科学研究費助成事業(かがくけんきゅうひじょせいじぎょう)とは、研究者の自由な発想に基づく研究を格段に発展させることを目的とする文部科学省およびその外郭団体である独立行政法人日本学術振興会の事業である。国内の研究機関に所属する研究者が個人またはグループで行なう研究に対し、ピアレビュー審査による競争的資金を提供しており、年度毎の計画にしたがって交付される科学研究費補助金と、年度をまたいで交付される学術研究助成基金助成金の二本立てで構成されている。一般に科研費(かけんひ)と略称されており、国際的にも逐語英訳であるGrants-in-Aid for Scientific ResearchのほかにKAKENHIという呼称を定めている。
なお名称の類似した競争的資金制度として、厚生労働省が交付する厚生労働科学研究費補助金や環境省が交付する廃棄物処理等科学研究費補助金があるが、文部科学省のものとは別の制度。単に科学研究費補助金と呼称される場合、文部科学省の制度を指す。
研究の補助は以下の3つの領域に対してなされるが、1.の研究の遂行に対する補助金がその中核をなす。そこで、ここでは1.について説明する。
- 学術上重要な基礎的研究(応用的研究のうち基礎的段階にある研究を含む)の遂行のための助成
- 学術研究の成果の公開のための助成(学術書の出版費の補助、学術団体による学術雑誌刊行費の補助)
- 学術研究に係る事業への助成
目次
- 1 科学研究費の概要と特徴
- 2 科学研究費の主な種目
- 2.1 文部科学省所管のもの
- 2.2 日本学術振興会所管のもの
- 3 研究分野
- 4 申請から成果報告まで
- 5 採択件数上位機関一覧
- 6 制度上の問題点
- 7 脚注
- 8 参考文献
- 9 関連項目
- 10 外部リンク
科学研究費の概要と特徴
科研費の創設は1939年。陸軍大将荒木貞夫が文部大臣を務めていたときで、300万円の予算が認められた。当初は自然科学分野だけが助成対象であったが、科学振興調査会の平賀譲らの後押しで1943年度から人文・社会系の諸学問にも拡大された[1]。
年間の補助金の総額は2,633億円(平成23年度実績)であり[2]、国の予算の多くが停滞・減額される中、毎年、着実に伸び続けてきていることは特筆に値する。
「科学」研究費という名称であるが、研究補助の対象となるのは狭義の科学だけでなく、学術全般が含まれていて、人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野で、独創的・先駆的な研究を発展させることを目的とする研究助成費であるという特徴を持つ。
科研費のもう一つの特徴は、その採択がピアレビューシステムによってなされていることである。ピアレビューとは「仲間による審査」を意味し、研究費の申請をする研究者もその採択の可否を審査する研究者も仲間同士であるという民主的なシステムが取られている。これは、為政者による政策的な研究補助や、企業における商業的な目的のための研究補助とは異なり、純粋に学問的な評価のためであるとされる。数年交代で全国の大学や研究所などの研究機関の研究者が審査者を務め、審査を担当する期間中は審査の中立性を保つため審査者が誰であるかは公表されない。
審査は研究分野ごとに相対評価でなされる。大雑把に言って、研究分野ごとに審査者の評価が高かった上位約2〜3割の研究が採択となる。自然科学分野に比べ、人文・社会科学分野の研究課題への補助が少ないという指摘がなされるが、その根本的な原因は、人文・社会科学分野では申請そのものが件数・金額ともに少ないからであって、自然科学分野への政策的な偏向があるわけではない。
国立大学への配分の偏りもよく指摘されるが、特に国立大学への優遇措置が執られているわけではない。
科学研究費の主な種目
平成23年度時点では、科学研究費補助金は以下の種目に分けて申請・採択がなされている。これらは、主として研究期間と研究費の総額(研究の規模)の違いに対応している。研究種目によって、文部科学省が所管するものと日本学術振興会が所管するものとに分けられる。
文部科学省所管のもの
- 特定領域研究 - 期間3-6年 - 1領域2千万円〜6億円程度
- 新学術領域研究- 研究領域提案型(期間5年、単年度当たりの目安1領域1千万円~3億円程度)
