出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/02/09 08:40:57」(JST)
この項目では、アジアスイギュウについて説明しています。スイギュウ類全般については「ウシ族」をご覧ください。 |
スイギュウ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[a 1][a 2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) |
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Bubalus arnee (Kerr, 1792) | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
アジアスイギュウ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Water buffalo | ||||||||||||||||||||||||||||||
水牛の生息域(2004年)
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スイギュウ(水牛、Bubalus arnee)は、哺乳綱ウシ目(偶蹄目)ウシ科アジアスイギュウ属に分類される偶蹄類。
同じウシ族で水辺を好むアフリカスイギュウなどと区別するため、アジアスイギュウ、インドスイギュウともいう。
インド、タイ、ネパール、バングラデシュ、ミャンマーに自然分布[1][2] 。家畜と交雑したと考えられている個体群がインド、インドネシア、カンボジア、スリランカ、タイ、バングラデシュ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスに分布[2]。家畜が野生化した個体群がアルゼンチン、オーストラリア(ノーザンテリトリー)、チュニジア、ヨーロッパなどに分布[1][2]。
有史以前はアフリカ大陸北部から黄河周辺にかけて分布していたと考えられている[2]。
体長240-300センチメートル[2]。尾長60-100センチメートル[2]。肩高150-190センチメートル[2]。体重700-1,200キログラム[2]。喉から胸部にかけて垂れ下がった皮膚はなく、また肩から背中にかけて隆起しない[2]。頸部腹面に三日月状の白色斑が入るが[1]、個体変異や地域変異が大きい[2]。四肢下部の体毛は白い[1][2]。
最大角長194センチメートル[2]。角の断面は三角形[2]。
スイギュウは成長すると体重 最大1200kg になり、一般的にオスは 1000kg 前後、メスは 750kg 前後であるが、体重は近縁にあっても大きく変動する。
河畔林、草原、沼沢地、河川やその周辺などに生息する[1][2]。1-2頭のオスと複数頭のメスで10-30頭からなる群れを形成して生活するが、100頭以上に達する大規模な群れを形成することもある[2]。オスの若獣のみで約10頭の群れを形成する[2]。水浴びを行い、また避暑や虫除けに泥浴びも行う[1][2]。
食性は植物食で、主に草を食べるが木の葉も食べる[2]。
繁殖形態は胎生。妊娠期間は300-340日[2]。1回に1頭の幼獣を産む[2]。授乳期間は6-9か月[2]。生後2年で性成熟する[2]。
開発による生息地の破壊、角目的や食用の乱獲、家畜との競合や交雑などにより生息数は減少している[2]。
中華人民共和国では8,000-9,000年前から家畜化されていたとされる[2]。
スイギュウは粗末な食べ物で成長して肉や乳を得られるだけでなく、ウシよりも沼地での行動に適応しているため水田での労働力としても有用であり、経済的に非常に優れた動物である。また、日本の沖縄県の由布島や竹富島では観光用に水牛車として用いられている。
平和の象徴とも言われる。
野生種は現在主に東南アジアに生息しているが、原産地は明らかでない。現在の野生種がもともとの野生種の末裔であるか、それとも以前家畜化されていたものが野生化したのかははっきりせず、あるいはそれらの混血であることも考えられる。
アジアはスイギュウの原産地であり、現在でも世界の95%が生息している。多くのアジアの国でスイギュウは最も生息数の多いウシ科の動物であり、1992年時点でのアジア全体でのスイギュウの数は1億4100万頭と見積もられている。内、インドが最も多く、中華人民共和国では、2300万頭程度と見積もられる。
