出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/02/24 00:52:53」(JST)
サプレッサー(英: suppressor)は、銃の発射音と閃光を軽減するための筒状の装置である。銃身の先端に取り付ける形で使用される。
サプレッサーには、発射音の抑制を主な目的とする「サウンド・サプレッサー」や、発射炎の抑制を主な目的とする「フラッシュサプレッサー」などがあるが、ここでは「サウンド・サプレッサー」について記述する。また、特に断りのない限り、「サウンド・サプレッサー」を単に「サプレッサー」と記述することにする。
日本ではこの種の装置を「サイレンサー(消音器)」と呼ぶ事があるが、銃声を完全に消す装置は存在しない。アメリカでは登録料を支払ってNFAウェポンのクラス3のカテゴリーに登録すると合法的に「サウンド・サプレッサー(減音器)」が所持できる。 アメリカ合衆国でも「サイレンサー」と呼ばれていたが、いまは「サウンド・サプレッサー」という呼び名も普及している。単に「サプレッサー」と呼ぶこともある。
映画などのイメージからサプレッサーは発射音をほぼ消去するとされることがあるが、実際には、発射音の中でも指向性がある高音域を減少させることで発射位置を隠蔽、あるいは銃声でないと誤認させることが主な目的となっている。低音域への影響は小さく、9mmパラベラム弾を使用する MP5SD系SMGの発射音は60-70dBと、電話機のベル並みの音量がある。.45ACP弾のような亜音速(サブソニック)弾を使用した場合、発射音がまったく聞こえなくなり、銃の機構が作動する音しか聞こえなくなるものもある。
サプレッサーには大きく分けて、銃に内蔵される「インテグラル・タイプ」と、後付となる「マズル・タイプ」の2種類が存在する。
サプレッサーは、その内部に「バッフル」や「ワイプ」で区切られた多数の空気室を設けて、発射薬が燃焼して発生した高圧のガスを空気室内に拡散させ、徐々に圧力を下げてから外部に放出することで、火薬の燃焼ガスが銃口から放出される際に発生する甲高い破裂音を軽減する。このため、銃口以外の隙間(シリンダー・ギャップ)から発射ガスが漏れる回転式拳銃(リボルバー)では、発射時に密閉されるナガンM1895などを除き、ほとんど減音効果が望めない。 自動式拳銃(オートマチック・ピストル)の場合は、回転式拳銃ほどではないが、排莢口(エジェクションポート)から音が漏れることがある。消音効果をより高めるために、遊底が後退しないようにロックする機構を追加したものもある。
音速以上で弾丸が飛ぶと衝撃波によって音が発生するため、サプレッサーを使用する場合は音速を下回る速度で飛ぶ「亜音速(サブソニック)弾」を使用することが多いが、長距離からの狙撃に使用する場合はこの限りではない。 たとえば、.45ACP弾は亜音速弾なので、サプレッサーと相性がよい。9mm×19は高速弾なので、サプレッサーを使うときは弾速を落とし、それを補うために弾頭の重量を増した特別なカートリッジを使用することがある。
熱を持つと消音効果に悪影響が出るため、水や専用冷却材を入れると消音効果が高まるものもある。
銃口(マズル)にサプレッサーを装着して使用する。 サプレッサーと銃身の接続部は、大きく分けてサプレッサー側の雌ネジを銃身に切られた雄ネジに締めこむ[1]ものと、銃身先端に設けたラグ(突起)やフラッシュサプレッサーに噛み合せて装着するクイック・デタッチャブル式の2つがある。
ネジ式は脱着に時間がかかるもののしっかりと固定しやすい。また、ネジの規格がある程度共通化されており、一つのサプレッサーを複数の異なる種類の銃に装着することができる場合も多い。ただし、銃身の外側にネジを切るので、サプレッサーを装着していないときはプロテクター[2]を装着しておかないとネジが破損する危険がある。銃身のネジが破損すればサプレッサーを装着することができなくなる。
クイック・デタッチャブル式は逆に素早く脱着できるが、銃身としっかり固定させるには、高い工作精度が要求される。また、銃身先端のラグは銃によって異なり、2012年現在では共通化されていないので、事実上その種類の銃専用のサプレッサーとなる。
どちらの場合でも工作精度が悪かったり、正しく取り付けていなかったりしてサプレッサーの軸と銃身の軸がずれると、発射時に弾丸がサプレッサー内部と接触するバッフルストライクの原因となる場合がある。これが発生するとサプレッサーは破損して弾丸が予期せぬ方向に飛ぶほか、フルオート射撃時ではサプレッサーの破裂を招き、射手が重傷を負う危険性もある。
