出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/04/18 14:27:19」(JST)
この項目では、人や物に対する呼び名として世間一般で通用している正式名称以外の名称について説明しています。
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通称(つうしょう)は、正式な名称ではないが、特定の人や物、事象に対する呼び名として世間一般において通用している語のことである。俗称(ぞくしょう)ともいう。
人名としての通称は通り名、二つ名、異名、字(あざな、本来の意味の字とは別物である事に注意)などと呼ばれる事もある。
今日まで続いている通称としては、小説家や漫画家の「ペンネーム」、芸能人や歌手、俳優などの「芸名」、力士の「四股名」、プロボクサーをはじめとする格闘家のリングネーム、プロ野球選手の登録名、落語家の「高座名」、いわゆる「源氏名」、博徒の渡世名、テキヤの稼業名[1]などがある。
日本では改名には家庭裁判所の許可が必要なため、本名とは別の名を用いたい者が通称を使う場合がある。例えば婚姻や養子縁組によって戸籍上の姓が変わった者が、それまでの顧客との関係を保つために職業上では旧姓を名乗り続けるようなケースである。
また戸籍上の姓名に旧字体が使われている場合、手書きで書く際に簡略化して新字体に置換えた表記を日常的に使用している人は多い(廣澤→広沢、渡邊→渡辺、櫻井→桜井、寶田→宝田、齋藤・齊藤→斉藤、兒玉→児玉、山縣→山県、猪瀨→猪瀬など)。役所のコンピューターシステムは旧字を処理出来ない仕様なので、データ電子化の際に職権変更されてしまうこともある。
日本に在住する外国人には、自治体への登録を条件に、自国語における名と異なる日本名(通名)を公的書類や契約に有効に使用することが法令で認められている。
日本の政治家の中に本名とは違う名前(婚姻前の苗字、若しくは芸名やペンネーム)で議員活動をする事がある。たとえば、高市早苗の本名は「山本早苗」、蓮舫の本名は「村田蓮舫」、扇千景の本名は「林寛子」、不破哲三の本名は「上田建二郎」、といった事例が挙げられる。また、公職選挙法施行令第88条第8項では、男性・女性を問わず通称を「本名に代えて本名以外の呼称で本名に代わるものとして広く通用しているもの」としている。例えば、森田健作(千葉県知事)の本名は「鈴木栄治」であるが、立候補時には通常通用している「森田健作」で、選挙長の認定を受けた上で立候補した。しかしながら、千葉県条例など法令の署名などは本名である「鈴木栄治」を使用している。
近世までは、本名(実名)は「諱(忌み名)」と呼ばれ、公言は避ける習慣があった。そのため、人を呼ぶ時は「仮名」「字」などの通称、官職名を用いるのが一般的だった。今日でも「総理」「大臣」「社長」「専務」などと呼びかけに使うのがこれにあたる。
婚姻時の氏の変更による不利益や損失、アイデンティティの喪失などを回避するための方策のひとつとして考えられる旧姓の通称利用であるが、問題点も指摘されている[2][3][4]。たとえば、職場・職業によっては戸籍姓しか認められない[2][5][6][7][8]。国家資格が必要な職業でも、医師など約半数の資格では旧姓使用が認められない[9]。2015年の時点で、民間での旧姓通称利用を認めている企業は65%にとどまる[5][9]。また、 運転免許証、印鑑登録証、健康保険証、パスポート、銀行口座などは旧姓では作ることができない[2][注 1]。さらには、 クレジットカードやパスポートと旧姓の不一致のために、海外のホテルなどの予約ができないことなどもある[3]。また、役員登記もできない。2015年より役員登記で旧姓併記が可能となったが、併記は中途半端で、より一層不便である[11][12]。特許申請は旧姓ではできない[13]。公証役場でのサインは旧姓は認められない[14]。
また、旧姓の通称利用に関しては、そもそも二重の姓を持ち、使い分けるのは不便である、との指摘もある[15][16]。他にも、姓が2つある生活はアイデンティティが2つに分裂するような感覚がある[16]、といった意見も見られる。
さらに、通称の利用は二つの名前の管理が必要であり企業の負担が大きくなる[17][18][9][19]、戸籍上の姓と職場での姓が違うために混乱が生じる[20]、などの指摘もある。
また、これらの通称利用の不便を解消する方法として、戸籍に通称を記載し、免許証やパスポート等にも通称を使用できるようにする徹底した通称使用制度も観念上は考えられなくはないが、選択的夫婦別姓による解決が合理的[2]、といった議論がある。
その他、通称の利用によって夫婦同姓を規定する民法による不利益が緩和される、といった意見があるが、そのようなことはない[21][22][23]。旧姓を通称利用したとしても、法律上ではなく通称というものは本人にとって嬉しいものではない[24]、といった議論・指摘がある。
これらの問題点から、選択的夫婦別姓制度を求める声もある[2]。
物品等では当該物を開発した製造者の名、製造者が命名した商品名、あるいは略称などが当該物の代名詞となり通称とされる場合が多い。例として「エレクトーン」が「電子オルガン」の通称として、「キャタピラー」が「無限軌道」の通称として広く用いられている。
景気の名称は、内閣府による景気基準日付の各景気の拡張(拡大)期間や後退期間によって、マスコミ等が命名して一般的に用いられているが公的に定まっていないため通称である。主な好景気の名称の例として「神武景気」・「岩戸景気」・「いざなぎ景気」・「バブル景気」(四大景気)などと呼ばれている。
正式地名でなくとも、かつての旧地名が慣習的に残ったり、特徴からくる俗称で呼ばれる場所や地域がある。著名な例として東京の羽田空港(正式名:東京国際空港)、吉原(同:台東区千束3-4丁目)や大阪のキタ(梅田、曽根崎周辺)、ミナミ(道頓堀・難波・千日前一帯)、飛田新地(西成区山王3丁目一帯)、「ジャンジャン横丁」(同:南陽通商店街)等。
ふたつ以上の路線をまたぐ鉄道路線の中には正式名称が存在せず、運転系統の通称のみで一般客に案内されている路線もある[25]。
道路名において、地元で呼ばれる名称。例として、東京都道401号麹町竹平線は通称「内堀通り」、神奈川県道2号東京丸子横浜線は、通称「中原街道」などと呼ばれる。
英語では「〜として知られる」「〜こと」という意味の表現「also known as」を略した、「aka」「a.k.a.」「a/k/a」という表記を使うことがある。
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リンク元 | 「慣用名」「trivial name」 |
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