出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/12/04 11:01:14」(JST)
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条例(じょうれい)は、
日本国憲法第94条《地方公共団体は、(中略)法律の範囲内で条例を制定することができる。》を根拠とし、地方自治法の規定に基づき制定される。
すなわち、条例は日本国憲法を頂点とする国内法体系の一部をなすものであり、かつ、法の形式的効力の意味において国法よりも下位に位置付けられるものである。
条例の制定・改廃の議決は、議会の出席議員の過半数で決定される。
普通地方公共団体の議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があつたときは、その日から3日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければならない(地方自治法16条第1項、以下条数のみ記載。)。
普通地方公共団体の長は、議長より条例の送付を受けた場合において、再議その他の措置を講ずる必要がないと認めるときは、その日から20日以内にこれを公布しなければならない(16条第2項)。
条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して10日を経過した日から、これを施行する(16条第3項)。
選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く)の制定又は改廃の直接請求をすることができる(74条)。
請求があつたときは、当該普通地方公共団体の長は、直ちに請求の要旨を公表しなければならない(74条2項)。
普通地方公共団体の長は、直接請求を受理した日から20日以内に議会を招集し、意見を附けてこれを議会に付議し、その結果を同項の代表者に通知するとともに、これを公表しなければならない(74条3項)。
条例の制定又は改廃の請求者の代表者は、条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めなければならない(74条の2)。
制定又は改廃の議決があつたときでも、長が公布せず10日以内に理由を示してこれを再議に付す場合は、議会で改めて2/3以上の賛成を以って再可決しなければ廃案になる(176条第1項)。
首長は再可決された条例案が法律と矛盾すると考えるとき、市区町村の場合は知事に、都道府県の場合は総務大臣に審査を申し立てることができる。審査者が法律との矛盾を認めた場合、条例案を再可決した議決は取り消される。首長または議会は、審査結果に不服がある場合は裁判所に訴えることができる(176条第5・6・7項)。
議会が成立しないとき等は、普通地方公共団体の長は、その議決すべき条例を専決処分することができる(179条)。
先に述べたとおり条例は法律の範囲内において制定することが憲法に定められており、これに加え14条第1項により、条例は法令に反してはならない。
また、地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない(2条16項)。 なお罰則条例を制定する場合は、検察官の審査を得なければならない。
条例により課せられる罰則は、14条第3項の規定により、2年以下の懲役・禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料もしくは没収又は5万円以下の過料に制限されている[2]。
刑罰を定めるには、法律の授権が相当程度に具体的であり、限定されていることが必要である(最高裁判例[3])。
前述のとおり、既に国の法令で規制されている領域においては条例の制定がかなりの程度で制限され、かつ国の法令の規制が及ぶ範囲は相当に広範かつ詳細にわたることから、地方自治体が独自の観点で条例により規制を行うことができる分野は限られたものとなっており、地方行政のいずれの分野においても、その根幹は国政での立法によって規定・規制されている[4]。
また、条例の制定により国の法令との抵触が生じることを回避するため、条例とは異なり法的な位置付けがない要綱を定め、任意の協力を前提とした行政指導を行うことによって行政上の所定の目的を達しようとする手法が、多くの自治体で用いられている。 しかしながら、要綱は何ら法的根拠を伴うものではないことから、それに違反する者に対して強制力を有しておらず、また行政指導に従わない者に対して水道の供給を停止することにより行政指導に事実上の強制力を持たせようとして裁判になった事例において、自治体が敗訴する(最高裁平成元年11月8日第二小法廷決定)など、今日では要綱による行政には一定の限界があることが認識されるに至っている。
現在地方自治体で制定されている条例の多くは、国の法令により委任されている事項を定めたものが多く、またその条例の内容も国や都道府県が参考のために提示した条例準則あるいはモデル条例と呼ばれる雛形に沿って制定されることが多い。条例準則自体は、人員・能力の点から条例制定への対応に困難が伴う自治体にとっては有用である半面、雛形であるがゆえにその内容はニュートラルなものであり、これに依拠する限り個別的な地域のニーズに対応した条例の制定は困難となる側面がある。
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上述のとおり、国の法令からのモデル条例が複数制定されると、その自治体の現状を反映しないため、条例間に齟齬が生ずることがある。
実際に生じている課題に対応することがまず求められるという地方自治行政の特性や、そもそも条例自体なくとも行政活動は可能であるとの意識などから、独自の条例制定が活発に行われず、その結果各自治体において条例制定の技術や体制が発達していないとの指摘もある。
前述のとおり条例で規定できる行政罰は2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収に限られており(14条)、また直接強制や課徴金などの強制手段を規定することは現行の地方自治法上認められていないことなどから、条例による規制は法律によるそれと比べて事実上その実効性が弱く、検察当局との連携強化など実務上の運用改善を含め、実効性の確保をいかに図るかが課題である。
地方分権改革推進会議が平成16年5月に出した「地方公共団体の行財政改革の推進等行政体制の整備についての意見」においては、法令面での地方の権限強化として、以下のとおり提言がなされている。
「地域の実情に応じた行財政運営を実現する観点からは、法令による全国一律の規制の弾力化と条例の機能強化等、法令面での地方の権限を強化するための制度の在り方を検討することが必要である。」
「自治事務については、地方公共団体の自主性を阻害しないよう国の法令は基本的な制度設計にとどめることとし、それ以外の自治事務の処理に必要な事項については個々の法令において条例への授権範囲を大幅に拡大していくべきであり、地方の実情に応じて設定すべき基準等は、地方公共団体が条例で定められるようにすべきである。 さらに、自治事務については、福祉、教育やまちづくり等の主要分野を中心として、個々の法令における条例への授権範囲の拡大に加え、条例に委ねるべき範囲の一般原則・基準を設定して包括的に条例への授権範囲を拡大することや、条例が一定の範囲内で政省令に規定された内容の弾力化を図りうる仕組みづくりといった地方公共団体の立法機能の強化に向けた方策も検討すべきである。その際には、市町村が処理する自治事務に関する都道府県の条例と市町村の条例の関係についても、必要に応じて同様の見地から検討すべきである。なお、これらの検討を行う際は、憲法上の問題を含めた議論が行われるべきである。」
地方分権一括法による改正をはじめとする地方分権改革の進展により、地方自治体の条例制定権が一定程度強化されたことに伴い、地方自治体の政策形成及びその実現のための手段として条例制定権(自主立法権)を積極的に活用しようという、いわゆる政策法務が近年注目されている。 従来の自治体における法務は、既存の法令の解釈や争訟事務などが中心であり、政策的観点からの自主立法権の活用という視点が乏しかったことから、政策法務の進展は自治体における法務行政の質的な変化をもたらすものといえる。
今後この政策法務に対する取り組みが進展するためには、制度面として地方分権の推進・強化が必要とされるほか、自治体においては企画力・法的素養について一層の涵養が求められよう。
自治体における条例や規則等の総称を例規と言い、それらをまとめたものを例規集と言う。近年は、データベース化して、ウェブページ上で公開している自治体も多い。
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