出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/07/04 16:07:08」(JST)
資格(しかく、英:Qualification、Certificate)は、ある行為を行うために必要若しくは相応しいとされる地位や立場をいう[1]。
世間一般には組織内での地位を言う。さらに仕事上任務に就くために必要な条件として公にみとめられる能力を指す[2]。
今日、社会一般に言う資格とは様々な形で使用されている。慣用句として用いられる場合には、親ないし保護者としての責任を果たさない人物に「親の資格がない」と言ったり、およそ説得力ない発言をする人に「あなたに(それを)言う資格はない」などと言ったりするように、個人や組織の言動に伴う説得力や責任能力を正す場合に用いられることが多い[3]。また、社会制度上の意味で資格という概念が用いられる場合もあり、その用例については主として以下の3つに類型化することができる。
専門資格は主に特定の職業に就業したり、専門能力を証明するために取得するもので、その認定機関は国、自治体、民間法人、国際団体とそれぞれの属性により、国家資格、公的資格、民間資格、国際資格などと称される[4]。 また、専門資格を職業資格という場合もあり、特定の職業に従事する上で取得が求められる資格を指す場合に用いる。また、非職業資格という場合には必ずしも就業する上で取得は必須ではないものの、経歴上、一定の専門性を証明するのに資する資格をいう[5]。
加えて、民法上の法人の社員(会員)の身分などを資格という場合がある[6]。誰でも発行できる。
また、特定の試験の受験や、就職等の採用資格、その他、様々な催事への応募を容認される応募資格または参加資格、学校の「卒業資格」や「修了資格」などのように学歴を資格として形容する場合もある[7]。
これら三つの資格はそれぞれ別個の概念であるが、任用資格などのように専門資格たる国家資格としての意味と資格条件としての意味を有するなど複数の意味合いを持つものがある[8]。また、専門資格、身分資格及び特定の修了資格のうち、肩書きとして使用できる資格名称を「資格称号」という。
以下、本節では特に職業資格・専門資格について解説する。代表的なものは、国家資格、公的資格、民間資格などである。これは、試験に合格した者に与えられる地位だけでなく、法的地位や経済状況、身体情況などの基準を満たし、入会資格、入場資格、入札資格、発言をする資格など、社会の多様な場面で、行為に相応しいと認める条件について使用される言葉である。 これらの内、法律、政令、省令等により国家から付与された地位は国家資格にあたる。また、条例等により都道府県等から付与された地位は都道府県資格等にあたる。これらの資格は、後述する業務独占資格、名称独占資格、必置資格等、法律上特別な扱いを受ける[9]。
国家資格とは、一般に、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明されるものとされる[10][11]。また資格の制度に法的な裏付けが存在し、そこ(根拠法)に資格付与方法・資格付与基準についての明確な記述があり、中央省庁または都道府県レベルの地方自治体が所管する資格を指す[12]。例えば、明治維新により近代国家及び国民の権利を保護するために公証人、司法書士、弁護士が明治5年に創設され、その後、国家の発展に伴い様々な国家資格が整備された。資格によっては年齢、学歴、実務経験等による制約が課されることもある。 都道府県や市町村等の定めた条例に基づいて与えられる資格は国家資格ではなく公的資格となるため、その地方自治体内でのみ通用する。例として、ふぐ調理師は取得した都道府県内のみにおいて有効な業務独占、名称独占資格である。
一部の国家資格は行政法学上の「許可」に該当し、一般人には禁止されている行為を特に行うことが許されるものがある(建築士、薬剤師)。また、業として行うことのみが禁止されている行為を許されるものもある(医師、弁護士など)。これらの資格は、業務独占資格と呼ばれる。
資格の付与についての法律上の用語は一定しておらず、「免許」「許可」などの用語が使用されるが、行政法学上は「許可」「公証」などに該当する。
なお実際の試験事務は、法に基づきその権限を委託された地方公共団体や民間団体などが所管することもあるが、それにより国家資格でなくなるということはない。
