-gender
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/07/29 19:42:16」(JST)
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性別(せいべつ、sex)とは、男性と女性の別[1]。オスとメスの別[1]。
有性生殖を行う生物の内、ある生物集団に属する性成熟した個体が相対的に小さな配偶子もしくは配偶体を生産する場合を「雄」(オス)、大きな配偶子もしくは配偶体を生産する場合を「雌」(メス)、大小双方を同一個体が生産する場合を雌雄同体という。この区別が性別である。詳しくは性 (生物学)および有性生殖を参照。
人間の場合はそれぞれを「男性」「女性」あるいは「おとこ」「おんな」などと呼ぶ。人間の場合は、生物としての性別を前提としながら、加えて精神的・文化的に、また社会的な立場としても異なった存在として成長する。この意味での性の区別を生物学的なそれとは区別してジェンダーと呼ぶこともある。なお生物的な性と性自認が著しくずれたり反転しているケースが性別不快症候群や性同一性障害、生物学的な性の形成そのものが定型的でないケースが性分化疾患である。詳しくは個々の項目を参照のこと。
人間の性別は、根本的には男性化を促す遺伝子の有無に由来し、受精の瞬間にほぼ決定される。 人間の23対の染色体のうちの1対は性染色体と呼ばれ他の常染色体とは区別される。この性染色体の型(X染色体とY染色体の組み合わせ)によって、性別発達の機序は大きく左右される。これは、Y染色体の上に、精巣形成を誘導し男性化をもたらすSRY遺伝子が載っているためである。
性染色体の型としては、次の2つが典型的である。
「染色体異常」も参照
非典型的な例として、次のようなものがある。これらの多くは、精子・卵子の生産時に減数分裂に失敗したことによる。
また、上ではSRY遺伝子を重視して述べたが、Y染色体上の他のいくつかの遺伝子も男性化の引き金として重要だという説もある。
X染色体は生命維持に必須であるため、Y染色体1つのみを持つYO型の個体は出生されず流産となる。
妊娠第4週ほどに卵黄嚢に発生した原始生殖細胞は、第6週には下腹部の生殖隆起に移動して原始生殖腺を形作る。この時点では原始生殖腺は精巣にも卵巣にもなりうる。
第7週になって、SRY遺伝子が存在して正常に機能する場合には性腺原器は精巣に分化する。
同遺伝子が存在しなかったり正常に機能できないために精巣への分化が起こらないままであると、第11週以降卵巣に分化していく。
この際、多数の因子とその受容体が作用しているので、何らかの障害により精巣決定性遺伝子の有無と性腺分化が食い違うこともある。上に挙げたような染色体変異により、精巣と卵巣の中間的な形に分化したり、2つの原始生殖腺のうち一方は精巣に他方は卵巣にと分化することもある。
精巣が形成されると、その中のライディヒ間細胞は活発にテストステロンを生産し、セルトリー細胞はミューラー管抑制因子を生産する。
卵巣は、エストラジオールなどを生産する。
原始生殖腺が精巣に分化した場合、原始生殖細胞は思春期まで休眠する。 思春期になると、これらは活発に分裂を始めて精子を生産する。
卵巣に分化した場合、妊娠第3ヶ月から7ヶ月にかけて原始生殖細胞は減数分裂を始め、一次卵母細胞が作られていく。ここから9ヶ月までの間に原始卵胞が形成され、原始卵胞は思春期まで休眠する。
思春期までに99.9%の原始卵胞は卵胞閉鎖する。残ったもののうち、いくつかが月経周期ごとに何らかの機構によって選択され成長し、その内の1つがグラーフ卵胞へと成長して排卵を起こす。
この機構が卵巣や脳下垂体の間のフィードバックによって調整される種種の化学物質に支配されていることは知られているが、詳細な機構は不明な点が多い。
性腺形成と平行して、中腎管(ウォルフ管)に沿った形で中腎傍管(ミュラー管)が形成される。妊娠第7週以降、性腺の分泌する物質に依存してこれらの管が生殖管に分化していく。
