出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/20 12:07:56」(JST)
イワシ | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
イワシの群れ
|
|||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
sardine, round herring, anchovy | |||||||||||||||||||||
属 | |||||||||||||||||||||
|
イワシ(鰯・鰛・鰮)は、狭義には魚類ニシン目ニシン亜目の複数種の小魚の総称である。
日本で「イワシ」といえば、ニシン科のマイワシとウルメイワシ、カタクチイワシ科のカタクチイワシ計3種を指し、世界的な話題ではこれらの近縁種を指す。ただし、他にも名前に「イワシ」とついた魚は数多い。
日本を含む世界各地で漁獲され、食用や飼料・肥料などに利用される。
日本の漁獲について言う場合は、この3種を狭義の「イワシ」として扱う[1]。
しばしば、マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの近縁種がイワシに含められる[1]。マイワシ属、ウルメイワシ属、カタクチイワシ属および、マイワシ属と合わせてマイワシ類とされるサルディナ属を加えた4属の種を以下に挙げる。これらは実際上は「マイワシ」「ウルメイワシ」「カタクチイワシ」として扱われることが多い。
種の分け方には諸説ある(たとえばマイワシ属に1–2種しか認めないなど)が、ITISによった。
マイワシ類、カタクチイワシ類は世界的に重要な魚である(ウルメイワシ類の重要性はやや下がる)が、これらを総称する言葉は日本語以外ではあまり見られない。
英語では、マイワシ類はニシン亜科の数属の小魚と合わせてサーディン sardine と呼ぶ。サーディンは通常「イワシ」と訳されるが、ママカリなども含む。
カタクチイワシ類は、カタクチイワシ科全体をアンチョビ anchovy と呼ぶ。アンチョビは通常「カタクチイワシ」と訳されるが、エツなども含む。
ウルメイワシはラウンドへリング round herring と呼ぶ。なお、単なるヘリング herring はニシン属のことである。
海水魚で、沿岸性の回遊魚である。遊泳能力が高く、群れで行動する。
全長は成魚で10cm–30cmほどである
プランクトン食で、微小な歯がある。
体は細長く、断面は円筒形ないしやや側扁(縦長)。背が青く、腹が白い。赤身の青魚である。鱗が剥がれやすい。
「イワシ」の語源については各説ある。陸に揚げるとすぐに弱って腐りやすい魚であることから「よわし」から変化したとの説(漢字の「鰯」がこれに由来したとする)のほか、「賎し」や貴族の食べ物ではない卑しい魚という意味で「いやし」に由来するとの説など諸説ある[2]。
藤原京、平城京出土の木簡には「伊委之」、「伊和志」の文字があり、鰯(日本で作られた漢字、国字)の最も古い使用例は、長屋王(684年?〜729年)邸宅跡から出土した木簡である[3]。
イワシを意味する漢字の「鰯」は国字であるが、中国で使用されることもある。中国語でイワシはおもに「鰮魚」もしくは英語の sardine を音訳した「沙丁魚」「撒丁魚」などと表記される。その他、ロシア語のイヴァシー (иваси) も日本語からの借用である。
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 870 kJ (210 kcal) |
炭水化物
|
0 g
|
糖分 | 0 g |
食物繊維 | 0 g |
脂肪
|
11.45 g
|
飽和脂肪酸 | 1.528 g |
一価不飽和脂肪酸 | 3.869 g |
多価不飽和脂肪酸
ω-3脂肪酸
|
5.148 g
0.982 g
|
タンパク質
|
24.62 g
|
トリプトファン | 0.276 g |
トレオニン | 1.079 g |
イソロイシン | 1.134 g |
ロイシン | 2.001 g |
リシン | 2.26 g |
メチオニン | 0.729 g |
シスチン | 0.264 g |
フェニルアラニン | 0.961 g |
チロシン | 0.831 g |
バリン | 1.268 g |
アルギニン | 1.473 g |
ヒスチジン | 0.725 g |
アラニン | 1.489 g |
アスパラギン酸 | 2.52 g |
グルタミン酸 | 3.674 g |
グリシン | 1.181 g |
プロリン | 0.87 g |
セリン | 1.004 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量
β-カロテン
ルテインと
ゼアキサンチン |
(4%)
32 μg (0%)
0 μg0 μg
|
チアミン (B1) |
(7%)
0.08 mg |
リボフラビン (B2) |
(19%)
0.227 mg |
ナイアシン (B3) |
(35%)
5.245 mg |
パントテン酸 (B5)
|
(13%)
0.642 mg |
ビタミンB6 |
(13%)
0.167 mg |
葉酸 (B9) |
(3%)
10 μg |
ビタミンB12 |
(373%)
8.94 μg |
コリン |
(15%)
75 mg |
ビタミンC |
(0%)
0 mg |
ビタミンD |
(32%)
193 IU |
ビタミンE |
(14%)
2.04 mg |
ビタミンK |
(2%)
2.6 μg |
ミネラル | |
カルシウム |
(38%)
382 mg |
鉄分 |
(22%)
2.92 mg |
マグネシウム |
(11%)
39 mg |
マンガン |
(5%)
0.108 mg |
セレン |
(75%)
52.7 μg |
リン |
(70%)
490 mg |
カリウム |
(8%)
397 mg |