また特別教育や技能講習を受けることにより、資格が取得できるものもある。機械装置などの運転や特定の作業に関するものが多い。これらについては、特別教育による資格一覧および技能講習による資格一覧を参照のこと。
資格取得者以外の者にその資格の呼称の利用が法令で禁止されている資格。業務独占資格は名称独占資格でもあることが多いが、単に名称独占資格と言った場合には業務独占性の無いものを指す。
ある事業を行う際に、その企業や事業所にて特定の資格保持者を必ず置かなければならない、と法律で定められている資格。業務独占資格が必置資格としての性質を併せ持つ場合もある。
国家資格は、狭義では上記の業務独占、名称独占、必置のいずれかの性質もしくは複数の性質に当てはまるものを指すが、広義では何らの資格も与えられない登録制度(政令や省令によって定められたもの)を含める場合がある。
商工会議所法に基づき日本商工会議所や各地商工会議所が主催する検定試験[13]、国の基準に基づいた民間技能審査事業認定制度により省庁から認定を受けている検定試験(現在は制度が廃止されている[14])、省庁から通達により後援を受けている検定試験、公益法人が法律とは無関係に実施している検定試験、地方自治体が法律と無関係に実施している検定試験など、何らかの理由により公的性質を帯びている国家資格ではない資格。ただ、民間資格との境界はあいまいである。たとえば漢字能力検定は、1992年に文部省認定を受けるとともに実施団体が財団法人になっており、この時点で公的資格になったことは疑いがない。その後、2005年に民間技法審査事業認定制度の廃止により「文科省認定」から「文科省後援」になり、2009年には不祥事により文科省から後援を取り消され、2013年に実施団体が公益財団法人となったが、いつのタイミングで公的資格から民間資格になったのか、それとも、公益法人が実施しているので未だ公的資格なのかは議論が分かれるところである。
民間団体や個人等が、自由に設定でき、独自の審査基準を設けて任意で与える資格。級別に水準を示す検定とするものもある。法令で規定されたものではないため、業界によっては一定の能力担保がされていると認知されている資格から、「資格商法」で与えられるような社会的な評価のほとんどないものや、企業が自社の活動のために従業員に対して付与するも、社外では通用しない社内資格(内部資格)まで、さまざまなものが存在する。
また、日本国内だけでなく海外でも試験が実施され、国際的な基準によって認定される資格(ベンダー資格など)が存在することも特徴の一つである。下節の国際資格も参照。
解釈にもよるが、落語における前座・二つ目・真打、武道における段位・錬士・教士・範士、芸道における名取・師範代・師範、大相撲の親方などについても、一定の称号・免状や経験がなければ弟子を取れない、芸名(大相撲では四股名)を名乗れない、弟子の芸名を命名できない、など各々の業界でルールが存在しており、民間資格の一種として見ることができる。
国際資格とは、主に下記4種類のいずれかの意味で使われる言葉であり、文意から判断できない場合には大変曖昧な言葉となる。
法令上で「○○の有資格者」の語は、「○○の資格を有する者」の意で使われる。しかし、「○○となる資格を有する者」(まだ○○の資格は取得していない)を省略したものとして「○○の有資格者」「○○有資格」等の語が使われる場合がある。こういった用法は誤解を招くばかりでなく、名称独占資格である場合は違法行為となり刑事罰や行政上の処分が課される可能性があるため、注意が必要である。例えば、行政書士試験に合格しても、事務所を設け登録しなければ行政書士ではないため、「行政書士有資格者」等の表示をすれば行政書士法違反となる。また、名称独占資格ではなくても、その名称を使用することにより業務を行う権限があると認識される場合には、有資格者等の表示が制限される場合がある。例えば宅地建物取引士は、試験に合格し実務講習等の要件を満たして宅地建物取引士登録を受けた段階で宅地建物取引士となるが、取引士証の交付を受けその有効期間内でなければ業務を行うことができないため、取引士証をもって有資格者とされる。
一方的な電話による資格取得にまつわる教材などの販売にかかわるトラブルが多い。また、架空の資格取得をもちかけ金銭を詐取する例や民間資格が将来、国家資格になる予定だと諭して受講などを迫るケースもある。これを資格商法または、士商法(サムライ商法)という。
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