野生のスイギュウが生息する地域はほとんどなく、少数がインド、ネパール、ブータン、タイで見られる。ふつう草原や沼沢地にて群で行動している。 スイギュウの持つ角は平均1mほどで、生き物の中では最も長く、1955年に射殺されたスイギュウは4.24mもある角を有していた。このような、大きな角を持つ野生のスイギュウは怒りだすと極めて危険な存在となり、成長した雄牛にはトラなどの捕食者も滅多に襲いかからない。 スイギュウ (Carabao) はフィリピンの国の動物とされている。
インドなどで信仰されているヒンドゥー教では、コブウシが神聖な動物として崇拝の対象となっていることは有名である。しかし、スイギュウに関しては、ヒンドゥーの教義上、通常の牛とは明確に区別され、崇められていない。よってその肉は、非ベジタリアンには食用にも用いられる。そのため、スイギュウから採れた牛肉は様々な分野で利用され、輸出もされている。インド産水牛の肉の輸出先は、主に中東やアフリカ、東南アジアである。2012年には、世界有数の牛肉輸出国のブラジルやオーストラリアを抜いて、インドが世界一の輸出量となる見通し。ただし、ヒンドゥー教としては問題なくとも、インド国民においては、水牛の殺生についても拒絶反応が非常に強く、市民団体などは輸出増に懸念を示している[3]。
スイギュウは19世紀初頭に荷物運搬用としてノーザンテリトリーに持ち込まれたが、すぐに逃げ出して野生化した。これらは狩猟の対象となり、狩猟地として有名なメルビル島には4000頭ほどの個体が生息している。スイギュウはアーネムランド半島やノーザンテリトリー北部でも見られる。ダーウィンからメルビル島や他のノーザンテリトリー北部へ飛行機を使っての狩猟旅行がよく行われている。政府は何度か根絶を試みたが成功していない。
スイギュウは主に淡水の沼や水路に住み着いており、雨季には生息域が非常に広範囲となる。また、遺伝的に孤立しているため、外見はインドネシアの原種とは変わりつつある。
スイギュウは北アフリカと近東には紀元600年ごろに持ち込まれた。ヨーロッパには十字軍の帰還と共にもたらされ、群はブルガリアやイタリアで見ることができる。アジアと同じように、中東や欧州のスイギュウは辺境の農村地で草を食べて生活している。スイギュウはタンパク源や役蓄、または家族の財産としての経済的役割をもっている。地域によっては毎年スイギュウのレースが開催されている。
スイギュウの乳は、分布地で多くの人々が飲用や加工用に利用しており、脂肪分が8%程度と家畜の中で最も多く、ギー(インドなどで料理に使われるバター状のもの)の主要な原料となる。鉄分、ビタミン類、乳糖なども、一般に、ウシの乳よりも豊富に含まれている。
また、タンパク質も、チーズなどの伝統的な材料となっている。南イタリアカンパニア州のサレルノやカゼルタの周辺は水牛乳で作るフレッシュチーズ、モッツァレッラ・ディ・ブーファラ(Mozzarella di Bufala)の産地となっている。また、中国雲南省のフレッシュチーズルービン(乳餅)や板状に干したルーシャン(乳扇)、フィリピンのケソンプティにも用いられる。
中華人民共和国の南部では、水牛は重要な役畜であるが、水牛乳を大良牛乳、牛乳プリン、ホワイトクリームなど、さまざまに加工して利用する順徳料理のような例もある。
スイギュウの肉(carabeef と呼ばれることもある)は地域によっては牛肉として流通しており、最も多くのスイギュウを飼育しているインドでは主要な輸出品目となっている。中国でも広東料理などでは、水牛の肉もよく利用してきたが、肉質が堅いのが難点であり、煮込み料理に適する。インドでは一般にヒンドゥー教では牛を神聖視すると言われているが、これは瘤牛のことであり、水牛は家畜として使役され、その肉も食肉として流通している。ヒンドゥー教においては水牛は悪魔マヒシャの化身のひとつであり、死者の王ヤマの乗り物とされているため、コブ牛との扱いに大差がある。インド国内での水牛肉の消費は主にイスラム教徒向けや日本人を含む外人向けレストランなどで多く消費されている。(森本達雄著 ヒンドゥー教 中公新書)
スイギュウの革は強靭で利用しやすく、靴やオートバイのヘルメットに使われている。
角は、印鑑、三味線の駒、櫛、和包丁の柄、ボタン、置物などの角細工に使われる。また、犀角同様に酒器が作られることもある。日本刀の外装(拵)の各部の部材としても広く用いられた。
アフリカからアジアにかけて燃料とする例が多い。ワラを混ぜ乾燥させた糞が燃料として使われている。アフリカなどでは虫除けに土で作る家の材料とする例もある。
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