出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/12/18 20:11:11」(JST)
超伝導(ちょうでんどう、英: superconductivity)とは、特定の金属や化合物などの物質を非常に低い温度へ冷却したときに、電気抵抗が急激にゼロになる現象。「超電導」と表記されることもある。1911年、オランダの物理学者ヘイケ・カメルリング・オンネスにより発見された。この現象と同時に、マイスナー効果により外部からの磁力線が遮断されることから、電気抵抗の測定によらなくとも、超伝導状態が判別できる。この現象が現れるときの温度は超伝導転移温度と呼ばれ、この温度を室温程度に上昇させること(室温超伝導)は、現代物理学の重要な研究目標の一つ。
金属は温度が下がると電気伝導性が上がり、逆に温度が上がると伝導性は減少する[1]。これは温度の上昇に伴って伝導電子がより散乱されるためである[2]。この性質から、絶対零度に向けて金属の電気抵抗はゼロになることが昔から予想されていた。このことを検証する過程で、超伝導は1911年にヘイケ・カメルリング・オネスによって発見された。超伝導となる温度(臨界温度、Tc)は金属によって異なり、例えばニオブは9.22 K、アルミニウムは1.20 Kとなる[2]。
特定の物質が超低温に冷やされた時に起こる現象は「超伝導現象」(superconductivity phenomenon)、超伝導現象が生じる物質のことは「超伝導物質」(superconductor)、超伝導物質が超伝導状態にある場合「超伝導体」と呼ばれる。
液体窒素の沸点である−196℃ (77 K) 以上で超伝導現象を起こすものは特に高温超伝導物質 (cuprate superconductor) と呼ばれる。
物質が超伝導状態になるということは「水が氷になるように、まったく新しい相へ移行すること(相転移)」を意味する。このため超伝導相に移り変わる温度を、(超伝導)転移温度という。超伝導に転移する前の相は常伝導という。
超伝導体には電気抵抗がゼロになる他にも、物質内部から磁力線が排除されるマイスナー効果によって「磁気浮上」現象を起こす。この時、磁力線の強度への応答の違いから第一種超伝導体 (type-I superconductor) と第二種超伝導体 (type-II superconductor) とに分類される。第二種超伝導体では磁力線の内部侵入を部分的に許すことで高強度の磁力に対してマイスナー効果が発生する。第二種超伝導体では、ピン止め効果によりゼロ抵抗を維持している。
これらの現象はいずれも、量子力学的効果によって起きていると考えられており、基本的なしくみはBCS理論によって説明される。なお、高温超伝導体はBCS理論では説明がつかず物理学の未解決問題の一つである。詳細は高温超電導の記事を参照。
日常では扱わない低温でしか発生しない現象で、その冷却には高価な液体ヘリウムが必要な事から、社会での利用は特殊な用途に限られていた。20世紀末にようやく上限温度(転移温度)が比較的高く安価な液体窒素で冷却できる高温超伝導体が相次いで発見されてから一般への認知も大きく進んだ。今後はさらに一般的な低温環境や室温で機能する実用的な超伝導体の発見が期待されている。
1911年、オランダのヘイケ・カメルリング・オンネスによって「純度の高い金属が容易に得られる水銀を液体ヘリウムで冷却していったとき、温度4.20 Kで突然電気抵抗が下がり4.19 Kではほぼゼロの10万分の1Ω以下になる現象」が報告された。ヘリウムの液化と超伝導の発見によって1913年にノーベル物理学賞が授与された[3][4]。
1933年にドイツのヴァルター・マイスナーによって超伝導体が外部磁場を退けるマイスナー効果が発見された。これにより、超伝導体は完全導体と違うことが決定付けられた。1935年にロンドン兄弟(フリッツ・ロンドン、ハインツ・ロンドン)が発表したロンドン方程式により、マイスナー効果は理論的に説明された。
1950年ヴィタリー・ギンツブルグとレフ・ランダウが、上記ロンドン理論より一歩進んだ現象論であるギンツブルグ-ランダウ理論を発表した。この理論には、超伝導の程度を表すオーダーパラメータが使われた。
1953年に最高転移温度17 Kを示すニオブスズ (Nb3Sn) が発見された。これは結晶構造からA15型超伝導体とよばれた。
1957年に発表されたジョン・バーディーン、レオン・クーパー、ジョン・ロバート・シュリーファーらのBCS理論により、超伝導現象の基本的なメカニズムが解明された。
1980年代に発見された銅酸化物高温超伝導体や、21世紀になって見つかった二ホウ化マグネシウム (MgB2) を実用化する試みが続いている(高温超伝導を参照)。より高い温度で超伝導を起こす物質を探すなど、最初の発見から100年近く経った2009年現在でも超伝導についての研究が盛んに行なわれている。
超伝導現象の発見以降、多くの超伝導を示す元素や化合物が発見されている。アルカリ金属、金、銀、銅などの電気伝導性の高い金属は超伝導にならない。単体の元素で最も超伝導転移温度が高いものは、ニオブの9.2 K(常圧下)である。常圧下において超伝導を示す金属は多いが、そうでない金属、あるいは非金属元素でも高圧下で金属化と同時に超伝導を示すものがある。また、重い電子系における超伝導や、高温超伝導、強磁性と超伝導が共存する物質など従来の超伝導物質と性格の異なるものも発見されている(高温超伝導を参照)。
超伝導現象は、超高感度の磁気測定装置 (SQUID) や医療用核磁気共鳴画像撮影 (MRI) 装置など、測定用に超伝導電磁石を使用する用途においては既に広く実用されている。しかし、これらの応用例でも冷却に高価な液体ヘリウムが用いられており、普及の大きな障害となっている。 産業用途では実用化の技術開発が進んでいる超伝導モーターが最も期待されている。電力貯蔵の用途では瞬間停電を補償するために高い出力、短い応答速度が着目され、実用化されるに至っているが、現状では大電力を貯蔵するには至らずバッテリーなどよりコンデンサーに近い。 また送電線については、生み出された電力のうちの数%は電気抵抗による送電ロスによるものとされており、室温超伝導が実現されれば、このロスを減らす事のできる画期的なテクノロジーとして期待されている。
以下に利用例を示す。
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