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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/11/08 05:37:26」(JST)
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皮膚の一部に胎脂が付着している生まれたばかりの子ども
胎脂(たいし、英: Vernix caseosaあるいはvernix)は、ヒトの新生児の皮膚を覆っているロウ様あるいはチーズ様の白色の物質である。胎脂は妊娠18週齢あたりに子宮の中の胎児上に発達し始める。
ラテン語で、vernixはワニス、caseosaは「チーズ様の」の意。
目次
- 1 特徴
- 1.1 組成
- 1.2 形態
- 1.3 物理学的性質
- 1.4 生物学的性質
- 2 分泌
- 3 機能
- 4 ギャラリー
- 5 脚注
- 6 推薦文献
特徴
組成
胎脂の組成は非常に多様であるが、主に皮脂、胎児の皮膚から剥がれ落ちた細胞、抜け落ちた産毛から成る[1]。胎脂の乾燥重量の12%は分岐鎖脂肪酸含有脂質[2]、コレステロール、セラミドである。満期産児の胎脂は早期産児のものと比べて、スクアレンが多く、ワックスエステル/ステロールエステル比が高い[1]。
胎脂、角質層、(脂質を分泌する)皮膚表面の脂質成分の比較[3][4]
脂質 |
胎脂 |
角質層 |
皮膚表面の脂質 |
コレステロールエステル |
30.6 |
- |
3.0 |
セラミド |
17.9 |
40.0 |
- |
トリグリセリド |
15.1 |
- |
41.8 |
コレステロール |
7.5 |
25.0 |
- |
遊離脂肪酸 |
6.5 |
25.0 |
18.4 |
リン脂質 |
6.1 |
- |
1.5 |
ワックスエステル |
6.0 |
- |
20.3 |
スクアレン |
4.0 |
- |
12.2 |
ワックスジエステル |
3.7 |
- |
- |
セレブロシド |
2.4 |
- |
- |
コレステロール硫酸 |
0.3 |
10.0 |
- |
アルカン |
- |
- |
2.8 |
胎脂のアミノ酸組成[4][5]
アミノ酸 |
% |
アスパラギン |
34.7 |
グルタミン |
22.7 |
プロリン |
14.9 |
システイン |
7.9 |
アラニン |
7.4 |
ロイシン |
5.3 |
バリン |
3.7 |
メチオニン |
3.4 |
形態
胎脂の細胞は通常多形性あるいは卵形で核を持たない。核のかすかな痕跡が頻繁に観測される。胎脂の角質細胞は接着斑を欠き、これによって成熟した角質中の角質細胞と区別される[6]。角質細胞の厚さは1-2 μmである。これらの細胞は成熟角質層中に存在する典型的なラメラ構造を持たないアモルファス脂質の層で覆われている[4]。
物理学的性質
胎脂は一様に分布しておらず、むしろ細胞スポンジの形で存在している。胎脂の臨界表面張力は39 dyne/cmである[7]。その水分(82%)にもかかわらず、胎脂は非極性である。これらの特徴は、胎脂の「防水」機能を示しており、これによって出生直後の体温の低下が防がれる[4]。
生物学的性質
胎脂は胎児に電気的な遮蔽を提供する[8]。これは成長中の胎児の体のおそらく重要な側面である[4]。初期の科学的研究では、出生直後に胎脂が除かれると新生児における蒸発による放熱が増加することが示されている[9]。しかし、より新しい報告では、胎脂がそのまま残された新生児の表面と比べて、出産直後の皮膚表面の洗浄が蒸発性放熱を減らすことが確かめられている[10]。
分泌
胎脂中の皮脂は妊娠20週あたりに皮脂腺によってin utero(子宮内で)産生される。胎脂は主に満期新生児で見られるが、未熟および過熟出生は一般的に胎脂を欠く[1]。過期落屑(42週を超えた新生児における皮膚のはがれ落ち)は胎脂の損失によるものであると考えられている。
機能
胎脂は、乳児の皮膚の保湿や産道の通過を容易にするなどの複数の役割を果たしていると考えられる。胎脂は熱を逃さないようにしたり、繊細な新生児の皮膚を環境ストレスから防御する役割を果たす[4]。乳児の感染からの防御における胎脂の化学的役割を支持する証拠はほとんどないが、胎脂は細菌の移動への物理的障壁を形成しているかもしれない[1]。
ギャラリー
-
-
-
皮膚を胎脂と血で覆われた出生直後の赤ちゃんの顔の拡大写真。
脚注
- ^ a b c d Schachner, Lawrence A.; Hansen, Ronald C. (2003). Pediatric dermatology. St. Louis: Mosby. pp. 206–7. ISBN 978-0-323-02611-6.
