-TCR
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/03/15 23:02:26」(JST)
TCR-αとTCR-βから構成されるT細胞受容体(中央赤)と補助分子であるCD3。図の青い部分がITAM。
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識別子 | |||||||||
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Pfam | PF11628 | ||||||||
InterPro | IPR021663 | ||||||||
OPM superfamily | 261 | ||||||||
OPM protein | 2hac | ||||||||
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T細胞受容体(ティーさいぼうじゅようたい)、以下TCR (T cell receptor) とはT細胞の細胞膜上に発現している抗原受容体分子である。構造的にB細胞の産生する抗体のFabフラグメント[注 1]と非常に類似しており、MHC分子に結合した抗原分子を認識する。成熟T細胞の持つTCR遺伝子は遺伝子再編成を経ているため、一個体は多様性に富んだTCRを持ち、様々な抗原を認識することができる。
TCRはα鎖とβ鎖、あるいはγ鎖とδ鎖の二量体から構成される。前者の組み合わせからなるTCRをαβTCR、後者の組み合わせからなるTCRをγδTCRと呼び、それぞれのTCRを持つT細胞はαβT細胞[注 2]、γδT細胞と呼ばれる。TCRはさらに細胞膜に存在する不可変なCD3分子と結合し複合体を形成する。CD3は細胞内領域にITAM (immunoreceptor tyrosine-based activation motif) と呼ばれるアミノ酸配列を持ち、このモチーフが細胞内のシグナル伝達に関与する[1]。
それぞれのTCR鎖は可変部 (V) と定常部 (C) から構成され、定常部は細胞膜を貫通して短い細胞質部分を持つ。可変部は細胞外に存在して、抗原-MHC複合体と結合する。可変部には超可変部、あるいは相補性決定領域 (CDR) と呼ばれる領域が3つ存在し、この領域が抗原-MHC複合体と結合する。3つのCDRはそれぞれCDR1、CDR2、CDR3と呼ばれるが、TCRの場合、この内CDR1とCDR2はMHCと結合し、CDR3が抗原と結合すると考えられている。
TCRは免疫グロブリンスーパーファミリーに属するタンパク質であり、上記のような構造は抗体のそれと非常によく似ているが、抗体と異なり、細胞外に分泌されることはない。
TCRの構成は免疫グロブリンとして知られるB細胞受容体の過程と似ている。αβTCRの遺伝子再編成ではまず、β鎖のVDJ再編成が行われ、続いてα鎖のVJ再編成が行われる。α鎖の再編成が行われる際にδ鎖の遺伝子は染色体上から欠失するため、αβTCRを持つT細胞がγδTCRを同時に持つことはない。逆にγδTCRを持つT細胞ではこのTCRを介したシグナルがβ鎖の発現を抑制するため、γδTCRを持つT細胞がαβTCRを同時に持つこともない。
遺伝子再編成についてはV(D)J遺伝子再構成参照。
遺伝子再編成はB細胞の場合と同様にリコンビナーゼであるRAG-1とRAG-2に依存している。またターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ (TdT) は遺伝子再編成において生じる遺伝子断片接合部にN-ヌクレオチドをランダムに挿入することでTCRの多様性形成に寄与する。これらのメカニズムにより1個体が持つTCRの多様性の総数は計算上1018を超える。ただし、免疫グロブリンと異なり、TCR遺伝子の場合は体細胞高頻度突然変異は生じない。また、TdTによるN-ヌクレオチドの挿入の結果生じる多様性の拡大はCDR3のみに影響するため、TCRでは多様性がCDR3に集中する。これはCDR3をコードする領域のみが遺伝子断片の接合部を含むためである。
TCRの役割は抗原認識である。CD4陽性細胞(Th細胞)の場合、特異的な抗原がTCRと結合すると、CD4に結合するLckがCD3のITAMをリン酸化し、これが起点となって細胞内にシグナルが伝達される。ナイーブT細胞は活性化するが、この時にTh細胞は補助刺激因子の存在を必要とする。この補助刺激因子はB7と呼ばれる分子で、TCRが抗原と結合した状態でさらにB7がT細胞上のCD28と結合すると、Th細胞は活性化に導かれる。補助刺激因子が存在しない場合、CD4陽性T細胞は不活化する(これをアネルギーという)[2]。
αβT細胞はMHC上に存在するペプチドしか認識できない。また、別の個体のMHC上のペプチドは認識できない。これをMHC拘束性という。一方で一部には非MHC拘束性のT細胞が存在し、これはナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)と呼ばれる。NKT細胞の持つTCRはMHC上の抗原ではなく、CD1(特にCD1d)上の抗原を認識するCD1d拘束性である。また、非ペプチド抗原を認識しうる。また、γδT細胞は抗原提示細胞やMHCの介在なしに一部の抗原と直接反応する。
