Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2021/08/09 01:40:13」(JST)
[Wiki ja表示]
アルシン
- ヒ素の水素化物。本稿で詳述する。(英: arsine)
- 帝政ロシアにおける長さの単位。(英: arshin)。アルシン (単位)を参照。
- カナダのプロボクサー、ヨアキム・アルシン。
アルシン
|
|
|
|
|
|
識別情報
|
CAS登録番号
|
7784-42-1
|
EC番号
|
232-066-3
|
特性
|
化学式
|
AsH3
|
モル質量
|
77.9454 g/mol
|
外観
|
無色気体
|
密度
|
4.93 g/l, 気体、1.640 g/mL (−64 ℃, 液体)
|
融点
|
−117 °C, 156 K, -179 °F
|
沸点
|
−62.5 °C, 211 K, -81 °F
|
水への溶解度
|
0.07 g/100 ml (25 ℃)
|
酸解離定数 pKa
|
25
|
構造
|
分子の形
|
三角錐形
|
双極子モーメント
|
0.20 D
|
熱化学
|
標準生成熱 ΔfHo
|
+66.44 kJ mol−1
|
標準モルエントロピー So
|
222.78 J mol−1K−1
|
標準定圧モル比熱, Cpo
|
38.07 J mol−1K−1
|
危険性
|
EU分類
|
非常に強い可燃性 (F+) 猛毒 (T+) 有害 (Xn) 環境への危険性 (N)
|
NFPA 704
|
|
Rフレーズ
|
R12, R26, R48/20, R50/53
|
Sフレーズ
|
(S1/2), S9, S16, S28, S33, S36/37, S45, S60, S61
|
引火点
|
可燃性気体
|
関連する物質
|
関連する水素化合物
|
アンモニア ホスフィン スチビン ビスムチン
|
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
|
アルシン (英: arsine) は、化学式が AsH3 と表されるヒ素と水素の化合物である。水素化ヒ素 (英: arsenic hydride)、ヒ化水素 (英: hydrogen arsenide) とも呼ばれる。分子量 77.95、CAS登録番号は [7784-42-1]。
性質
ヒ化カルシウム(英語版、ドイツ語版、オランダ語版、ロシア語版)などに希硫酸を作用させると発生する。
ニンニクに似た特徴的な臭気を持つ、無色の気体。ニンニク臭は、不純物のテルルによるものとも言われる。熱、光、水分によって分解され、ヒ素と水素を生じる。燃焼すると水及び三酸化ヒ素を生じる。酸化剤と爆発的に反応する。
ヒ素を含む試料に亜鉛と希硫酸を作用させるとアルシンが発生し、水素ガスと伴に燃焼させて炎を冷たいガラスまたは磁製皿に触れさせると単体のヒ素が付着し、光沢のある「ヒ素鏡」ができる。これはマーシュ法と呼ばれるヒ素の検出法の一つである。
立体構造はアンモニアに近いが、水素の結合角はアンモニアのそれよりも小さく直角に近い。極性溶媒に溶けやすく、有機溶媒に溶けにくいが、極性が弱いため水素結合は作らない。
還元作用を示し、硝酸銀水溶液に通ずると銀を遊離し、その標準酸化還元電位は以下の通りである。
- E º = -0.225 V
濃厚な硝酸銀水溶液ではヒ化銀を含む黄色の複塩 Ag3As·3AgNO3 が沈殿する。
猛毒であり、米国産業衛生専門家会議(英語版、イタリア語版)(ACGIH)の勧告による許容濃度は、時間加重平均濃度にて 0.005 ppm。吸入した場合、血液・腎臓に影響があり死に至ることもある。その症状は数時間から数日遅れて現れることもあるため、医学的な経過観察が必要とされる。また引火・爆発しやすいので取り扱いには注意を要する。[1]
シェーレグリーンという顔料をカビやバクテリアで分解すると、アルシンが発生する。
用途
ヒ化ガリウム (GaAs) やヒ化インジウム (InAs) 等の化合物半導体の原料として重要である。アルシンを原料としての半導体製造においては、有機金属気相成長法(MOCVD)やガスソース分子線エピタキシー法(GS-MBE)が用いられる。原料ガスとして管内に送り込むことで均等に層を積み上げる成長工程を担う[2]。
有機アルシン
有機化学において、水素化ヒ素を親化合物とし、一般式が RR1R2As(各置換基は H または有機基)と表される一連の誘導体もアルシンと呼ばれる。トリフェニルアルシン ((C6H5)3As) など、配位子としての用途がある。
脚注
- ^ 危険性とその対処については国際化学物質安全性カードにまとめられている。なお2009年5月現在、リンク先では許容濃度について『0.005 ppm (TWA) への変更を提案中である (ACGIH 2006)。』となっているが、これは ACGIH 2007 にて実際に変更された。
- ^ https://www.tn-sanso.co.jp/jp/business/electronics/products/mocvd.html
関連項目
水素の化合物 |
---|
二元化合物 |
- CH4
- SiH4
- GeH4
- SnH4
- PbH4
- HAt
- HBr
- HCl
- HF
- HI
- HN3
- H2O
- H2O2
- H2O3
- H2S
- H2S2
- H2Se
- H2Te
- NH3
- PH3
- AsH3
- SbH3
- BiH3
|
---|
多元化合物 |
- H[AuCl4]
- HBF4
- HCN
- H2CS3
- H[CuCl2]
- H2[CuCl4]
- HNC
- H2[PtCl4]
- H2[PtCl6]
- HSCN
- H2SiF6
- HSNC
オキソ酸 |
- H3AsO4
- H5As3O10
- HBiO3
- HBO2
- H3BO3
- HBrO
- HBrO2
- HBrO3
- HBrO4
- HClO
- HClO2
- HClO3
- HClO4
- HClO5
- H2CrO4
- H2Cr2O7
