出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/04/16 20:42:35」(JST)
排便(はいべん)とは、大便を排泄すること。
本項では特に断らないかぎり、ヒトの排便について説明する。
肛門にある括約筋が弛緩し、体内の便が体外に排出されるものである。
さらに具体的に説明すれば、新たに胃の中に食べ物が入ると、脳からの信号により大腸に蠕動運動が起こり、便を大腸末端部に位置するS字結腸に送り込む。そこに便が送り込まれると、便が大腸を刺激し、脳からの命令によって排便反射が起こり、便意を催す。便意を催すと大腸は肛門にある内肛門括約筋を弛緩させると共に、同時に下腹部の腹圧を上げ、息みやすいようにする。一方、外肛門括約筋は便の漏れを防ぐために弛緩せずに収縮する。
息むことによって、直腸下部が膨張し、より垂直に近い形になり、排便を促しやすくする。そして直腸の収縮が起こり、同時に外肛門括約筋も弛緩する。その作用によって直腸下部に滞留していた便が肛門を経て体外に押し出される。
立っている状態や寝ている状態での排便が難しいのは、S字結腸の位置が肛門に対して垂直になるからであり、座ることによって位置が直線上になる。故に、やや前傾姿勢でしゃがむのが、最も排便しやすい姿勢であるといえる。排便時の座位姿勢は、直腸肛門角が開くよう少し前傾姿勢で、たとえるならロダンの彫刻「考える人」の様な姿勢が良いとされる。更に、腹筋に力が入りやすいように踵を少し上げたり、脇腹を両手で押さえて腹圧を与える方法もある。[1]
幼児期の発育段階において、排便のしつけは重要な位置を占める。一般的には、1歳半~2歳ぐらい、遅くとも6歳ぐらいまでの課題となり、この排便のしつけのことをトイレットトレーニングと呼ぶ。
おむつを着用している段階では、まだ子供は排便感覚を把握できていない。しかし、保育者が合図などを送ることによって、子供に「うんちが出る感覚」を覚えさせる必要がある。
使用する道具はおまる、又は便器などに設置する踏み台や補助便座などで、自分の力で「うんちを出す」習性を身に付かせる。
保育者が毎日時間を決めて便座に座らせて上手く誘導すれば、一歳前でもトイレで排便できることがあるが、失敗したとき不用意に叱るとトレーニングが振り出しに戻ってしまうことも多い。あくまで「成功したときに褒める」ことが基本である。
感覚を掴んだ頃になると、自主的にトイレに行かせる訓練が必要になる。ここでは規則正しい食生活も重要で、本人にとっての排便のサイクル、便の堅さなどを保育者が観察して、出そうなタイミングを見計らって「ウンチは?」など思い出させる。また、トイレを汚さない方法、用便後にしっかりと拭くことなど基本的なマナーを覚えさせて、ほぼトレーニングは終了となる。
ただし、中学生ぐらいまでは家の中では出来ていても外で躊躇ってしまう傾向がある。特に男児の場合、学校でトイレの個室を利用すると周りがからかうため、便意を感じても帰宅するまで我慢することが往々にしてある。これによって排便のサイクルに狂いが生じ、便秘や痔疾などを招いてしまう危険がある。
排便がスムーズにできない便秘、便がもれてしまう便失禁、便が正常でない下痢などがある。また肛門部にできる痔などは排便時の障害になる。
男女共に洋式便器では腰掛けて、和式便器ではしゃがんで(通称「ウンチングスタイル」)行う。(女性の場合は排尿でもしゃがむため女性にはあまりこの表現は使わない場合が多い。)幼児も同様に行う。和式便器では脚への負担が大きいが、踏ん張りが利いて出やすくなる上に、脚が鍛えられるという利点がある。現代人の体力低下、忍耐力低下の一因に便器の洋式化を挙げる人もいる。
道端、屋外等近くにトイレのない場所において便意を催し、我慢できない場合にやむを得ず行う(屋外排泄)。一般的には野糞(のぐそ)と呼ばれている。また、登山などアウトドア時の隠語として、雉打ち(きじうち)・お花摘み(おはなつみ)という用語もある。罪悪感、羞恥心などから草むらや薮などの端の方で体を隠してしゃがんでする。排泄物は持ち帰ることが望ましいが土に埋めてしまう事もある。ただしティッシュなど紙は分解されにくくゴミとして長く残ってしまうため、使用した場合は必ず持ち帰って処分しなければならない。特に、登山等アウトドアにおいては、環境保護・公衆衛生の観点から野糞は行わず、携帯トイレを持参し、排泄物を持ち帰ることが望ましい。基本的に軽犯罪法違反であるが、予想できない渋滞の発生時などでは緊急避難として許されることもある。
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