- 英
- paedomorphosis
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2020/04/22 09:47:16」(JST)
[Wiki ja表示]
幼形進化(ようけいしんか、英語:pedomorphosis、paedomorphosis、 juvenification)は発生生物学において、祖先の幼体にのみ見られる特徴的な姿で成熟を迎える表現型および遺伝子型の変化である。これは、個体成長の短縮や発育の遅滞によってもたらされ[1]、付加的進化とは逆方向の進化である。幼形進化は1922年にイギリスの動物学者ウォルター・ガースタング(Walter Garstang)が初めて提唱した[2]。その基礎となるメカニズムは異時性(ヘテロクロニー、heterochrony)である。
幼形進化は幾つかの要素が独立に、或いは複合して発現しうる。代表的なものを以下に示す。
- ネオテニー:肉体的(または身体的)に発達を遅らせることにより、結果的に幼体または幼児形のまま性的に成熟する。
- プロジェネシス(早熟、Progenesis):十分成熟する前に発達が停止する。
- ポストディスプレイスメント(Postdisplacement):発達の開始を遅らせる。
幼形進化は人間と共存している動物、例えばイヌ・ニワトリ・ブタ・ウシなど数多くの種で見られる。それは、従順さなどのような幼体の行動の特質を利用するための人為選択や品種改良の側面的な影響があると信じられている[3]。動物の権利の廃止論者はこのような現象を不自然だと捉えているが、ネオテニー化は進化の1つの形であり、幼少期の形質には高い学習能力等があり多様な環境では適応的な形質となる[4]。
動物相
自然に発生する幼形進化は両生類、特に トラフサンショウウオ科やホライモリ科(Proteidae)のサンショウウオの仲間によく見られる。両生類の中では恒例の、ないしは条件的なものもありうる。例えばサンショウウオには、大人になってもえらを保つものがあり、これは他の両生類には稀である。これらのサンショウウオも過去の時点では、えらを失っていたと考えられるが、進化に有利であるか、あるいは影響を及ぼさないため、いくらかの遺伝子の変化でえらを保持したものと思われる。両生類における幼形進化を示す種の調査の例はアメリカ・オレゴン州のクレーターレイクにおけるブラウンサラマンダー(Northwestern Salamander)の個体数調査がある[5]。 幼形進化はまた、シロアリや数種のゴキブリでも確認される。ボノボも、ネオテニー化したチンパンジーと言われ、攻撃性が低く、学習への欲求が強い[4]。
植物相
幼形進化はある植物でも認められ、素早く環境変動に適応するためであると考えられる。一例としてオーストラリアからニュージーランドに達した、より分化した創始者集団であるOreostylidium属のある植物が挙げられる。その花は典型的に特定の1種の送粉者と結び付くが、送粉者はその花に限定されない。この新しい送粉者の圧力の欠如は、その植物が未成熟な状態から急速に性的に成熟する進化を遂げることを可能とし、幼形進化を強めるという仮説がある[6]。
脚注
- ^ 池谷仙之・北里洋『地球生物学-地球と生命の進化』東京大学出版会、2005年5月20日第3刷発行、ISBN 4-13-062711-2。
- ^ Garstang, W. (1922) The Theory of Recapitulation: a critical Re-statement of the Biogenetic Law. Linn. Soc. Jour. Zool., XXXV, pp. 81-101
- ^ Trut, Lyudmila N (1999), “"Early Canid Domestication: The Farm-Fox Experiment"”, American Scientist 87 (2): 160–169, http://www.floridalupine.org/publications/PDF/trut-fox-study.pdf 。 (40年間に及ぶアカギツネを飼い慣らすプログラムによるロシアの幼形進化に関する研究)
- ^ a b スー・ドナルドソン、ウィル・キムリッカ『人と動物の政治共同体』尚学社、2017年、121頁。
- ^ C. Michael Hogan (2008) Rough-skinned Newt (Taricha granulosa), Globaltwitcher, ed. Nicklas Stromberg
- ^ Wagstaff, S J; Wege, J (2002), “Patterns of diversification in New Zealand Stylidiaceae”, American Journal of Botany 89 (5): 865–874, doi:10.3732/ajb.89.5.865, http://www.amjbot.org/cgi/content/full/89/5/865 .