- 新学術領域研究- 研究課題提案型(期間3年、単年度当たりの目安1千万円程度)
日本学術振興会所管のもの
- 特別推進研究(COE) - 期間3-5年 - 1課題5億円程度(上限なし)
- 基盤研究(研究規模に従って以下のSABCに分かれる。)
- 基盤研究(S) - 期間5年 - 5千万円以上2億円程度まで/1課題
- 基盤研究(A) - 期間3-5年 - 2千万円以上5千万円以下/1課題
- 基盤研究(B) - 期間3-5年 - 500万円以上2千万円以下/1課題
- 基盤研究(C) - 期間3-5年 - 500万円以下/1課題
- 萌芽研究(独創的な発想の芽生え期の研究)
- 挑戦的萌芽研究 - 期間1-3年 - 500万円以下/1課題
- 若手研究(若手研究者への研究助成) - 期間2-3年(平成19年度から2-4年に変更)
- 若手研究(S) 期間5年間、概ね3,000万円以上1億円程度/1課題、42歳以下
- 若手研究(A)- 期間2-4年 - 500万円以上3千万円以下/1課題、39歳以下
- 若手研究(B)- 期間2-4年 - 500万円以下/1課題、39歳以下
- 若手研究(スタートアップ)(研究機関に新採用の研究者への助成)- 期間2年 - 150万円以下/1課題
- 奨励研究(大学などの研究機関の研究者以外への研究助成) - 期間1年 - 100万円以下/1課題
- 特別研究員奨励費(学振PDなどの特別研究員に対する研究助成) - 期間2-3年 - 年度あたり150万円以下
研究分野
研究費の申請・審査・交付は以下の研究分野のさらに下位のカッコ内の細目ごとになされる。
- 広領域
- 総合領域
- 情報学(情報学基礎 ソフトウエア 計算機システム・ネットワーク メディア情報学・データベース 知能情報学 知覚情報処理・知能ロボティクス 感性情報学・ソフトコンピューティング 情報図書館学・人文社会情報学 認知科学 統計科学 生体生命情報学)
- 神経科学(神経科学一般 神経解剖学・神経病理学 神経化学・神経薬理学 神経・筋肉生理学)
- 実験動物学(実験動物学)
- 人間医工学(医用生体工学・生体材料学 医用システム リハビリテーション科学・福祉工学)
- 健康・スポーツ科学(身体教育学 スポーツ科学 応用健康科学)
- 生活科学(生活科学一般 食生活学)
- 科学教育・教育工学(科学教育・教育工学)
- 科学社会学・科学技術史(科学社会学・科学技術史)
- 文化財科学(文化財科学)
- 地理学(地理学)
- 複合新領域
- 環境学(環境動態解析 環境影響評価・環境政策 放射線・化学物質影響科学 環境技術・環境材料)
- ナノ・マイクロ科学(ナノ構造科学 ナノ材料・ナノバイオサイエンス マイクロ・ナノデバイス)
- 社会・安全システム科学(社会システム工学・安全システム 自然災害科学)
- ゲノム科学(基礎ゲノム科学 応用ゲノム科学)
- 生物分子科学(生物分子科学)
- 資源保全学(資源保全学)
- 地域研究(地域研究)
- ジェンダー(ジェンダー)
- 人文学
- 哲学(哲学・倫理学 中国哲学 印度哲学・仏教学 宗教学 思想史 美学・美術史)
- 文学(日本文学 ヨーロッパ語系文学 各国文学・文学論)
- 言語学(言語学 日本語学 英語学 日本語教育 外国語教育)
- 史学(史学一般 日本史 東洋史 西洋史 考古学)
- 人文地理学(人文地理学)
- 文化人類学(文化人類学・民俗学)
- 社会科学
- 法学(基礎法学 公法学 国際法学 社会法学 刑事法学 民事法学 新領域法学)
- 政治学(政治学 国際関係論)
- 経済学(理論経済学 経済学説・経済思想 経済統計学 応用経済学 経済政策 財政学・金融論 経済史)
- 経営学(経営学 商学 会計学)
- 社会学(社会学 社会福祉学)
- 心理学(社会心理学 教育心理学 臨床心理学 実験心理学)
- 教育学(教育学 教育社会学 教科教育学 特別支援教育)
- 数物系科学
- 数学(代数学 幾何学 数学一般(含確率論・統計数学) 基礎解析学 大域解析学)
- 天文学(天文学)
- 物理学(素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理 物性1 物性2 数理物理・物性基礎 原子・分子・量子エレクトロニクス・プラズマ 生物物理・化学物理)