- H2CO3
- H2CO4
- HFO
- HIO
- HIO3
- HIO4
- H5IO6
- HMnO4
- H2MoO4
- HNCO
- HNO2
- HNO3
- HNO4
- H2N2O2
- HOCN
- HCNO
- HPH2O2
- H2PHO3
- H3PO3
- H3PO4
- H3PO5
- H4P2O7
- H4P2O8
- H5P3O10
- HReO4
- HRuO4
- H2RuO4
- H2SeO3
- H2SeO4
- H2SeO5
- H2SiO3
- H4SiO4
- H2Si2O5
- H2SO4
- H2SO5
- H2S2O3
- H2S2O4
- H2S2O6
- H2S2O7
- H2S2O8
- HTcO4
- H2TeO3
- H6TeO6
- HVO3
- H3VO4
- H4V2O7
- H2WO4
- H2XeO4
|
---|
|
---|
|
ヒ素の化合物 |
---|
- AsBr3
- AsCl3
- AsF3
- AsF5
- AsH3
- AsI3
- As2O3
- As2O5
- As2S3
- As2S5
- As4S4
- As2Se3
- As2Se5
- H3AsO3
- H3AsO4
|
|
典拠管理 |
- GND: 4143106-6
- MA: 2776776902
|
---|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
- 1. 代謝性アルカローシスの原因causes of metabolic alkalosis [show details]
… extracellular bicarbonate (contraction alkalosis) . Hydrogen ions are derived from the dissociation of water into hydrogen and hydroxyl ions; therefore, when hydrogen ions are removed from the extracellular fluid …
- 2. 高二酸化炭素血症の発症機序、原因、および影響mechanisms causes and effects of hypercapnia [show details]
…receives stimulatory signals from central and peripheral chemoreceptors (respond to changes in hydrogen ion concentration, PaCO2 , and partial pressure of arterial oxygen [PaO2] ), as well as …
- 3. 動脈血液ガスarterial blood gases [show details]
…PaO2: The PaCO2 is measured using a chemical reaction that consumes CO2 and produces a hydrogen ion, which is sensed as a change in pH ; The PaO2 is measured using oxidation-reduction reactions …
- 4. ヒ素曝露と中毒arsenic exposure and poisoning [show details]
…a metalloid because it complexes with metals; it also reacts with other elements such as oxygen, hydrogen, chlorine, carbon, and sulfur. Elemental arsenic is rare, and the element exists more commonly as … and herbicides (cacodylic acid) Semiconductors (gallium arsenide) Fossil fuel combustion; Smelting/refining; Mining…
- 5. 乳糖不耐症:臨床症状、診断、およびマネージメントlactose intolerance clinical manifestations diagnosis and management [show details]
…is less than the hydrogen breath test; however, it fills part of the gap in the sensitivity of the breath test, which is due to hydrogen nonexcretion . As described for breath hydrogen test. Small bowel …
Japanese Journal
- 砒化水素中毒による著明な溶血および多臓器不全を呈した2症例 (第12回 日本急性血液浄化学会 PROCEEDINGS-2001) -- (セッション1 薬物中毒)
Related Links
- 精選版 日本国語大辞典 - 砒化水素の用語解説 - 〘名〙 砒素化合物の一つ。砒素の化合物に発生期の水素を作用させて得られる無色・無臭の気体。分子式 AsH3 強毒性。〔英和和英地学字彙(1914)〕
- 化学名又ははは一般名は一般名(((化学式(化学式)))) : アルシン,別名 砒化水素(AsH3) 成分及びびび含暼量び含暼量: 官報公示瓣号 化学物質化学物質 CAS NoCAS NoCAS No 分子量分子量 化審法化審
- 水素化砒素 別名:アルシン、砒化水素 AsH3 毒物(砒素化合物及びこれを含有する製剤) 措 置 (性状)無色、ニンニク臭の気体。比重2.7(空気を1として)。融点-117 、沸点-55 、分 解点300 。水にやや溶けやすい(25 で水100mlに2000ml溶ける)。
Related Pictures