|
この項目は、生物学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:生命科学/Portal:生物学)。 |
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
- 1. 食物性アナフィラキシーfood induced anaphylaxis [show details]
…the time. The evolution of this patient symptoms should alert the clinician to the correct diagnosis of anaphylaxis, possibly triggered by peanuts or tree nuts. In infants and young children experiencing …
- 2. 慢性副鼻腔炎の微生物学的および抗菌薬によるマネージメントmicrobiology and antibiotic management of chronic rhinosinusitis [show details]
… the patient should be referred to an otolaryngologist for consideration of sinus surgery. The evolution of the upper respiratory flora in rhinosinusitis and the microbiology and antibiotic management … (in children: 45 mg/kg per day divided every 12 hours; in adults: 500 mg three times daily or 875 mg twice daily or two 1000 mg extended-release tablets twice daily) Clindamycin (in children: 20…
- 3. 発疹性(斑状丘疹性薬疹)薬疹exanthematous maculopapular drug eruption [show details]
… The chronology of the onset and evolution of the skin lesions allow an approximate estimation… autoantibody tests should be performed if an autoimmune connective tissue disease is suspected (eg, juvenile idiopathic arthritis, lupus erythematosus). Specific immunologically based tests to evaluate delayed …
- 4. 小児における黒色腫melanoma in children [show details]
… A prominent feature in pediatric melanoma is lesion evolution over time. However, melanoma evolution in children may be misinterpreted as the expected and natural evolution of benign, pigmented lesions …
- 5. 発作性夜間血色素尿症の病因pathogenesis of paroxysmal nocturnal hemoglobinuria [show details]
…Neutral evolution – In "neutral evolution," PNH clones do not have a survival advantage, but one or more clones expand stochastically during periods of bone marrow regeneration. Neutral evolution is supported… syndrome known as multiple congenital anomalies-hypotonia-seizure syndrome 2 (MCAHS2, MIM300818) . Children with MCAHS2 present with severe intellectual disability, dysmorphic facial features, and seizures …
Japanese Journal
- 幼形進化型ハゼ亜目魚類2種(シラスウオ属の1種とシロウオ)の精子変態過程
- 幼形進化型ハゼ亜目魚類2 種(シラスウオ属の1 種とシロウオ)の精子変態過程
- 原 政子,仲村 茂夫,北野 忠,秋山 信彦
- 魚類学雑誌 57(2), 93-103, 2010
- 本研究は,シラスウオ属の1種とシロウオの精子変態過程の微細構造を透過型電子顕微鏡(TEM) と走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し,既往の知見と比較して著しく特化したと推定される精子の変態過程とその起源を明らかにすることを目的とした.
- NAID 130003397795
- 入江 貴博,巖佐 庸
- 日本生態学会大会講演要旨集 ESJ52(0), 709-709, 2005
- … 環境を決める3変数のうち1変数のみが変化する場合に、子孫種の防御器官が祖先種よりも小さくなるという幼形進化(paedomorphosis)について以下のような計算結果を得た:子孫種の環境における資源獲得率(a)が祖先種のそれより低い場合にはネオテニー(成長率の低下)によって幼形進化が起こる。 …
- NAID 130007011298
Related Links
- 幼形進化は1922年にイギリスの動物学者ウォルター・ガースタング(Walter Garstang)が初めて提唱した [2]。その基礎となるメカニズムは異時性(ヘテロクロニー、heterochrony)である。 幼形進化は幾つかの要素が独立に、或いは複合し
- ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 - 幼形進化の用語解説 - 成体進化に対する語。個体発生と系統発生の関係を考える場合に,形質変化が,胚期や幼生期などの未成期からすでに始ることをいう。 G.ド・ベーアは祖先と子孫との間での形質発現の差を,発現時期に注目して8型に区別したが ...
- ネオテニーという言葉は、幼形成熟や幼形進化と訳される。動物が胎児や幼児の持つ特徴を保持したまま成長する過程を指したもの。進化を説明するのにチャールズ・ダーウィンの提唱した自然淘汰の考え方だけでは不十分で、考えられたのが
Related Pictures