出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/02/09 22:29:43」(JST)
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おむつ、もしくは、おしめは、排泄物(尿や便)を捕捉するため下腹部に着用する布や紙である。使用形態や元々の素材から大きく布おむつと使い捨ておむつ(紙おむつ)に分類される。
主として、赤ちゃん(乳幼児)や一部の高齢者・障害者・入院患者など、排尿や排便を自己の意思で制御できない者や、体の自由が利かないためにトイレに行くことが困難な者が使用する。また、普段はトイレで用を足せるが、失禁・過敏性腸症候群・夜尿症などを患っている人の対策としても使われる。
特殊な例としては、長時間不自由な状況下に置かれる宇宙飛行士[1]、戦闘機パイロット、ダイバーなどにも着用されている。[要出典]犬や猫などのペットに使わせる場合もある。ペット専用の物は尻尾を通す穴がある物もある。
尿や便の水分を保持する目的から吸水性を求められ、水分の漏れを防ぐために防水性のある素材で外側を覆い、脱落を防止するために固定、あるいはゴム状の素材などである程度締め、固定する必要がある。肌に直接触れ、かつ特に肌の弱い乳幼児に使用される性質上、素材の肌触りもまた重視されている。
赤ちゃんは腹式呼吸をしているので、おなかで止めると赤ちゃんは苦しい。布おむつでも紙おむつでもおむつはおへその下で止める[2]。
古来よりの言葉「むつき(襁褓)」が口語として変化したものとする説と、1反のさらしから6枚分のおしめが取れることからおむつと呼ぶようになったとする説がある。 ちなみに、源氏物語の桐壷の巻に、光の君(光源氏)が繦緥(むつき)にくるまれていたという記述があるが、古来よりの言葉「むつき(襁褓)」は、嬰児の産着を指していたのであって、現代のおむつ(おしめ)を指していたのではない。
使い捨ておむつの普及にともない、旧来の布製おむつを区別するために使われる呼称。吸水性のある布や綿でできた吸水部分を股間にあて、全体を覆うようなカバーを使って体に密着するように固定する。おむつもカバーも、洗濯して繰り返し使用する。
おむつは1日に多いときは20回ほども替えるので最低で20組、余裕をもたせるには30-40組ほどは必要になる。おむつカバーは4-5枚、赤ちゃんの成長に合わせてサイズの大きい物に買い替える[2]。
さらしやドビー折りの布で輪になるように縫い、成長に合わせて適度な大きさに折り畳んで使用するもの(輪おむつ)、あらかじめ折った状態で縫い付けてあるもの、また近年は履かせ易さ、履き心地が考慮され、おむつカバー内にそのまま納まる形に成形され、水分吸収力を強化したもの(成形おむつ)などがある。成形おむつは吸収部と肌に触れる部分が別体になったものもある。
おむつの内側に敷いておむつ自体の汚れを軽減させるおむつライナー(使い捨てタイプと繰り返し使えるネットタイプがある)を利用したり、使い捨ておむつ同様に、カバーと一体化したもの、防水加工されたものなど、使い捨ておむつに近い使い勝手のものもある。
日本の布おむつカバーの主流商品は、高温多湿の日本の気候に合った、通気性の良いウールや綿素材が多い。通年、特に春先から秋口にかけては、通気性の良いウールや綿素材のカバーが好まれる傾向がある。また、秋から春先にかけては、通気性はやや落ちるが、洗濯後に乾き易いポリエステル素材が好まれる傾向もある。
海外の布オムツカバーの主流商品は、ポリエステル100%など化学繊維でできているものが多い。
1970年代までの日本では、三角おむつや巻きおむつと呼ばれる腰に巻きつけるようなおむつの当て方による股関節脱臼児が多かった為、1980年代以降、布おむつは股おむつと呼ばれる当て方で使用するように徹底的な指導が行われた。
