出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/05/14 10:04:26」(JST)
湿度(しつど、humidity)とは、大気中に含まれる水蒸気の量や割合のこと。数種類あるが、通常は相対湿度を意味する。
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一般的に相対湿度(relative humidity)とは、ある気温で大気中に含まれる水蒸気の量(重量絶対湿度)を、その温度の飽和水蒸気量(重量絶対湿度)で割ったもの(単位:%)である。
相対湿度100%で大気中の水蒸気量が飽和となり、結露を生じる。また、そのときの温度を露点温度という。
相対湿度の値は0%以上100%以下の値をとる。ただ、観測値が0%に近づくことはあるが、日本などの湿潤地域では0%になることはほぼない。日本では過去1度だけ、0%を観測した例がある(鹿児島県屋久島、1971年1月19日の記録)[1]。また、気象観測上、1日のうち最も低かった湿度の値を最小湿度として記録し、統計をとっている。一方、最大湿度は100%に近い値になることが珍しいものではなく、統計は取られていない[2]。また、青函トンネル内は常に100%である。
相対湿度の式の分母となる飽和水蒸気量は、気温が高くなるほど多くなる。しかも、気温が上がるにつれて、一定温度上昇当たりの増加量が増える。よって、同じ湿度(%)でも、気温が高いほど空気中の水蒸気量は多いことになる。
乾湿計の乾球温度と湿球温度の温度差から表により求めることもできる。毛髪の性質を利用した毛髪湿度計など、伸縮性の素材を用いた湿度計もあるが、誤差や時間差が大きいのが欠点である。このほか、気象観測用に電気式の湿度計が用いられる。また、精密観測用には、露点計も用いられる。
厳密には下式の通り、相対湿度RHとは、飽和水蒸気圧に対する水蒸気圧の分圧、と定義されている[3]。
は水蒸気と空気との混合空気における相対湿度。
は混合空気における水蒸気圧。
はその気温における、混合空気の飽和水蒸気圧。
ただし、この値は重量絶対湿度基準における、飽和水蒸気量に対する水蒸気量の比に近似するので、一般的には求めやすい重量絶対湿度のほうを用いる。
絶対湿度(absolute humidity)には、容積絶対湿度と重量絶対湿度(混合比)がある。記号はχである。国際的には絶対湿度と言えば容積絶対湿度のことであるが、日本では空気調和に関係する分野で重量絶対湿度が「絶対湿度」とされているので、注意が必要である。
容積絶対湿度(volumetric humidity)とは大気の単位容積に含まれる水蒸気の量を重量で示したもの(単位:g/m3)。飽和水蒸気量ともいう。
水蒸気の質量を、大気の容積をとすると、容積絶対湿度は次のように表される。
水蒸気の状態方程式から導出すると、以下のような式で表される[4]。
上式において、e(T)は水蒸気圧(hPa)、Tは気温(℃)。
水蒸気を含む空気を湿り空気といい、湿り空気から水蒸気を除いた空気を乾き空気(dry air)という。 乾き空気の重量[kg]に対して湿り空気中に含まれる水蒸気(water vapor)の重量が[kg]であるとき、その比を重量絶対湿度(Specific humidity)といい、単位を[kg/kg(DA)]で表す(DAはdry airの略)。
空気調和工学では、湿り空気線図などで一般的に用いられる。この重量絶対湿度は、混合比 (mixing ratio, humidity ratio)とも呼ばれている。
地球上の各地における湿度は、各地の降水量や気温に大きな影響を受ける。降水量が多い地域は湿度が高く、気温の低下は飽和水蒸気量の低下につながるので絶対湿度は下がる。また、湿度は季節によっても大きく変化し、雨季には高くなり、乾季には低くなる。
日本では一般に夏季に湿度が高く、冬季に湿度が下がる。これは、夏湿冬乾である温帯湿潤気候や温帯夏雨気候、冷帯湿潤気候の地域などでも同様である。一方、夏乾冬湿である地中海性気候の地域では、冬季に湿度が上がり、夏季に湿度が低くなって山火事が多発する。
一日の変化は、ほぼ気温に依存し、昼間は低下し、夜間に気温が下がるにつれて湿度は上がる。
また、都市化により、湿度は長期的に低下する傾向がある。東京(大手町)では、20世紀の間に年平均相対湿度が20%程度低下した[2]。土壌などの吸湿性のある地表が少なくなった影響とみられている。
生物の成分の大部分は水であるから、湿度はその体や活動に大きな影響を与える。ヒトに対しては、乾燥は唇のひび割れや乾燥肌などを引き起こす原因となる。
また、体感温度などの感覚的な温度にも湿度の大小が影響する。一般的に、湿度が高いほど暖かく感じられ、その(体感温度に対する湿度の大小の)影響度は気温が高いほど大きくなる。そのため、空気調和設備では湿度も制御の対象であり、湿度の観測を行い、加湿器や除湿機などを用いて制御を行う。また、住宅などを中心に、加湿器や除湿器を単独で用いることがある。高い湿度の環境を避けるために、乾燥機や乾燥剤などの部分的な除湿装置が日常生活で使用されることがあるほか、工業用、科学実験・研究用(デシケーター)など、広い用途に用いられている。
湿度が下がると材木などの含水量が低下し、火がつきやすくなる。そのため、日本では冬季に火事が多い。乾燥による火災の目安として、実効湿度という指標が用いられる。乾燥注意報の基準には、相対湿度の日最小値である最小湿度と、実効湿度が用いられる。
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