出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/12/11 20:54:38」(JST)
ニキビ(面皰、英: acne, spots, zits)とは、皮膚の炎症性疾患。顔・胸・背に見られるものは、医学的に尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)、または単に痤瘡(ざそう)という。一般にニキビという語は青年の顔面に発生するものをいい、それ以外のものは吹き出物(ふきでもの)ということも多い。ニキビの語源は諸説ある[1]。
ニキビは、毛穴(毛包)がホルモンと細菌と皮脂の相互作用によって炎症を起こすことでできる。従って、皮脂が多く分泌される部位にできやすい。ニキビは、皮脂を分泌する毛穴が詰まるところから始まる。詰まった毛穴の中に乾いた皮脂や角質(死んだ細胞)がたまり、この状態が黒ニキビ(毛穴が開いて中身が見えている状態)または白ニキビ(毛穴が閉じている状態)と呼ばれるものである。
黒ニキビ、白ニキビの状態から赤いニキビを作り出すのは、ブドウ球菌と同様に皮膚に非常に多く存在する皮膚常在菌のアクネ桿菌(プロピオニイバクテリウム・アクネス(英語版)、 P.acnes)である。アクネ桿菌は、嫌気性の細菌のため酸素のない脂腺の奥に生息する。また、皮脂を好むため、詰まった毛穴の中で皮脂を栄養として過剰に増殖し、脂肪分解酵素のリパーゼを分泌し、皮脂を遊離脂肪酸にしてコメドとなる。また紫外線や空気中の酸素が皮脂を過酸化脂質に変化させる。このように皮脂が遊離脂肪酸へ変化し酸化され過酸化脂質へと酸化された結果、炎症が起きて赤くなったり、膿がたまって黄色い部分ができるという症状が出る。また、さらに進行すると、毛穴が破れて中身が流れ出し炎症が広がることもある。その場合は皮膚の深い部分を傷つけてしまうため、炎症が治っても痕(瘢痕・あばた)が残る場合が多い。なお、ニキビのできるメカニズムは完全には解明されていない。また粉瘤腫というほぼ同じ外見の腫れが身体のいずれかの場所にできる場合もあるが、治療方法がニキビとは異なる。
化粧品の使用は毛穴を詰まらせ、にきびを悪化させる場合がある。チョコレートなど特定の食品や性行動が原因とする噂があるが、科学的根拠は存在しない。思春期に発生するものはテストステロンの分泌量移行に対する反応であることが多い。ほとんどの人では、その反応は時間がたつにつれて減少する。その結果、20代前半までにはにきびは改善するか少なくともその数を減じる。またホルモン分泌の乱れや、睡眠不足やストレスや食生活などの不摂生な生活によっても皮脂分泌が多くなる。
時にベーチェット病、Sweet病、潰瘍性大腸炎に伴う壊疽性膿皮症などの随伴症状であることがあり、注意を要する。[2]
以下のような目的に沿って、治療薬の処方や生活指導が行われる。
一般的なにきび治療は、にきびができた部位を、日に1~2回低刺激性のせっけんで洗うのが望ましい[3]。抗菌せっけんやスクラブ入りせっけんの使用は、有用な皮膚常在菌を過剰に洗い流し、且つ皮膚を刺激し悪化させる恐れがある[3]。
現在日本では、一般的に皮膚科で処方されるニキビ治療には外用の局所抗菌剤として、クリンダマイシン、ナジフロキサシン(英)の2種類のほか、過酸化ベンゾイル(英: Benzoyl peroxide 10% w/w.)や抗炎症剤が使われている。外用の抗菌薬が効かない場合、毛穴の詰まりを取る効果のあるトレチノインなどを使うが、トレチノインは日光に対し過敏になる作用があり慎重な処方が行われる必要がある。2008年7月にアダパレン(商品名ディフェリン®ゲル0.1%)が日本で認可された(それまではアダパレンは自由診療もしくは個人輸入でしか用いられなかった。)。処方なしで入手できる物として、サリチル酸やレゾルシノール、硫黄を含んだクリーム状の薬(軟膏)で、これらは吹き出ものを乾かす効果があるが、若干のかさつきが生じる場合がある[3]。
古くからある治療としては、粉末硫黄を水溶液にして、爪楊枝の柄などを使用し患部に塗る方法も、ニキビ治療には有効である。硫黄が角質を軟化させ剥がれ易くすることで毛穴の目詰まりを防ぎ、皮脂抑制、乾燥効果などが得られのである。また、硫黄の黄色が炎症の赤みを隠してくれる。
重症なにきびでは、ミノサイクリン、テトラサイクリン、エリスロマイシンなどの経口用抗生物質が使用される場合もあるが、長期服用が必要で重い副作用を引き起こす場合がある[3]。
漢方薬の十味敗毒湯、荊芥連翹湯、麻杏よく甘湯、抑肝散加陳皮半夏により治療効果があったとする報告もある[4]。
市販薬及び医療用医薬中に非ステロイド性外用薬として配合されるイブプロフェンピコノールを含有する薬剤(軟膏)による接触皮膚炎の発生が報告されている[5]。
内服薬では、皮膚の新陳代謝を促すビタミンB2、皮膚の抵抗力を高めるビタミンB6の他、色素沈着などを防ぐ為にビタミンCを使用する。基本的に皮膚科での治療は上記に書かれたように保険適用の範囲内である外用の抗菌剤や抗炎症剤やビタミン剤だけであり、下記の美容行為は保険適用外であり治療費が高くなる。赤くなる前の段階(黒ニキビ、白ニキビ)を治療する薬は、海外にはあるが日本では認可されていない。しかし、その中には市販はされていないが開業医が自家調合することが可能な治療薬もある。
1998年以降よりリン酸ビタミンCなどのビタミンC誘導体、レチノイドのようなビタミンA誘導体、リン酸ビタミンEのようなビタミンE誘導体といった皮膚に直接吸収されやすいビタミンを成分とした薬剤の外用塗布によって、抗酸化作用によるニキビの改善や色素沈着の改善が国内外で継続的に報告されている[6]。また、紅茶エキスによる治療効果も報告されている[7]。
体質にもよるが、思春期の男性の場合にはビタミンB群の錠剤を摂取することで症状がすっかり改善する人もいる[要出典]。その他は睡眠不足やストレスが多くなるのも原因の1つであり、生活改善(食事、睡眠など)で治る人もいる。こういった例のように原因が体内・生活習慣にある場合には、こまめに洗顔するなどの方法で皮膚を清潔に保ったとしてもにきびの発生自体を抑える方法にはならない[要出典]。
科学的な根拠は存在しないものの、チョコレートなどのスナック菓子や揚げ物などの油っこい食べ物はニキビの治療に好ましくないと言われている。野菜や果物、魚など食物繊維やビタミンを含んだ食べ物を多く摂取することによって改善する事も多いようである。
ケミカルピーリングというアルファヒドロキシ酸(AHA)を用いた治療法の有効性が確認されている[要出典]。医療機関で用いられているものとエステサロンなどで用いられているものとは濃度が異なる[要出典]。一般の人が使うには難しい。しかし、一説にはピーリングをすると、より症状が悪化するという説もある。
前述の通り、ニキビは人に恋し恋される青年や思春期に主に用いられる言葉であり、日本ではそれを表現する「思い面瘡思われ面皰」(おもいおもくさおもわれにきび)といったことわざも存在する。また、ニキビ治療薬クレアラシルのCM(1986年、島田奈美)では、「思い思われ振り振られ」(額=思い、顎=思われ、左頬=振り、右頬=振られ)という、ニキビの部位による恋占いが登場したこともある。
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