- ^ Ran-Ressler, Rinat R; Devapatla, Srisatish; Lawrence, Peter; Brenna, J Thomas (2008). “Branched Chain Fatty Acids Are Constituents of the Normal Healthy Newborn Gastrointestinal Tract”. Pediatric Research 64 (6): 605–9. doi:10.1203/PDR.0b013e318184d2e6. PMC 2662770. PMID 18614964. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2662770.
- ^ Sumida Y, Yakumaru M, Tokitsu Y, et al. Studies on the function of Vernix caseosa: The secrecy of Baby's skin. Cannes, France: International Federation of the Societies of Cosmetic Chemists 20th International Conference; 1998. pp. 1–7.
- ^ a b c d e f Hoath, Steven (2003). Neonatal skin : structure and function (2. ed., rev. and expanded. ed.). New York [u.a.]: Dekker. pp. 193–208. ISBN 0-8247-0887-3.
- ^ Baker, SM; Balo, NN; Abdel Aziz, FT (Mar–Apr 1995). “Is vernix caseosa a protective material to the newborn? A biochemical approach.”. Indian journal of pediatrics 62 (2): 237–9. doi:10.1007/bf02752334. PMID 10829874.
- ^ Pickens, WL; Warner, RR; Boissy, YL; Boissy, RE; Hoath, SB (Nov 2000). “Characterization of vernix caseosa: water content, morphology, and elemental analysis.”. The Journal of investigative dermatology 115 (5): 875–81. doi:10.1046/j.1523-1747.2000.00134.x. PMID 11069626.
- ^ Youssef, W; Wickett, RR; Hoath, SB (Feb 2001). “Surface free energy characterization of vernix caseosa. Potential role in waterproofing the newborn infant.”. Skin research and technology : official journal of International Society for Bioengineering and the Skin (ISBS) [and] International Society for Digital Imaging of Skin (ISDIS) [and] International Society for Skin Imaging (ISSI) 7 (1): 10–7. doi:10.1034/j.1600-0846.2001.007001010.x. PMID 11301635.
- ^ Wakai, RT; Lengle, JM; Leuthold, AC (Jul 2000). “Transmission of electric and magnetic foetal cardiac signals in a case of ectopia cordis: the dominant role of the vernix. caseosa.”. Physics in medicine and biology 45 (7): 1989–95. doi:10.1088/0031-9155/45/7/320. PMID 10943933.
- ^ Saunders, Colman (1 August 1948). “The vernix caseosa and subnormal temperature in premature infants.”. The Journal of obstetrics and gynaecology of the British Empire 55 (4): 442–444. doi:10.1111/j.1471-0528.1948.tb07409.x. PMID 18878967.
- ^ Riesenfeld B, Stromberg B, Sedin G. The influence of vernix caseosa on water transport through semipermeable membranes and the skin of full-term infants. Neonatal Physiological Measurements: Proceedings of the Second International Conference on Fetal and Neonatal Physiological Measurements, 1984:3–6.
推薦文献
|
ウィキメディア・コモンズには、胎脂に関連するカテゴリがあります。 |
- Sarkar, Rashmi; Basu, Srikanta; Agrawal, R K; Gupta, Piyush (2010). “Skin Care for the Newborn”. Indian Pediatrics 47 (7): 593–8. doi:10.1007/s13312-010-0132-0. PMID 20683112. http://www.indianpediatrics.net/july2010/593.pdf.
- Visscher, Marty O; Narendran, Vivek; Pickens, William L; Laruffa, Angela A; Meinzen-Derr, Jareen; Allen, Kathleen; Hoath, Steven B (2005). “Vernix Caseosa in Neonatal Adaptation”. Journal of Perinatology 25 (7): 440–6. doi:10.1038/sj.jp.7211305. PMID 15830002.
- Haubrich, Kathleen A. (2003). “Role of Vernix Caseosa in the Neonate: Potential Application in the Adult Population”. AACN Advanced Critical Care 14 (4): 457–64. doi:10.1097/00044067-200311000-00006. PMID 14595204. http://meta.wkhealth.com/pt/pt-core/template-journal/lwwgateway/media/landingpage.htm?issn=1079-0713&volume=14&issue=4&spage=457.