原理上、サプレッサー装着時は非装着時よりも銃身内圧(バックプレッシャー)が高まるため、イングラムM11などのストレートブローバック方式では、連射速度が向上することがある[3]。
バッフルの穴は弾丸の直径に近ければ近いほど消音効果が高まるため、銃口との接続部とバッフルには高い工作精度が求められる。空気室の内部にはグラスウールなどがつめられることもある。古い形式では「バッフル」ではなく「ワイプ」というフェルトのような布の中心に切れ目の入ったシャッターを持つものもあった。ワイプは潜り抜ける弾丸によって磨耗するため使用回数がせいぜい約30発から50発程度で、命中精度も大幅に悪化する。また、アメリカではサプレッサーを修理する際にBATFEの許可を取る必要があり、ワイプ式サプレッサーの修理には許可申請から半年以上[4]かかることも多いため、民間用のワイプ式はほぼ完全に姿を消している。 ただし、ワイプが消耗するまでの最初の数発は、ワイプによって空気室がほぼ密閉されるので消音効果が高い。20世紀末にはアメリカが特殊な樹脂を用いた消音効果の高いサプレッサーを開発している[5]。
自動式拳銃のうちS&W M39の派生型S&W MK22 Mod0(通称ハッシュパピー)などは、自動装填機構を動かなくすることで消音効果をより高める事ができ、その場合は一発撃つごとに遊底を引き、手動で次弾装填を行うことになる。自動装填機構を活かしたままサプレッサーを使用する場合はショートリコイル機構に悪影響を及ぼす恐れがある[6]ため、軽量なサプレッサーを使うか、ストレートブローバック式の銃を使う。 20世紀末から21世紀にかけてH&K MARK 23や、SIG/SAUER P226 Elite Dark Threaded Barrelのようなティルトバレルのショートリコイル形式でありながら、サプレッサーの使用を前提とした設計のモデルも発表されている。このようなモデルではサプレッサーを装着しても照準器が使えるように、通常のモデルよりも背の高い照準器を装着している。
サプレッサーが銃本体と一体化した設計である。一般的にマズルタイプよりも消音効果が高く、銃全体のバランスがよい。 多くの設計では銃身の先だけでなく銃身全体を囲むようにサプレッサーが装着されている。 サプレッサーに包まれた銃身には小さな穴がいくつもあけられており、銃口だけでなく銃身の穴からも発射ガスをサプレッサーの中に拡散させることによって消音効果をより高めている。これによって必然的に銃口初速は低下し、高速弾の場合は亜音速に速度を落とせる利点もあるが、弾丸の威力が低下する欠点もある。インテグラルタイプの短機関銃として有名なH&K MP5SDは9mm×19弾を使用するが、その実行威力は.380ACP弾の+P程度に低下していたといわれている[7]。
インテグラルタイプを採用した拳銃として、中国製の微声手槍(ウェイションショウチアン)という拳銃が存在する。弾頭が緑色に塗られた専用の7.65mm亜音速特殊弾を使用するもので、64式と67式が存在するが、それぞれ発射音は124.4dBと122.5dBで、実際には相当うるさい拳銃だったとされる。このほか、第二次大戦中にイギリスの開発した「ウェルロッド」では、9mmパラベラム弾を使用するMk1と、.32ACP弾を使用するMk2が存在し、Mk2は最高で35dBという消音効果があったが、サプレッサーがワイプ式のため、命中精度は低下していた。
比較的発射音の小さい.22LR 亜音速弾でも100dB強というジェット戦闘機の通過音並みの発射音があり聴覚に悪影響を及ぼすため、サプレッサーの使用は射手や周囲の人々の耳を保護することにもつながる。
サプレッサーは、発射音だけでなく発射炎も低減する。また、マズルタイプのサプレッサーを取り付けると銃全体の重量が増し、重心も前方に移動するので結果的に反動やマズルジャンプ[8]を軽減する効果が得られる。ただし、マズルブレーキを取り外して、あるいはその上からサプレッサーを取り付けたときはマズルブレーキの反動軽減効果がなくなるので、かえって反動が強くなることもある。 可燃性ガスが漂っている合成麻薬工場のような場所に踏み込み捜査する際や、速射性を要求される狙撃競技でもサプレッサーは使用されることがある。
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