- 地球惑星科学(固体地球惑星物理学 気象・海洋物理・陸水学 超高層物理学 地質学 層位・古生物学 岩石・鉱物・鉱床学 地球宇宙化学)
- プラズマ科学(プラズマ科学)
- 化学
- 基礎化学(物理化学 有機化学 無機化学)
- 複合化学(分析化学 合成化学 高分子化学 機能物質化学 環境関連化学 生体関連化学)
- 材料化学(機能材料・デバイス 有機工業材料 無機工業材料 高分子・繊維材料)
- 工学
- 応用物理学・工学基礎(応用物性・結晶工学 薄膜・表面界面物性 応用光学・量子光工学 応用物理学一般 工学基礎)
- 機械工学(機械材料・材料力学 生産工学・加工学 設計工学・機械機能要素・トライボロジー 流体工学 熱工学 機械力学・制御 知能機械学・機械システム)
- 電気電子工学(電力工学・電気機器工学 電子・電気材料工学 電子デバイス・電子機器 通信・ネットワーク工学 システム工学 計測工学 制御工学)
- 土木工学(土木材料・施工・建設マネジメント 構造工学・地震工学・維持管理工学 地盤工学 水工水理学 交通工学・国土計画 土木環境システム)
- 建築学(建築構造・材料 建築環境・設備 都市計画・建築計画 建築史・意匠)
- 材料工学(金属物性 無機材料・物性 複合材料・物性 構造・機能材料 材料加工・処理 金属生産工学)
- プロセス工学(化工物性・移動操作・単位操作 反応工学・プロセスシステム 触媒・資源化学プロセス 生物機能・バイオプロセス)
- 総合工学(航空宇宙工学 船舶海洋工学 地球・資源システム工学 リサイクル工学 核融合学 原子力学 エネルギー学)
- 生物学
- 基礎生物学(遺伝・ゲノム動態 生態・環境 植物生理・分子 形態・構造 動物生理・行動 生物多様性・分類)
- 生物科学(構造生物化学 機能生物化学 生物物理学 分子生物学 細胞生物学 発生生物学 進化生物学)
- 人類学(人類学 生理人類学)
- 農学
- 農学(育種学 作物学・雑草学 園芸学・造園学 植物病理学 応用昆虫学)
- 農芸化学(植物栄養学・土壌学 応用微生物学 応用生物化学 生物生産化学・生物有機化学 食品科学)
- 林学(林学・森林工学 林産科学・木質工学)
- 水産学(水産学一般 水産化学)
- 農業経済学(農業経済学)
- 農業工学(農業土木学・農村計画学 農業環境工学 農業情報工学)
- 畜産学・獣医学(畜産学・草地学 応用動物科学 基礎獣医学・基礎畜産学 応用獣医学 臨床獣医学)
- 境界農学(環境農学 応用分子細胞生物学)
- 医歯薬学
- 薬学(化学系薬学 物理系薬学 生物系薬学 創薬化学 環境系薬学 医療系薬学)
- 基礎医学(解剖学一般(含組織学・発生学) 生理学一般 環境生理学(含体力医学・栄養生理学) 薬理学一般 医化学一般 病態医化学 人類遺伝学 人体病理学 実験病理学 寄生虫学(含衛生動物学) 細菌学(含真菌学) ウイルス学 免疫学)
- 境界医学(医療社会学 応用薬理学 病態検査学)
- 社会医学(衛生学 公衆衛生学・健康科学 法医学)
- 内科系臨床医学(内科学一般(含心身医学) 消化器内科学 循環器内科学 呼吸器内科学 腎臓内科学 神経内科学 代謝学 内分泌学 血液内科学 膠原病・アレルギー・感染症内科学 小児科学 胎児・新生児医学 皮膚科学 精神神経科学 放射線科学)
- 外科系臨床医学(外科学一般 消化器外科学 胸部外科学 脳神経外科学 整形外科学 麻酔・蘇生学 泌尿器科学 産婦人科学 耳鼻咽喉科学 眼科学 小児外科学 形成外科学 救急医学)
- 歯学(形態系基礎歯科学 機能系基礎歯科学 病態科学系歯学・歯科放射線学 保存治療系歯学 補綴理工系歯学 外科系歯学 矯正・小児系歯学 歯周治療系歯学 社会系歯学)
- 看護学(基礎看護学 臨床看護学 地域・老年看護学)
- 時限付き分科細目
- その他
申請から成果報告まで
科研費の研究種目のうち、最も一般的で多くの研究者が対象となる基盤研究について、申請から成果報告までのスケジュールの概略を以下に示す。
- 申請:前年度の9月に募集要項が示され、11月上旬までに各研究機関を通して申請をする。各研究者が研究代表者として申請できる研究課題は原則として1件である。各研究者は、上に示した研究分野の一つを選んで申請を行う。
- 審査:12月から翌1月にかけて、2段階の審査が行われる。1段階目は書面審査、2段階目は少数委員による合議審査である。