典型例は次の2つである。
非典型例としては次のような場合もある。
外性器の分化はテストステロンの有無に従う。原始生殖腺が精巣に分化してテストステロンを生産している場合には男性型に、そうでない場合には女性型に分化する。
非典型的な例としては、次のようなものがある。
脳にも性差が存在する。脳の性分化を決定するのはアンドロゲンである。脳科学の研究成果によると、男児は生まれた直後の2日目ぐらいから生後6ヶ月ぐらいまでの間、成人の半分ぐらい量のアンドロゲンが分泌され、またテストステロン受容体の脳内での分布上の性差がエストロゲンと同じく、海馬・扁桃体内側核・腹内側核等に見られる。アンドロゲンには左脳の発達を抑える働きがあり、このため少年の脳は少女よりも発達が遅い。女性は男性の脳よりも脳梁という右脳と左脳を繋ぐ神経が多い。また、男性と女性の肉体の大きさに違いがあるように、脳も男性は女性の脳に比べて約12~3%大きい。
乳児期以降では視床下部のネガティブフィードバックにより性ホルモンの分泌が抑制されているが、第一次性徴が終わり、第二次性徴・思春期になるとこの抑制能が低下し始め、これにより男女それぞれに特徴的な身体の発達を生じる。
典型例としては次のものがある。
非典型例としては前述の仮性半陰陽などの他、思春期早発症(男子9歳未満・女子7歳未満で二次性徴・思春期が始まる)と思春期遅発(男子14歳・女子12歳になっても二次性徴・思春期が始まらない)がある[2]。
性指向は男性を好きになるか、女性を好きになるかの別である。ここで言う「好きになる」は「恋愛感情を抱く」「同棲したいと思う」「性交したいと思う」などの感情であるが、そのレベルは人によって様々である。単に「性交したい」だけの人もいるし、「性交したいのは女性だが、一緒に暮らしたいのは男性」といった人もいる。
一般的には、男性は女性を好きになり、女性は男性を好きになる事が多いが、男性で男性を好きになる人、女性で女性を好きになる人もおり、古くから同性愛(homosexual)と呼ばれて来ている。これに対して男性が女性を好きになる場合・女性が男性を好きになる場合は異性愛(heterosexual)と呼んで区別する。日本では男性が男性を好きになるケースを「ホモ」、女性が女性を好きになるケースを「レズ」と俗に呼んでいたが、この言葉はいずれも差別(侮辱)的であるとして避けられる傾向にある。特に最近女性の同性愛者達は自分たちの性指向をビアンと呼んでいる。同性愛の気がない人をノンケと言う(non+気、で日本語)。アメリカでは男女区別せずにゲイと呼ぶ。一般的に身体的特徴と社会的な性自認が一致している者が、自分と異なる性の者を愛する事をヘテロと言う。
なお世の中には男性でも女性でも好きになる人も多く両性愛(bisexual)と呼ばれている。両性愛の人の中にも男女等しく愛するタイプもあれば、どちらかというと異性愛だが、同性でも魅力的な人がいれば好きになるというタイプもあり、その程度は様々である。また、自分では異性愛と思っている人も実際に機会が無かっただけで、両性愛の素質がある場合も多いのではないか、という説もある。
基本的には異性愛である者が異性を得られない環境下(戦場や刑務所、同性のみの学生寮など)で同性を恋愛とセックスの対象に選択する場合は機会的同性愛と言う、この場合除隊、釈放、卒業などにより、異性を得られる環境が回復すれば、直ちにこの同性愛傾向は消滅する。つまり、機会的同性愛は根源的な性的指向自体によるものではなく、環境において一時的に形成される性的嗜好と見なす事が出来る。
そもそも性別が曖昧な人を好きになる場合(手術前のニューハーフが好きという男性など)もあるが、これは「性指向」としての同性愛とは微妙に異なるかも知れない。
このほか、男性および女性のどちらも恒常的に恋愛や性欲の対象としない、つまり性指向を持たないという場合は無性愛(asexuality)と呼ばれ、これを性指向の中に分類することもできる。