ナトリウム (塩分の可能性あり) |
(34%)
505 mg |
亜鉛 |
(14%)
1.31 mg |
他の成分 | |
水分 | 59.61 g |
コレステロール | 142 mg |
成分名「塩分」を「ナトリウム」に修正したことに伴い、各記事のナトリウム量を確認中ですが、当記事のナトリウム量は未確認です。(詳細) |
|
|
|
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
イワシは、海に隣接する領域をもつほとんどの文化において主要な蛋白源の一つである。日本では刺身、塩焼き、フライ、天ぷら、酢の物、煮付けなどにして食用とする[4]。稚魚や幼魚はちりめんじゃこ(しらす干し)、釜あげ(釜あげしらす)や煮干しの材料になる。欧米でも塩焼き、酢漬け、油漬け、缶詰(アンチョビ)などで食用にされる。水揚げ後は傷みやすいので、干物各種・缶詰・つみれなどの加工品として流通することが多い。
栄養面では、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸を豊富に含む。CoQ10も含まれる。その一方でプリン体も多量に含むため、高尿酸血症(痛風)の患者やその傾向にある者は摂取を控えるように言われることもある。
食用以外にも魚油の採取、養殖魚や家畜の飼料、肥料などの用途がある。
鬼は七輪で鰯を焼く煙と臭気を恐れるといい、西日本には節分に鰯の焼き魚を食べる「節分いわし」の風習がある。焼いたイワシの頭はヒイラギの枝とともに「柊鰯」の飾り物にして、門口に掲げておく。また、「鰯の頭も信心から」(つまらないものでも、信仰の対象となれば有り難いと思われるようになるというたとえ。 )ということわざがあり、これはかるたの一枚となっている。
イワシは漁獲量が比較的多く、日本では伝統的に大衆魚に位置付けられる。しかしイワシの仲間は長期的に資源量の増減を繰り返し、マイワシは1988年をピークに漁獲が減少し、値段が高騰している。一方でアメリカ西海岸では漁獲高が上がり、またカタクチイワシの漁獲高も増えている。
年次 | マイワシ | ウルメイワシ | カタクチイワシ |
---|---|---|---|
1955 | 211 | 66 | 392 |
1965 | 9 | 29 | 406 |
1975 | 526 | 44 | 245 |
1985 | 3866 | 30 | 206 |
1995 | 661 | 48 | 252 |
2005 | 28 | 35 | 349 |
[5]
このようなイワシ資源変動の原因については諸説があるが、基本的に長期的に資源量に変化があるものであり、乱獲やクジラなどの海洋生物の捕食によるものではなく[6]、長期的な気候変動とそれに伴うプランクトンの増減によるということが今日では通説となっている。
2002年度
FAO調べ、2005年 [1]。
順位 | 分類 | 和名 | 英名 | 学名 | 千トン |
---|---|---|---|---|---|
1 | カタクチイワシ類 | アンチョベータ | anchoveta | Engraulis ringens | 10215 |
8 | カタクチイワシ類 | カタクチイワシ | Japanese anchovy | Engraulis japonicus | 1639 |
11 | マイワシ類 | ニシイワシ | European pilchard | Sardina pilchardus | 1069 |
17 | マイワシ類 | カリフォルニアマイワシ | South American pilchard | Sardinops sagax | 635 |
28 | カタクチイワシ類 | モトカタクチイワシ | European anchovy | Engraulis encrasicolus | 381 |
46 | カタクチイワシ類 | ミナミアフリカカタクチイワシ | southern African anchovy | Engraulis capensis | 286 |
48 | マイワシ類 | ミナミアフリカマイワシ | southern African pilchard | Sardinops ocellatus | 274 |
57 | マイワシ類 | マイワシ | Japanese pilchard | Sardinops melanostictus | 213 |
世界的にはカタクチイワシ類の漁獲が非常に多い。日本産の種でもカタクチイワシが最も多い。
ウルメイワシ類は15万トン以下(71位より下)で、種別の統計に表れていない。
なお、ミナミアフリカカタクチイワシはモトカタクチイワシと同種とされることが多い。
和名に「イワシ」と付く魚はマイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシ以外にも多い。さまざまな小魚の海水魚に名づけられており、生態や特徴などには共通点は薄い。日本以外の言語圏ではイワシの仲間とはみなされていない。
トウゴロウイワシやカライワシなどはイワシに似た沿岸魚だが、オキイワシは外洋を遊泳する大型魚、イトヒキイワシ・ハダカイワシ・セキトリイワシなどは深海魚である。
なお、以下で「全種」とあるのは、一般的な和名がついている種のほぼ全て、ということである。
ウィキメディア・コモンズには、サーディン(マイワシ等)に関連するカテゴリがあります。 |
ウィキスピーシーズにニシン目に関する情報があります。 |
出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明示してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。(2013年11月) |
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
(頻度不明)
リンク元 | 「sardine」「pilchard」 |
.