便などが付着したら新品に交換し、再使用を前提としない市販のおむつである。素材として必ずしも紙のみが使われているわけではないこともあり、紙おむつという呼称は適しているとは言い難いが、習慣上そう呼ぶ人は少なくない。かつての使用素材は紙や綿であったが、1980年代以降は高吸水性ポリマーや不織布を使用するなどの工夫により、布おむつを凌ぐ性能を有するようになっている[4]。種類は大きく分けて、テープ止めタイプ、パンツタイプ、フラットタイプ、パッドタイプと4つあり、大人用はすべての種類が使用され、乳幼児用は主にテープ止めタイプとパンツタイプが使用される。乳幼児用は少子化で国内の需要が減退している中、海外輸出が旺盛である。一方で大人用は高齢化社会により需要が急増し、2000年頃からドラッグストアなど販売店での、大人用紙おむつ・吸収パッド・吸収パンツの売り場スペースが拡大される傾向にある。
テープ止めタイプ、パンツタイプのサイズは小さい順から赤ちゃん・子供用では「未熟児用」(~3kg)、「新生児用」(~5kg)、「Sサイズ」(4~8kg)、「Mサイズ」(6~11kg)、「Lサイズ」(9~14kg)、「ビッグサイズ」(12~20kg)、「ビッグより大きいサイズ」(13~25kg)、「乳幼児用スーパービッグ」もしくは「大人用ジュニア(SS)サイズ」(15~35kg)、大人用は「大人用Sサイズ」(20kg~40kg/ヒップ50~75cm)、「大人用Mサイズ」(30kg~60kg/ヒップ70~95cm)、「大人用Lサイズ」(50kg~/ヒップ90~125cm)、「大人用LLサイズ」(50kg~/ヒップ90~144cm)、「大人用3Lサイズ」(ヒップ110~140cm)と展開している[5]。乳幼児用は体重、大人用は腰囲(ヒップサイズ)を目安として選び、大人用は体重とウエストサイズが併記されている場合が多い。サイズの目安はメーカーによって一部異なる[6]。
テープ止めタイプはフラットタイプのおむつにおむつカバーの機能の一つである面ファスナーの固定部と横漏れ防止のギャザーを一体化させたものであり、おむつカバーが不要である。乳幼児用と大人用では形状が違い、大人用の方が股上部分が大きく[7]、臍まで隠れやすい。当て方はテープが取り付けられている部分を後ろにして、乳幼児の場合は子供を仰向けにして足を持ち上げ、大人の場合は寝かせた使用者を横にしてお尻の下におむつを差し込み、ギャザーに合わせてお尻を乗せ、性器を包むようにテープ固定部のライン表示が入った側を前にして当て、左右のラインの位置が均等になるように乳幼児用は2つ、大人用は4つのテープで固定する。ズボンを完全に脱がさなくても交換でき、コスト的にも比較的安価であるが、使用者を寝かせて装着・交換する必要があり、ベッドや布団などの寝かせるスペースが必要であるため、外出先でもベビーベッドなどの寝かせるスペースを確保しやすい乳幼児はともかく、それを確保しづらい大人のお出かけ用にはあまり向いていない。そのため、自由に歩ける前の赤ちゃんや寝たきりの者に使われることが多く、自分で歩ける人でも寝ている状態ではパンツタイプより吸収体が大きくて漏れにくいことから就寝用に使われることが多い。乳幼児の場合は子供が立てるようになり活発に動き、じっとしていなくなると子供が立ったままでもおむつを交換できるパンツタイプが便利なため、「Lサイズ」前後でテープ止めタイプからパンツタイプに変える人が多く、テープタイプは「ビッグサイズ」を取り扱う銘柄が少なくなっている[8]。また、大人用は乳幼児用とは異なりパッド併用を前提とするため、吸収体が薄かったり、ドーナツ状になっている製品も見られる。かつての製品は外側の素材がビニール剥き出しであったが、各社とも乳幼児用は1990年代後半以降、大人用は2000年代前半以降の製品からビニールから不織布へと変化し、肌触りが改良されている。
パンツタイプはゴムのシャーリングが入った不織布製の使い捨てパンツとギャザー・吸収体が一体化したものである。ユニ・チャームが最初に開発し、乳幼児用は1992年[9]、大人用は1995年に登場した[10]。ブリーフやショーツといった下着と同じ感覚で交換でき、自分で歩ける人のお出かけ用や、ある程度立ち上がれる人のトレーニングパンツ的な用途に向いている。しかし、ズボンを完全に脱がさないと交換できず、寝ている状態ではテープ止めタイプに比べて漏れやすいため、寝たきりの者の使用には向かない。また価格が最も高価である。パンツタイプの方がウンチが漏れにくいという意見もある一方で、ポイントを押さえ、慣れればパンツタイプが楽だがウンチの時にはコツが必要という人もいる[11]。大人用にはパンツタイプとテープ止めタイプの中間的な製品として、ズボンを完全に脱がさなくても交換できるように、パンツタイプながらもテープでも固定ができる製品が発売されている。
