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陽性対照(ようせいたいしょう)とは、ある実験系において明らかに陽性を示すと予想される対照。毒性試験などにおいて陽性対照に反応が認められない場合には、試験群が毒性を示さなかったとしてもその試験には信頼性がないとして再試験が必要となる。実験系が不安定である場合に、陽性対照は試験結果の成否を判断する指標となる。例えば、サポニンは溶血性に関連する実験の際に陽性対照薬として利用されることがある。
ポジティブコントロール、あるいは略称でポジコンと呼ばれることもある。
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リンク元 | 「ビスフェノールA」「ポジコン」「正の制御」「正の対照」「positive control」 |
関連記事 | 「対照」「陽性」 |
| 構造式=ビスフェノールAの構造式 | IUPAC= 4,4'-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール
| 別名= 4,4'-ジヒドロキシ-2,2'-ジフェニルプロパン
4,4'-イソプロピリデンジフェノール | 分子式=C15H16O2 | 分子量=228.29 | CAS登録番号=80-05-7 | 形状=淡いベージュ色の固体 | 密度=1.20 | 融点=157 | 融点注= | 沸点=220 | 沸点注=/4 mmHg | SMILES=C(C)(C1=CC=C(O)C=C1)(C2=CC=C(O)C=C2)C | 出典=ICSC
ビスフェノールA (bisphenol A) は2つのフェノール部位を持つ芳香族化合物である。しばしば BPA と略称される。
ビスフェノールAは2当量のフェノールと1当量のアセトンの反応によって合成される。この反応は酸によって触媒されるが、触媒として塩酸のような鉱酸やスルホン酸型の陽イオン交換樹脂(スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を硫酸などでスルホン化したもの)のような固体酸が使われる。さらに反応速度や選択性の向上を目的に、チオール化合物のような含硫黄化合物を触媒に共存させることが一般に行われている。 一般に、フェノールは大過剰にして反応を行う。
合成された大過剰のフェノールを含む反応液を冷却すると、ビスフェノールA:フェノール=1:1の付加物結晶(アダクト)が得られるので、これを分離・洗浄した後、結晶を加熱・溶融し、フェノールを蒸留などで除去すると、高純度のビスフェノールAが得られる。工業的にはこれを1〜2ミリ程度の球状に粒子化(プリル)して製品化している。
多くのケトンは同様な縮合反応を起こす。この合成法では副産物が水しか生成しないため効率的である<ref name=Fiege>テンプレート:citation</ref>。
1891年にロシアの化学者ディアニン (A. P. Dianin) によって初めて合成された<ref>Dianin, A. P. (1891). Zhurnal russkogo fiziko-khimicheskogo obshchestva 23: 492.</ref><ref>Zincke, Th. (1905). "Mittheilungen aus dem chemischen Laboratorium der Universität Marburg". Justus Liebigs Ann. Chem. 343: 75–131.</ref>。1930年代には合成エストロゲン(女性ホルモン)の1つとして研究されていたが、当時ジエチルスチルベストロールがエストロゲンとして強い活性を持つことが明らかにされたため、ビスフェノールAが合成エストロゲンとして使われることはなかった。
現在ではポリカーボネート製のプラスチックを製造する際のモノマーや、エポキシ樹脂の原料として利用されている。抗酸化剤、あるいは重合禁止剤としてポリ塩化ビニルの可塑剤に添加される。
ポリカーボネートの用途はサングラスやCDから水・食品の容器まで多くの日用品にわたり、壊れにくいため哺乳瓶にも使われている。歯科治療用の歯の詰め物や、缶詰の内側を被覆するエポキシ樹脂の中にも含まれている。
ポリカーボネートやエポキシ樹脂のようなビスフェノールAを原料とする種類の合成樹脂では、強力な洗剤で洗浄した場合や酸・高温の液体に接触させた場合にビスフェノールA成分が溶け出すことが知られている。アメリカ合衆国での調査では、ヒトからかなりの確率で検出された。
ビスフェノールAを摂取するとエストロゲン受容体が活性化されて、エストロゲン自体に類似した生理作用を表す。1930年代に卵巣を除去したマウスにこの物質を投与する実験が行われ、作用が初めて証明された<ref>Dodds, E. C.; Lawson, W. (1936). Nature 137: 996.</ref><ref>Dodds, E. C.; Lawson, W. (1938). Proc. R. Soc. Lond., B, Biol. Sci. 125: 222–232.</ref>。
ビスフェノールAが、従来の無作用量より遥かに低濃度でのみ毒性を有する、という「低用量仮説」が提唱された。これは従来の薬理学とは全く矛盾する内容であったため、大きな議論となった。
フォム・サール (F. vom Saal) とヒューズ (Claude Hughes) の論文(2004年)によると、合成樹脂の製造業者らが行った検証(11件)ではエストロゲン様作用が認められなかったのに対し、他機関の研究では104例中の約9割で上記の症状が出るという結果となった。これをフォム・サールらは、製造業者らが都合の良い試験結果のみを採用したためであると主張した<ref>vom Saal, F.S.; Hughes, C. (2005). Environ. Health Perspect. 113(8): 926–933. PMID 16079060</ref>。アメリカ・プラスチック協会によって資金を提供されているハーバード・リスク分析センターによる以前の報告では、危険性を証明するにはまだ根拠が乏しく、定量的に証明できていないとされていた。ヒューズはハーバード・リスク分析センターの委員を務めていたが、彼は上記の論文の中で、その見解は時代遅れのものである、なぜなら2001年から出版されている低用量のビスフェノールAに関する多くの論文のうちわずかしか考慮していないからだ、と述べている。
2006年、フォム・サールとウェルションス (Wade V. Welshons) は、製造業者の資金提供によって行われた少数の研究が低用量のビスフェノールAの効果を見落としていた原因について、詳細な分析を報告した<ref>vom Saal, F. S.; Welshons, W. (2006). Environ. Res. 100: 50–76. DOI: 10.1016/j.envres.2005.09.001</ref>。また、アメリカ政府機関によって開設された委員会による再調査によると、それらの論文の1つは実際にはビスフェノールAについての影響を発見していたにも関わらず、この結果を否定する内容になっていた。一部の研究では陽性対照を使っておらず、他の研究との比較によって陰性対照が汚染されていた可能性も示された。さらに、エストロゲンに反応しにくい種類のラットを使用した研究もいくつか存在した。
アメリカ化学工業毒性研究所は、フォン・サールらによる「低容量仮説」を慎重に検証し、彼らの実験結果が再現しないと発表した。またハーバード大学リスク分析センターや各国の政府機関(FDA、EFSA、ECBなど)でも低用量仮説を含めた研究結果を集めて詳細に検討し、ビスフェノールAはヒトの健康に影響がないことを報告している。
現在ではビスフェノールAは、他の「環境ホルモン」疑惑を受けた化合物と同様、通常の摂取条件ではヒトに対して大きな影響を及ぼすものではないという考えが強まっている。ただし生態系への影響、胎児や乳幼児への影響に関してはまだ研究が進行中である<ref>「メディア・バイアス」 松永和紀著(2007年,光文社新書)</ref>。
厚生労働省は、「成人への影響は現時点では確認できない」としながらも、「公衆衛生上の見地から、ビスフェノールAの摂取をできるだけ減らすことが適当」と報道発表(2008年7月8日)した。また、同日に一般消費者向けの「ビスフェノールAについてのQ&A」が公表されている。<ref>ビスフェノールAがヒトの健康に与える影響について,厚生労働省 (2008年7月8日)</ref>
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