補助刺激分子の存在下でTCRと抗原が結合すると、ナイーブT細胞の活性化が起きる。活性化したT細胞は細胞増殖やIL-2などのサイトカインの産生、細胞傷害作用といった機能を発揮できるようになる。細菌の毒素やウイルス感染細胞で産生される、ある種の物質はMHC IIと結合して、特定のサブファミリーに属するTCRを非特異的に活性化する。この抗原をスーパー抗原と呼び、T細胞を過剰に活性化するため、発熱、発疹、ショックなどの症状を引き起こす[3]。
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国試過去問 | 「103I007」 |
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CD
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抗体 | IgG1 | IgG2 | IgG3 | IgG4 | IgM | IgA1 | IgA2 | IgD | IgE |
重鎖 | γ1 | γ2 | γ3 | γ4 | μ | α1 | α2 | δ | ε |
分子量 | 146 | 146 | 165 | 146 | 970 | 160 | 160 | 184 | 188 |
補体活性化(古典的経路) | ++ | + | +++ | - | ++++ | - | - | - | - |
補体活性化(代替経路) | - | - | - | - | - | + | - | - | - |
胎盤通過 | +++ | + | ++ | ± | - | - | - | - | - |
食細胞FcRへの結合 | + | - | + | ± | - | + | + | - | + |
肥満細胞・好塩基球への結合 | - | - | - | - | - | - | - | - | +++ |
staphylococcal Protein Aとの反応性 | + | + | ± | + | - | - | - | - | - |
IgG | IgA | IgM | ||||
♂ | ♀ | ♂ | ♀ | ♂ | ♀ | |
1ヶ月 | 400 ~ 1030 | ー ~ 24 | 21 ~ 96 | |||
6ヶ月 | 290 ~ 950 | 8 ~ 50 | 46 ~ 176 | |||
1歳 | 460 ~ 1220 | 470 ~ 1210 | 16 ~ 128 | 14 ~ 98 | 57 ~ 260 | 81 ~ 314 |
3歳 | 530 ~ 1340 | 540 ~ 1340 | 25 ~ 174 | 22 ~ 150 | 63 ~ 279 | 86 ~ 332 |
6歳 | 630 ~ 1490 | 650 ~ 1530 | 45 ~ 258 | 38 ~ 238 | 72 ~ 305 | 92 ~ 353 |
12歳 | 750 ~ 1660 | 790 ~ 1740 | 71 ~ 352 | 63 ~ 373 | 72 ~ 306 | 100 ~ 380 |
成人 | 680 ~ 1620 | 84 ~ 438 | 380 ~ 1620 |
T細胞 | B細胞 | |
抗原受容体 | TCR(β鎖, α鎖) | BCR(H鎖, L鎖) |
受容体に付随するタンパク質 | CD3δ | Igα |
CD3ε | Igβ | |
CD3γ | ||
ζ | ||
CD5 | CD19 | |
CD6 | CD22 | |
Src kinase | Lck, Fyn | Kyn, Blk, Fyn |
Syc kinase ZAP-70 kinase |
ZAP-70,Syk | Syk |
Down stream enzymes | MAP kinase | |
Vav | ||
PLCγ1 | PLCγ1, PLCγ2 | |
GAP(+/-) | GAP | |
PI3 kinase | ||
Others | Ezrin | |
Valosin-containing protein |
一般的作動薬 | 受容体 | G protein subunit | 作用 |
アドレナリン ノルアドレナリン |
α1 | Gq | 血管平滑筋収縮 |
α2 | Gi | 中枢交感神経抑制、インスリン放出抑制 | |
β1 | Gs | 心拍数増加、収縮力増加、レニン放出、脂肪分解 | |
β2 | 骨格筋筋弛緩、内臓平滑筋弛緩、気道平滑筋弛緩、グリコーゲン放出 | ||
β3 | 肥満細胞脂質分解亢進 | ||
アセチルコリン | M1 | Gq | 中枢神経 |
M2 | Gi | 心拍数低下 | |
M3 | Gq | 外分泌腺分泌亢進 | |
ドーパミン | D1 | Gs | 腎臓平滑筋弛緩 |
D2 | Gi | 神経伝達物質放出を調節 | |
ヒスタミン | H1 | Gq | 鼻、器官粘膜分泌、細気管支収縮、かゆみ、痛み |
H2 | Gs | 胃酸分泌 | |
バソプレシン | V1 | Gq | 血管平滑筋収縮 |
V2 | Gs | 腎集合管で水の透過性亢進 |
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