乳幼児用のパンツタイプの中には特殊用途として、ハイハイ用、トイレトレーニング用、おねしょ(夜尿症)対策用、水遊び用パンツも発売されている。ハイハイ用は「Sサイズ」から「Mサイズ」相当、それ以外の展開サイズは「Lサイズ」と「ビッグサイズ」(ただし水遊び用パンツは「Mサイズ」を追加)である。トイレトレーニング用は吸収体の表面におしっこの水分が付着すると濡れた感じがするような加工が施され、商品によっては絵柄の色が変わるように施されているものもある。おねしょ対策用は長時間おむつを取り替えなくても漏れないよう、昼間用の紙おむつより吸収体を強化し、商品によっては布パンツの質感に近づけたものもある[12]。トイレトレーニング用、おねしょ対策用おむつは月齢の高い子供が穿くことが多いため、パッケージ表面には「パンツ」の文字が強調され「おむつ」の文字が目立たなくなっているが、日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示では他の製品と同様に「乳幼児用紙おむつ」と表示されている。一方で水遊び用パンツは海やプールでの水遊び用に便漏れ防止のギャザーのみ付いており吸収体が入っておらず、尿や軟便はすり抜けていくため、日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示にもある通り、厳密には「おむつ」ではなく「使い捨てパンツ」である。単独でも水着と併用でも使用できるが、プールによっては水遊び用パンツを含めたおむつ着用を禁止しているところもあるため注意が必要である。
フラットタイプは布おむつをそのまま紙おむつに置き換えたものである。紙おむつの登場時からあり最も歴史が古く、排便に対応するおむつでは最も安価であるが、布おむつと同様におむつカバーとの併用が必要である。そのためお出かけ用には全く向いていない。乳幼児用はテープ止めタイプの低廉化により姿を消し、現在は大人用のみ発売され、使用者の多くが寝たきりの者である。
パッドタイプは尿のみ吸収し、単独では排便には対応できない(一部の製品は軟便にも対応する)。大人用では重失禁者向けのテープ止めタイプ・フラットタイプ・パンツタイプのおむつと併用する尿とりパッドと、軽失禁者・中失禁者向けに布製の下着に生理用ナプキンのように装着する軽失禁パッド・中失禁パッドがあり、前者の尿とりパッドの方がサイズが大きく吸収量が多い。いずれもコストは最も安いが、下着と併用する軽失禁パッド・中失禁パッドは一定の吸収量しかないため、完全におむつに排尿・排便をしている者には使用できない。子供用は市販の布パンツに装着するトイレトレーニング用及び夜尿症対策用がほとんどであるが、介護が必要な障がい児向けに「スーパーBIG」サイズに装着する尿とりパッドが市販されている。
この他、トイザらス(NEWウルトラプラス)・イオングループ(トップバリュ ベビーオムツ)等、プライベートブランドのおむつを販売しているケースがある。
なお、ユニ・チャームでは上記のとおり「ムーニー」「マミーポコ」と2種類のブランドを使い分けている。ムーニーは品質や機能性重視、マミーポコは経済性(価格)重視のブランドとなっている。なお、新生児・Sサイズ・スーパーBIGサイズはムーニーのみ。
一部メーカーからは(日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示上は乳幼児用ながら)3歳以上の幼児~小学校低学年ぐらいの体重15kg~25kg前後の子供用に、乳幼児用よりやや大人っぽいながらも可愛い絵柄が入った「ビッグより大きいサイズ」が発売されている。日中の幼稚園や学校生活を考慮して自分で穿きやすいように全てがパンツタイプになっている。機能的には通常の乳幼児用紙おむつと変わらない。前述のトイレトレーニング用、おねしょ対策用より大き目であるため、大柄の乳幼児のトイレトレーニング用やおねしょ対策用にも使用される。