また、男性・女性やその2分法に基づいた性の分類に適合しない人々も含め、あらゆる人々に恋をしたり、性的願望を抱いたりする人々。また、あらゆる人々に恋されたり、性的願望を抱かれる可能性を持っている人々。さらに、性別に囚われず、特定の人間に恋することが出来る者などの要素を持つ人々を全性愛と言う。これもそのような状態を指す語であり、性指向の一種ではない。
なお性指向と次項の性自認は独立のものなので注意したい。詳しくは次項参照。
性自認は自分の(心の)性別を男性と考えているか女性と考えているかの別。普通は生物的な性(出生時の性)と一致することが多いが、一致しないケースが性同一性障害(Gender Identity Disorder,略してGID)である。
「障害」とまで行かなくても自分の生物的性を不快に感じている人たちもおり「性別不快症候群」と呼ばれる。この状態から性同一性障害の段階まで進行する場合も多い。また「男性」「女性」ではなく「中性」「無性」や「両性」「不安定な性」「不確定な性」。男女のいずれとも異なる第3の性の状態でありたいという人も少なくない。
現代の日本では多くの人は生まれた時に性器の外観で性別を判定されてそれで戸籍に記載され、その性に合わせて育てられるが、しばしば物心付く頃から自分の性が反対のものであったら良かったのにと思ったり、自分の本来の性は反対のものであると確信していたりする人がいる。この人たちはやがて親の目を盗んで時々異性の服を身につけたりするようになり(異性装)、やがてひとり暮らしするようになるとプライベートでは完全に異性の姿で過ごすようになったりする。しかし社会的には出生時の性で生きることを強要されるため、そこに強いストレスが生じて劇的な変化を求めていく人たちも多い。
現代では性自認と性指向は区別されて考えられるが、昔は混同していた人たちも多かった。出生的に男性である人が性自認は女性である場合に、昔は多くの人が、それなら性指向としては男性を好きになるのであろうと考えていたようであるが、実際には女性しか好きになれないという人もけっして少なくはない。もちろん、性自認が男性で出生が女性である人の性的指向が男性に向いているケースも多い。
ことばの上でも「ゲイ」は本来同性愛を意味するのに、日本で「ゲイボーイ」というと酒場で女装して給仕をする人のことを指すのが普通であるし、また「おかま」という言葉(この言葉は本来は男娼を意味し侮辱的である)も女装者の意味で使用したり男性の同性間性交の意味で使用したりして、やはり言葉の混乱が生じている。
そもそも出生的な性、性指向、性自認は「連動しやすい」ものではあるが「完全に連動する」ものではないのである。条件を「出生の性と性自認はそれぞれ独立しており男、女いずれかである」「性指向は男、女どちらか一方を持つ」「性嗜好を考慮に入れない」とすれば下記の8種類のパターンが存在すると考えられる。
出生の性 | 性自認 | 性指向 | 概要 |
---|---|---|---|
男 | 男 | 男が好き | 男性同性愛者 |
男 | 男 | 女が好き | 男性異性愛者 |
男 | 女 | 男が好き | MTFで女性異性愛者 |
男 | 女 | 女が好き | MTFで女性同性愛者 |
女 | 男 | 男が好き | FTMで男性同性愛者 |
女 | 男 | 女が好き | FTMで男性異性愛者 |
女 | 女 | 男が好き | 女性異性愛者 |
女 | 女 | 女が好き | 女性同性愛者 |
この8パターン以外にも出生の性であれば「半陰陽」、性自認であれば「中性」「両性」「無性」その他、性指向では「両性愛」「無性愛」「全性愛」、性嗜好では「機会的同性愛」「肉体的性別と性自認が逆転した人(トランスジェンダー)が好き」などの場合がある。実際には、様々なバリエーションがあり状況は複雑なのである。
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