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精神疾患(せいしんしっかん)とは、外因性あるいは内因性によるストレス等から脳(脳細胞あるいは「心」)の機能的・器質的障害を起こすことによって引き起こされる疾患をいう。統合失調症や躁うつ病といった重度のものから、神経症(この用語は正式な疾患名としては用いられなくなりつつある)、パニック障害、適応障害といった中、軽度のものまでの様々な疾患を含む。また、精神の変調が髄膜炎、内分泌疾患などの身体疾患によって引き起こされる場合もある。いわゆる広義の精神疾患については「概要」を参照のこと。
精神疾患の治療を担当するのは主に精神科・神経科であるが、患者の症状や状況によっては内科(心療内科が多い)など、他の科で診察、治療が行われている場合もある。
精神疾患のデータ | |
ICD-10 | F00-F99 |
統計 | 出典:[1][2] |
世界の患者数 | 約450,000,000人 |
日本の患者数 | 約3,230,000人 |
学会 | |
日本 | 日本精神神経学会 |
世界 | 世界精神医学会 |
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目次
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精神疾患は、世界保健機構 (WHO) による国際疾患分類(ICD-10)や、アメリカ精神医学会による統計的診断マニュアル (DSM-IV)において、網羅的に分類されている。このうち、本項では医療の領域で治療の対象となる主な疾患について記述している。知的障害やパーソナリティ障害は、いわゆる広義の精神疾患(DSM-IVのII軸)に含まれるが、知的障害は、療育・教育・福祉などの領域で対象とされる場合が多く、パーソナリティ障害は犯罪を行った際に犯罪精神医学や司法精神医学の領域で問題となる場合が多い。
妄想に執着して生活に支障をきたし、他者を巻き込むことも多く、心的・内向的には自閉症やパニック障害など、物的・外向的には自傷他害行為あるいは自殺にまで及ぶこともある。第二次世界大戦以前は先進国を含む多くの国家で迫害の対象であったが、現在そのような政策を取っている国は稀である。
心因・外因・内因の3つに分ける。複数の原因によることも多い。
過度のストレスなどの精神的原因。反応性うつ病、不安神経症などを起こす。
脳や他の身体部位に、器質的に加えられた原因。感染(例えば、単純ヘルペスや麻疹ウイルスなどによる脳炎など)・脳卒中・代謝異常(尿毒症・肝性脳症や先天性代謝疾患など)・薬物乱用(特にアルコール[1]・覚醒剤[2])などが外因に相当する。
脳の器質的要因と思われるが、明確には不明の原因。従来、統合失調症や躁うつ病は内因性精神疾患といわれてきた。(マウスレベルの研究であるが、統合失調症は海馬の奇形が原因ではないかと言われている。)
ヒトの精神機能には、意識、知能、記憶、感情、思考、行動など幾種類かの側面がある。精神疾患ではこれらのうち1つまたは多種類が障害されることで多彩な症状を呈する。以下、いくつかの分類に従って精神症状を記述するが、他にも沢山の症状があり、また同じ症状でも個人差が大きく、○×式の症状記録では精神障害を正しく判断することはできない。
「意識」と言う場合、2つの使われ方がある。1つ目は「自己を意識する」「考えていることを意識する」などと言う場合の、自己の主体としての意識であり、2つ目は「意識がはっきりしない」「意識レベル」などと言う場合の意識である。医療の臨床で「意識障害」と言う場合は後者をさす。(「意識障害」参照)。
意識には「清明度」、「広がり」、「質的なもの」の三要素があるとされている。
「清明度」が障害されている場合、意識混濁といい、その程度により傾眠、昏睡という。「広がり」が障害されている場合、意識狭窄という。催眠状態、解離状態などで起こりうる。意識の質が変化している場合、意識変容という。朦朧(もうろう)状態、アメンチア等とも言う。せん妄、酩酊などで起こりうる状態である。
知的機能とは、脳で様々な情報を適切に処理する能力のことである(知能参照)。知能が障害される疾患の代表は精神遅滞、痴呆であるが、その他の精神疾患においても様々な程度に知的機能が低下することがある。例えばうつ病でも、うつ状態の時は計算や記憶意などの機能が一時的に低下する。ごく限局的な脳梗塞によく見られる病態に、失認・失行・感覚性失語・運動性失語がある。
詳細は「記憶障害」を参照
記憶とは、様々な情報を長期間または短期間、脳内に保存し再生する機能である。記銘、保持、追想、再認を記憶の四要素という。記憶は、上に述べたような知的機能や、後述の思考などのベースになる機能であるため、相互に重複する部分がある。痴呆性疾患、コルサコフ症候群などの変性疾患のみならず、うつ病、統合失調症などでも一時的、あるいは長期間の記憶障害が起こることがある。解離性障害でも健忘がみられることがある。
知覚とは、外界の情報を認識する機能のことである。
知覚系神経が過剰な活動を示したり、知覚情報の発生源を誤認したりすると錯覚や幻覚などの症状を生じる。錯覚と幻覚は似ているようだが錯覚はある物を間違って捉える事であるのに対して、幻覚は無い物をあると捉えるという点で違いがある。錯覚は健常者でも日常的に起こる一時的現象であるが、幻覚は精神疾患の診断基準のひとつとなる。幻覚には幻視、幻聴、幻嗅、幻味、体感幻覚などがある。特殊なものに、四肢を切断した患者において、喪失したはずの四肢を感じたりする幻肢がある。これが痛覚である場合は幽霊痛(phantom pain)と称する。