「ビッグ」や「ビッグより大きいサイズ」または「トレーニングパンツ」や「夜用パンツ」では小さく、大人用のSサイズでは大きいという小学生~中学生程度の学童用に「スーパーBIGサイズ」なども発売されている(メーカーにより異なるが、おおむね腰囲50~70cm、体重20kg~35kgに対応)。重失禁や夜尿症対策のほか、心身障碍児の介護用としても考慮されており、パンツタイプのほかにテープ止めタイプも存在する。日本衛生材料工業連合会のガイドラインによる表示では、銘柄によって「乳幼児用紙おむつ」とされているものと「大人用紙おむつ」とされているものに分かれる。又、アメリカを中心とする海外では主におねしょ対策用に中学生や高校生程度の体格(概ね体重60kg前後迄)にも対応するサイズも存在している。
これらの「スーパーBIGサイズ」や「ビッグ」「ビッグより大きいサイズ」の需要は近年増してきている。背景には、「子供の成長に合わせておむつを外す」という考え方へのシフトが見られ、おむつが取れる年齢が遅延化していることが挙げられる[13]。中高生のおむつ人口も急増してきている。その一方で、「おむつなし育児」という考え方も近年出てきているため、おむつはずれに対する考え方は二極化しているともいえる。
主に高齢者や障がい者向けの需要であるが、概ね4歳以上の子供で且つ子供用紙おむつでサイズが合っていない子供や比較的年齢の若い成人で且つ心身に特に障害が見られない者でも失禁や夜尿症が見られる者、成人の健常者でも特殊な環境下に置かれる業務に従事している者が使用する事もある。軽度の尿失禁用の吸収パッドや吸収パンツなどと共通のブランドが多い。医師の診断により、吸収パッドや吸収パンツなどとともに、所得税の医療費控除の対象となる場合がある(詳細については、医療機関や税務署、市役所などに確認すること)。尚、医療費控除は大人用おむつのみ適用されており、子供用おむつには適用されていない。
世界各国で乳幼児・幼児用のおむつが使用されている。基本的な用法と効果は日本の物と大きく変わらないが、装着時期については大きく異なる地域も多い。
日本メーカーのアジアでの現地生産も盛んである。ユニ・チャームは1984年に台湾、1987年にタイ、1995年に中国、1997年にインドネシア、2008年にインドで生産・販売を開始。花王は1994年に台湾、2012年に中国、2014年にインドネシアに展開、後続の大王製紙は2011年にタイ、2013年に中国、2015年にインドネシアで現地生産を開始した。
おむつを乳幼児・幼児に使用する場合、1日5回から10回程度と、頻繁に交換使用される。布おむつの場合汚れた部分を洗い流し、何度かリユースすることができるが、使い捨ておむつの場合、リユースやリサイクルを前提には作られておらず、吸水部分のみならず、体に固定するカバーに相当する部分も含めて捨ててしまう。 これが、大量の廃棄物を出す原因として、ゴミ処理を行う側の自治体や環境問題に熱心な人から問題視されることがある。廃棄方法は自治体によって違う可能性はあるが、基本的には、汚物をトイレに捨て、おむつ本体は可燃物として廃棄するよう求められている。
60年前の日本などでは2週間から2か月でおむつを外すことも多かった。お母さんにサポートされてオシッコ・ウンチすれば不快でないことがわかれば、赤ちゃんはちゃんとオシッコ・ウンチのサインを出せるのである。お母さんがそのサインを見逃さなければおむつは早く外せる。一昔前には2歳ほどでおむつがはずれていたが近年では3歳になってもおむつが外れないのが一般的である。赤ちゃんにとって中途半端に快適な紙おむつの普及は、かえって自然な赤ちゃんが生活習慣を身につけることを遅らせているという研究者もいる。 近年では「おむつなし育児」に関する書籍の発行も増えてきた。[15][16]
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