- 採択課題の内定:4月中旬に各研究機関に文部科学省および日本学術振興会から採択内定課題が通知される。
- 交付申請:内定となった研究課題の申請者は、内定となった研究助成額に応じた研究計画書(交付申請書)を5月中旬までに各研究機関を通して提出する。
- 交付決定:6月中旬に交付が決定し、助成金が振り込まれる。
- 研究の遂行:採択となった研究課題の研究者は翌年3月までに研究を遂行する。
- 成果の報告:助成を受けた研究者は年度ごとに、当該年度の研究成果および研究経費の収支報告を各研究機関を通して年度末に報告する。研究実績報告書の内容は、国立情報学研究所の作成する科研費データベースに収録される。
- 成果報告書の刊行:3年以上の研究計画課題については、計画終了年度末に成果報告書を刊行しなければならない。成果報告書は国立国会図書館に所蔵され閲覧に供される。
採択件数上位機関一覧
2010年度
- 科学研究費補助金の配分[3]
- 平成22年度(新規採択+継続分)における採択件数・配分額[4]
- 直接経費:「研究者」への補助金
- 間接経費:科研費を受ける研究者が所属する「研究機関」への補助金
件数
順 |
直経
順 |
機関名 |
採択件数 |
配分額 |
直接経費 |
間接経費 |
合計 |
01 |
01 |
東京大学 |
3,009件 |
149億0895万円 |
40億6858万円 |
189億7753万円 |
02 |
02 |
京都大学 |
2,423件 |
92億9574万円 |
24億2549万円 |
117億2123万円 |
03 |
03 |
大阪大学 |
2,117件 |
74億8369万円 |
19億7315万円 |
94億5684万円 |
04 |
04 |
東北大学 |
1,794件 |
71億6243万円 |
19億4869万円 |
91億1112万円 |
05 |
05 |
九州大学 |
1,498件 |
43億3331万円 |
11億9088万円 |
55億2419万円 |
06 |
06 |
北海道大学 |
1,428件 |
43億1138万円 |
11億5061万円 |
54億6200万円 |
07 |
07 |
名古屋大学 |
1,359件 |
42億9769万円 |
10億9595万円 |
53億9364万円 |
08 |
10 |
筑波大学 |
1,009件 |
24億3563万円 |
6億5404万円 |
30億8968万円 |
09 |
13 |
広島大学 |
913件 |
18億0622万円 |
5億1036万円 |
23億1658万円 |
10 |
11 |
慶應義塾大学 |
850件 |
20億6762万円 |
5億8476万円 |
26億5238万円 |
11 |
12 |
神戸大学 |
801件 |
18億7473万円 |
5億2614万円 |
24億0087万円 |
12 |
08 |
東京工業大学 |
748件 |
33億9832万円 |
8億9418万円 |
42億9250万円 |
13 |
15 |
岡山大学 |
672件 |
14億6205万円 |
4億2106万円 |
18億8311万円 |
16 |
16 |
千葉大学 |
663件 |
14億3569万円 |
3億9281万円 |
18億2851万円 |
15 |
14 |
早稲田大学 |
661件 |
16億3327万円 |
4億5698万円 |
20億9025万円 |
16 |
09 |
理化学研究所 |
637件 |
26億7431万円 |
7億1337万円 |
33億8768万円 |
17 |
19 |
金沢大学 |
594件 |
10億8913万円 |
3億0270万円 |
13億9183万円 |
18 |
23 |
新潟大学 |
521件 |
8億7642万円 |
2億5344万円 |
11億2987万円 |
19 |
18 |
熊本大学 |
508件 |
10億9669万円 |
3億0824万円 |
14億0493万円 |
20 |
22 |
長崎大学 |
461件 |
8億9468万円 |
2億5247万円 |
11億4715万円 |
21 |
17 |
東京医科歯科大学 |
445件 |
11億4715万円 |
2億9287万円 |
14億2912万円 |
22 |
20 |
徳島大学 |