また、眼球や眼神経は正常であるにも関わらず心因性に物が見えなくなる心因性盲、痛みの原因となる身体的疾患がないのに痛みを感じる疼痛性障害などの症状も存在する。
思考の障害には、思考過程の異常と思考内容の異常、思考の表現の異常がある。
思考過程の異常は、考える道筋や脈絡そのものが障害されている場合を指し、思考途絶(考えている途中に、突然内容を忘れたり考えが止まってしまう)、思考制止(考える力がなく、思考が進まない)、思考散乱、滅裂思考(思考がまとまらない)、観念奔逸(考えが次々湧き出して脱線してしまう)、思考保続(一旦考えたことが、その後の思考にも繰り返し現れる)、思考迂遠(結論を導き出すまでに脱線し時間がかかる)などがある。
思考内容の異常は妄想がある。妄想の内容によって被害妄想、誇大妄想、貧困妄想などに分類される。
思考の表現の異常には、強迫(~をしなくてはならない)思考、支配観念がある。
感情の異常は、様々な精神疾患でみられる。代表的なものはうつ状態においてみられる抑うつ気分や、躁状態における爽快気分であろう。他に感情鈍麻、興奮、不安、怒り、恍惚、両価性などがあげられる。
ヒト以外の動物においては、精神症状は行動を介して発現する。ヒトの場合、精神症状を評価する場合には言語を重視しがちであるが、ヒトにおいても精神と行動は密接に関連している。例えば、典型的なうつ病では、摂食、排泄、睡眠、性行為などの基本的機能が障害される。また別の疾患では暴力、多量飲酒などの衝動性として現れることもある。他にも以下のようなものがある。
摂食行動の障害として、うつ状態における食欲低下がまず挙げられるが、摂食障害では拒食や過食などの食行動の異常がみられる。
睡眠の障害としては不眠(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など)、過眠、睡眠リズムの障害などがある。
性の障害として、性欲低下、性交疼痛症、陰萎などのほか、性対象の異常(自己性愛、小児性愛、フェチなど)、性目標の異常(露出症、窃視症、サディズム、マゾヒズム)などがある。
以下の(Fxx)分類はWHO国際疾病分類第10版(ICD-10)に基づく。
痴呆性疾患 (F00-F03)、コルサコフ症候群、頭部外傷後遺症など、脳の大きな(=肉眼で分かるほど)病変による精神疾患のことをさす。
アルコール (F10)、アヘン (F11)、大麻 (F12)、鎮静薬または催眠薬 (F13)、コカイン (F14)、覚醒剤・カフェイン (F15)、幻覚薬 (F16)、タバコ (F17)、揮発性溶剤 (F18)砂糖などの精神作用物質に関連した精神疾患をさす。依存症、乱用、中毒などに分けられる。アルコール依存症、薬物依存症などがある。
気分障害(感情障害とも言う)とは主として気分が障害されるもので、
が挙げられる。
米国精神医学会は精神疾患の病像を統計的に分類し、「精神障害の診断と統計の手引き」(DSM、Diagnostic and Statistical Manual)として纏めた。現在これは第4版の用語修正版(DSM-IV Text Revision)に版を重ねており、世界でも広く使われている(2013年をめどに改訂され、DSM-5となる予定)。
これまでは精神科専門医による問診でしか、診断することができなかったが、光トポグラフィーによる脳血流検査による診断やエタノールアミンリン酸による血液診断法が開発されてきた。
精神疾患は、ストレスや不安から睡眠不足を起こしたり防衛機制が上手く働かなかった場合や脳内麻薬の異常分泌からも発症する。また、精神疾患に偏見や差別的な見方を持っている人もいるため、それがさらに患者のストレスとなり、引きこもり内向的になって悪化させることもあるため、家族など周囲の人間が理解を示すことも必要である。
治療法は大きく分けて、身体的治療(薬物療法(向精神薬を参照)、電気けいれん療法など脳に直接働きかけるもの)、言語や行動を介した治療法(精神療法や認知行動療法、作業療法)、社会的な環境調整の3つに分けられる。疾患の種類や重症度により治療法は異なるため、専門家の意見を仰ぐことは当然として、かといって決して専門家へ丸投げをせず専門家・患者・家族などの周囲の人間がいかに協働するかが大切である(患者が現実と妄想を交えて事実を捻じ曲げる等、専門家が必要な情報を得られず治療法を誤り長期化することもある)。
ストレスの緩和は症状の緩和に繋がる。妄想に囚われないよう五感を刺激したり現実生活に適用させたり(SST)、音楽療法、運動療法、ユーモア療法などが活用されることもある。精神障害者自身による音楽活動、病院でのユーモア活動なども生きる喜びを取り戻したり他者との連帯感を生み出すなどの効果があり、高く評価されている[要出典]。また、精神疾患を予防したり、精神疾患が寛解した後の再発防止のストレス管理も重要である。
精神疾患の治療などへの社会的支援がある(精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、障害年金、障害者自立支援法など)。詳細は精神障害者の項を参照のこと。
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