出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/04/06 02:49:29」(JST)
この項目では、コンピュータについて説明しています。楽器については「ミュージックワークステーション」を、建築設計事務所については「ワークステーション (建築設計)」をご覧ください。 |
ワークステーション(英語: workstation, 頭字語: WS)は、組版、科学技術計算、CAD、グラフィックデザイン、事務処理などに特化した業務用の高性能なコンピュータである。
その筐体のサイズは、通常、パーソナルコンピュータ (PC) と同程度か若干大きく、デスクトップに設置して使用されることが多い。
ワークステーションは、単体で使用される他、メインフレームなどを含めたサーバとネットワークで接続されたインテリジェント端末として使用されることもある。
JIS X 0001 (ISO/IEC 2382-1) では、「通常、専用の計算能力をもち、利用者向きの入出力装置をもつ機能単位(ハードウェア・ソフトウェアからなる指定した目的を遂行できるもの)」と定義しており、これに従うとPCも含まれる。ただし一般にはワークステーションとは、一般的なPCよりは高性能・高機能なものを指す場合が多い。
1990年代前半までは、PCと比較して、マルチウィンドウやアイコンなどによるGUI, ネットワーク機能の標準装備、マルチタスク、SVGAを超える高解像度のディスプレイなどがワークステーションの特徴であった。その後、これらの特徴はPCの高性能化と普及によって、ワークステーションのみの特徴ではなくなった。
特に科学技術計算、CAD, プロダクトデザイン、グラフィックデザインなどに使用されるものはエンジニアリングワークステーション (以下「EWS」) と呼ばれ、これらの作業を円滑に行うため、専用ソフトウェア、専用のハードウェアを持っていたことが多い。
また、事務処理や、組版などの編集作業に使われるものはオフィスワークステーションなどと呼ばれる。
ワークステーションの中にはユーザー専用に開発されたマザーボード、PCIボード、周辺機器などを組み替えることで様々な制御機器のセンターマシン、監視装置などとして使用されることもある。これらの多くはリモートセンシングなど特殊な分野で利用されている。
POSシステムなどに代表される流通システムでは、全国規模に及ぶネットワーク化されたシステムを、メインフレームとサーバ専用機などの中規模なコンピュータ、ワークステーションなどを組みあわせて使用することが多く、数十台から1万台単位の規模でソリューション(情報システム)として販売される。このような場合、EWSなどと違いシステム構築の容易さと通信処理能力や、レジスターやバーコードリーダーなどの専用ハードウェアへの対応が必要とされ、ワークステーションは端末としての機能も果たす。一度の大量発注による製造・販売・輸送コストの削減などが行われる。
なお、かつては、LAN内でサーバに対してユーザの手元にあるコンピュータのこともワークステーションと呼ばれていた(例:Windows NT ServerとWindows NT Workstation)。これは、コンピュータ自体の機能や性能による区分ではなく、もっぱらネットワーク内での役割による区分であり、ハードウェアとしてはPCそのものである場合も多かった。近年ではクライアントと呼ぶことが多い。
コンピュータを製造・販売するメーカーがそれぞれの販売戦略により、ワークステーションやパーソナルコンピュータ、サーバなどの名称を使い分けていることも、これら各カテゴリの境界を曖昧なものとする要因となっている。
主に複数の人員により作業を行うデータ入力端末が最も多く使用されている。特に、PCのような単独で動作する機能は必要なく、必ずセンターマシンが介在する。また最近は、入力端末としてPCが代用されることが多い。
端末型のワークステーションは1980年代前半に始まる。メインフレームを中心に複数の端末機器を接続したものでディスプレイを内蔵した端末機をワークステーションと呼んだ。これらの多くは後に、大規模なグラフィック専用のメモリを搭載することにより、高度な漢字処理能力を有し、組版などのグラフィカルな処理を行える機能を有していた。これらの一部は後にワードプロセッサとして分化していった。またこれに伴い、レーザープリンターが接続されるなど高度な組版処理が行えるように進化していった。これらは現在でも端末型のワークステーションとして、ホテル、POSシステム、金融機関などで使用されている。
2004年では、EWSの上位機種においては64ビットマルチプロセッサや、64ビットPCIインタフェースに対応したグラフィック系の処理能力を持つハードウェアを有することが多かった。2007年1月現在ではマルチコアCPUやPCI Expressの普及が始まっている。インテル系のPCではワークステーションに導入されたハードウェアが少し遅れてPCでも使われ、ワークステーションとPCのハードウェアにおける性能的な境界は曖昧になっている。このため、メーカーがインテル系のワークステーションをPCの上位機種として位置づけることもある。