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 三村 邦雄,大塚 博光,荻原 哲夫,会沢 芳樹,雨宮 章
- 日本産科婦人科學會雜誌 52(2), "301(S-225)", 2000-02-01
- NAID 110002173149
Related Links
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- 頭や顔にもべったり付いているので、驚くかもしれませんが、胎脂は新生児の肌を守る バリアです。胎脂は白っぽい ... 胎脂をいつまで落とさないのか、どちらが良いのかは 解明されていませんが、新生児の肌は最初は胎脂が守ってくれているのです。 やがて 胎脂 ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- neonate
- 同
- 新産児 newborn
- 関
- 胎児 fetus,乳児 infant
- neonatal, newborn, newborn animal, newborn infant
定義
- 早期新生児期:出生後1週未満
- 後期新生児期:7日から28日未満
出生後にみとめられるもの
- 098G051
- 吸啜反射:出生時より
- 胎便:出生直後-3日頃
- 生理的黄疸:出生後2-3日に出現。出生後4-6日にピーク ← 出生時~出生後24時間内の黄疸は病的
- 生理的体重減少:出生後3-4日で最大。
- 臍帯の脱落:出生後5-7日
解剖
生理
腎機能
免疫
- 細胞性免疫>液性免疫
- 在胎26-33週に移行した母体のIgGによる受動免疫で感染から防御している。
- 出生後5ヶ月で消失
血液
- Ht:50-55%:生後細胞外液の喪失に伴い上昇、8日で生後の値にもどり、3ヶ月に最も低くなる。
- Hb:17-19g/dL
- 白血球:9,000-30,000/mm3
- 血小板:10-28万/mm3 (SPE.74)
身体所見
身体の大きさ
- QB.P-329
- 前後径、肩幅:11cm
- 大横径、小斜径、殿幅:9cm
- 体重:3300g
- 頭囲:33cm
- 胸囲:33cm
呼吸器
- SPE.78
- 腹式呼吸
- 呼吸数:40-50/分 (早産児ではこれより早く、5-10秒の呼吸停止を挟む呼吸)
- 聴診:呼吸音は胸壁が薄いためよく聴取され、高調である。
経過観察できる所見
- QB.O-76改変
診察箇所と疑われる疾患
- SPE.77
出生体重による分類
- 高出生体重児 high birth weight infant
- 巨大児 giant baby : 4000g以上
- 超巨大児 exceptionally large baby : 4500g以上
- 正出生体重児 normal birth weight infant :2500g以上、4000g未満
- 低出生体重児 low birth weight infant : 2500g未満
- 極低出生体重児 very low birth weight infant : 1500g未満
- 超低出生体重児 extremely low birth weight infant : 1000g未満
身長、体重による区分
- SPE.48
- 日本での定義/体重のみで評価
- light for gestational age infant / light for dates infant : 体重が10パーセンタイル未満の児
- apropriate for gestational age infant AGA infant : 体重が10パーセンタイル以上の児 かつ 体重が90パーセンタイル未満の児
- heavy for gestational age infant :体重が90パーセンタイル以上の児
- 参考1
- 体重による評価
- light for date LFD
- appropriate for date AFD
- hearve for date
- 参考1
- 身長と体重による評価
- small for date SFD / small for gestational age SGA
- large for date? LFD? / large for gestational age? LGA?
成熟新生児の身体所見
- 参考2 G10.M235 SPE.78 など
- 大泉門は開存(4x4cm)しており、小泉門は小さい
- 産瘤(経腟分娩による場合)
- 頭頂部方向に長く変形(児が後頭位であって、経腟分娩により出生した典型的な場合)
- 骨重積(産瘤、頭部変形、骨重積は2日程度で戻る)(経腟分娩による場合)
- 頭髪の長さは2cm前後
- 耳介の巻き込み
- 面疱は鼻に限局
- うぶ毛は背中、肩甲部に限局 ← 未成熟の場合、うぶ毛は多い
- 皮膚は厚く、血管は透けない
- 足底にしわを認める ← 未成熟の場合、しわは少ない
- 四肢に浮腫を認めない
- 関節屈曲部に胎脂が残る
新生児と疾患
在胎週数と疾患
参考
- 1. C.産婦人科検査法 14.胎児発育・児体重推定 - 日産婦誌59巻6号
- http://www.jsog.or.jp/PDF/59/5906-168.pdf
- http://www.hogarakana.jp/study/index.php?ID=55
国試