436件 |
9億1271万円 |
2億3142万円 |
11億4413万円 |
23 |
28 |
日本大学 |
436件 |
6億2951万円 |
1億8168万円 |
8億1119万円 |
24 |
25 |
信州大学 |
386件 |
7億0003万円 |
1億9876万円 |
8億9879万円 |
25 |
27 |
山口大学 |
383件 |
6億3584万円 |
1億8262万円 |
8億1847万円 |
26 |
29 |
群馬大学 |
381件 |
5億9004万円 |
1億6156万円 |
7億5160万円 |
23 |
22 |
愛媛大学 |
378件 |
8億8680万円 |
2億5575万円 |
11億4255万円 |
28 |
25 |
首都大学東京 |
376件 |
8億6926万円 |
2億5575万円 |
11億4255万円 |
29 |
30 |
鹿児島大学 |
367件 |
5億6724万円 |
1億5973万円 |
7億2697万円 |
30 |
21 |
産業技術総合研究所 |
350件 |
8億9905万円 |
2億5330万円 |
11億5235万円 |
制度上の問題点
平成23年度以降、科研費の一部種目が基金化されたことにより、従来の補助金では単年度ごとに予算執行計画を立てなければならなかったが、基金分の種目については、複数年度にわたり予算執行が可能となった。[5]
交付内定を受けた科研費が実際に交付(送金)されるのは6月下旬ころであるが、交付内定日(多くの科研費種目では4月1日)以降は、所属機関へ申請することにより立替払い等により予算執行が可能である。 また「単年度ごとに決算を行い最後の1円まで使わなければならない」と誤解している大学関係者がいるが、実際には、当初予定した研究を完了した上で生じた残額は、日本学術振興会に返還することができ、それにより研究者や所属機関が不利益をうけることはない。[6]
このような誤解により、経理上の不適切な会計的処理がされ問題視されることがあり、年度末に予算消化として不要な消耗品を購入したり、4月から7月頃に利用する消耗品などの購入のためにモノが納品されていないうちに伝票を業者からもらい先にプールしたり[要出典]といった例がある。
他の研究助成にも言えることであるが、採択の審査及び事後評価は、専門分野の知識を要するが故に同業者が担当することが多く、公平性が保たれているかは疑問の余地があった。[7][8] しかしながら、現在では審査委員に「利害関係登録」を義務づけるなど、審査の公平性を高めるための取組が行われている。[9]
国公私立大学の特色ある発展という名の下に行われてきた研究費の傾斜配分により、研究費の多い大学に更に多くの研究費が配分され、研究費の大学間格差が拡大すると言う結果を招いている。[10]
脚注
- ^ 駒込武「戦時下の京都帝国大学」(PDF)、p.2、『京都大学大学文書館だより』第20号、京都大学大学文書館、2011年4月30日
- ^ 科研費の予算額の推移 (2012年10月8日閲覧)
- ^ 平成22年度科学研究費補助金の配分について
- ^ 研究者が所属する研究機関別配分件数上位30機関(文部科学省)
- ^ 「科研費の「基金化」」日本学術振興会
- ^ 「科研費の適正な使用の確保についての質問」文部科学省。
- ^ 「ピアレビュー制度の公正さについて」 竹内 淳
- ^ 「国立大学は競争にさらされているか?」 青山秀明、家富洋
- ^ 「平成25年度科学研究費助成事業 第1段審査(書面審査)の手引」独立行政法人日本学術振興会
- ^ 「国立大の格差拡大 化学系研究費2倍→4倍」 朝日新聞 2009年4月18日(2009年4月19日閲覧)
参考文献
関連項目
- 帝国大学#研究費
- 21世紀COEプログラム
- グローバルCOEプログラム
- 世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム
- 研究成果公開促進費
- 学術出版
- 文部科学省
- 日本学術振興会
外部リンク
- 科学研究費補助金
- 科学研究費補助金データベース
- 科学技術研究費の推移(総務省統計局)
- 第60回総合科学技術会議
- 国立大学法人等の科学技術関係活動に関する調査結果(科研費関連の統計多数)[1][2][3][4]