EWSでは、グラフィックボードやSCSIボードにおいて専用ハードウェアを搭載している場合が多い。また、OS自体に各メーカーがカスタマイズを行っていることも多い。それらのワークステーションは専用開発のハードウェアであるため、パーソナルコンピュータに比べて非常に高価なものとなっている。
1980年代、UNIXをベースとしたクライアントサーバモデルのクライアントとして、オペレーティングシステム (OS) がUNIXによる「UNIXワークステーション」が登場した。これらは、光学ペンやタブレットなどの入力やプロッタなどの多数のインタフェースを有し、大規模なメモリを搭載し、設計、学術計算などに使用された。
1990年代後半、一部のCADなどの高度なグラフィック処理を必要とするものはUNIXワークステーションが主流で、PCとは異なり各社独自のアーキテクチャを使用した専用ハードウェアを使用するものが多く、性能面でもPCを凌駕していた。しかし、PCの爆発的普及に伴う大量生産効果などがあり、インテル製プロセッサの性能が急激に向上したため、従来ワークステーションで行われていた業務のうち、専用のハードウェアを必要としないものがパーソナルコンピュータで行われるようになった。インテル製プロセッサのマルチプロセッサ化が遅れたことや、64ビットPCIバスなど大規模データの取り扱いを必要とするワークステーションのニーズが高まり、専用の周辺機器などが開発された。
Windows NTの性能向上とともに、同OSを採用するWindowsワークステーションが登場した。PCの性能の向上と共に差は少なくなると思われたが、Windowsの64ビットCPU対応など高性能処理が行えるOSの開発やマルチCPU化などにより大幅に性能が向上し、3Dモデルや画像解析などの新たに多くのニーズが登場し専用のアプリケーションが開発されている。
これらの多くはワークステーションの性能に合わせカスタマイズされることが多く、ワークステーション専用のグラフィックアクセラレータなどのハードウェアやドライバ類が専用化されているため、一般のパーソナルコンピューターとは一線を画している。また多くのワークステーションでは64ビットのPCIバスを持っている。プロセッサは64ビットが主流だが、32ビット製品も採用されている。
現在[いつ?]、EWSのMPU (CPU) ではRISC系(PA-RISC、POWER、SPARC、MIPS、Alphaなど)、x64、インテル系(x86、IA-32)、IA-64など様々な種類が使用されているが、Unix系ではそれぞれに対応したものがあるのに対して、Windows系ではRISC系はPowerPC、MIPS、Alphaをサポートするものが存在した。Windows系で現在[いつ?]も製造・販売されているものはインテルおよびAMDのx86/x64系のみである。
Windows系のGPUにはOpenGLへの最適化やサポート体制の関係上、NVIDIAのQuadroシリーズやAMDのFireProシリーズを搭載することが多い[1][2]。なお、macOSやLinuxなどのUnix系製品の一部には、GeForceやRadeonシリーズが搭載されているものも存在する[3]。ただしECCメモリをサポートするのは、QuadroやFireProの上位機種に限られる。GPGPUのために、NVIDIA TeslaやAMD FirePro Sシリーズを追加で搭載するワークステーションもある。
UNIXワークステーションもインテルやAMDのハイエンドCPUやマザーボードを採用した上でLinuxやmacOSなどのPC-UNIXをプリインストールすることによりハードウェアの設計が概ね共通化されたため、Windows系システムとほぼ同等の価格で購入できるようになっている。
流通などを目的とし、出荷台数ではEWSを上回る。ハードウェア、OSなど主に端末系とエンジニアリング系の一部を流用した製品である。主に、ミニコン、オフコンまたはサーバとセットになった端末型か、EWSのハードウェアを内包し外観は別製品となっている。
EWSを内包したものの中には、EWS本体または同一のマザーボード、CPUなどを内蔵しているが、ファームウェアの変更を行ったり、状況に応じ専用のLSIをマザーボード上に搭載するなど構成の多くは専用にカスタマイズされたハードウェアを持つ。このため、OSがWindows系であっても、BIOSなどが異なり、他のEWSやPCとの互換性は全くない。
1990年代前半は殆どが独自のOSであったが、1990年代後半は多くがUNIXやWindows系のサーバ用マシンをベースに設計された。そのほとんどは顧客のニーズに合わせ設計されているため、専用のアプリケーションを使用する。特に高度なGUIは必要とされず、容易に業務を実行できるようカスタマイズされている。またこれらの多くは、制御を兼ね備えるため、多くのインタフェースを有する。
※太字は現行機種(2012年5月現在)
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リンク元 | 「workstation」 |
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