惹起される巨赤芽球性造血を特徴とする貧血。大球性正色素性貧血
■ビタミンB12欠乏症
 検査(HIM.650)
  血清コバラミン
 低値であれば巨赤芽球性貧血の裏付けとなる。
  血清のメチルマロン酸 methylmalonic acid, MMA とホモシスチン
巨赤芽球性貧血やニューロパチーをきたしている症例ではメチルマロン酸が上昇している。貧血症状を呈していない症例や、血中コバラミンが正常値低値?(subnormal)であるような症例であっても、メチルマロン酸やホモシスチンを測定する鋭敏な方法はビタミンB12欠乏の診断のために推奨される。ただ、メチルマロン酸and/orホモシスチンの30%程度の上昇は正常人でも見られるのでどのようなカットオフ値を設定すればよいのかは疑問が残る。現在のところ、これらの検査値の上昇が臨床的に重要なのかどうかはまだ分からない。
  シリングテスト
・放射ラベルコバラミンの入手が難しいのでやりにくい。患者に一晩空腹で過ごしてもらい、翌日、経口で放射ラベルコバラミンを服用する。2時間後cyanocobalamin or hydroxocobalaminを筋注する。24時間後の尿に排泄された放射ラベルコバラミンの量からコバラミンの吸収率を算出する。
 
 血液学的所見(HIM.646)
  末梢血:楕円巨大血球(oval macrocyte)、変形赤血球症(poikilocytosis)、MCV>100fl
  好中球の過分葉(5葉以上)、白血球減少(顆粒球、リンパ球減少)、血小板中程度減少
  骨髄:primitive cellの蓄積でhypercellulartityとなっている。
  無効造血:間接ビリルビン上昇(骨髄で有核赤血球ができては壊れるため(ineffective erythropoiesis))。尿ウロビリノゲン上昇、ハプトグロビンの減少、尿ヘモジデリン陽性、血清LDH上昇
■亜急性連合性脊髄変性症 subacute combined degeneration of spinal cord
病理
脊髄後索と側索の脱髄・変性
大脳白質・末梢神経にも髄鞘の脱髄と軸索の変性が起こる。軸索の変性は軽度。
病態
錐体路徴候、深部感覚障害・運動失調(BET.156)
下肢遠位部が優位となる。
後索症状:感覚障害(特に深部感覚)、後索性失調、ロンベルク徴候
錐体路徴候:痙性対麻痺、膝蓋腱反射亢進、バビンスキー徴候
病因
ビタミンB12の欠乏(詳しくは→ビタミンB12欠乏症)
悪性貧血に続発する病態
悪性貧血以外の原因による
葉酸の欠乏(完全に同一の症状ではない)
検査
血清ビタミンB12:低値
シリングテスト:陽性
診断
症候と検査(血中ビタミンB12、シリングテスト)により診断
治療
ビタミンB12の筋注